ラ・ナシオン誌
(2024年12月12日)
アルゼンチンのミレイ大統領がかつて影響を受け、今では「リベルタクレイジー(古典的)リベラル」と呼ぶハンス・ヘルマン・ホッペ氏とは何者か?
Quién es Hans-Hermann Hoppe, la exinspiración de Javier Milei a quien ahora tildó de “liberal libertarado”https://t.co/vJXpaWKGpY
— mdk (@ccionuomision) December 12, 2024
ホッペ氏は、ミレイ大統領に影響を与えたドイツの古典的自由主義者であり、無政府資本主義の哲学者である。同大統領の属するオーストリア学派のもう一人の指導者、マレー・ロスバード氏の親しい共同研究者であった。
ミレイ大統領は、ストリーミング番組でゴルド・ダン氏と行ったインタビューで自政権の要点を分析し、アルゼンチンの「デフレ」や原発「アトゥチャ3」建設の進捗状況など現在の問題に言及した。しかし、影響を受けた一人でありながら最近距離を置いているホッペ氏を厳しく批判した。
同大統領は対談中、古典的自由主義と無政府資本主義のドイツの経済哲学者ホッペ氏に言及した。ホッペ氏はミレイ氏の師匠だったが、2か月前、両者の間に意見の相違が生じた。75歳のホッペ氏が「財産自由協会」で講演した際、ミレイ大統領の政権運営を分析して批判を展開するとともに、同大統領の米政府への忠誠を疑問視したためだ。
ミレイ大統領は(ホッペ氏の)講演について次のように語った。「恥ずかしいことだった。彼は哲学についてよく知っていて、哲学的には優れた無政府資本主義者かもしれないが、政治と通貨理論に関しては愚か者だ。彼は(インフレは)中央銀行を閉鎖するだけの問題だと言ったが、それが最も簡単な改革だと言うこの人は、通貨問題が負債であることを理解していなかった。負債は90日以上も前のもので、セルジオ・マッサ氏(前経済相)は辞任する前にそれを1日分に減らした。つまり、マネタリーベース(資金供給量)の規模によって5倍に増加するリスクがあったということだ」
ミレイ氏は続けた。「彼らは、我々がリバタリアン・リベラルではなく、ホッペ氏のような「解放された」リベラルだと思っていた。彼の本が役に立たないと言っているわけではないが、経済について語るとなると、かなりひどい人だ」。そして彼を「愚か者」と呼び、「彼はアルゼンチンについて何も知らないことを認めた」と述べた。「彼はまるで私が公権力を握っているかのように、私を批判する分析を徹底的に行った。滑稽だ」
一方、ホッペ氏は、まさに古典的自由主義と無政府資本主義の分野でミレイ氏に影響を与えた人物の一人である。ネバダ大学ラスベガス校の経済学教授であり、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス研究所の特別研究員でもある。ザールブリュッケンのザールラント大学とフランクフルトのゲーテ大学で社会学、政治学、経済学を学び、1974年にゲーテ大学で哲学の博士号を取得した。
経済と政治の分析に関する著書を多数出版しており、その中には『君主制、民主主義、自然秩序』(2021年)、『私有財産の経済学と倫理学』(1993年)、『社会主義と資本主義の理論』(1988年)、『リバタリアニズムを正しく理解する』(2019年)などがある。
オーストリア学派に属するミレイ氏のもう一人の指導的人物、マレー・ロスバード氏の優秀な弟子でもある。ミレイ大統領はロスバード氏を非常に尊敬しており、飼い犬の一匹にロスバード氏の名をつけている。ホッペ氏は1986年に米国でこの正統派経済学者に師事し始め、1995年にロスバード氏が死去するまで親しい協力者であり続けた。ホッペ氏は、ニューヨーカー誌(訳注・ニューヨーク大学出版部の誤りか)の『自由の倫理学』の序文も執筆している。
ホッペ氏のミレイ氏評
講演中、ホッペ氏はこう語った。「ミレイ氏は、国家をギャング組織とみなす自由主義者で無政府資本主義者であると自称した。税金を窃盗とみなし、それをゼロにしたい。それが彼の公言した綱領だ。彼が影響を受けた源は、第一に、私の師であり指導者であるロスバード氏、そして私自身である。だから、私からも影響を受けたと思われるこの男について、私はコメントする権利があると感じている」
「私は明らかに他の人(政治家)よりもミレイ氏が好きだ。しかし、彼が自身の哲学的信念だと主張する無政府資本主義の観点から見ると、彼は大失敗だ」とホッペ氏は説明し、さらにこう付け加えた。「彼を英雄に仕立て上げようとするリバタリアン集団には同意しない。彼は英雄ではない」
ホッペ氏はとりわけ、ミレイ大統領の米国との連携を批判した。「ミレイ氏と、世界の悪に責任を負うすべての機関との間には、一種の恋愛関係がある。彼は、最も帝国主義的な米政府を愛し、同調している」
(次を全訳)
Who Is Hans-Hermann Hoppe, the Former Inspiration of Javier Milei Whom He Has Now Called a 'Libertacrazy (Classic) Liberal' - LewRockwell [LINK]
【コメント】この記事を読む限り、ミレイ氏のホッペ氏批判は意味不明だ。インフレを鎮めるには中央銀行の廃止が最もシンプルな方法だし、それはミレイ大統領自身、就任前に主張していたことだ。もし大統領が「公権力を握って」いないとしたら、一体誰が握っているのだろうか。ミレイ氏を支援したアルゼンチンのユダヤ財閥だろうか。批判された途端、かつて尊敬していたはずの人物を愚か者呼ばわりするとは、立派な態度とはいえない。そして帝国主義的な米政府への同調。ホッペ氏のいうとおり、ミレイ氏は英雄に仕立て上げるような人物ではない。個別の政策を冷静に評価すべきだ。