2022-05-31

銃乱射事件でしくじった警察に、銃規制派はもっと権力を与えるつもり

ミーゼス研究所編集主任、ライアン・マクメイケン
(2022年5月26日)

最初はコロンバイン高校(コロラド州)、次にパークランドの高校(フロリダ州)。そして今回、ロブ小学校(テキサス州)でも、犯人が校内で子供たちと立てこもっている間、警察官が学校の外で待機していたことがわかった。

よくあることだが、警察の本当の関心事は「警官の安全」であり、一般市民の安全ではない。今回のテキサス州ユバルディの小学校での銃乱射事件でもそうだったようだ。

警察が責任を問われると期待しない方がいい。「保護と奉仕」というマーケティング上のうたい文句にもかかわらず、警察には実際には一般市民を危険から守る義務はないというのが、現在、米連邦裁判所で確立されている法原則なのだ。

米最高裁は二つの事件において、警察機関は市民を保護する義務はないとの判決を下している。つまり、たとえ市民の生命や財産が明らかに脅かされている場合でも、介入するタイミングを選ぶことは、警察の権利として十分に認められているのである。

警察を信頼するのは愚かな行為だと、警察自身が明らかにしているにもかかわらず、銃規制論者は、法を守る市民の武装解除を望んでいる。銃規制の強化とは、強制力・防衛力を警察の手に集中させることだ。つまり銃規制が行われると、警察は相対的に強力になり、法を守る市民は相対的に無力になる。

銃規制は、法を守らない市民(犯罪者)の手に暴力を集中させる。その結果、一般市民は、凶暴な犯罪者から身を守るために警察にますます頼らざるをえなくなる。

銃規制を国民に受け入れさせるには、「銃は必要ない」と納得させることが重要だ。しかし現実はどうだろう。警官は、マリファナを吸ったと疑って、住民に長時間嫌がらせをする。小さな老婦人に「泥棒」と言って腕を折る。「命の危険を感じたから」という理由で、何の警告もなく居間で女性を射殺する。

警官は実際に武装した狂人に立ち向かうとなると、「警官の安全」が確保されるまで、外で待っているだけだ。これらの事実を考慮すると、凶暴な重罪犯を止めることにまったく興味のない連中に自衛の権利を明け渡すのは、実に非合理的だと言わざるをえない。

もちろん銃規制論者は、そうは考えない。銃規制の法律さえあれば、魔法のように銃がなくなると信じているようだ。しかし現実の世界では、銃規制は強制力を必要とする。では、その執行を担うのは誰なのか。警察だ。

銃規制論者は今回の警察の無能ぶりを見て、「そうだ、もっと銃規制を警察に任せよう」と考えたようだ。この論理は支離滅裂だが、多くの人が説得力を感じているのは間違いない。

(次より抄訳)
Police Botched the Uvalde Standoff. Now Gun Controllers Want to Give Police More Power. | Mises Wire [LINK]

自由貿易擁護論(最新版)

ケイトー研究所
(2022年5月19日)

自由貿易は長い間、米国で国民と超党派の政治的支持を得てきた。しかし最近、この政治的コンセンサスが崩れてきている。多国間貿易への関与は、国家安全保障や、グローバル化から取り残された人々・地域に対する懸念など、内向きなイデオロギーの優先事項に年々従属させられている。

自由貿易への新たな懐疑論は見当違いだ。自由貿易に対する経済的、政治的、道徳的な擁護論は、アダム・スミスが『国富論』を著した250年前と変わらず、今日でも強い説得力を持つ。

貿易は米国の消費者、生産者、労働者に測り知れない利益をもたらしてきた。米経済が高度な製造業や技能集約的なサービス業でその強みを発揮することを可能にし、革新をもたらし生活水準を向上させる「創造的破壊」を加速させる。

一般的な考え方とは異なり、輸入は米経済の足を引っ張るものでも、海外で商品やサービスを販売するために支払う代償でもない。実際、輸入の増加は経済成長率の上昇と一致している。

実際、新しい調査によると、米国の製造業とサービス業のうち、貿易を行っている企業はわずか6%であるものの、これらの企業は経済全体の雇用の半分を占め、2008年以降に創出された新規雇用では60%を占めた。

iPhone(アイフォン)はまさにグローバル製品だ。米カリフォルニア州クパチーノで設計され、米国を含む多数の国で製造された部品を搭載し、中国やベトナムなど低コストの組立国で組み立てられ、出荷される。

米国の公式な輸入統計では、中国で組み立てられたiPhoneは全額が中国産として扱われるが、実際にはiPhoneの製造コストと最終販売額の大部分を米国企業が稼いでいる。

貿易が米国の製造業と労働者をダメにしたというよくある主張は、ひどく誇張されている。米国の製造業は依然として世界のリーダーだし、製造業の雇用と経済シェアが減少する脱工業化現象は、中国を含むすべての工業国で起きている。

製造業が経済に占める割合の低下は、しばしば輸入のせいにされる。しかし、これは貿易黒字国や積極的な産業政策をとっている国を含め、ほとんどの先進国に共通する長期の傾向である。

製造業の雇用が国の雇用全体に占める割合が減少していることにも、同じことが言える。この傾向は、10年前に中国でさえも見られるようになった。

(次より抄訳)
The (Updated) Case for Free Trade | Cato Institute [LINK]

2022-05-30

ワシントン・ポスト紙の驚くべき変化――ウクライナ前線部隊の悲惨な状況と士気の崩壊を認める

ゼロヘッジ
(2022年5月28日)

ワシントン・ポスト紙は初めて、米国が支援するウクライナ軍の状況について悲惨で否定的な評価を下した。「ウクライナの指導者はロシアとの戦争に絶対負けないというイメージを抱いている。しかし指揮官は現実的な戦争像を語る。劣勢の志願兵が軍上層部に見捨てられ、前線で死に直面しているという」

ワシントン・ポストは、当初から親ウクライナ、親西欧のシナリオに基づくプロパガンダが殺到したと遅ればせながら認める。「ロシアの戦車や陣地を攻撃する動画が毎日ソーシャルメディアに投稿される。アーティストは愛国的なポスター、広告版、Tシャツを作る。ロシア軍艦沈没の記念切手まで発売された」

記事では、訓練不足で指揮も装備も不十分な、大半が志願兵の東部のゴロツキ部隊が、ロシア軍に日に日に包囲される現実について述べる。「戦争が始まって3カ月、120人いたこの中隊は、死傷者や脱走兵のために54人にまで減っている」と、ある大隊について書いている。

記事の情報源は、情報漏洩で軍法会議にかけられるという脅しにもかかわらず、語っている。ルハンスク州の地方戦管理局の局長ハイダイ氏は「戦争は人々を崩壊させる」と述べ、ウクライナ当局がロシアの侵攻を予想していなかったため、多くの志願兵が適切な訓練を受けていないと認めた。

記事は、ネット上に広く出回る動画に言及する。小隊規模のグループが、武器、弾薬、食料、適切な指揮系統の支援がないために、戦えないと宣言している。ある志願兵が「俺たちは確実に死地に送られる」と用意した台本を読み上げ、同様の動画を他の大隊でも撮影したと付け加えた。「俺たちだけじゃない」

ワシントン・ポストの記事には、それまで油田技術者やセールスマン、農民のような普通の仕事をしていた男性らの志願兵集団が、南部や東部の最前線に送られたと書く。最初はリビウのような、さほど激戦区ではない地域で簡単な警備に回されると思っていたのに、である。

さらにワシントン・ポストは、ラプコという志願兵の悲惨な証言を記す。「多くの人が砲弾ショック(戦争での緊張による精神異常)になった。数えきれない」とラプコ氏は言った。「ウクライナのテレビでは、犠牲者はゼロと報道されている」とラプコ氏。「真実は何もない」

「ラプコ志願兵とその部下たちは、上官に対する不満と幻滅を募らせている」と記事は伝える。「ラプコ氏の大隊長は、20人の兵士を別の前線に送るよう要求した。そうなれば部下を交代させられなくなる。ラプコ氏は命令を拒否した」

(次より抄訳)
In Stunning Shift, WaPo Admits Catastrophic-Conditions, Collapsing-Morale Of Ukraine Front-Line Forces | ZeroHedge [LINK]

政府支出が真の税金

エコノミスト、フランク・ショスタック
(2022年5月26日)

財政赤字を目標として強調する政策は、赤字を増やすにせよ、完全になくすにせよ、間違っている。経済にとって重要なのは、財政赤字の大きさではなく、政府の支出(政府が自らの活動のために流用する資源)の大きさなのである。

政府は富を生み出さない。むしろ政府が支出すればするほど、富を生み出す者から多くの資源を奪わなければならない。これは逆に、富を生み出す営みを損なう。つまり課税の実質的な大きさを示すのは政府の支出額である。

例えば、政府が3兆ドルの支出を計画し、2兆ドルの税金でその支出をまかなうとすると、1兆ドルの不足、つまり赤字ということになる。政府は不足を補うために、借り入れ、紙幣の印刷、増税など富の創造者から資源を得る他の様々な手段を用いる。

重要なのは、政府の支出が3兆ドルあることであって、赤字が1兆ドルあることではない。例えば、政府が3兆ドルへの増税を行い、その結果財政が均衡しても、富の創造者から3兆ドルの資源を得ていることに変わりがあるだろうか。

政府支出が増えると、富を創造する活動から富を創造しない活動へと、富の移転が増え、経済を貧しくする。したがって総需要を高めようとして政府支出を増やせば、富を創造する営みと経済全体の両方に悪い影響を及ぼす。

税金によって、生産者は不要な政府事業と引き換えに、富の提供を強要される。それは明らかに生産者の幸福を損なう。政府の事業が増えれば増えるほど、富の生産者からより多くの富が奪われる。したがって、民間部門から取り上げられる富の規模は、政府の活動の大きさによって決まるといえる。

政府は富の消費者であって生産者ではないため、富を蓄えることに貢献できない。もし政府の活動が富を生み出せるなら、自己資金でまかなえるはずで、他の富の創造者から支援を必要としないはずだ。もしそうなら、税金は必要ないだろう。

財政が黒字でも、自動的に減税の余地は生じない。政府の支出を抑える、つまりピラミッド(予算の無駄遣い)の建設数を減らすことによってのみ、実質減税が可能となる。政府支出が増加し続ければ、実質減税は不可能であり、逆に富の生産者が自由に使える富の蓄えの割合が、減少することになる。

政府は富を生み出す存在ではなく、その財源を民間企業に頼っている。つまり政府が支出すればするほど、富を生み出す民間部門が利用できる、富の蓄えは少なくなる。これは明らかに富の創造を妨げ、経済全体を貧しくする。

(次より抄訳)
Government Spending Is the Real Tax; Deficits Are a Sideshow | Mises Wire [LINK]

2022-05-29

グレート・リセットの裏側、あるいは古典的自由主義の破壊の仕方

元ニューヨーク大学教授、マイケル・レクテンワルド
(2022年5月28日)

フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』(1992年)で述べた「歴史の終わり」とは、古典的自由主義や自由放任経済が共産主義やファシズムに勝利したとか、社会主義が終わりを告げたとかいう意味ではない。フクヤマにとって歴史の終着点とは、つねに民主社会主義、あるいは社会民主主義だった。

「歴史の終わり」はヘーゲル的な装いを凝らしてはいても、社会主義・共産主義の敗北を意味するのではなく、むしろ古典的自由主義の敗北を意味する。大きな政府と大資本が最後に必ず行き着く、デタント(協調路線)に到達したのだ。グレート・リセットとは、この政府と資本の協調路線の完成形である。

エリートによる市場経済と共和制民主主義の破壊は、『歴史の終わり』の数十年前から進行していた。スクーセン『世界の歴史をカネで動かす男たち』によれば、大銀行、大企業、メディア、教育機関、米政府内のエリートは、少なくとも1930年代初めから、米国を集団主義のイメージで作り変えようとした。

社会主義の推進という目標が際立ったのは、少なくとも1930年代初めから、高等教育機関でマルクス主義、 新マルクス主義、ポストマルクス主義の集団主義思想がすばやく浸透・流通したことだ。これはボトムアップの草の根プロジェクトではなく、権力と権威を持つエリートたちによる内部犯行だった。

グレート・リセットを理解するためには、この企てが、古典的自由主義(自由市場、言論の自由、自由民主主義)、米国の立憲主義、国家主権を破壊しようとする、数世紀にわたり続いてきた試みの完成を意味することを認識しなければならない。

グレート・リセットは、自由な市場経済(世界経済フォーラムの創設者クラウス・シュワブらは「新自由主義」と同一視する)の弱点に対する解毒剤として売り込まれているにもかかわらず、すでに蔓延する経済介入を強化するものにすぎない。

グレート・リセットは、経済介入がうまくいかない場合、米主導の軍事力を使用する。このことは、西側諸国がウクライナをロシアの攻撃から守るために武装し、資金を供給していることを一部説明できる。

グレート・リセットのグローバルなネオ・マルクス主義経済学や、国際的な経済ファシズムが新しくないと言いたいのではない。それは新しいし、それを実現するための手段も新しい。しかし、グレート・リセットは虚無から生まれたのではない。それは何十年にもわたるエリートの思考と行動の集大成なのだ。

(次より抄訳)
The Backstory of the Great Reset, or How to Destroy Classical Liberalism | Mises Wire [LINK]

