2021-05-03

進歩の英雄たち①ヨハネス・グーテンベルク


米シンクタンク、ケイトー研究所のプロジェクト、ヒューマンプログレスが「進歩の英雄たち(Heroes of Progress)」というミニ動画シリーズをユーチューブで公開中だ。人類の進歩に大きく貢献した起業家や科学者、社会運動家らを取り上げている。とくに興味深い五人を、補足も交えて紹介しよう。


近代印刷術の祖といわれるヨハネス・グーテンベルクは1394〜1404年ごろ、神聖ローマ帝国(ドイツ)の都市マインツで裕福な商人の家に生まれた。1411年、貴族との争いのあおりで一家はマインツを去り、グーテンベルクはフランスのストラスブールで金細工師として働く。

1439年、グーテンベルクは出資を募り、巡礼者に金属鏡を売る事業に乗り出したが、これに失敗。出資者たちをなだめるため、ある「秘密」を打ち明けたとされる。この秘密が活字による印刷のアイデアだったのではないかと言われる。

翌年、グーテンベルクは印刷術を完成させたと発表し、金属製の活字を使った印刷機のデザインを明らかにした。グーテンベルクはヨハン・フストという裕福な金融業者から資金を獲得。二人は共同事業者として新規事業を立ち上げ、1450年までには二台の印刷機を稼働させる。一台は商業文書を印刷し、もう一台は聖書の印刷に用いた。いわゆるグーテンベルク聖書だ。

ところが1455年、フストはグーテンベルクが聖書の印刷に充てるはずの資金を別の用途に使ったとして、グーテンベルクを訴える。グーテンベルクは訴訟に敗れ、事実上破産。印刷所はフストの手に渡ってしまう。

グーテンベルクはこれにめげず、バイエルンに小さな印刷所を開き、聖書の印刷を続ける。その功績を称えられ、マインツ大司教の宮廷に従者として召し抱えられる栄誉を得た。

グーテンベルクの画期的なイノベーションは欧州で急速に広がる。識字率が高まるとともに、医学、科学、技術、哲学、宗教、政治などに関する出版物があふれた。この結果、何百年も続いてきた貴族やギルドの支配が弱まり、ルネサンス、宗教改革、科学革命への道が開かれたのは知ってのとおりだ。

グーテンベルクの生涯は、起業家らしく波乱に富んだものだった。事業を起こすにはアイデアだけでは足りず、理解のある出資者が必要なことや、失敗にめげない不屈の精神が大切なことを教えてくれる。(この項つづく)

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