2024-10-15

経済の法則は普遍

需要と供給の力学、私有財産の役割、商品交換の仕組みといった経済の法則は普遍的なものであり、あらゆる時代や社会で機能している。歴史を通じて、経済法則は進化の力として働き、人間社会を徐々に形成してきた。時代とともに顕在化し、資本主義の下で最高潮を迎えている。
The Manifestation of Economic Laws Across Societies and Epochs | Mises Institute [LINK]
仏エコノミスト、バスティアは自然法を信じた。すべての個人は神から権利と能力を授かっており、誰もそれを奪うことはできない。「自然は、いや神は、我々一人ひとりに、自分の身体、自由、財産を守る権利を授けている」。これは深いキリスト教信仰に啓発された哲学的思想だ。
The Christian Faith in the Thought and Life of Frédéric Bastiat | Mises Institute [LINK]

資本主義という言葉を非難するのではなく、これまで以上に積極的に使うべきだ。資本家と資本は成長と進歩の原動力である。マルクスが嘲笑の印として与えたこの言葉は、実際には、市場経済の利点を表す完璧な表現であり、自由市場を擁護する人々が誇りとすべき言葉なのである。
Yes, We Should Defend the Term "Capitalism" | Mises Institute [LINK]

フェアトレード賛成派は、市場経済は公平な結果をもたらさないので現代社会にはふさわしくないという。実際には、自分たちが望むような結果を導かないというにすぎない。強制でない市場経済は、生産者と消費者がともに自分たちの利益になる取引を求める最良の機会を提供する。
The Myth of Fair Trade | Mises Institute [LINK]

お金としての金と金本位制を憎み、さげすむことは、現代国家の教義であり柱となっている。対照的に、金本位制の名残りが失われてから半世紀以上たった今でも、一般の人々は本能的に金を優れたものの象徴とみなしている。金メダルは最高の業績を表し、銀メダルはその次を表す。
Warren Buffett, Dave Ramsey, and John Maynard Keynes are Wrong! | Mises Institute [LINK]

2024-10-14

イスラエルの経済破綻

このまま放っておけば、イスラエルは経済破綻に直面する。投資は減少し、経済は縮小し、経済の未来への信頼は消えた。イスラエルはもはや、人々が引退し、家族を養い、働き、住むのに理想的な場所ではないのだ。 聖書にいう「乳と蜜の流れる土地」は、今や存在しないのだ。
The Fall of Israel - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃は、中東騒乱の出発点とみなされているが、実際ははるかに遡る可能性がある。ハマスの攻撃による死者1200人は恐ろしいことだが、イスラエルがそれまでの8年間に、占領下の西岸とガザ地区で殺害したパレスチナ人の数よりも少ない。
Biden is letting Israel trap the US into war with Iran | Responsible Statecraft [LINK]

イスラエルはイランとの全面戦争というリスクを冒そうとしている。戦争が中東での全面戦争や原油価格の急騰、米大統領選に臨む民主党に打撃を与える以外、何かを達成できる可能性はない。米メディアはバイデン政権がイスラエルを抑え込もうとしているという神話を広めている。
Biden Is Pushing Israel Towards Larger War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

米共和党の上院議員は、「ハマスのテロリスト」が昨年10月7日の攻撃で「約1200人」を殺害し、ハマスが「戦争の武器としてレイプ」を使ったという嘘を繰り返す決議案を提出した。レイプ疑惑はでっち上げで、死者数のかなりの部分はイスラエル自身の工作員の故意の殺害による。
Old Lies Behind Israel’s War Live On in Senate Resolution - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ロッキード・マーチンは世界最大の兵器メーカーであり、イスラエルがガザ空爆に使用するF35戦闘機の製造元でもある。同社の株価は10月4日の取引終了時点で、昨年10月7日の攻撃から1年間のトータルリターンが54.86%となり、S&P500種株価指数を約18%上回っている。
Israel's wars mean 'massive' returns for US arms company investors | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-13

孔子の自由主義思想

中国では、黄河文明が紀元前4000〜前3000年ごろから起こり、その後、殷王朝が前1600年ごろ成立。前1100年ごろには殷に代わって周王朝が成立した。その周も前8世紀ごろから国力が衰え、有力な諸侯が王を名乗って覇を争う乱世となった。これは秦が中国を統一する前3世紀後半まで続く。春秋・戦国時代という。

論語 (岩波文庫)

この実力本位の乱世にあって為政者たちは、いかにして国力を強化し、社会を豊かにするかに策を講じた。ここに自由な思想活動が活発となり、数多くの思想や政策を説く人々が現れた。総称して諸子百家という。そのうち孔子を祖とする儒家は、老子や荘子の道家と並んで、後に中国思想の二大潮流となった。

