2017-04-18
姜尚中・玄武岩『大日本・満州帝国の遺産』
右翼と左翼は同質
右翼と左翼は正反対だと多くの人は信じている。たしかに表面上、異なる部分は多い。しかしその本質は同じだ。一言でいえば、国家主義である。社会のさまざまな問題は国家権力によって解決できるし、解決しなければならないと信じている。
安倍晋三首相の祖父、岸信介はタカ派の右翼政治家として知られる。だから本書によって岸の政治思想にマルクス主義やロシア革命が影響を及ぼしたことを知ると、読者は意外に感じるかもしれない。しかし右翼と左翼は国家主義者という同じ穴のムジナなのだから、右翼が社会主義を信奉しても不思議はないのだ。以下、抜粋。(数字は位置ナンバー)
戦前、戦後を通じて有為転変を重ね、にもかかわらず一貫して国家社会主義的な統制経済論に揺るぎない確信を抱き続けた「ミスター統制」岸信介は、官僚主導の日本的経営システムのひな型作りに巨大な足跡を残したのである。(81)
企画院を根城に軍部幕僚層と結びついて高度国防国家への改造を担う、これら革新官僚グループに共通しているのは、若き日の彼らが、「一般的風潮としてのマルクス=レーニン主義的な社会科学の影響」のもとにあったということである。(240)
北一輝の国家社会主義的な日本改造に惹かれていた岸〔信介〕にとって、ソ連邦の「実験」は、脅威であると同時に、日本の危機突破のインスピレーションを与えてくれるものだった。(1853)
最大の眼目は、統制経済にもとづく満州国の国家建設プランを練ることにあった。ロシアとは資本主義の発展段階も〔略〕環境も違う日本で計画的な国家統制による新たな国創りの実験が、満州という場で試されることになったのである。(1873)
〔戦後も〕社会主義、それも国家社会主義的なヴィジョンが生き続けていた。〔略〕国家という管制装置による介入と秩序によって自由主義経済の行き過ぎや混乱を収束させようとする統制思想が、岸の一貫した統治理念になっていた〔。〕(2326)
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