2022-11-03

ブッシュ、グアンタナモ、法の支配

元判事、アンドリュー・ナポリターノ
(2022年10月31日)

米政府は先週、2001年9月11日同時多発テロの残りの共謀犯とされるハリド・シェイク・モハメド被告とその仲間4人を裁判にかける気はないと発表した。

5人は全員、キューバのグアンタナモ湾にある米海軍基地で裁判を待っている。容疑は、この5人が共謀し、大量殺人を行ったというものだ。死刑を科しうる罪だ。共謀は戦争犯罪ではないにもかかわらず、連邦政府は、連邦刑事裁判で利用されているルールの下で、これらの被告を軍事法廷で裁くことを計画している。

5人はいずれも2003~2006年頃まで米中央情報局(CIA)のブラックサイト(国外の秘密軍事施設)に拘束され、そこで独房に監禁され、ひどい拷問を受けた。CIAの拷問が終了した後、5人は2006年にグアンタナモの軍事施設に移送された。

そこで米連邦捜査局(FBI)捜査官が尋問に来るまでの間、拷問が再開された。他の事件での失敗を考慮し、FBIは軍の拷問と独房監禁に歯止めをかけた。

CIAにこれら抑留者を拷問させる、憲法の要求に反して米国の連邦地方裁判所で死刑に問わない、軍事拷問を行う、軍事法廷において戦争法の下で認められていない犯罪でこれらの人々を告発する、憲法が求める陪審制度を無視する、司法省をこれらの事件に関与させない、といった決定は、すべて法的に無知で憲法を無視するジョージ・W・ブッシュ大統領によってなされたものである。

12年にわたる訴訟と、検察チームと審理する裁判官の度重なる変更は、ブッシュの底知れぬ無能さの結果だが、あげくの果てに、連邦政府はこれらの人々の審理をあきらめようとしているのだ。

以下はその経緯である。

権利章典にある適正手続の保障は、米国人だけでなく、個人を保護するものである。この原則の唯一の例外は、戦争法に違反する犯罪の場合だ。米国が外国政府と戦争状態にあり、その諜報員や軍隊が米国市民に危害を加えた場合でも、基本的な適正手続が適用されるが、米国が加盟している条約では戦争犯罪の裁判の場として軍事法廷を認めている。

もし外国の民間人が米国内で米国の民間人に対して罪を犯した場合、外国の民間人を起訴する場所は、犯罪の現場に物理的に最も近い連邦地方裁判所である。9・11テロでいうと、世界貿易センタービルの場合はマンハッタン、国防総省(ペンタゴン)の場合はバージニア州アーリントン、シャンクスビルの墜落事故の場合はペンシルバニア州中央部がその場所となる。

しかし、ブッシュはそうしなかった。9・11テロを防げなかった失敗の責任を問われることを恐れていたのだろう。アフガニスタンとイラクで戦争をしかけ、犯罪的な拷問を命じ、9・11の抑留者に公正な陪審裁判を受けさせないと固く決意した。ブッシュの原始的な考え方によれば、軍事法廷のほうが拘禁者はすぐに有罪判決を受け、死刑を宣告される可能性が高いのである。

先週、これらの事件(グアンタナモにおける9・11関連事件はこれらだけである)を担当する軍事判事は、公判前審問と公判期日をすべて延期し、司法取引交渉を保留した。死刑を求め、まだ公に手の内を明かしていない政府は、これらの被告が有罪である証拠は圧倒的であると主張している。

もし政府の主張が真実なら、なぜ司法取引のために休廷したのだろうか。

マジド・カーンの登場である。カーンはパキスタン生まれで米国育ちの若者で、CIAによって3年間拷問を受け、その後グアンタナモに連行された。カーンの罪状は、インドネシアの仲間に現金を渡し、仲間がその金でジャカルタのホテルを破壊し、そこで何人かの米国人が殺されたことだ。カーンは容疑を争うどころか、有罪を認めた。

政府はカーンを殺人の共犯という死刑の罪で起訴したため、カーンには判決を下す陪審員の前で審理を受ける権利があった。

カーンは判決公判で、軍の陪審員に対して、CIAが外国のブラックサイトの一つで自分に行った恐ろしい拷問を説明した。政府はカーンの証言を覆すような証拠を提示しなかった。これは、米国史上初めて、刑事被告人が政府による拷問を主張し、政府がそれに異議を唱えなかった例といえるかもしれない。

裁判の結果、陪審員はカーンに懲役26年を宣告したが、8人の陪審員のうち7人が、刑期を実質短縮するよう裁判官に手紙を出した。軍の陪審員に慈悲を求めるという前代未聞のこの要請の理由は、カーンの拷問にあると述べられている。カーンは刑期を実質短縮され、釈放された。

さて、ハリド・シェイク・モハメドに話を戻そう。モハメドは4年間拷問を受け、その間にCIAと軍はカーンと同じ拷問技をモハメドに加えた。政府は、英語が流暢になったモハメドが裁判で陪審員や一般市民や報道陣に、政府によって自分に加えられた恐怖を伝えることを恐れている。

政府はまた、モハメドが必要な抗弁をはっきり述べることを恐れている。

それはアイゼンハワー政権時代、CIAがイランで民衆に選ばれた世俗指導者(モサデク元イラン首相)を転覆させたことにまでさかのぼり、モハメドとその専門家の証人が、中東の罪のない人々に米政府が犯した悪事のすべてを明らかにすることを可能にする。

ジョージ・W・ブッシュが引き起こしたことを見よ。ジョー・バイデン大統領は究極の選択を迫られている。終身刑の嘆願を受け入れるか、米国の外交政策が破壊されるような裁判を許可するかだ。法の基本原則に対するブッシュの底知れぬ無知、タフに見せようとする子供じみた決意、9・11を予見できなかった自身の失敗から歴史の目をそらすため拷問と殺戮をいとわない姿勢は、100億ドルを費やして建設した悪魔の島(グアンタナモ)で途方もない不正を引き起こしたのである。

グアンタナモの収容所は解体し、ブッシュは戦争犯罪で裁くべきであり、法の支配をすべての訴追に回復しなければならない。

(次を全訳)
Bush, Guantanamo, and the Rule of Law - Antiwar.com Original [LINK]

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