自由主義的な道家に対し、儒家は保守的なイメージが強い。しかし意外にも、少なくとも初期の儒家の著作からは、豊かな自由主義の思想を読み取ることができる。

孔子の名は丘、字は仲尼といい、紀元前6世紀後半、魯で生まれた。父母とは幼い時死別し、貧困の中で育つ。魯に仕え大司寇(大臣)となったが権力者と衝突し、56歳から十余年間魯を去って諸国を歴遊した。諸侯に道徳的政治の実行を説いたが用いられず、晩年は魯で弟子の教育と著述に専念した。孔子とその弟子たちの言行録である『論語』(引用は原則、金谷治訳。表記を一部変更。カッコ内は篇名)から、自由主義を示すおもな記述をたどってみよう。

宇宙は誰からも指示を受けていないのに、秩序を保っている。現代の経済学者ハイエクのいう「自生的秩序」である。孔子は、政治支配のあり方も同様であるべきだとして、「政治をするのに道徳によっていけば、ちょうど北極星が自分の場所にいて、多くの星がその方に向かってあいさつしているようになる(人心がすっかり為政者に帰服する)ものだ」(為政)と述べた。

同様の発言はまだある。「わが身が正しければ、命令しなくても行われるが、わが身が正しくなければ、命令したところで従われない」(子路)。「何もしないでいてうまく治められた人はまあ舜だろうね。一体、何をされたろうか。おん身をつつしまれて真南に向いておられただけだ」(衛霊公)。舜は伝説上の君主。中国で君主は南に面して臣下に対面した。

孔子はこのように、政治において道徳に基づく自生的秩序を重んじる一方で、刑罰によって人為的な秩序をもたらそうとすることに批判的だった。「(法制禁令などの小手先の)政治で導き、刑罰で統制していくなら、人民は法網をすりぬけて恥ずかしいとも思わないが、道徳で導き、礼で統制していくなら、道徳的な羞恥心を持ってそのうえに正しくなる」(為政)と述べている。礼とは、法律に対して、それほど厳しくはない慣習法的な社会規範を指す。

魯の家老から「もし道にはずれた者を殺して道を守る者をつくり上げるようにしたら、どうでしょうか」と問われ、孔子はこう答える。「あなた、政治をなさるのに、どうして殺す必要があるのです。あなたが善くなろうとされるなら、人民も善くなります。君子の徳は風ですし、小人の徳は草です。草は風にあたれば必ずなびきます」(顔淵)。また、「(聖人ではなく)善人でも、百年も国を治めていれば、あばれ者をおさえて死刑もなくすことができる」(子路)とも述べる。

孔子は重すぎる課税にも反対だったようだ。門人の有若は、魯の王から「近年、飢饉で税金が足りないが、どうしたものか」と尋ねられ、「どうして税を軽くして1割になさらないのですか」と答えた。孔子の理想とする周の税は1割だったが、魯の税は当時2割になっていた。王が「2割でも足りないのに、どうして1割にできよう」と不満を述べたのに対し、有若は答えていった。「民が十分足りていれば、君主が足りないということはありますまい。もし民が貧しければ、君主が富むということはありえません」(顔淵)。2割の税であっても孔子一門の目には高すぎた。社会保険料を含め5割近い日本の現状を見たら、言葉を失うに違いない。

道徳に基づき、重すぎる税や厳しすぎる罰を避け、暮らしや経済活動に介入しない政治を行えば、その国の人々は喜んでとどまるし、他国の人々も集まってくるだろう。孔子はある国の長官から政治のやり方を問われ、「近くの人々は喜び、遠くの人々は(それを聞いて慕って)やってくるように」(子路)と答えた。現代でも、自由で豊かな国には、国境を越えてでも多くの人が集まってくる。

理想の政治が個人の選択を尊重し、それに介入しないのは、単に経済を活発にし、人々を呼び寄せるためだけではない。それが倫理にかなうからでもある。

弟子の子貢が「一言だけで一生行っていけるということがありましょうか」と尋ねたところ、孔子は「まあ恕(思いやり)だね」と答え、その意味をこう付け加えた。「己の欲せざる所、人に施すことなかれ(自分の望まないことは人にしむけないことだ)」(衛霊公)

儒教のこの教えは、「人からしてほしいと望むことは、人にもそのとおりにせよ」というキリスト教の黄金律に対し、「白銀律」と呼ばれる。「自由主義の観点からは、何らかの行動を求める黄金律よりも、求めない白銀律のほうが優れている」という意見を耳にするが、それは正しくない。黄金律は白銀律と同じく、従うかどうかはあくまでも個人の自発的な判断に任されているからだ。また、何かをしないことは同時に、何かをすることでもある。たとえば、「約束を守らない」ことは「約束を破る」ことでもあるように。だから黄金律と白銀律を区別する意味はない。