#18 ロスチャイルド伝説の真相


ネットなどでよく話題になる陰謀論には、世界を支配するという謎めいた集団や一族が登場します。そのなかでも圧倒的な「人気」を誇るのは、ロスチャイルド家でしょう。しかし、ロスチャイルドの超人的な能力を示すさまざまなエピソードは、本当なのでしょうか。

<参考資料>
  • 野口英明ほか『世界金融 本当の正体』(サイゾー) [LINK]

2022-05-28

何も知らない米国市民を対象にCIAが行った、極秘のLSD実験

10年にわたるMKウルトラ計画は、何も知らない被験者をマインドコントロールの実験に使った

RT
(2022年5月24日)

第二次世界大戦後、人の心をコントロールすることは、諜報機関にとって最重要課題の一つとなった。果てしないスパイ合戦のなかで、尋問で真実を語らせる、あるいは被験者の人格を消し去り、別の人格、おそらくはコントロールされた人格を押し付ける能力は、諜報機関にとって非常に魅力的だった。

CIAの最重要なマインドコントロール研究計画は、シドニー・ゴットリーブ博士が率いたMKウルトラである。1953年に開始され、10年後に中止されたこの計画では、放射線、電気ショック、心理学・精神医学の道具、不快物質、準軍事装置などを使って人間の行動制御を実験していた。

MKウルトラとLSDの関係は、今では広く知られる。LSDは1938年にスイスの化学者アルバート・ホフマンが、バーゼルのサンド研究所で創製した幻覚剤だ。1943年、ホフマンは偶然自らLSDを服用し、効果の強さを知る。サンド研は4年後に「デリシッド」の名で発売し、1948年には米国にも入ってきた。

1953年11月、ゴットリーブらCIA職員と米国の生物学研究所「キャンプ・ディートリック」の科学者が、メリーランド州の山小屋に集まり、会議を開いた。その中には、空中生物学の専門家フランク・オルソン博士も含まれていた。

あるとき、CIAのメンバーは何も知らない被験者に実験を行うことを決め、ゴットリーブの副官ロバート・ラッシュブルックが、夕食後に出されたコアントロー・リキュールの瓶にLSDを入れた。オルソンはそれを味わった。オルソンが帰宅後、家族は彼が落ち込んでいるのに気づいた。

2日後、オルソンは上司ヴィンセント・ルウェットに、体調不良と体験した内容を訴えた。ルウェットはラッシュブルックに連絡し、オルソンをニューヨークに連れて行き、CIAに近い、LSDに詳しい医師に診せた。オルソンは気分が悪くなり、家族と感謝祭を過ごすために飛行機で帰郷することさえ拒んだ。

後日ラッシュブルックは、最後の夕食の際、オルソンは「実験前とほぼ同じ顔をしていた」と主張している。午前2時半、「ガラスが割れた」大きな音で目が覚め、10階の部屋の窓からオルソンが転落死しているのを見つけたという。しかしオルソンの家族は自殺とは考えず、殺されたと主張した。

こうした出来事にもかかわらず、何も知らない被験者を対象とした実験は続けられた。CIAの職員はバーで候補者に会い、「隠れ家」に連れて行き、飲食物を通して薬を投与し、反応を待った。被験者はその後何日も体調を崩すこともあった。

MKウルトラは1963年に中止された。その10年後、ゴットリーブはMKウルトラに関する文書のほとんどを破棄してしまったので、その本当の規模はわからないままだ。MKウルトラは冷戦時代の亡霊にすぎないが、新兵器やそれに対抗する方法の研究は、今なお続いている。

(次より抄訳)
The story of how the CIA conducted secret LSD experiments on unwitting US citizens — RT World News [LINK]

2022-05-25

ウクライナ戦争を終わらせる方法

ソ連崩壊後、欧州安全保障協力機構(OSCE)はウクライナのロシア系住民の多さが問題になることを知っていた

国際法学者、ジョン・キグリー
(2022年5月9日)

ロシアが、ウクライナ東部ドンバス地方(ルガンスク州とドネツク州)に住むロシア系住民の地位向上に成功したといえる方法を見つけられれば、ウクライナからの撤退は早まる可能性がある。ウクライナ東部のロシア系住民が初めて国際的に注目されたのは、1994年、ドンバスではなく、黒海のクリミア半島でだった。

クリミアはウクライナの統治下にありながら、住民の大多数がロシア人で、ウクライナの一部である理由が見当たらなかった。19世紀以降、クリミアはロシア領だったが、1954年、ソ連共産党のフルシチョフ第一書記が、歴史学者も首をかしげる理由で、ソ連邦ロシアからソ連邦ウクライナに変更したのだ。

ドンバス地方のロシア系住民は、ウクライナからの分離よりも自治を求めた。2014年、独仏米の仲介により、ロシアとウクライナの間で、ウクライナがドンバスの自治を正式に認める合意(ミンスク合意)が成立した。ウクライナのゼレンスキー大統領は、この合意を実行すると言って就任した。

今、ウクライナがミンスク合意の実行に近いことをすれば、ロシアは、侵攻の目的は達成されたと言うことができる。ウクライナがクリミアの地位について柔軟に構えれば、ロシアはどんな取引も飲みやすくなるだろう。西側諸国がクリミアの返還を求める圧力をやめれば、ロシアは安堵することだろう。

ウクライナにとっては、政治的な現実が見えてくる。ロシアとの戦争がどう転んでも、ウクライナはクリミアを取り戻せそうにない。ウクライナ人には、ロシア人のようなクリミアに対する愛着はない。長期の安定を考えると、クリミアはロシアの統治下にあるほうがいいかもしれない。

ウクライナがドンバスの自治を拡大するのは難しくないだろう。ロシア軍の攻撃は、ドンバスのロシア系住民にウクライナを受け入れるよう促したようだ。彼らは以前より自治を強く要求しないかもしれない。ウクライナがドンバスの自治について新たな誓約を行えば、ロシア政府は勝利と見なす可能性がある。

ウクライナでの戦争を終わらせる交渉を再開する機は熟したようだ。毎日ウクライナにもたらされている惨状を見れば、その動機があることは明らかだ。ロシアでは政府上層部がプーチン大統領に対し、この戦争は割に合わないと言っているかもしれない。

(次より抄訳)
I led talks on Donbas and Crimea in the 90s. Here's how the war should end. - Responsible Statecraft [LINK]

2022-05-24

米軍無人機攻撃の犠牲となった民間人、自分の脚と命を救うため募金サイト立ち上げ

民間人犠牲者補償制度の不備で、米軍はイエメンの無人攻撃生存者に支払いを行わず

ジャーナリスト、ニック・タース
(2022年5月19日)

2018年3月29日の無人機攻撃で、イエメン政府の公務員アデル・アル・マンタリは左半身に重度の火傷を負い、股関節を骨折。左手の腱、神経、血管に深刻な損傷を負った。歩くことも働くこともできなくなり、治療のために借金を抱えた。8歳と14歳だった娘は、父の世話をするために学校を退学した。

AP通信などの調査によると、2018年の攻撃の犠牲者は、米国防総省の主張するアルカイダの「テロリスト」 ではなく、民間人だった。3月には二人の上院議員が、アル・マンタリ氏に障害を負わせた攻撃のほか、イエメンでの他の11の米国の攻撃について、新たな調査を開始するよう国防総省に要請した。

犠牲者の家族、ジャーナリスト、人道支援団体によれば、リビア、ソマリア、シリア、イエメンなどで、米軍は民間人の犠牲者をいつも過小評価している。長年にわたり、ジャーナリストやNGOによる暴露は、国防総省に攻撃を再調査させ、限られたケースにせよ民間人の殺害を認めさせるのに必要だった。

昨年ニューヨーク・タイムズ紙の調査により、アフガニスタンのテロリストに対する「正義の一撃」が実際には10人の民間人を殺害し、うち7人が子供だったことを国防総省は認めざるをえなかった。イラクとシリアでの空爆では、誤った情報と不正確な照準により、何千人もの罪のない人々を死に至らしめた。

米国は何十年もの間、行き当たりばったりで自尊心を傷つけるソラティア制度に依存してきた。ソラティアとは、米軍の作戦中に殺害されたり負傷したりした民間人に対し、非を認めるのではなく、同情の表現として支払われる見舞金のことである。

ベトナム戦争では大人1人の死に対する支払いは33ドルで、子供はその半分だった。アフガニスタンでは民間人1人の死亡に対し124〜1万5000ドルだった。国防総省は、米国や同盟国の軍事行動による死傷に対する支払いに年300万ドルの専用基金を設けているが、支払いは年々まれになっている。

オースティン米国防長官は最近、過去の民間人被害の申し立ては再検討しないと声高に主張している。先月、国防総省は過去の民間人被害に関する申し立てを再検討する予定があるかとの下院議員の質問に対し、オースティン長官は「現時点では、事件を再捜査するつもりはない」と答えた。

米国の無人機攻撃の合言葉は一貫して「説明責任なし、謝罪なし、補償なし」であり、根本から見直しが必要だ。それまで被害者は、募金サイトや見知らぬ人の親切に頼って生きていかなければならない。国防総省は説明責任を果たすと豪語しながら、機密と免責を隠れみのにするのだから。

(次より抄訳)
Yemen Drone Strike Survivor Uses GoFundMe for Medical Care [LINK]

母なるロシアよ、どこへ行く?

政治評論家、パトリック・ブキャナン
(2022年5月20日)

ロシアは米国の2倍の領土を持つ地球最大の国で、世界最大の核兵器を持ち、戦術核兵器では米国や中国をしのぐ。広大な国土を持ち、石炭、石油、ガスなどの鉱物が豊富に埋蔵されている。しかしロシアには明白な弱点もあり、もろさを増している。

プーチン露大統領が北極圏で戦力を目覚ましく増強する一方で、バルト海はフィンランドとスウェーデンが西側同盟に加入したことで、NATOの湖になりつつある。サンクトペテルブルクから大西洋に出航するロシアの軍艦は、現在または将来のNATO加盟国11カ国の沿岸防衛線を横断しなければならない。

米国の偉大な好敵手だった冷戦時代から、さまざまな意味で縮小したロシアが答えなければならない問いに、「Quo Vadis?(どこへ行く?)」がある。母なるロシアは、これからどこへ行くのだろうか。

多くのロシア民族主義者は、冷戦と冷戦後の敗北を恨み、今日の米国の敵対勢力である大国、習近平の中国と同盟することを政権に求めている。これは第二次冷戦への道だが、それはロシアの国家と国民に何か恩恵をもたらすのだろうか。

ロシアと中国の同盟では、どちらが上級パートナーになるかは疑いようがない。中国の人口は14億人で、ロシアの10倍だ。ウラル山脈より東のシベリアや極東では、中国の人口はロシアの50倍から100倍である。ロシアの資源をいつか支配したいと切望しているのは、米国ではない。

ロシアの未来のためには、第二次冷戦よりも米露のデタント(緊張緩和)はどうだろうか。冷戦の最も激しい時期に、アイゼンハワー、ニクソン、レーガンといった米大統領は、ロシアとの対立を避けるために、ロシアとの間に共通の立場を見出そうとした。

アイゼンハワーは1959年、ハンガリー動乱を弾圧したフルシチョフを12日間の米国訪問に招いた。ニクソンは、1968年の「プラハの春」をワルシャワ条約機構に潰させたブレジネフとデタントを開始した。レーガンとゴルバチョフは、1987年の中距離核戦力条約で全種類の核兵器の廃棄を交渉した。

米欧の指導者は、ウクライナを侵攻したプーチンに敵意を抱いたから、ロシアと再び一緒にはやれないかもしれない。しかしロシアを孤立させ、西から追い出せば、ロシアの行き先は東、つまり中国しかない。

米国は230年間、一度もロシアと戦争をしたことがない。ロマノフ時代もスターリン時代もそうだったし、冷戦時代の共産主義者ともプーチン主義者とも戦争はしなかった。米国の死活的な利益とは、この伝統を維持することである。

(次より抄訳)
Quo Vadis, Mother Russia? - Antiwar.com Original [LINK]

2022-05-23

なぜこれが降伏でなく避難と呼ばれるのか、誰か説明してくれないか?

