欧州が経済的に発展したカギは、徹底した分権化(radically decentralized)である。中国、インド、イスラム圏などと対照的に、欧州を構成したのは分断され、互いに競い合う権力だった。
ローマ滅亡後、欧州大陸全域を支配できる帝国はなかった。その代わり、欧州は王国、公国、都市国家、教会領など多数の政体からなるモザイク(mosaic)へと発展した。
この体制の下では、どの君主も財産権(property rights)を侵害できなかった。つねに他の君主と競合関係にあるため、財産没収、押収めいた課税、交易規制などをやれば必ず報いを受けた。資本と資本家が隣国に逃げ、競争相手が繁栄することになる。
君主は国内でも権利の章典(charters of rights)によって縛られ、臣民の希望をかなえるよう強いられた。割合小さな国でも権力は農園、結社、都市、宗教共同体、兵団、大学などに分散し、固有の自由を保障された。欧州の大部分で法の支配が確立された。
欧州の奇跡(European miracle)の基礎となったのは、略奪的な課税を抑制し、政府を競わせて勝手な振る舞いを制限したことである。私有財産をより自由に利用できるようになったことで、技術革新を続け、市場で試すことができた。
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