2022-11-10

最低賃金上げがダメな5つの理由

エコノミスト、ジョン・フェラン
(2019年3月25日)

全米の州や市で、最低賃金の引き上げを求める運動が展開されている。通常、最低賃金は15ドルを目指している。なぜ15ドルなのか。サービス従業員国際組合のケンダール・フェリス氏の説明によると、「10ドルでは低すぎるし、20ドルでは高すぎるので、15ドルにした」そうだ。

経済学者ポール・クルーグマンが言うとおりである。

最低賃金を上げると、どのような影響があるだろうか。経済学の基本を学んだ学生なら、誰でも答えがわかるだろう。労働の需要量を減らし、その結果、失業をもたらす。

米在住の経済学者の72%が、連邦最低賃金を時給15ドルにすることに反対している理由の一つはこれである。

もう一つの理由は、実証的証拠の大勢が示唆するところによれば、最低賃金の引き上げは意図した政策目標を達成できないからである。

2008年、経済学者のデビッド・ニューマークとウィリアム・ウォッシャーは、最低賃金法の効果に関する20年にわたる研究を調査した。焦点を当てた五つの分野について、政策の影響をそれぞれ以下のように述べている。

1. 最低賃金は雇用を減らす

全体として、検討した100ほどの研究のうち約3分の2は、最低賃金の雇用へのマイナス効果について(決して統計的に有意ではないものの)比較的一貫した証拠を得た。一方、プラスの雇用効果について比較的一貫した示唆を与えているのは8つだけである。対照的に、最も信頼できる証拠とした33の研究のうち、80%以上がマイナスの雇用効果を指摘している。

2. 最低賃金の引き上げは、低賃金労働者の所得を減らす

最低賃金の上昇は平均して、影響を受ける労働者の経済的福利を低下させる傾向があることを、証拠は示している。最低賃金以上の賃金を得ている労働者への影響に関する証拠は、最低賃金の引き上げによって労働所得が減少することを示唆しており、最低賃金が雇用や労働時間に及ぼす負の効果を反映している。

3. 最低賃金の引き上げは、一部の低賃金労働者の生活を向上させ、他の労働者の生活を犠牲にする。

最低賃金の引き上げは、低所得世帯の間で所得の再分配をもたらすことがほとんどである。雇用機会の減少や労働時間の短縮の結果、得をする者と損をする者があり、正味で見れば、貧しい家庭や低所得の家庭がより悪くなる可能性があることを示している。

4. 最低賃金の引き上げは、若年労働者の技能を低下させ、将来の収入を減少させる

最近の研究では、最低賃金の上昇にさらされた10 代の若者は、20代後半で賃金や収入が低く、取得技能の低下と一致することがわかっている。

5. 最低賃金の引き上げは、製品・サービスをより高価にする

限られた実証的証拠が一貫して示すところによれば、最低賃金の引き上げは、低技能労働者によって生産される商品やサービスの価格上昇につながる。

ニューマーク氏は2018年12月、調査を更新し、「最低賃金の導入・引き上げで雇用は減るのか」と問いかけている。それによると、次のとおりだ。

最低賃金引き上げの潜在的な利点は、影響を受ける労働者の賃金が上がることであり、その中には貧困層や低所得者層がいる。一方、潜在的な欠点は、最低賃金が上がると、最低賃金で助けようとする低賃金・低技能労働者を企業が雇用しなくなる可能性があることだ。

最低賃金が低技能労働者の雇用を減らすとすれば、最低賃金は貧困層や低所得層を助ける「タダ飯」(費用なしに得られるもの)ではなく、ある人々の利益が他の人々のコストになるトレードオフ(相反)を意味する。研究結果は一様ではないが、特に米国では、最低賃金が低技能労働者の雇用を減少させることを示唆する証拠がある。

賃金を上げる唯一の方法は、労働者の生産性を上げることだ。最低賃金法によって低技能労働者の雇用を違法化しても、何の役にも立たない。

(次より抄訳)
Economist: 5 Reasons Raising the Minimum Wage Is Bad Public Policy - Foundation for Economic Education [LINK]

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