英ジャーナリスト、ピーター・ヒッチンス
(2022年5月22日)

マークス&スペンサー百貨店で「チキン・キーウ」なるものを売っているのを発見し、大笑いしてしまった。これは以前の「チキン・キエフ」と同じで、プロパガンダが加えられているだけらしい。ビーガンのために、実際のチキンが入っていない「ノー・チキン・キーウ」というのもあるそうだ。

先日の夜、オックスフォード大学の著名な学者に、天使のように美しく、聖人のように完璧なウクライナ人が2014年にクリミアへの水の供給を遮断したと教えて、ショックを与えてしまった。野蛮な行為は当然ショックだが、この高学歴の人が、この重要な事実を知らなかったことのほうがはるかにショックだ。

教育、政治、報道の分野で、ウクライナ民族主義の人種差別的ルーツ、凶悪なステパン・バンデラ(今はウクライナの国民的英雄)の経歴、ウクライナ政府のロシア語に対する差別について知る者はほとんどいない。もしカナダがフランス語圏の人々を同じように扱ったら、国際的な怒りが沸き起こることだろう。

最悪なのは、ゼレンスキー・ウクライナ大統領(私見では立派な人物)がロシアとの和平を掲げて当選した事実が知られていないことだ。しかしゼレンスキー氏が約束を果たそうとすると、自国の軍隊の一部がそれを妨害した。大統領に公然と楯突き、恥をかかせたのである。

同時に、ゼレンスキー氏の政敵(ウクライナに間違いなく存在するネオナチを含む)は街頭に繰り出し、(ロシアとの)いかなる種類の取引も非難した。ゼレンスキー大統領は崩れ落ちた。そして戦争が始まった。

今の戦争における最初の暴力行為は、実は2014年にウクライナの合法的な政府を転覆させた、欧米に支援された暴動である。これがすべての恐怖の真の始まりだった。それはプーチンの愚かで残忍な侵略の言い訳にはならないが、説明するのに役立つ。

先週、マリウポリ製鉄所のウクライナ人守備隊(その多くが実はSS=ナチス親衛隊=の紋章を誇らしげに公式の制服に付けたアゾフ大隊のネオナチ)が降伏した際、英国における一方的な世論は頂点に達した。メディアは骨を折って、ネオナチに言及せず、「降伏」という言葉も使わないようにしたのだ。

マリウポリの守備隊は、降伏ではなく、ロシア領に「避難」させられたという。写真には、武装を解かれ、ロシア兵から身体検査を受ける姿が写っていた。私たちは紛争に対する偏った見方にとらわれ、守備隊が降伏したことさえ認められなかった。かくも明白な現実を受け入れないとは、狂気の沙汰だ。

ウクライナで問題を起こし、ロシアを戦闘に駆り立てる米国の政策に隷属することで、英国にどんな利益があるのか理解できない。「チキン・キーウ」やウォッカを味わいながら、誰かが説明してくれるかもしれない。しかし議論をするには、まずこの議論には二つの側面があることを認めなければなるまい。

(次より抄訳)
PETER HITCHENS: Can anyone explain to me why this was called evacuation and not surrender? | Daily Mail Online [LINK]

パレスチナ系米国人記者殺害、バイデン政権の対応は再発を助長

イスラエルが自国兵士の行動を公平に調査する可能性は小さい

ジャーナリスト、ロバート・インラケシュ
(2022年5月22日)

パレスチナ系米国人ジャーナリスト、シリン・アブアクラ氏の死は、海外でのジャーナリスト保護に対する米政府の取り組みに転機をもたらすはずだった。しかし同盟国(イスラエル)に責任があるとすれば、問題である。

アブアクラ氏殺害に対するイスラエルの調査が行われるかどうかさえ疑問視されている現状では、イスラエルが公正な調査を行うことを信頼できるという米政府の主張は、ますます信用できないものに思える。実際、イスラエルの過去の行動は、正反対であることを示している。

イスラエルが、「報道」と書かれたベストを着てはっきり見分けのつくジャーナリストを射殺したのは、2018年4月、ガザ地区での非暴力の大規模デモ中に狙撃手に殺害された、30歳のヤセル・ムルタジャ氏以来だ。

「ムルタジャ氏は民間人で、イスラエルとの境界のガザ地区フェンスでのデモを撮影中、はっきりした記者証をつけていたジャーナリストである。平和的に抗議する民間人を記録するため、そこにいた」。ノルウェー難民評議会はこう述べており、その見解は後の国連の人権報告書にも反映されている。

イスラエル当局は、ムルタジャ氏を殺害した自国兵士を捜査する代わりに、被害者がイスラエル兵士の頭上でドローンを操作していたと主張し始め、この若いジャーナリストをテロリストと決めつけようとした。

イスラエルはムルタジャ氏殺害について兵士を起訴しなかっただけでなく、2018年から19年にかけての「帰還大行進」デモの際、他の2人のジャーナリストを含む300人以上のパレスチナ人を殺害したことについて、1人の兵士も起訴されなかった。

2016年、ヨルダン川西岸の都市アルハリルで、イスラエル兵のエロル・アザリアがパレスチナ人男性を殺害する事件が起きた。殺害の動画が出回り、アザリアは2018年に18カ月の実刑判決を受けたが、後に4カ月に短縮された。イスラエル兵がパレスチナ人殺害で実刑判決を受けたのは、これが最後だ。

金曜日(5月20日)のアブアクラ氏の葬儀では、イスラエル軍が喪主や列席者を攻撃し、後にパレスチナ人から石や瓶を投げつけられたと主張した。その後、葬儀の映像に対し警察による加工や編集が行われたと指摘されている。

イスラエルがアブアクラ氏殺害について独自調査を行ったとしても、公平な結果が得られる可能性は低い。イスラエル兵はたとえ有罪とされても、法の及ぶ最大限まで訴追されることはないだろう。人権団体ベツレムは、イスラエル国防軍や警察への告発を無駄な努力と考え、もはや行っていないほどだ。

バイデン米政権はアブアクラ氏殺害で国際的な調査を求めず、また自らも調査を開始しないことで、イスラエルに対し、パレスチナ占領地での米国人ジャーナリスト殺害に関与した者に説明責任はないという明白なメッセージを送っている。

(次より抄訳)
Biden’s response to the killing of Palestinian-American journalist encourages more of the same — RT World News [LINK]

2022-05-22

#17 TPPが自由貿易という嘘


TPP(環太平洋経済連携協定)は政府やマスコミによって、「巨大な自由貿易圏」だと宣伝されます。一方で、TPPに反対する人々からは「自由貿易で日本の農業は壊滅する」などと批判されます。けれども、そもそもTPPって本当に自由貿易なのでしょうか。

<参考資料>
  • 木村貴『反資本主義が日本を滅ぼす』(コスミック出版) [LINK]

ロシア・ウクライナ戦争——煽動政治家が自国の自由を破壊する新たな機会

ライター、ホセ・ニーニョ
(2022年05月14日)

政治家は戦時を徹底して楽しむ。好戦的な時期は、権力を欲する政治家たちが、堕落した政治的妄想にふけるときだ。ロシア・ウクライナ戦争も例外ではない。米欧諸国の政治家たちはこの戦争を機に、国内で市民の自由を弾圧している。

欧州連合(EU)はすでにRTやスプートニクといったロシア国営メディアを、偽情報の流布を理由に禁止している。言論の自由を強く保護する米国では、表現の自由に対する攻撃は企業的な色彩を帯びる。グーグルなど大手ハイテク企業は、ロシアから資金提供を受けたチャンネルを積極的にブロックしている。

NATO加盟国のチェコやスロバキアは、ロシアのウクライナ侵攻を支持すると解釈される行動を犯罪として取り締まった。ラトビアでは、ロシア支持を表明する個人を市民が通報できる警察ホットラインを設置した。ドイツのいくつかの州は、ロシアの軍事行動を意味するZマークを表示した個人を起訴した。

「親ロシア」の定義は、米欧のウクライナ戦争関与に疑問を投げかける反戦活動家や不介入主義者を攻撃するまで拡大される恐れがある。国際関係学者ミアシャイマーは、NATO拡大など米国の外交政策が戦争を起こす条件を整えたと述べただけで、シカゴ大学の学生との闘争にさらされそうになった。

第一次世界大戦中、ウィルソン米政権は1916年にスパイ活動法、1917年に煽動法を成立させた。1918年、社会主義者ユージン・デブスが演説で徴兵への抵抗を呼びかけたところ、煽動罪で起訴され、10年の実刑判決を受けた。1921年末、ハーディング大統領の恩赦でようやく釈放された。

ベトナム戦争では、米連邦捜査局(FBI)が反戦団体に対する監視・潜入で活動を妨害した事例がいくつもある。作家ランドルフ・ボーンが述べたように、「戦争は国家の健康法である」。戦争を機に米欧政府が権力増強に励むのは、今も昔も変わらない。

米欧の自称「自由民主主義諸国」は新型コロナで、国民を技術官僚の気まぐれに小突き回される家畜のように扱い、すでにその本性を現した。そして今、ウクライナ戦争が激化する中で、さらに暴君のような欲望を露わにしつつある。

西洋の提示する独自の価値に不可欠な部分は、市民の自由を尊重することだった。しかし今、それは大きく変わった。米欧諸国の政府が発する、自由を守れという高慢な美辞麗句は、その実際の行動を見れば、せいぜい空虚なものでしかない。

(次より抄訳)
The Russo-Ukrainian War: A New Opportunity for Demagogues to Destroy Freedoms at Home | Mises Wire [LINK]

2022-05-21

バイデン政権、偽情報統制の変人「女帝」をお払い箱に——しかし委員会は依然として言論の自由への脅威

作家、ジェームズ・ボバード
(2022年5月18日)

保守派メディアや活動家の反発を受け、バイデン政権は国土安全保障省に新設した偽情報統制委員会の「一時停止」ボタンを押し、事務局長のニナ・ヤンコビッチは水曜日(5月18日)に辞表を提出した。しかし同政権が信頼できる責任者を見つけることができれば、委員会はいつでも再稼働する可能性がある。

この騒動に関するワシントン・ポスト紙の記事は、大政翼賛報道の典型だった。記者のテイラー・ローレンツは最近テレビで、ネット上で批判され自殺まで考えたと涙ながらに語り、有名になった人物だ。この御涙頂戴は、ローレンツ氏が保守派のTikTok利用者らの個人情報を暴露した事実を無視している。

ワシントン・ポスト紙によれば、ヤンコビッチ氏がフルブライト奨学生であり、「複数の超党派シンクタンクでの勤務経験」があることは、彼女に検閲するつもりがなかったことを証明しているという。ヤンコビッチ氏自身の言葉からでは、さすがに免罪はできないのだろう。

ヤンコビッチ氏は、自分のような「信頼できる専門家」には、他人のツイートを「編集」して「文脈を追加」する権限が与えられるべきだと考えている。学校の左翼的な教育課程に不満を持つバージニア州ラウドン郡の親たちを、「偽情報」と「人々の感情を武器にした」かどで糾弾した。

ヤンコビッチ氏は以前、米連邦政府が資金提供するメディア操作作戦「ストップフェイク」で働いていたが、ネーション誌によれば、2018年、ウクライナのネオナチ集団の実態を隠蔽し始めた。戦時中にユダヤ人を虐殺した民兵を、単なる「歴史上の人物」やウクライナの民族主義的な指導者として扱った。

ワシントン・ポスト紙は、なぜヤンコビッチ氏が信頼に足る人物だと判断したのだろうか。ローレンツ記者の記事には、アドバンス・デモクラシーという組織への言及が三回あり、同記者はこの組織を「公益調査を行う超党派の非営利組織」と位置づけている。

ワシントン・エグザミナー誌によれば、アドバンス・デモクラシーの代表ダニエル・ジョーンズ氏は別組織を通じ、計550万ドルを調査会社フュージョンGPSに送ったほか、計114万ドルを元英国スパイ、クリストファー・スティール氏の会社に送っている。(*ともにロシア疑惑のでっちあげに関与)

スティール氏が作成した「スティール文書」の嘘は、FBIによるトランプ陣営の監視を後押しし、数年に及ぶロシア疑惑騒ぎに拍車をかけた。2019年、モラー特別検察官の報告で誤りと断定された後も、ヤンコビッチ氏はスティール氏を応援し続けた。

バイデン政権は、コロナワクチンに関する「偽情報」を抑えられなかったソーシャルメディア企業に対し、独禁法の調査を行うと脅した。マーシー軍医総監は、コロナの「誤情報」を広めた個人に関する情報を、ハイテク企業に提出するよう求めた。

ヤンコビッチ氏はいなくなったが、偽情報統制委員会は依然として言論の自由を脅かす存在だ。ワシントンには、魂を売ってでもバイデン政権を自分の履歴書に加えようとする、出世欲の強い変人が大勢いる。

(次より抄訳)
Team Biden dumps ditzy disinfo czar Nina Jankowicz — but board remains threat [LINK]

地球上の生命はどのように終わるのか、どうすればいいのか?

経済学者、ウォルター・ブロック
(2022年5月19日)

人間は互いに戦っている。歌の文句に「世界は愛に満ちている」とあるが、今は残念ながら、「世界は敵意に満ちている」と言わなければならない。戦争は絶え間なく起こり、その数は数えきれないほどだ。暴力的な犯罪も絶え間なく発生している。

その原因は何だろう。社会生物学による説明が最も正確かもしれない。大昔、人間が自由に使えるのは棒や石だけだったから、野山でサーベルタイガーなどの猛獣を撃退するには、敵意に満ちた性格が必要だったのである。

敵意を必要とする行動の残滓は、それがもはや必要とされなくなっても、つまり私たちの幸福にとってむしろ有害になっても、私たちの中に残っている。今や、か弱い人間でも適切に装備すれば、地上や水中の獰猛な巨大動物をやっつけることができる。恐竜が再び出現しても同様だろう。

私たち人間は深刻な問題に直面している。そのうちのいくつかは、私たちが知っている人生の終わりを意味する。子供や孫を含む私たち全員の死という結果を招きかねない。人間は事実上、種の消滅になるかもしれないことをやめる決意ができないのだろうか。そうでなければ、集団自殺をすることになる。

まずは、ロシアとウクライナの間に停戦と恒久的な和平を実現することが必要だろう。そのためには、ロシアがウクライナの政府を倒さず、ウクライナの指導者を犯罪者にしないこと、その代わりにウクライナはNATOへの加盟をあきらめることだ。

NATOは平和条約によって解体し、これ以上東方へ拡大してはならない。フィンランドとスウェーデンの加盟にも反対しよう。

アフリカでも深刻な紛争が絶え間なく起こっている。これは(植民地時代に)欧州が民族性を無視した国境を設定したことが大きな原因であり、災いのもとである。この泥沼から抜け出すには、(民族に応じた)分離独立が一番良い方法だろう。

なぜ、(アメリカ独立の際に)13の植民地がイギリスから離脱するのはよくて、カリフォルニア州やテキサス州がアメリカ合衆国から離脱するのはいけないのだろうか。平和的な分離独立は、(カタルーニャ問題を抱える)スペインの内戦の脅威を和らげることにもなる。

停戦や分離独立による平和の実現は、無理があるのだろうか。人間が互いに殺し合ってきた歴史を考えれば、そうかもしれない。しかし幸い、私たちは今、少なくとも平和を求めることができる。互いに平和と善意を祈ることができる。敵意は宇宙人にとっておいてはどうだろう。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : How will human life on earth end, and what to do about this? [LINK]

2022-05-20

ウクライナ戦争で誰が誰を読み違えたのか?

