2022-11-05

ロックダウンを赦すな

ブラウンストーン研究所創設者・所長、ジェフリー・タッカー
(2022年11月2日)

こうして友人や隣人に話すことができるようになった今、実感が増してきた。公衆衛生の専門家と政治家が米国に対して行ったことは、ひどいものだ。中国・武漢の全体主義的なロックダウン(都市封鎖)に影響され、世界保健機関(WHO)がその政策を真似るよう報告書で促した。報告書をファウチ(首席医療顧問)の国立衛生研究所(NIH)が承認し、合衆国憲法上のあらゆる権利が投げ捨てられた。

教会は閉鎖された。学校は休校となり、地域によっては二年間も休講が続き、全世代の教育が犠牲になった。家庭でのパーティーも制限された。家賃を払っている息子や娘でさえも、高齢者の家を訪ねることはできなくなった。州をまたぐ旅行も、検疫の関係で不可能になった。

とりわけ保健所は、人々が集まるすべての会場を閉鎖しなければならないと求めた。前代未聞だ。ようやく穴を這い出すように家から出ることが許されると、マスクの着用を強制され(何かの役に立つ証拠は全然なかったのに)、あげくの果てにワクチンを打たされた。ワクチンでパンデミック(感染大流行)が終わると誰もが言ったが、どう見てもそうではなかった。

この三年間は、まさに地獄のような日々だった。私たちは今、その後遺症とともに生きている。後遺症とは、ひどいインフレ、学習能力の低下、薬物中毒、犯罪の増加、文化の虚無感、完全に正しいとわかった国民の怒りだ。この怒りは11月8日の中間選挙で、民主党を破滅に追い込むだろう。一連の政策の失敗が明らかになった後もそれに執着し、ずるずると続けてきたのは民主党だからだ。

国民が怒っているのは間違いない。正しい答えは、保健当局と政治家が謝罪し、許しを請うことだろう。しかしそうはなっていない。保健当局と政治家は、すべてうまくいったというふりをし続けるだけだ。米疾病対策センター(CDC)が主張する次回以降の隔離権限は撤廃されていないし、バイデン政権自身のパンデミック対策では、各州が次回以降に隔離を拒否することを禁止している。

それでは、アトランティック誌に掲載されたエミリー・オスター博士(経済学者)の論文について説明しよう。この論文は、オスター博士が宣言したある種の恩赦に誰もがすぐに従わなければならないと主張している。私たちはすべてを忘れ、前に進むことになっている。なぜそうなのか。それは、あまりに不確実性が高かったからだとオスター博士は言う。ウイルスのことを知らなかっただけなのだ。戦争の霧の中で、みんながんばったのだ。

「知らなかった」と言いながら、この時代の「不確実性」という言葉を五回も連発する。もしオスター博士(あるいは保健当局や政治家)がそれほど不確実であったなら、なぜこれほど早く米国のすべての自由を破壊しようと決めたのだろうか。いわゆる予防原則(科学的に不確実であっても被害が深刻なら、安全側に立つ)は、政府がそのような政策に着手すべきではないことを示唆している。明らかに害があるからだ。ところが保健当局・政治家は構わず断行した。

問題はここだ。これは完全に腐っている。新型コロナ感染症の重症化に関するリスク評価は、2020年2月からわかっていたことだ。すべての論文に書かれていた。データもあった。同年2月のダイヤモンド・プリンセス号の経験から、船内で70歳以下の死者が出ていないことはわかっていた。それは当時得られたあらゆる情報と合致していた。当時の知識に基づけば、ロックダウンをしなければならないケースはまったくなかったし、しない理由もそろっていた。

オスター教授はそこまで調べずとも、ただニュースを見ればよかったのかもしれない。MSNBCテレビは2020年1月30日、オバマ元大統領の健康アドバイザー、エゼキエル・エマニュエル博士の発言を報じている。「米国の誰もが、深呼吸をして落ち着き、パニックやヒステリーにならないようにするべきだ。私たちはこの件に関し、少しヒステリックになりすぎている」

2020年3月4日、スレート誌はこう報じている。「新型コロナウイルスは現在恐れられているほど命にかかわるものではないと結論づけるに足る、多くの説得力ある理由が存在する。それにもかかわらずコロナパニックが起きている。良いニュースをお伝えしたい。この恐ろしい数字が続くことはないだろう。このウイルスの真の症例致死率(CFRとして知られる)は、現在の報告が示唆するよりもはるかに低い可能性が高い」

