経済学者、カーメン・エレナ・ドロバート(Carmen Elena Dorobăț)による2014年の記事「貧困への道は小さなインフレで舗装されている」(The Road to Poverty Is Paved with Small Inflations)より。
<解説>
物価が短期間で何倍にもなるハイパーインフレは、恐怖とともに語られる。対照的に、 緩やかな物価上昇であるマイルドインフレは、逆に望ましいものとされ、中央銀行の公式目標にまでなっている。しかし著者がいうとおり、大幅だろうと小幅だろうと、インフレがお金の価値を破壊し、自然な経済の働きを妨げて社会の貧困化を招くことに変わりはない。ハイパーインフレが誰の目にも明らかな突発性の重病であるのに対し、マイルドインフレはじわじわと社会を蝕む病であり、健康のあかしと誤解されてさえいる。その意味で、むしろハイパーインフレよりも怖いといえる。
<抜粋>
ベネズエラのマドゥロ政権が国民を貧困に追いやるやり方は、せっかちで誰が見てもわかる。しかし他国の政府はもっと辛抱強く、腹の中を隠している。
While Maduro’s regime is leading its people to poverty in a quick, conspicuous manner, other governments are more willing to wait and conceal their intentions.
穏やかな物価上昇は過去数十年、西洋諸国でくすぶり続ける。西洋諸国では、中央銀行が年率2%の物価上昇を保つことを公式目標としてみずからに課している。これは30年間で物価が2倍になることを意味する。
Moderate price inflation has been simmering for decades in Western economies, where central banks make it their official mission to keep prices increasing at an annual rate of 2%—which means doubling them over the course of 30 years.
大幅だろうと小幅だろうと、通貨量の膨張(インフレーション)は大衆を苦しめ、貯蓄の破壊をもたらし、失業と社会全体の貧困をまねく。一方で、金融ピラミッドの上位という地位に恵まれた一握りのエリートに富が集中する。
Great or small, inflation hurts the masses, leading to the destruction of savings, as well as unemployment and overall impoverishment, while concentrating wealth in the hands of elites privileged by their position in the monetary hierarchy.
もし通貨膨張をやめなければ、遅かれ早かれ金融システムは崩壊し、社会における分業を破壊するだろう。
If inflation doesn’t stop, the breakdown of the monetary system—whether fast or slow—will also bring about the destruction of the social division of labor.
ベネズエラのようなハイパーインフレと、西洋諸国におけるマイルドインフレは、国民を貧しくするのが早いか遅いかの違いにすぎない。
From this point of view, the difference between inflation ‘over here’ and inflation ‘over there’ is only a matter of how quickly we become poor.
原文:https://mises.org/blog/road-poverty-paved-small-inflations
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