ヘンリー・キッシンジャーとジャック・ボーの発言

米空軍退役軍人、ロナルド・エンツワイラー
(2022年5月19日)

キッシンジャー元米国務長官は5月11日、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、ウクライナ戦争について初めて公に発言し、当事者間の敵対関係を世界全体に影響を及ぼす大惨事にまで発展させた誤算を明らかにした。その誤算とは、相手の「越えてはならない一線」を見極めなかったことにある。

キッシンジャーは、冷戦後のNATOの東方拡大がロシアへの危険な挑発になると予見し、早くから批判していた。それをウクライナについて論じたのが、2014年3月のワシントン・ポスト紙への寄稿だ。その洞察によれば、政策の試金石は始め方(意図)ではなく、終わり方(結果)にある。

無制限の「門戸開放」によるNATOの拡張政策は、(結果としてウクライナ戦争を引き起こしたことで)キッシンジャーの基準にみごとに落第している。それでもめげずに、NATOはフィンランドとスウェーデンの加盟により、誤りを繰り返そうとしている。

キッシンジャーによれば、プーチン露大統領はNATOが「エルベ川の東」に移動したことに不快と脅威を感じ、この地域全体がNATOに「吸収」されることを恐れた。この恐怖を引き金に、ウクライナで自衛措置として軍事行動を起こした。キッシンジャーはウクライナ侵攻をソ連復活の企てとは考えていない。

キッシンジャーは「ウクライナ戦争が終わった後、世界の地政学的状況は大きく変わるだろう。二つの敵対国(ロシアと中国)を一緒に追い込むような形で敵対姿勢をとるのは賢明ではないと思う」と述べる。しかし米欧はロシアに対する強硬な制裁や、中国に向けた東アジアでの軍拡を行なっている。

キッシンジャーによれば、「(戦争は)他国の敵意によって米国に強いられるかもしれない。しかし、米国自身の態度で戦争を発生させることは避けるべきだ」。この発言は、バイデン政権がイデオロギーを理由に外交方針を単純化し、危険な「我々対彼ら」の枠組みを作ったことを真っ向から否定する。

キッシンジャーが深く憂慮するように、「両陣営の武器は年々増殖し、その精巧さと殺傷力は増している。しかし、これらの兵器が使われたらどうなるかという議論は、国際的にはほとんど行われていない」。そして、「これは軽視されてきた問題」であり「外交と戦争に新しい文脈が必要」である。

キッシンジャーは2007年1月、ウォールストリート・ジャーナル紙に三人の政治家(ジョージ・シュルツ、ウィリアム・ペリー、サム・ナン)と共同で、核兵器のない世界を求める論説を寄稿している。この先見の明のある構想はもちろん、核兵器産業と相思相愛の関係にある米議会では採用されなかった。

(次より抄訳)
Who Misread Whom in Ukraine War Debacle? - Antiwar.com Original [LINK]

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は愚かだ

歴史的なヒステリーやパニックに陥っている今は、決断を下すべき時ではない

コラムニスト、ヤン・オーベリ
(2022年5月16日)

NATO(北大西洋条約機構)に加盟すれば、スウェーデンとフィンランドの安全保障は悪化する。柔軟な国際交流や仲裁を申し出る態度の代わりに、厳しい対立と分極化が起こるからだ。深刻な危機が発生した場合、両国は事実上、米国やNATOに占領され、何をすべきか指示されることになる。

将来のある時点で、現在のノルウェーやデンマークのように、米軍基地の受け入れを求められたら、ノーとは言えないだろう。戦争になれば、ロシアは真っ先にこの基地を狙うだろう。

もしフィンランドとスウェーデンが米国やNATOに「守られたい」と強く願うなら、NATOに加盟する必要はない。危機が起これば、米国やNATOはバルト三国に近づくために、両国を「保護」しに来るし、その領土を使いさえするだろう。ホスト・ネーション・サポート(HNS)はそのためのものだ。

北大西洋条約第5条によって、フィンランドとスウェーデンは自国の防衛のためではない戦争に参加が求められる。おそらくユーゴスラビア、イラク、リビアでのような国際法違反の戦争にさえ参加が要求される。フィンランドやスウェーデンの若者は将来、NATOの戦争で死ぬ準備ができているのか。

NATOに加盟した場合、フィンランドとスウェーデンはNATOによる核兵器使用の可能性を共有せざるをえない。NATOの艦船が核兵器を持ち込む可能性があることも明らかだ。これはスウェーデン人の心情に反する。スウェーデンは約70年前から核兵器開発をしないという決定を下している。

スウェーデンとフィンランドは、国連の掲げる核兵器廃絶や軍縮など、代替政策に関与できなくなる。オーストリアやスイスのような仲介役も務まらないだろう。NATO加盟国はそのような崇高な目標にリップサービスしかできない。NATOはむしろ独占と地域的、世界的な支配を追求している。

スウェーデンとフィンランドはNATO加盟によって、ロシア人やロシア的なものすべてに対する数十年にわたる憎悪を受け入れ、強化することになる。西側諸国が無謀にも、ロシアのすべてに対して思慮に欠け、違法な制裁を加え、あらゆる次元でロシアを抹殺することに、イエスと言うことになるのだ。

スウェーデンとフィンランドはNATOに加盟することで、欧米側につくことを余儀なくされる。しかし将来の世界秩序変動において、中国、中東、アフリカ、南米など非欧米の巨大な地域連合が力をつけるだろう。

(次より抄訳)
Ukraine: Foolish for Finland & Sweden to Join NATO – scheerpost.com [LINK]

2022-05-19

米国防総省の出資するシンクタンク、テレビで米中戦争をシミュレーション

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年5月16日)

米NBCテレビの番組「ミート・ザ・プレス」は、新アメリカ安全保障センター(CNAS)が米中戦争を想定した戦争ゲームを行う、異常なコーナーを放送した。CNASは国防総省、軍需産業ノースロップ・グラマン、レイセオン、ロッキード、事実上の在米台湾大使館である台北経済文化代表処から資金を提供されている。

戦争ゲームは、2027年の台湾をめぐる紛争を模し、中国が台湾侵攻の道を開くため米軍への攻撃を開始するという設定だ。米中戦争が起こる時期について、なぜ視聴者に特定の年を刷り込む必要があるのか、番組では伝えない。NBCが米中戦争のシミュレーションを放送する理由も語られない。

CNASは、バイデン政権が国防総省の対中政策を練り直す作業部会のリーダーとして任命した人物の出身母体だ。そのエリー・ラトナー氏は、トランプ政権が中国に対し十分に強硬でなかったと発言した記録が残っている。同氏は現在、バイデン政権で国防次官補(インド太平洋安全保障担当)を務める。

出演したCNASの共同設立者ミシェル・フロノイ氏は一時、バイデン政権の国防長官就任が有力視された人物だ。2020年にフォーリン・アフェアーズ誌の論説で、米国は「72時間以内に南シナ海の中国の軍艦、潜水艦、商船すべてを沈めると脅せるだけの能力を備えなければならない」と主張している。

CNASのCEOであるリチャード・フォンテーヌ氏は、ロシアと中国に関するアメリカ帝国のシナリオを押し付けるマスメディアに登場する。つい先日もブルームバーグで、ウクライナでの戦争は中国に対する帝国の長期的な利益につながる可能性があると述べた。

CNASは中国とロシアに関する権威ある情報源としてマスメディアに日常的に引用されるが、戦争関係者から資金提供されていることから生じる利益相反については、まったく言及されない。

戦争関係者から資金提供を受けているシンクタンクを、金銭的な利益相反を開示することもなく専門家の分析として引用することは、ジャーナリズムとして明らかな不正行為である。しかし、よくあることだ。マスメディアはプロパガンダを流すために存在するのであって、ジャーナリズムではないからである。

マスメディアは戦争関係者のシンクタンクと公然と手を組み、米中戦争は正常なことだと国民の心に刷り込み始めた。アメリカ帝国一極支配を称賛するプロパガンダ作戦がさらに激化している。大規模な心理操作は、ますますあからさまに、ますます恥知らずになっている。

(次より抄訳)
Pentagon-Funded Think Tank Simulates War With China On NBC – Caitlin Johnstone [LINK]

NYタイムズ紙に非難、ウクライナの戦闘員はアゾフスタルで「避難」したが降伏せずと報道

ゼロヘッジ
(2022年5月17日)

ニューヨーク・タイムズ紙が、マリウポリのアゾフスタル製鉄所に対するロシアの長期にわたる包囲の終了を、ウクライナがマリウポリでの「戦闘任務」を終了したと伝え、批判を受けている。客観的には、ロシア軍によって、ロシア支配地域に「避難」させられ、負傷者はロシア支配の病院に運ばれたのだ。

NYタイムズ紙は、アゾフの武装勢力約300人が降伏したという現実を完全に回避し、代わりに何らかの形でウクライナ軍が「戦闘任務」の終了を決定したと示唆することに成功した。見出しで、彼らが「避難している」とも強調した。

記事の最初の文章によれば、戦闘員は武器を捨てた後、ロシアの保護下に置かれ、親ロシア地域(特にドネツク人民共和国のノボアゾフスク)に移送されたという。つまり敵のロシアによって捕虜にされ、「避難」させられたのである。

NYタイムズの報道によれば、「数百人のウクライナ人戦闘員がバスでロシアの支配地域に連行された」「ウクライナ大統領は、この都市での戦闘任務は終了し、最も長く、最も激しい抵抗のいくつかに終止符を打った」という。

客観的に観察した評価では、2カ月間、出口がなく洞窟のような施設に立てこもり包囲されたウクライナ人は、月曜日(5月16日)にようやく降伏した。それなのに、NYタイムズは他の多くの主流メディアとともに、どういうわけかウクライナ人の「任務完了」だと報じた。

ソーシャルメディアの投稿では、NYタイムズによるオーウェル流の「ニュースピーク」(婉曲話法)は芸術の域に達していると指摘された。アゾフ大隊のネオナチ思想は長年記録されてきたにもかかわらず、主要メディアではまったく認識されなくなっていることも、多くの人から指摘されている。

ジャーナリストのマイケル・トレイシーは、主要メディアが戦争について「事実を伝える」と称しているが、実際には戦場にいる特派員がほとんどいないため、「戦術的な進展について西側メディアから出てくるものは、ほとんどすべて歪曲と考えなければならない」と警鐘を鳴らす。

(次より抄訳)
NY Times Blasted For Writing Ukrainian Fighters "Evacuated", Didn't Surrender At Azovstal | ZeroHedge [LINK]

2022-05-18

なぜ米国はフィンランドに戦争保証をするのか?

政治評論家、パトリック・ブキャナン
(2022年5月17日)

プーチン露大統領の意図に神経質なフィンランドは、ロシアに侵攻された場合、米国が自国に代わってロシアと戦う法的・道徳的な拘束力を持つよう望んでいる。フィンランドの立場からすれば、理解できる。しかしなぜ米国は、核大国ロシアがフィンランドの国境を侵したからといって、戦争に応じるのか。

フィンランドはアラスカでもカナダでもなく、5000マイルも離れている。そして冷戦時代もそれ以降も、フィンランドが米国の重要な利益だと主張した者はいない。それではなぜ、フィンランドをめぐってロシアと戦争をすることに事前に同意するのだろうか。

バイデン大統領は先週、NATOは門戸開放政策をとっており、フィンランドとスウェーデンの加盟を楽しみにしていると述べた。ロシアと830マイルの国境を接する人口550万人の国フィンランドに、同国をロシアが攻撃した場合、米国にロシアとの戦争を義務づける権利を譲り渡そうとしているのだ。

NATOはカントリークラブではない。プーチンが敵視する軍事同盟である。NATOの加盟国は、30カ国のうち1カ国への攻撃をすべての国に対する攻撃とみなし、攻撃された国を防衛する義務を負っている。

バイデンはフィンランドをNATOに迎え入れることで、チェンバレン英首相が1939年春にポーランドに与えた戦争保証のようなものを提供しようとしている。その結果、ドイツがポーランドに侵攻した2日後の1939年9月3日、イギリスは宣戦をしなければならなかった。

ジョージ・ワシントン米初代大統領は退任挨拶で、「恒久的な同盟」に対して米国民に警告を発した。第3代大統領トーマス・ジェファーソンは、初代大統領を意識して、「もつれた同盟関係」に警告を発した。

スウェーデンとフィンランドのNATO加盟は、すでにロシアの怒りを買っており、核戦争に発展しかねない圧力を和らげそうもない。基本的な疑問に答える必要がある。冷戦終結から30年、なぜわれわれはいまだにNATOを拡大し続けているのか。

ロシアは米国を脅かしてはいない。欧州の近隣諸国に対する脅威については、欧州自身に対処してもらえばよい。欧州のNATO加盟国はロシアよりはるかに人口が多く、経済力もあり、軍事的にも自国を防衛する能力がある。

フィンランドは小さくても近代化された軍事力があり、攻撃されればロシアに対抗することができる。それなのに、なぜ米国がフィンランドのために戦争をしなければならないのか。その戦争はトルーマンからレーガンまですべての米大統領が避けようとしてきた、核戦争に発展する恐れがある。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Why Would US Give a War Guarantee – to Finland? [LINK]

米民主党が異様な全員一致で支持した400億ドルの戦争支援の行方は、レイセオン社とCIA

賛成票を投じた多くの民主党議員は、この種の法案を長いこと非難してきた。何が起こったのか?

ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド
(2022年5月14日)

400億ドルのウクライナ支援法案に対し、米下院は388対57の圧倒的多数で承認した。57票の反対票はすべて共和党議員だった。不明の議員2人を除き、下院の民主党議員は、革命的で破壊的な「スクワッド」の6人の議員を含む1人残らず、この巨大な戦争法案に賛成した。

資金のごく一部は人道支援に使われるが、大部分はレイセオン、ロッキード・マーチン、ボーイングなど兵器メーカーの金庫に入るだろう。いくらかはCIAに明確な理由なしに行くだろう。資金の使途や誰がどれだけ利益を得るのか、ウクライナと世界にどのような影響があるのか、ほとんど監視されない。

民主党議員の全員賛成が異様なのは、彼らの多くが、この種の戦争支出を何年も激しく非難してきたからだ。何人かはごく最近、ウクライナに大量の資金と武器を投入することに反対を表明した。兵器メーカーや情報機関への多額の資金提供を正当化するには、米国民は国内であまりにも苦しんでいるからだ。

カンナ下院議員は2月8日、デモクラシー・ナウに出演し、差し迫ったロシアのウクライナ侵攻について議論し、ウクライナに殺傷兵器を送らないようはっきり求めている。オバマ元大統領が超党派の武器提供の要求に抵抗したことを称賛し、武器提供は危険なほどエスカレートしたものになると主張した。

議員がこれほど明白過激な方針転換をしたら、少なくとも理由について何らかの説明が当然と思うだろう。しかし、スクワッドや何十人もの下院の進歩派議員の場合、それはお門違いである。5人の議員に問い合わせたが、投票から72時間以上たった今も、彼らは説明を拒み、簡単な声明さえ発表していない。

アレクサンドリア・オカシオコルテス議員は、今回の賛成票と、大人になってからずっと述べてきた一連の発言とを調和させようともしていない。彼女の盲目的な信者たちは、彼女に何も要求しないし、まして言動に関する説明を求めたりしないからだ。

わずか2カ月前、この戦争はロシアとウクライナの戦争ではなく、実際にはロシアと米国・NATOの代理戦争だと見抜いた人々は、ロシアの宣伝屋だと中傷された。今、米国の指導者らは、この事実を公然と誇り、米国は実際にロシアと戦争状態にあり、完全な勝利を確保しなければならないと主張している。

民主党の政治家の中に、異議を唱えたり、疑問を投げかけたりしようとする者が一人もいないことは、民主党の正体と、この戦争が米国人や世界全体にとってどれほど危険なものになっているかを物語る。

(次より抄訳)
The Bizarre, Unanimous Dem Support for the $40b War Package to Raytheon and CIA: "For Ukraine" [LINK]

2022-05-17

ランド・ポール上院議員が400億ドルのウクライナ支援を遅らせた理由

元米下院議員、ロン・ポール
(2022年5月16日)

米政府の基準からしても、バイデン政権が最近行ったウクライナへの軍事援助330億ドルの要求は衝撃的だった。反戦左派と財政タカ派の共和党の連合は、ウクライナ紛争に対する危険で物入りな関与に反対するはず? そうではなかった。議会は反対しなかっただけでなく、70億ドル近くも上積みしたのだ。

上院ではシューマー(民主)、マコネル(共和)両院内総務が、ウクライナへの巨額の贈与を直ちに可決するよう要求した。これが米議会の超党派主義である。するとケンタッキー州選出の後任議員が議場に現れ、ワシントンでは考えられないことをした。投票を遅らせたのだ。

ランド・ポール上院議員は「米経済を破滅させてまでウクライナを救うことはできない」と述べた。米国はウクライナの軍事費にロシアの軍事費全体とほぼ同額を支出しており、アフガン戦争の初年度全体で支出した金額よりも多い。米国務省の年間予算のほぼ全体に相当し、国土安全保障省の予算より大きい。

ポール議員は法案に、監察官が資金の使い道を監督できるような修正を入れることを求めただけだ。地球上で最も腐敗した国の一つとみなされる国に送る総額約500億ドルの資金について、わずかな監視が欲しかったのだ。これは本当に無理な要求なのだろうか。米議会にとって、その答えは「イエス」だ。

アフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)は、アフガン戦争で計上された総額1340億ドルのうち630億ドルを検証し、うち190億ドル近くが無駄、不正、乱用で失われたことを明らかにした。3分の1近くがアフガンの腐敗した役人に浪費されたり盗まれたりしたわけだ。ウクライナは違うだろうか。

だからポール議員が、400億ドルが無駄にならないように追跡調査を提案したとき、他の議員らは激怒したのかもしれない。米政府は知りたくもないのだ。そしてもっと重要なことに、政府は国民に知られたくないのだ。

一時停止は重要だ。米国民が上院議員らに、ばかげたウクライナへの贈与を支持しないと伝える時間を少し与えてくれる。物価高が国を覆い、ガソリン価格は天井知らず。インフラは崩壊し、ドルは揺らぐ。なのに、金をばらまくのか。投票は水曜日(5月18日)らしい。あなたの考えを上院議員に伝える時だ!

*筆者はランド・ポール上院議員の父

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Why Did Rand Paul Delay Washington’s $40 Billion Ukraine Giveaway? [LINK]

すべてを犠牲にしてNATOに加盟するフィンランドとスウェーデン

両国は保護を必要としないが、加盟は欧州の自治と将来のロシアとの関係を葬り去る

クインシー研究所主任研究員、アナトール・リーベン
(2022年5月13日)

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請には、悲しくも哀れな皮肉がある。冷戦時代、ソ連は軍事大国で中欧の大部分を占領し、少なくとも当面は、西側の民主資本主義諸国に対する真の脅威かと思われた。しかしフィンランドとスウェーデンはその数十年間、公式には中立を保っていた。

フィンランドの場合、中立はソ連と戦争を終結させる条約の条件だった。スウェーデンの場合は、事実上米国の安全保障の傘の下にありながら、何の貢献もリスクも負わずに済むという現実的利点があった。帝国主義的で人種差別的な米国に対して、道徳的な優位を誇れることも大きな心理的利点だった。

冷戦終結後、ロシアは東に1000マイル後退し、NATOとEUは大きく拡大した。冷戦時代もその後も、ロシアがフィンランドを脅かしたことは一度もない。ソ連はフィンランドとの条約を厳守し、さらに40年間保持することができたフィンランドの軍事基地から撤退した。

フィンランドはソ連軍に対する英雄的な戦いによって、潰すには手強い相手だとソ連に確信させた。NATOに加盟しなくても、フィンランドは手強いし、手強くあり続けるだろう。自国を守ろうと決意しているからだ。

ロシアが方針を転換しフィンランドを攻撃すると考える理由はなかった。一方、ウクライナを攻撃した理由は明白だ。1990年代にNATOの拡大が始まって以来、ロシア政府関係者も3人の元駐ロシア大使や現CIA長官を含む西側の専門家も、ウクライナが反露同盟に加われば戦争の引き金になると警告してきた。

スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟することは、両国の安全保障にとって必要ない。フィンランドはNATOに加盟することで、ロシアと西側諸国の仲介役としてウクライナの戦争を終わらせたり、和解を促したりする可能性を捨て去る。むしろ欧州を横断する新たな冷戦の境界線を築くことになる。

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、欧州全体が自分の大陸に責任を持つという夢を捨て、米国への完全な依存に身を委ねた象徴的な瞬間だったと見ることもできるだろう。

米国やNATOが長い間公然と目指してきた、欧州からロシアを完全に排除することは、長期にはロシアを戦略的に完全に中国に依存させ、中国を欧州の東の境界線まで連れてくるかもしれない。それは欧州の戦略的過ちに対する報いと言えなくもない。欧州人でなければ、愉快にさえ感じるかもしれない。

(次より抄訳)
Finland and Sweden will join NATO at the expense of everything - Responsible Statecraft [LINK]

2022-05-16

闇市のぼろ儲け――米国の兵器はウクライナやその周辺に死と破壊をもたらす

スプートニク
(2022年5月15日)

米国の兵器はシリアやアフガニスタンで悪人の手に渡った長年の記録があると、米調査ジャーナリスト、ダニエル・ラザールは言う。

膨大な量の西側兵器がウクライナに流入しているが、戦争の霧の中で行方不明になっている。同国政府は欧州で最も腐敗した政府であるため、その一部は国際的な不正な武器取引に関わる第三者の手に渡ることは間違いないだろう。戦闘がなくなれば、残った武器の多くが闇市場に流れることが予想される。

ウクライナ東部で紛争が始まって以来、ドニエプロペトロフスク、ハリコフ、オデッサ、キエフの各都市には犯罪ネットワークの重要な物流拠点があり、違法市場の役割は強まる一方だという。2013~15年にウクライナから消えた30万丁以上の小火器のうち、回収されたのはわずか13%程度である。

2019年にはウクライナ兵士2人がRGD-5手榴弾40個、RPG-22ロケット15個、銃器カートリッジ2454個を売却しようとした。2020年にはウクライナ保安庁(SBU)が軍事基地から盗まれたRGD-5手榴弾18個、F-1手榴弾12個、対戦車用地雷2個をオデッサで発見したという。

米ケイトー研究所によれば、米国内の兵器輸送の責任者が、ウクライナに送られた兵器の最終用途の監視に失敗していることを示す実質的な証拠がある。米国はすでに2000年にはウクライナに対し軍事装備と訓練の提供を始めていたという。

代理戦争は武器の管理が不十分になる。傀儡国の政府・軍に供給された武器はしばしば紛失し、意図しない形で転売・再利用される。2013年以降、CIAはシリアの反政府武装勢力に推定10億ドルの武器、弾薬、軍事訓練を提供したが、この勢力はアルカイダとISIS(ダーイシュ)に支配されていた。

ISISの戦闘員は、シリアの反体制派やイラクの治安部隊から高度な武器を入手し、テロ組織と戦う国家、地域、多国籍軍に脅威を与えている。不正市場への横流しにより、武器の追跡がほぼ不可能になっている。

2015年、イラク治安部隊はモスル崩壊後、米国から供給された2300台のハンビー装甲車を失った。この米国製装甲車はダーイシュの戦闘員に捕獲され、即席の爆発装置を搭載した自動車爆弾に再利用された。

2017年10月には、シリア国防省が、ダーイシュやアルカイダと連携するヌスラ戦線を含む多数のテロ組織から押収した弾薬の映像を公開した。それらの武器は米国またはその親密な同盟国によって製造されたとしている。

ウクライナでも同じことが起こり、東欧以外の犯罪集団や非合法集団が、最終的に米国製の最新兵器を手に入れることになると考える理由は十分にある。

(次より抄訳)
Black Market Bonanza: US Weapons Will Bring Death and Destruction to Ukraine & Beyond, Journo Says - 14.05.2022, Sputnik International [LINK]

560億ドルの「ウクライナ向け」資金は、実際にはどこに行くのか?