個人の選択の尊重と裏表の関係にあるのは、選択は個人の責任だという厳しい考えだ。孔子はこう語っている。「人が成長する道筋は、山を作るようなものだ。あともう一かごの土を運べば完成しそうなのにやめてしまうとすれば、それは自分がやめたのだ。それはまた土地をならすようなものだ。一かごの土を地にまいてならしたとすれば、たった一かごといえど、それは自分が一歩進んだということだ」(子罕、齋藤孝訳)

また、弟子の冉求が「先生の道を(学ぶことを)うれしく思わないわけではありませんが、力が足りないのです」といったのに対し、孔子はこうたしなめた。「力の足りないものは(進めるだけは進んで)中途でやめることになるが、今お前は自分から見切りをつけている」(雍也)

自由主義は西洋特有の価値観であり、アジアの文化にはそぐわないなどと考える人が少なくない。これに対し哲学研究者のロデリック・ロング氏は初期儒教について調べたうえで、「この伝統のいくつかの側面を指摘することで、それ(自由主義)が単に西洋のものではないと示すことができる」と語っている。

<参考文献>
  • 金谷治訳注『論語』岩波文庫
  • 齋藤孝訳『論語』ちくま文庫
  • Long, Roderick T., Rituals of Freedom: Libertarian Themes in Early Confucianism, The Molinari Institute.

2024-10-12

民主主義と自由は違う

大統領が皇帝になれるなら、国民は良い大統領を期待できない。「これだけの権力を誰に託すべきか」と問うのではなく、「どの政治家にどれだけの権力を託すことができるのか」と問うべきだ。問題はどの政党が手綱を握るかではなく、国民が政府に鎖でつながれるかどうかだ。
The Mirage of Honest Government | Mises Institute [LINK]
今日、民主主義を君主制よりも高く評価するのが一般的だが、評価の尺度が自由である場合には疑わしい。経済的・政治的な自由は、選挙権から当然に生じるものではない。自由は私有財産の保護に関わるもので、国家の規模や権力とは反比例の関係にあると考えるべきだ。
Why Democracy Has Such Staying Power | Mises Institute [LINK]

民主主義を支持する人々は、市民は投票権があるから、何らかの形で支配者だと主張する。この論理に従えば、民主主義国では権利侵害は起こらない。市民から財産を盗むことはすべて同意されたものだからだ。市民には国家から独立して存在する権利があるから、これは誤りである。
Democracy Is Not the Same Thing as Freedom | Mises Institute [LINK]

民主主義での権力追求は近視眼的な行動をもたらす。議員は再選の可能性にとらわれ、短期の利益と有権者へのアピールを最大化しようとする。寄生虫のような政治家がケインズ経済学を好むのはそのためだろう。長期の視点と分別ある統治が犠牲になり、近視眼的な意思決定が続く。
Unmasking Democracy: A Moral Virtue or a Flawed Tool? | Mises Institute [LINK]

指導者が国を私的に所有し、その地位に長年とどまる安心感を抱いている場合、富を確実に収奪する供給源となるように、国の富を維持しようとする。民主的政府では、個人は将来の地位について保証がないため、ガチョウが金の卵を産まなくなる前に、できる限り収奪しようとする。
The Right Is Wrong to Pursue Term Limits | Mises Institute [LINK]

2024-10-11

岐路に立つウクライナ

西側諸国はウクライナが戦争に勝つことはないという冷厳な現実に直面している。ゼレンスキー大統領は戦前の国境までの領土奪還だけでなく、ドンバスとクリミアを含む2014年の国境までの全領土の奪還を勝利の境い目としている。西側にそのような幻想を抱く者はほとんどいない。
Ukraine at the Crossroads | The Libertarian Institute [LINK]
ウクライナは西側からの支援があっても、ロシアを破り、失地を武力で回復する見通しは立っていない。ウクライナ軍は崩壊する恐れがあり、そうなれば西側諸国から直接介入を求める圧力がかかるだろう。ロシア政府が核政策の変更を示唆しているのは、これを抑止するためである。
When will the war in Ukraine end? | Responsible Statecraft [LINK]

ウクライナに今必要なのは、戦争から脱し、可能な限り最善の未来を実現する交渉に移行するための、米国の支援である。「ウクライナが交渉のテーブルで有利になるように、戦場でウクライナを有利な立場にする」と米国が語っている時間はもうない。その時期は過ぎたのだ。
It's Time To Really Help Ukraine - Antiwar.com [LINK]