同日、サイコロジー・トゥデイ誌が報じた。「そう、このウイルスは他のコロナウイルスとは異なっていて、たちが悪いのだが、それでも非常に見慣れたものだ。わからないことよりも、わかっていることのほうが多い。目に見えない敵があなたを病気にしようとしていると思うと、怖いだろう。しかし、あなたの主治医はパニックになっていないし、あなたもパニックになる必要はない」

ファウチ博士その人にも目を向けることができる。ファウチ氏は2020年2月20日、米医学専門誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)で次のように書いている。「新型コロナの臨床結果を総合すると、結局のところ、重症季節性インフルエンザ(症例致死率約0.1%)またはパンデミックインフルエンザ(1957年と1968年のものに類似)に似ているかもしれない。致死率がそれぞれ9~10%、36%だった重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)とは異なる」

2020年3月17日、有名な疫学者ジョン・イオアニディスはすべてを見通していた。「現在のコロナウイルス病、新型コロナ感染症は百年に一度のパンデミックと呼ばれている。しかし、百年に一度の証拠隠滅かもしれない….。最重要ポイントの一つとして、経済、社会、精神衛生に大きな影響を及ぼすことなく、ソーシャルディスタンスやロックダウンをいつまで続けられるかわからない。金融危機、騒乱、内乱、戦争、社会構造の崩壊など、予測不可能な事態が起こるかもしれない。少なくとも意思決定の指針として、進化する感染負荷に対する有病率と発生率の公正なデータが必要である」

予言的中ではないか。そのすべてが起こった。イオアニディス氏にそれがわかったのは、千里眼があるからではなく、働く頭脳を持っていたからだ。健康、経済、社会関係、その他多くのことに影響を及ぼさずに、ただ社会を閉鎖することはできない。言い換えれば、当局は、データではどうにも説明のつかない極端な手段をとり、社会構造に多大な損害を及ぼす政策を、それと承知のうえで実行したのである。

それどころか、2005〜06年に初めてロックダウンが推し進められたときから、その被害については知られていた。有名な疫学者ドナルド・ヘンダーソンは、このような措置は管理可能なパンデミックを大惨事に変えると警告していた。

そういうわけで私たちは今、大惨事のさなかで生きている。謝罪はない。あるのは隠蔽だけだ。2020年1月下旬から2月中旬まで、主要メディアは冷静に情報を提供し、ロックダウンの狂乱を避けるよう促していたのに、ファウチ氏ですら、このパンデミックから抜け出すのにワクチンは必要ないと言っていたのに、なぜ急に変わったのか。3月上旬、ファウチ氏が部下や側近とともにトランプ大統領を取り囲み、ロックダウンの許可を求める原因となった新しい証拠は、何だったのだろうか。

なぜ、このようなことが起こったのか。私なりの仮説はあるが、あくまでも仮説にすぎない。推測するに、①ファウチ氏とその一味は、国立衛生研が武漢の研究所に資金提供したためパンデミックに責任があると考え、感染拡大を止めるため、もしくは注意を混乱させるためにロックダウンを推進した②トランプ大統領に経済を破壊させることが、11月の選挙で彼を失脚させる最も確実な道だった—-ということである。二点目については、捏造された病気パニックがたまたま不在者投票のルール変更につながり、結果としてトランプ氏を破滅させることになった。

これは陰謀論と言えるかもしれない。それが事実でないことを心から願う。なぜなら、歴史に残るスキャンダルになるからだ。おそらく私が間違っていて、何百万ものビジネスと人生を台無しにするようなとんでもない行為には、何か別の理由があるのだろう。それが何なのか、知りたいものだ。しかし、エミリー・オスター博士の「知らなかった」という言い訳は、「ウイルスはもっと悪性だと信じていた」にしろ、「マスクは感染を防ぐ」にしろ、まったく根拠がない。ロックダウンを実行した人々に「恩赦」を求めるオスター氏の主張もまた、筋違いである。

私たちは知っていた。脅威がどのようなものか、既存のデータに基づいて確実に知っていたし、ロックダウンによって引き起こされる深刻な被害も、歴史上の経験と常識に基づいて確実に知っていた。知らなかったという言い訳は、いかなる証拠基準に照らしても、通用しない。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : No Amnesty for Lockdowners [LINK]

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