マネーロンダリング作戦の製作過程

ジャーナリスト、ジョーダン・シャハテル
(2022年5月14日)

米国は現在、「ウクライナのために」約560億ドルを新たに発行し、ドルの価値を下げているが、実際にウクライナ国民に渡っているものはほとんどない。米議会を通過中の「ウクライナ支援」は、主に米支配階級の便宜を図ることを目的としている。米国民はその代償を払っているのだ。

ウクライナの人々がこのお金を1セントでも目にすることができると思っているなら、考え直してほしい。「人道支援」の部分ですら届かない。なぜなら、この資金は米政府関係の弁護士、ロビイスト、NGO、その他コネのあるブローカーらによって吸収されるからだ。アフガニスタンを見るがいい。

ウクライナ紛争が始まって以来、企業メディアと政府の宣伝担当者は、無意味な勧善懲悪で戦争にレッテルを貼った。注目すべきは、民主党は一人もこの法案に反対しなかったことだ。共和党はほぼ支持し、事実上の一党独裁となり、ランド・ポール議員が「緊急」通過の阻止を決めたことに憤慨している。

ウクライナのポドリャク大統領府顧問とクレバ外相はそれぞれ、ロシア兵が背中から市民を撃ったというCNNの動画を宣伝し、支援が遅れれば殺される市民が増えるとして、偽りの道徳的怒りによってポール議員を非難している。

「ウクライナのため」のマネー印刷は始まったばかりだ。一党独裁の議員たちは今後数カ月で、 「ウクライナのために」もっと多くのお金を刷る必要があると合意している。

ウクライナの人々は「ウクライナのために」託された560億ドル以上のうち、おそらく1ペニーも見ることはない。まるで米国の宣言されない対ロシア戦争というシナリオを使った、マネーロンダリングだ。お金は印刷され、少数の政権インサイダーに分配され、そのツケは米国の納税者が払うのだ。

(次より抄訳)
Where is the $56 billion 'to Ukraine' actually going? [LINK]

2022-05-15

米国人は「プーチン・インフレ」を信じていない

あらゆる経済的苦境をロシアのせいにすることは、うまくいかなくなってきている

政治コメンテーター、イアン・マイルズ・チェン
(2020年5月13日)

米国人はガソリン価格、食料品価格、家賃の高騰に頭を悩ませている。これらはすべて、新型コロナ流行の始まり以来、着実に上昇している。バイデン米大統領は、この状況を「プーチン・インフレ」と名付け、ロシアのプーチン大統領を非難することを選択したが、人々はそれを信じてはいない。

物価高騰に加え、米経済は停滞する恐れがある。消費者はガソリン代から必須の食料品に至るまで、基本的にあらゆるもののコスト上昇を払えなくなる。物流サプライチェーンの危機と輸送労働者の不足は、コロナへの経済封鎖や移動制限によってすでに深刻な問題だったが、事態は好転していない。

「分裂よりも団結を常に選ぶ」という公約を掲げて立候補したバイデンは、反ロシアという共通の大義で米国人を団結させようとしている。ロシアこそ米国を悩ませるすべての問題の元凶だとして非難する。たとえそれらの問題が、ウクライナ紛争やロシアへの経済制裁より前に発生していたとしてもだ。

ウクライナを支援するために3月に経済制裁を発表した数日後、バイデンは「我々の前例のない制裁の結果、ルーブルはほとんど即座に瓦礫と化した」と自慢げに語った。しかしルーブルはすぐに反発し、今では紛争前よりも価値が上がっている。

バイデン氏は、ウクライナの問題は米国の納税者の問題だと主張し、ウクライナに400億ドルの追加資金を提供することを約束した。この間、一般の米国人が格闘する現在進行中の多くの危機は、別の大陸(欧州)で起こっている紛争よりも直接こうむる影響が大きい。

バイデンの非難合戦とロシアに対する代理戦争の努力にもかかわらず、米国人はバイデンの言い訳を信じていない。最近の世論調査では、有権者の56%が大統領の外交政策に不賛成であるのに対し、賛成は40%だった。ウクライナ問題では、バイデンの政策に賛成する人は38%にすぎない。

米国人は当初、制裁に非常に熱心だったが、今はそれほど熱心でない。バイデンは当初、ルーブルは瓦礫と化す、ロシア経済は破綻する、人々が立ち上がる、プーチンは出て行く、ロシア人はウクライナから逃げ出す...…といった予測を立てていたが、そのどれもが起こっていない。

バイデンはあらゆる面で不支持に直面しており、多くの米国人はバイデンがウクライナに夢中になっていることに同意していない。世論調査では、ロシアを米国にとって最も重要な「脅威」と認識している人は16%にすぎず、中国、イラン、北朝鮮に大きく差をつけられている。

失敗が積み重なれば、11月の中間選挙で「赤い波」(共和党)がバイデン政権の破滅的な政策を洗い流し、トランプ前大統領、デサンティス・フロリダ州知事、あるいは他の誰であろうと、任務を遂行できる指導者への道を開くのは時間の問題だ。

(次より抄訳)
Americans aren’t buying ‘Putin’s price hike’ — RT World News [LINK]

#16 陰謀論を笑うな!

 
「陰謀論」という言葉をよく目にします。その多くは、政府の公式見解と異なる主張を陰謀論と呼んで誤りや嘘と決めつけ、非難するケースです。しかし陰謀論を頭から否定し、あざ笑うことは論理的でも健全でもありません。 

<参考資料>
  • 野口英明ほか『世界金融 本当の正体』(サイゾー) [LINK]

2022-05-14

CIA拷問技術の一部がウクライナのネオナチに普及しているのは偶然か?——ジャーナリストが指摘

スプートニク
(2022年5月11日)

米国がウクライナの人権侵害に関する国連安保理アリア・フォーミュラ・サミットでロシアを非難する一方で、なぜウクライナのネオナチの拷問場にCIA(米中央情報局)の秘密刑務所と多くの共通点があるのか、疑問を持たれるかもしれない。オランダ人ジャーナリストのソニヤ・バン・デン・エンデはそう述べる。

エンデはマリウポリを2度訪れており、2014年に悪名高いアゾフ、ドニプロ、シャフテスク大隊の武装勢力に支配された後、マリウポリにウクライナのネオナチに関する陰惨な話が広まったと指摘する。数年間、ウクライナの民族主義者はマリウポリでドネツク人民共和国の支持者を取り締まっていた。

「おそらくマリウポリにいた他のジャーナリストも『ビブリオテカ』(『図書館』)と呼ばれる拷問施設があること、あるいは米国の対テロ戦争中に西側諸国がそうした施設を『闇サイト』と呼んでいたことを聞いただろう」と、エンデは話す。

2014年6月にマリウポリ空港に現れた秘密拷問刑務所「図書館」は、アゾフ大隊が運営し、ウクライナ公安庁(SBU)が「監修」していた。ドネツクや親ロシア的な思想との関連で拘束された人々は「本」と呼ばれた。空港レストランの冷蔵庫に収容され、水責め、窒息、指の骨折など、さまざまな拷問をされた。

元ウクライナ公安庁のワシリー・プロゾロフによれば、「反ウクライナの抵抗、キエフ当局との闘いに関わった人々は、激しい拷問を受けた。目の前で2人が拷問で殺された。私の勤務期間(1カ月)の間に、合計で約200人が『図書館』で処理された」。

エンデによれば、マリウポリの秘密刑務所で使用された拷問技術は、CIAが世界各地の闇サイトで使用しているものと驚くほど似ている。CIAの海外拷問サイトの存在は、2014年の米上院情報局の報告書で確認されており、そこではCIAの「強化された尋問手法」と呼ばれる手法が使われていた。

エンデは、アゾフ大隊その他のウクライナ民族主義過激派が、拘束者を拷問するために特別に「訓練」されていたことを否定していない。CIAの最も有名な手段である水責めが、「図書館」でも広く使用されていたという。

エンデは、ドンバス紛争地帯で活動する外国人特派員がわずかであることを嘆く。米国の映画スター、アンジェリーナ・ジョリーが最近ウクライナ西部の都市リビウを訪れたことを引き合いに出し、西側諸国の報道機関やハリウッドの有名人は、この地域を訪れたことがないという。

エンデは言う。「残念なことに、西側諸国の政治家からは常識が完全に失われ、戦争の計画に従っている。ロシアとの戦争を望んでいる。なぜか。金融システムが崩壊し、本当の問題や政策から国民の目をそらすために、戦争という課題を押しつけているのだと思う」

(次より抄訳)
Journo: Is It Coincidence That Some CIA Torture Techniques are so Popular With Ukrainian Neo-Nazis? - 11.05.2022, Sputnik International [LINK]

「スクワッド」はソーシャルメディアの外には存在しない

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年5月13日)

米下院は、世界を脅かす代理戦争に400億ドルを費やすことを368対57で決定した。その間、普通の米国民は自分自身と子供を養うのに苦労している。57の反対票はすべて共和党員だった。「スクワッド(分隊)」として知られる下院民主党の進歩的な小派閥のメンバーは、全員が賛成票を投じた。

その後、この大規模な代理戦争法案は上院に送られたが、そこでいったん引き止められた。進歩派のスーパースターであるバーニー・サンダースではなく、共和党のランド・ポールの監視の目が光っていたためだ。

左翼民主党員とは神話でしかない。自分の世界観がすべて嘘で成り立っていることを認める心理的混乱を避けるために、人々が自分に言い聞かせる楽しいおとぎ話にすぎないのである。

ジャーナリストのアーロン・マテは下院の採決についてツイートした。「軍産複合体への挑戦は、左翼の基本中の基本だ。スクワッドは、ウクライナの代理戦争を通じ、さらに400億ドルを与えることに票を投じた。それで左翼の部隊だと主張するのは、詐欺ではないのか」

アレクサンドリア・オカシオコルテス、イルハン・オマル、アヤンナ・プレスリー、ラシダ・タリーブ、コリ・ブッシュ、ジャマール・ボウマンからなるスクワッドについて、コロンビア大学のアンソニー・ゼンカスは次のように優れた洞察をしている。

「スクワッドは存在しない。彼らは集団としての力を使って進歩的な法案への投票を促したことも、反動的な法案を阻止したこともない。議事堂の階段やホワイトハウスの外で抗議しているわけでもない。メディアが作り出したブランドであり、現状を打破するつもりはない」

スクワッドはメディア、特にソーシャルメディアの外では、何の存在感もない。民主党のオンラインPRキャンペーンを美化したもので、党の老害指導者がツイッターやインスタグラムを使うにはあまりに高齢であるために生まれたものである。

スクワッドやバーニー・サンダース、ロー・カンナのようないわゆる進歩的な民主党員は、国内外で人々を圧死させる帝国に反対するために存在するのではない。帝国に反対するものがあるかのように人々に思わせるために存在するのだ。

米国には政党がない。あるのは政党を装った認識操作だ。共和党と民主党が人形劇で争い、群衆がどちらかに声援を送る間に、泥棒がポケットから財布をすり取る。人々がそれに気づき始めると、好みの人形にもっと大きく声援を送れば、すりを止められると言われる。

米国人は11月の中間選挙と2024年の大統領選で、人生で最も重要な選挙だと言われるだろう。過去の選挙でも同じことを言われ、意味のない変化を見たばかりなのに。それは単なる余興の目くらましで、もっと有意義で対決的な方法で抑圧者に立ち向かわせないようにするためのものだ。

(次より抄訳)
“The Squad” Doesn’t Exist Outside Of Social Media – Caitlin Johnstone [LINK]

2022-05-13

バイデンのウクライナ軍事行動は、なぜ中国を利し、ロシアを制圧できないのか?

ジャーナリスト、エカテリーナ・ブリノバ
(2022年5月13日)

米下院は5月10日、400億ドルのウクライナ軍事支援策を368対57で可決し、バイデン大統領による当初の330億ドルの要求を上積みした。その前日、同大統領はレンドリース法案(武器貸与法案)に署名し、米政府はウクライナへの兵器支援を合理化することができるようになった。

今回の紛争以前から、米政府は2021年1月から2022年2月の間に約7億ドルをウクライナに資金提供している。米国務省によると、2014年以降、米国は訓練や装備のための安全保障支援として65億ドル以上を提供してきた。

ウクライナに対する米国の新たな大規模な軍事支援は、同国の平和を達成する助けにはならない。それどころか、ウクライナ政府と軍の一部に、この戦争に勝てるという愚かな確信を与え、戦闘が必要以上に長く続きかねない。

ウクライナ戦争が泥沼にはまることで最も得をするのは中国だ。欧米諸国がウクライナ危機に対し近視眼的かつ非現実的に対処しているため、中国の非欧米諸国への影響力が飛躍的に高まっている。米国は中国に対し劣勢に立たされることになる。中国がロシアとの関係を強化すればなおさらだ。

欧米の政治家は民主主義の擁護者として自らを演出することができる。防衛・兵器産業はウクライナに軍事製品を供給することで利益を得ることができる。過激な環境保護主義者は、欧米はロシアの石油とガスへの依存をやめなければならないと主張し、反化石燃料政策を推進できる。

多くの米国民にとって特に問題なのは、新型コロナで政府が行った浪費のせいで陥った、悲惨な財政状態だ。米国の国家債務は急速に膨れ上がり、物価高騰で日々負担を強いられている納税者は、ウクライナ援助の資金は2つの持続不可能な財源からしか得られないことに気づいている。借りるか金を刷るかだ。

ウクライナへの軍事支援は、米国の政治体制が失敗を認めない最新の例となるだろう。失敗を認める代わりに、同じ政策や規制を繰り返す。コロナウイルスのない世界とか、ウクライナのロシアに対する勝利とか、見えなくなっていく賞品を追いかけて、さらに多くのお金が費やされ、多くの命が奪われていく。

(次より抄訳)
Why Biden's Ukraine Military Adventure Will Benefit China & Fail to Subdue Russia - Sputnik International, 12.05.2022 [LINK]

ウクライナ——プーチン、戦争開始の理由、スネーク島での失敗、その他の問題点について

ムーン・オブ・アラバマ
(2022年5月9日)

プーチンが赤の広場での戦勝記念パレードで行った演説で最も重要な箇所は、現在のウクライナ戦争がどのように始まったかという説明である。プーチンはこれをNATOの対ロシア代理戦争と見ており、それは正しい。

プーチンの「先制攻撃」という言葉の使用は、やや誤解を招く。実際、ウクライナが戦争を始めたのは(ロシアの攻撃に先立つ)2022年2月16日(水)である。このとき、ドンバスの両共和国(ドネツク、ルガンスク)近郊の軍隊が、両共和国への全面的な地上攻撃に向けて準備砲撃を開始したのである。

OSCE(欧州安全保障協力機構)ウクライナ特別監視団の2月15日付報告書では、停戦地域で約41回の爆発が記録されている。これが2月16日に76回、17日に316回、18日に654回、19日に1413回、20日と21日に合計2026回、22日に1484回と増えている。

ドンバス地方への地上攻撃が迫っていること、ウクライナが核武装を目指すということ、この2つの問題が、2月21日にロシアがドンバス両共和国を独立国として承認する決定を下す原動力となった。その法的な前例は、コソボを独立国家として欧米が承認したことである。