米国はウクライナとイスラエルに利害を持っているが、その利害はそれぞれの国の利害と同じではない。それにもかかわらず、バイデン政権は、米国の利害が相手国の利害と異なる場合、それをはっきり主張することができないようだ。両紛争の激化を受け身で見ているようだ。
Biden Is Sleepwalking Toward War in Ukraine and Middle East | Cato at Liberty Blog [LINK]

トランプ氏はもちろんハリス氏でさえ、ウクライナ戦争を激化させる気はないかもしれない。米国がわずかでも身を引けば、EUの介入を必要とする。とくにハンガリー、スロバキア、多少はイタリア、台頭してきた仏独の政治勢力など、一部の国は戦争への熱意が薄れる兆しがある。
Europe at odds with public on escalating war in Ukraine | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-10

危うい対イラン政策

イランは米国を攻撃したり、米国人を脅したりしたのか。していない。紛争激化の連鎖を引き起こしたのは、イスラエルによるイランへのミサイル攻撃だった。イスラエルとイランの戦争は米国とは何の関係もないばかりか、米国の関与拡大は、中東における国益を損ねている。
American Neocons Get Their Iran War as Congress Sleeps - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
イランはペゼシュキアン大統領の当選によって改革派が復活した。ところが米国はこのチャンスにイランとの交渉に応じて関係を改善するのではなく、核合意交渉の申し出を拒否し、敵対関係を続ける無益な政策に固執しているようだ。平和を遠ざけ、自国の利益を損なっている。
The U.S. Continues to Undermine Its Own Interests in Iran | The Libertarian Institute [LINK]

イランの核施設に対する攻撃は、大戦争と同国の核兵器開発の引き金になりかねない。米国はイスラエルの行動激化を支持せず、牽制すべきだ。イラン政府は核交渉の再開に関心があり、核問題を平和に解決するチャンスだ。核開発計画に対する軍事行動は逆効果であり、必要ない。
A Terrible Iran Question and Two Terrible Answers [LINK]

もしバイデン政権がイスラエルによる紛争激化を許せば、米イランの直接の軍事衝突につながる可能性は極めて高く、中東は大きく不安定化するだろう。米国の安全保障に及ぼす影響は計り知れない。ブッシュ政権が中東で追求した悲惨な軍事的冒険に匹敵する結果は想像に難くない。
Iran bombs Israel, but buck stops with Biden | Responsible Statecraft [LINK]

イスラエルのネタニヤフ首相は、イランが直接参戦してくるよう期待して、戦争をレバノンまで拡大するだろう。ヒズボラもイランも現段階ではイスラエルとの戦争を望んでいないが、イスラエルがレバノンやヒズボラと本格的な戦争を始めれば、イランは黙っていまい。
Assassination of Hamas leader in Iran puts new president in a trap | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-09

ケインズ主義のおとぎ話

ケインズの思想は中央銀行や政府機関の弁明書であり脚本である。金融業界や経済学者の思考にも浸透している。その核心は、経済を動かしているのは財と消費に対する需要であり、必要であれば「刺激」することができるというものだ。景気後退は消費と需要の不足の結果だという。
The Keynesian Multiplier Fairy Tale | Mises Institute [LINK]
ケインズ主義的な景気刺激策によって、政府が拡大した。景気悪化を財政赤字の拡大によって支えたことで、景気循環の変動性が高まった。量的緩和とゼロ金利によって人為的に支援されたゾンビ企業が生まれた。その結果、中長期では経済に大きな非効率が生じることになった。
Massive State Economic Intervention Has Led to This Point | Mises Institute [LINK]

経済は消費によって繁栄への道を切り開くことができると教える経済学者たちがいる。しかし、ケインズの奇跡は実現しない。石はパンにはならない。だがどんな議論も経験も、政府支出や信用拡大による救済を信じる人々のほとんど宗教的な熱狂を揺るがすことはできないだろう。
Stones into Bread: The Keynesian Miracle | Mises Institute [LINK]

ケインズ主義政策によって、政府は累進課税で直接収奪し、新たなマネーを生み出し、支出し、投資を指示し、消費に影響を及ぼす。政府は全権を掌握し、個人はなすすべもなく、くびきの下敷きにされる。これは完全に誤った理論を実行に移すために、支払うよう求められる代償だ。
Spotlight on Keynesian Economics | Mises Institute [LINK]

通貨供給量を拡大する経済的理由はない。お金は他の商品と同じく需要と供給のルールに従うが、ある重要な点で異なる。使ってもなくならないという点だ。リンゴを使う(消費する)となくなるが、お金を使っても使い尽くされることはない。使う前も後も、ドルはまったく同じだ。
Do We Need 3% Inflation? Economic Growth and Deflation | Mises Institute [LINK]