2022-06-23

恐ろしい「公式の敵」はきりがない

作家、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年6月17日)

安全保障国家の政府には、大きな公式の敵が必要だ。恐ろしい敵は、安全保障国家という形態の政府の存在だけでなく、そのための予算が増え続け、貪欲な「防衛」請負業者の軍隊を支え続けるよう、国民を仕向ける。 


それが今のロシア騒動のすべてである。冷戦時代の再現なのだ。当時米国人は、(ソ連の)赤軍が自分たちを捕まえに来て、連邦政府と公立学校を乗っ取り、共産主義と社会主義を愛するように皆を洗脳すると信じ込まされた。

米国の保守派は、自分たちの立場の矛盾に気づくことができなかった。一方で、社会主義は本質的に欠陥のある制度であり、失敗する運命にあると主張した。他方で、米国と世界は、モスクワに本拠を置くという国際共産主義者・社会主義者による世界征服の陰謀に陥る重大な危険にさらされていると主張していたのである。

実は、ソ連や中国が米国に侵攻して乗っ取るという危険は、まったくなかったのである。それはいつも、米国人を恐れさせ、安全保障支配層とその貪欲な「防衛」請負業者を権力と富の座にとどめるために作られた、大げさな脅威だった。

冷戦が突然終わったとき、米国防総省、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA) はパニックに陥った。一番望まないことだったからだ。彼らは冷戦が必要だったのだ。それ以外に、どうやって米国人を怖がらせておくというのだろう。もし米国人が、建国時の政府体制である制限された共和制の復活を要求し始めたらどうなるか。そのためには、国家安全保障型の政府機構の解体が必要になる。

安全保障支配層は、かつてのパートナーであり同盟者だったイラクの独裁者サダム・フセインに目をつけた。1990年代を通じ、サダムは新たな公式の敵になった。明けても暮れても、「サダム! サダム! サダム! サダムは新しいヒトラーだ! 大量破壊兵器をもって我々を捕まえに来る!」。そして大多数の米国人は、それがどんなに馬鹿げていても、新しい公式の脅し文句を鵜呑みにした。

安全保障支配層は対テロ戦争と対イスラム戦争のさなかも、中国とロシアを大きくて恐ろしい公式の敵として復活させることを決して諦めなかった。それが今も続いている。ペンタゴン、CIA、NSAは、とくにペンタゴンとCIAがアフガニスタンで人々を殺さなくなった今、米国人がテロリストとイスラム教徒に対する恐怖心を失っていることを知っている。

国防総省、CIA、NSAはこれからどうするのだろう。間違いなく、米国人がロシアと中国共産党に対する深い恐怖の中で生きるよう教え込み続けるだろう。北朝鮮はいつも公式の敵として待機しているのだから、また危機を煽っても驚くことはない。もちろんイランやキューバ、ベネズエラ、ニカラグアもある。もしかしたら(共産主義の)ベトナムもあるかもしれない。米当局はイラクやその他の中東、アフリカでまだ人々を殺しているから、テロとイスラムに対する世界戦争を再燃させるようなテロリストの反撃の可能性もつねにある。

米国人は、数十年来の不正と腐敗にまみれた国家安全保障機構によって植え付けられた、公式の敵に対する恐怖を克服する必要がある。そうすれば、米国は建国時の政府体制である制限された共和制を回復し、自由、平和、繁栄、世界の人々との調和への道を取り戻すことができるだろう。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : An Endless Stream of Scary Official Enemies [LINK]

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