独立国家とロシア連邦の間で共通防衛協定が結ばれた。その3日後、ドンバス両共和国に対するウクライナの攻撃が続く中、国連憲章第51条(集団的自衛を含む自衛に従事する国の権利)に基づき、ロシア軍がウクライナに入国したのである。

(次より抄訳)
MoA - Ukraine - Putin On Why The War Started, Failed Attempts On Snake Island, Other Issues [LINK]

400億ドルのウクライナ支援策、米議会で遅延

ランド・ポール議員、ウクライナ向け巨額支出法案の上院での投票を保留し、資金の使い道についてより厳格な監視を要求

RT
(2022年5月12日)

ロシアと対立するウクライナに400億ドル近い軍事・経済援助を行うという米国の計画が、ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)の妨害により、資金援助法案の迅速な採決が妨げられ、少なくとも来週まで成立が遅れる可能性が出てきた。

ポールは木曜日(5月12日)、超党派の強い支持を得た法案を審議なしで迅速に採決する規定の承認要求に異議を唱えた。元大統領候補のポールは、巨額の支援策の使い道を監視する特別監察官を任命することを法案に盛り込むよう要求。シューマー上院院内総務(民主党)がこの要求を拒否した。

シューマー院内総務は、ロシアのプーチン大統領の「不道徳な戦争」と戦うウクライナを支援する「道徳的義務」が米政府にはあると主張した。ポール議員の求める監視規定には、民主党、共和党を問わず強く反対しているという。

ポール議員の提案を法案に加えた場合、修正された法案は上院の承認後、再度下院での投票に回さなければならない。ポールは今回の法案によって、2月に紛争が始まって以来、米国のウクライナへの援助総額は600億ドルに達し、ロシアの国防予算全体にほぼ匹敵する額になると指摘した。

ポール議員は、米国はウクライナの戦費を借金で賄うことになり、30兆ドルの負債をさらに増やし、インフレ危機を悪化させると主張した。「米国人は痛みを感じているのに、議会はさらに多くのお金をできるだけ早くドアから押し出すことで、その痛みをさらに大きくしようとしているようだ」と述べた。

今回の援助法案は、民主党議員全員と、57名を除く共和党議員全員の支持を得て下院を通過した。米国の対外援助先上位10カ国合計額の2倍以上となる。マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党、ジョージア州)ら法案に反対した人々は、「プーチンのプロパガンダ」を広めていると非難された。

ポール氏は、米国は中東戦争に費やした1.6兆ドルとコロナ対策の負債5兆ドルから、財政的に立ち直る途上だと述べた。「ソ連が崩壊したのは、軍事的に負けたからではなく、資金が底をついたからだということを忘れてはならない。ウクライナを救おうとして、米国をそのような未来に追いやるのか」

(次より抄訳)
$40 billion Ukraine aid package delayed in US Congress — RT World News [LINK]

ロシア、米国、ウクライナ戦争——自己欺瞞の時代における死の舞踏

冷戦時代の敵同士が、戦争に向かって行進している。老いぼれたエリートたちにとって、それは文字通り最後の砦なのだ

ジャーナリスト、クリス・ヘッジズ
(2022年5月3日)

「老いぼれた帝国の好戦的な軽薄さ」に目がくらみ、米国はロシアとの戦争に向かっている。オースティン国防長官が米国の目標は「ロシアの弱体化」だと公言し、バイデン大統領がウクライナに330億ドルの軍事・経済支援(ロシアの2021年軍事費の半分)を要求したことを、他にどう説明すればいいのか。

アフガニスタン、イラク、シリア、リビア、ソマリアでの失敗で国家から何兆ドルも流出させ、ベトナムの悪夢から何も学ばなかった将軍と政治家は、自分たちが全能だという幻想に酔いしれる。彼らは外交的解決には関心がない。武器販売で何十億もの利益を得られる。政治的なポーズをとることもできる。

戦争の支配者には敵が必要だ。ジョージ・オーウェルが『1984年』で示したように、敵が見つからないときは、敵を作り出せばよい。敵は論理や地政学的な必要性とは関係ない。永続的な戦争の燃料となる恐怖と憎しみを煽ることに意味がある。

アフガニスタンからの屈辱的な撤退と、中東での20年にわたる軍事的惨事は、ウクライナで魔法のように償われた。米国はまだウクライナの地に軍隊を置いてはいないが、アフガニスタンでソ連と戦うために資金支援したムジャヒディンと同じように、ウクライナ人の所有権を手に入れた。

武器が増えれば、戦いが増える。戦いが増えれば、死と破壊が増える。死と破壊が増えれば、ロシアとの敵対関係が強まり、ロシアとの開戦にますます近づく。ロシアは、核戦争のリスクは非常に「現実的」であり、ウクライナへの外国の直接介入は「電光石火」の反応を引き起こすと警告した。

フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を議論する中、ロシアはNATOのさらなる拡大を危険な侵略行為と呼んだが、もちろんそれは事実である。ロシアとNATOの直接対決の引き金となる飛行禁止区域を求める圧力が高まっており、NATOの武器輸送隊をロシアが攻撃するような事態も考えられる。

軍国主義者には不倶戴天の敵が必要だ。その敵を率いるのは常に新しいヒトラーだ。新しいヒトラーとは、かつてはサダム・フセインだった。今はプーチンである。明日は習近平だろう。飽くことを知らない戦争屋を養うために国民を消耗させ、貧しくするには、たとえ幻影でも恐れさせなければならないのだ。

(次より抄訳)
Russia, the U.S. and the Ukraine war: Dance of death in an age of self-delusion | Salon.com [LINK]

2022-05-12

バイデンはウクライナに330億ドルの追加を希望。議会はそれを400億ドルに急遽増額した。誰が得をするのか?

米国人が苦しむ中、何百億ドル、いや、それ以上かもしれないが、米国の財源からウクライナに飛んでいっている

ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド
(2022年5月11日)

2月24日のロシアの侵攻以来、バイデン政権は、ウクライナの戦争の燃料として多額の資金支援を繰り返し発表してきた。4月末までで米国の総支出は、3月中旬に議会が承認した135億ドルの追加分と合わせ140億ドル近くになる。そのほとんどは兵器産業の財源となる。

これまでの金額はすでに膨大なものだが、4月28日にバイデン政権が発表したものに比べれば小さなものだ。議会に330億ドルの資金提供を要請しており、これまでに認められた支援額140億ドルの2倍以上になる。両者を合わせると、すでにアフガニスタン戦争の年平均額(460億ドル)を超えている。

アフガン戦争では、9・11テロ当時、タリバンがオサマ・ビンラディンとアルカイダをかくまっていたという主張から、一応は自衛らしき根拠があった。今米国は、米国の自衛権とはまったく関係ないウクライナでの戦争がわずか10週間続いただけで、アフガン戦争の年間平均を上回る出費をしている。

米国が3カ月足らずでロシア・ウクライナ戦争に費やした総額は、ロシアの1年間の軍事予算総額(659億ドル)に迫る勢いだ。米国はロシアを存亡にかかわる脅威として描くが、現実には毎年、ロシアの10倍以上の軍事費を使っている。軍事費第2位の中国の3倍、次の12カ国の合計よりも多く使っている。

巨額の支出で大きな利益を得ているごく一部の米国人がいることは、容易に想像がつく。それは兵器メーカー業界である。5月3日、バイデンはロッキード・マーティンの施設を訪れ、「ジャベリン対戦車ミサイルを製造する工場を称賛し、ウクライナの戦争の努力と民主主義の防衛に不可欠と述べた」という。

実際、ウクライナに大量の軍備を移送したことで、米国は自国の兵器の備蓄を減らし、政府による大量購入で補充する必要に迫られている。アフガン戦争が終結し、主要な市場を失った兵器業界が、さらに大きく有利な武器販売の機会を得たことに、陰謀論者でなくとも驚嘆することだろう。

ロッキード社とともにジャベリンを製造しているレイセオン社は、特に幸運だった。大量の在庫はもはやアフガンには必要ないのだが、今や国防総省を動かす元取締役(オースティン長官)が、ウクライナに出荷するためにこれまで以上に大量に注文してくれている。戦争が始まってから、株価はうなぎ登りだ。

ウクライナの戦争によって米国人が何らかの危険にさらされているという、説得力のある議論ができるだろうか。明らかに、米国人はウクライナ戦争そのものよりも、戦争に対する米国の対応によって、はるかに危険にさらされている。

(次より抄訳)
Biden Wanted $33B More For Ukraine. Congress Quickly Raised it to $40B. Who Benefits? [LINK]

2022-05-11

戦勝記念日のために〜第二次世界大戦の勝利について考えるときだ

ジャーナリスト、マシュー・エレット
(2022年5月9日)

77年前、ドイツは連合軍に降伏し、第二次世界大戦の惨禍は終わりを告げた。しかし、ここに驚くべき事実がある。連合国は第二次世界大戦に勝利していないのだ。これは20世紀後半に新しい形のファシズムがゆっくりと再出現し、今日世界が再び直面しているグローバルな独裁の危険と深い関係がある。

ロックフェラー、ウォーバーグ、モンタギュー・ノーマン、ヘンリー・オズボーン、モルガン、ハリマン、ダレスといった1920〜40年代の金融業者や実業家の強力なネットワークがなければ、第一次世界大戦後の経済危機に対する「解決策」としてのファシズムはありえなかったと言ってよい。

米大統領二人を輩出したブッシュ家の家長プレスコット・ブッシュは、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの取締役として、1932年にヒトラーが支持を失い、ドイツ国民が反ファシストのシュライヒャー将軍を首相に選出した際、破産したナチ党を存続させるために貴重な融資を行った。

米国が第二次世界大戦に参戦して11カ月後、米政府はプレスコット・ブッシュの経営する銀行が、あるオランダの銀行と深く関わっていることに疑問を抱いた。この銀行はナチスのパトロンだった実業家ティッセンに結びついていた。1942年10月22日、米政府はプレスコットの全財産を差し押さえた。

1928年のカルテル協定で、ロックフェラーのスタンダード石油は、石炭から合成ガソリンを作る特許と技術をすべて独IGファルベンに譲渡することが可能になった。この結果、ドイツは1934年には30万トンの天然石油しか生産できなかったのが、大戦中には650万トンに急増した。

オーエン・ヤングはモルガン財閥の手先で、ゼネラル・エレクトリック(GE)社を率い、1928年にドイツの債務返済計画(ヤング案)を策定した。米英金融街を代表して、(ドイツの賠償金支払いを統括する)国際決済銀行(BIS)を誕生させ、実業家と金融業者の国際カルテルを統合した人物である。

ヤング案が始まる2年前、モルガン財閥はすでにイタリアで新たに樹立されたムッソリーニのファシスト政権に1億ドルの融資を行っていた。同財閥幹部で民主党のキングメーカー、トーマス・ラモントはウォール街の「イタリア作戦」で、(ナチスドイツ支援における)プレスコット・ブッシュの役割を担った。

米タイム誌を創刊したヘンリー・ルースは、ムッソリーニを1923〜43年に8回も表紙に載せ、「奇跡の経済解決策を米国に」とファシズムを宣伝した。1929年以降の大恐慌に絶望した米国人は、ファシズムが食卓に食べ物を並べ、仕事を見つける手助けをしてくれると考えるようになった。

世界にファシズムをもたらした金融家たちは、第二次世界大戦後の数十年で、そのまま国際通貨基金(IMF)や世界銀行などのブレトンウッズ機関に入り込み、開発の道具を奴隷化の道具に変えてしまった。

(次より抄訳)
For Victory Day: It’s Time to Think About Finally Winning WWII [LINK]

2022-05-10

ウクライナにおけるグローバリズムのための戦争

米政府のウクライナにおける代理戦争は、国民国家に体現された歴史・文化・地理の連続性を超越するためのグローバリズムの計画である

元米陸軍大佐、ダグラス・マクレガー
(2022年5月4日)

1999年のコソボ空爆の際、クリントン大統領は米国民に「コソボはグローバリズム対部族主義(の戦い)だ」と言った。当時この発言に注目した米国民はほとんどいなかった。コソボも日常生活とは関係のない、よその土地での紛争だった。「部族主義」という言葉に米国民の多くは混乱したのだろう。

米国人の多くにとってナショナリズムとは、国への献身、危機や紛争に際し国の求めを自分よりも優先させる国民の心構えのことだ。米国のナショナリストは部族主義者ではない。米国やその歴史的制度、法に具現化された権利を守り、守ることを望むのであって、戦争を始めることを望んでいるのではない。

グローバリズムという言葉は、自由貿易や国家間の友好関係以上の意味を持つようになってきた。今日、西洋の国民国家とそのナショナリズムは、グローバリストによって偏見、排他主義、戦争の根源として非難されている。クリントンの「グローバリズム」は、バイデン政権の対ロシア代理戦争とつながる。

ロシアは欧州とアジアの文明をつなぐ独自の地理的な役割を果たしている。また、正教会文化は現在のロシアの国家思想、外交・安全保障政策の奥底にある信仰である。これらが危機にさらされている。

バルカン半島、アフガニスタン、イラクにおける米主導のNATO軍事介入に鑑みれば、NATOのロシア西側国境への進出を良しとすることはできない。それ以上にロシアからすれば、NATOのウクライナへの進出は、グローバリズムのロシアへの拡大と表裏一体である。

ロシアを「弱体化」させたいとする米国防・国務長官の発言は、米政府のいう「ルールに基づく秩序」がロシアにとって何の利益にもならないことを明確に示している。実際、この発言はロシア人の心中に、米国はNATO拡大を目指すウクライナの戦争の共戦国だという信念を確認させただけだ。

