2018-08-20

財産権がアフリカを救う

市場経済の基礎は個人の財産権です。自分の物でなければ、それを自由に加工したり、他の人に売ったりできないからです。しかし世界には、まだ財産権が確立していない地域もあります。その典型はアフリカです。

米ジョージ・メイソン大学人文研究所が運営するウェブサイト、ラーン・リバティの記事によると、アフリカでは多くの場合、政府が法的には土地を所有しています。ところが一方で、地域住民が慣習法に基づいてその同じ土地を所有するケースが少なくありません。そこでは酋長などの伝統的リーダーが部族や移民に土地利用の権利を割り振ります。

政府は慣習法に基づく土地所有を登記するよう求めますが、住民の多くは登記をしません。手続きが複雑なうえ費用がかさむからです。その結果、田舎の住民は多くの場合、土地に対する財産権が不確かです。このため人々は投資で農業の生産性を高めようとしません。所有をめぐってしばしば他人と争いとなり、暴力沙汰になることもあります。

しかし最近、この状態の改善をめざす民間企業が登場しました。ガーナで活動するランドマップという会社で、全地球測位システム(GPS)機能付きスマートフォンを使って農地の区画図を作り、隣接地主の了承も得たうえで、比較的低コストで所有証明書を作成するのです。

この証明書があれば、農民は借り入れや商品会社との契約がしやすくなる利点もあります。「ランドマップ社はアフリカの政府ができないことをやろうとしている」と記事の筆者、キャロル・ブードロー氏は述べます。信頼できる区画図を作り、正当な土地所有権を手頃な値段で証明する仕事です。

ペルーの経済学者で開発援助に詳しいエルナンド・デ・ソト氏は「財産の所有権がまともに認められないせいで貧困にあえいでいる人が世界各地に5億人いる」と指摘します(ドン・タプスコット他『ブロックチェーン・リボリューション』、ダイヤモンド社)。財産権を分散システムで記録するブロックチェーンも、政府に代わる解決策になるかもしれません。(2017/08/20

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