米国は長年にわたってウクライナとロシアの戦争を積極的に推進し、グローバリストが憎むウクライナのナショナリズムを利用して、自分たちの大義に貢献させた。それは成功した。今、同じグローバリストたちは、ウクライナが破壊されているにもかかわらず、武器や助言、激励によって戦争を長引かせている。

過去30年間、米政府は政権転覆を目指す軍事支援・介入に肩入れし、バルカン、近東、北アフリカ、南西アジアでの紛争と危機に米国を引き込んできた。ロシアを破壊しようとするグローバリストの戦争が東欧に癌のように広がるのを阻止するため、米国のナショナリストはこれまで以上に必要とされている。

(次より抄訳)
The War for Globalism in Ukraine - The American Conservative [LINK]

「死そのものに対する勝利」〜ロシア人にとって5月9日が重要な理由

第二次世界大戦から77年、戦勝記念日はロシアで最も重要な祝日とみなされている

歴史家、エフゲニー・ノーリン
(2022年5月9日)

5月9日(対ドイツ戦勝記念日)はロシア人にとって特別な祝日であり、私たちがこの日に大きな関心を寄せることは、他の国や文化の人々にとっては珍しいことだと思われることが多い。実のところ、ロシア人にとって「第二次世界大戦は昨日終わった」と言っても、真実から遠いものではない。

ロシア人にとって戦勝記念日は、死に対する勝利を祝うものだ。ほとんどの家庭で、先祖の戦争経験に関する物語がある。その多くは死者たちの物語だ。ソ連は戦争で2700万人以上を失った。1945年にベルリンが占領され、ヒトラーが自決するころには、ソ連はほとんど全員が誰かを失う国になっていた。

ナチスは極めて残虐な戦争を行った。破壊された集落の多くで、犠牲者の数は当時の住民の数と同じか、ほぼ一致していることが多い。住民を納屋に追い込み、火をつけた。砲撃や餓死、あるいは単に銃殺されることもあった。民間人に対する犯罪行為は、ヒトラーの特別命令により、説明責任が免除された。

戦時中、赤十字は何の保護にもならなかった。救急車や船はしばしば直撃弾で破壊された。年齢も関係なく、子供も大人と同じように殺された。

ロシアにとってあの戦争は、単に恐ろしいだけの物語ではない。普通の労働者と世界的に有名な作曲家がボランティアで消防団を結成し、モスクワの若い芸術家がドンバスの鉱山労働者やカザフの草原の村のアジア人徴用工と塹壕の中でパンを分かち合うことができた、国民統合の伝説でもある。

それは軍事的勝利の物語でもある。ナチスドイツの500万の強力な侵略軍はコーカサス山脈に達し、モスクワとレニングラードを脅かしたが、結局は敗北した。ロシアは大量の血を流したが、敵の軍隊は完全に破壊され、侵略を命じた独裁者は自殺した。我々は恐ろしい代償を払ったが、勝利は絶対であった。

ロシアでは、「第二次世界大戦」という言葉を耳にすることはほとんどない。当時作られた「大祖国戦争」という言葉が今も使われている。私たちにとって第二次大戦が普通の武力衝突を超えた、一種特別な出来事であることを強調したいのだ。ロシアににとって第二次大戦はまさに英雄的な叙事詩なのである。

戦争の記憶は、ロシアの生活のさまざまな側面に影響を及ぼしている。ロシア政府が西側国境の安全保障にこだわるのは、まさにあの大惨事の名残である。壁に背中を押されてギリギリまで後退しなければならなかったのだ。この記憶は、隣国との関係に深刻な影響を与え、消し去ることはほぼ不可能である。

あの激動の時代から私たちが学んだ最大のことは、どんな困難にも耐え、立ち向かうことができ、どんな試練の後でも国を立て直すことができるという、素朴な真実ではないだろうか。それは死の饗宴だけの記憶ではなく、生の勝利の記憶でもあるのだ。

(次より抄訳)
'Victory over death itself': Why the 9th of May is so important for Russians — RT Russia & Former Soviet Union [LINK]

2022-05-09

戦争屋が中国問題について間違っている理由

ミーゼス研究所会長、ルウェリン・ロックウェル
(2022年5月9日)

バイデンと彼を操るネオコン一味は中国と戦争を始めようとしている。米国は中国と争う必要があるのだろうか。なぜ中国と平和的・友好的な関係を築けないのか。戦争屋どもは、それはできないと言う。その「主張」とやらを見てみよう。

米国の戦争屋によれば、中国政府は異論を弾圧し、人々を監視下に置いているという。これは事実だが、なぜ中国と戦争をする理由になるのだろうか。

米国の高学歴エリートは自国の伝統だった言論の自由、宗教の自由、私有財産の擁護をほとんど放棄し、覚醒した左翼は大学や大企業で、中国共産党でさえ否定した毛沢東の文化大革命じみたイデオロギー専制を確立しようとしている。米国が人権侵害を理由に中国を攻撃するとは、偽善以外の何物でもない。

中国は太平洋で勢力を拡大し、台湾の征服を目指していると戦争屋はいう。もしそうでも、それがなぜ米国にとって重要なのか。ミスチーフ礁(美済)だのスカボロー礁(黄岩島)だのを誰が支配するかは、米中の戦争を正当化するほど重大なことなのか。

オースティン米国防長官は、中国が新疆ウイグル自治区のウイグル人に対し、ニュルンベルク裁判でナチスが絞首刑にされた罪に匹敵する犯罪(ジェノサイド)を行っていると公に非難する。だが中国がウイグル人を迫害しているという主張には、疑うだけの理由がある。

いずれにせよ、誰が米国を世界の諸問題の責任者に任命したのだろうか。中国は、米国がメキシコやアメリカ先住民から盗んだ財産を取り戻すために、米国を攻撃する権利があるのだろうか。

中国が台湾に進攻した場合、米国は何をする用意があるのか、あいまいなままだ。ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官が1972年に「中国の一部」と発言した台湾の独立のために、米国は中国と戦うのだろうか。

1956年のハンガリー動乱の際、ソ連がブダペストに戦車を進入させたが、アイゼンハワー大統領は介入を拒否し、代わりにハンガリー難民を歓迎した。1961年にベルリンの壁ができた際、ケネディ大統領は予備役を招集してベルリンに行き、有名な演説をしたが、何もしなかった。

実のところ、中国は米国を脅かしてはいない。米国が中国を脅かしているのだ。米国が中国周辺で軍事的な包囲を強化したため、中国は対応を余儀なくされている。習近平の動きは何もないところから生まれたわけではない。

2010年代初め、当時のオバマ米大統領は、尖閣諸島(釣魚島)が日米安保条約の対象だと表明した。このような挑発行為は、中国を封じ込めようとする企ての一環で、緊張を生む。中国は当然反応し、攻撃的で拡張主義だと非難されることになる。こうして双方が軍事化するという悪循環に陥っている。

中国と戦争をしたくなければ、中国を軍事的に包囲しようとするのをやめよう。真実を知ることは重要だが、それ以上に重要なのは、真実に基づいて行動することだ。今のうちに、米政府を牛耳る犯罪者集団の狂気を止めよう。

(次より抄訳)
Why the Warmongers Are Wrong About China - LewRockwell [LINK]

ウクライナ戦争だけで、バイデンはこの長い間で最悪の米大統領に

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年5月8日)

バイデン米政権はウクライナ戦争の終結交渉を妨げ、経済制裁の緩和など平和の確保に役立つ措置に関し、ウクライナに外交交渉の権限を一切与えていない。これは純然たる事実だ。米政府の上級外交官は、ロシアの相手方とのいかなる対話にも一貫して欠席している。

実際、米政権幹部(ブリンケン国務長官)の発言からは、この戦争の長期化を期待していることが見て取れる。死と破壊を最小限に抑えるための迅速な戦争終結は、アメリカ帝国にとって興味がないだけでなく、望ましくもないのだ。

これはただの戦争ではない。世界の二核大国の一方が他方に行う代理戦争なのだ。イラクよりもベトナムよりも深刻だ。ロシアには国家としての存在が脅かされていると信じるに足る理由がますます増えている。これは地球上の全人類の死という結果を容易にもたらしうる戦争なのだ。

米国の「国防」長官(オースティン)は、戦争でロシアを「弱体化」させることが米国の目標だと公言している。バイデン氏自身、ロシアの政権交代を求めるとしか解釈できないような発言をしている。米当局は、米情報機関がロシアの将官の殺害と軍艦の沈没を直接手助けしたとマスコミにリークしている。

米国の情報カルテルは、ロシアの侵攻を防ぐ方法を知っていた。ウクライナをNATOに加えないことを約束する。ゼレンスキー大統領がミンスク合意を守り、ロシアと和平を結ぶなら、彼を殺すと脅すファシスト党派から保護すると約束する。こうした低コストの作戦をいくつか実行すればよかったのだ。

世界が核戦争にこれほど近づくのを許したことで、バイデンはすでにブッシュ以来、最悪の米大統領になっている。それ以上かもしれない。歴史は、バイデンが歴代の大統領の中で最も邪悪な大統領であることを示すかもしれない。

核戦争を防ぐことは、米大統領にとって最も重要な仕事だ。あまりにも重要なので、それについて話す必要さえない。しかし現政権は日々、核戦争へのサイコロを振っているようなものだ。

たとえ人類がこの膠着状態(そして次に来る中国との膠着状態)を生き延びたとしても、バイデンはこの核戦争への接近を許したことで、許しがたいほど邪悪な大統領であることに変わりはないだろう。地球上のすべての生命体に対し、気軽に核戦争のサイコロを振ることに弁解の余地はない。

この世界に核戦争をもたらすわずかな可能性でも、もてあそぶことは許されない。それは実際の核戦争を除けば、誰もが犯しうる最悪の犯罪だ。人類が永久に自滅する前に、奥底にある小さな正気の火花が発火することを願うばかりだ。

(次より抄訳)
Ukraine Alone Makes Biden The Worst US President In A Long Time – Caitlin Johnstone [LINK]

2022-05-08

#15 ルールはいつも正しいか?

 
「法律などのルールを守るのは常識だ」。たいていの人は、そう堅く信じていることでしょう。日本人にはその傾向がとくに強いと感じます。けれども有名なギリシャ悲劇は、その常識に鋭い疑問を投げかけます。

<参考資料>
  • ソポクレース『アンティゴネー』(中務哲郎訳、岩波文庫) [LINK]
  • リバタリアン通信: アンチゴーヌの問い [LINK]
  • Ancient Greece’s Legacy for Liberty: The Tragedy of Politics | Libertarianism.org [LINK]

2022-05-07

バイデンがウクライナに送る何十億ドルもの武器は、まともに使えない

ウクライナ政府は、米国やNATOの複雑な兵器を維持・修理することができない——壊れたら使い物にならない

元国連大量破壊兵器査察官、スコット・リッター
(2022年5月6日)

ロシアの「特別軍事作戦」から身を守る重火器が必要だと、米国やNATO加盟国に迫っていたウクライナのゼレンスキー大統領は、その願いをかなえたようだ。米議会は4月28日、ウクライナへの迅速な武器貸与を可能にする、第二次世界大戦時代の法律に命を吹き込む法案を可決した。

今回の議会決定は、ロシアとの紛争が始まって以来、ウクライナにすでに提供されている約30億ドルに加え、330億ドルの追加軍事支援をバイデン大統領が承認したことを受けたものだ。榴弾砲や装甲戦闘車などの重兵器が中心で、ウクライナは戦闘で破壊・損傷した装備を交換するために必要としている。

ウクライナ軍が米国から提供される大規模な軍事援助の一部として受け取ろうとしている重装備には、維持保守という、明言されないが重要な現実が伴う。簡単にいえば、壊れたら使えないということだ。とくに現代戦の果てしない緊張とストレスにさらされた場合、軍備は頻繁に壊れる。

例えば、米国がウクライナに供与しているM777型155ミリ榴弾砲(総数約90基)である。軽量で運搬しやすい榴弾砲として設計されたが、戦闘状況下で金属疲労、発射時の不安定さ、反動による損傷などの深刻な問題がすぐに明らかになった。鉄の代わりに使用したチタンは金属疲労を起こしやすい。

M777を装備した砲兵部隊の戦闘効果は、主に保守の問題から作戦開始四日目あたりから低下し始める。この問題を解決しないまま放置すると、装備した部隊は一週間以内に完全に戦闘不能に陥る可能性がある。現場レベルの広範な保守は、訓練を受け、兵站の整った部隊でなければ実行できない。

ウクライナ軍は独グラーフェンベールの米軍訓練センターでM777システムの訓練を受けているが、運用には人手(8人乗務)が必要で、戦闘中のシステム維持方法には関心がないだろう。前線に出たとしても、システムの複雑さから非効率的な運用は確実で、早晩修理する手段もなく故障してしまうだろう。

M777の保守問題は、米国とNATO同盟国がウクライナに提供する他の重装備にも共通する。戦闘下ですぐ故障することがほぼ確実で、後方支援計画もない、時代遅れの兵器をウクライナに提供することで満足しているようだ。

バイデン大統領や、ウクライナを訪問したペロシ下院議長は、戦闘に入るとすぐに故障することがほぼ確実で、維持修理するインフラもない兵器をウクライナに提供している。自殺薬を与えて栄養と称しているにすぎない。とんだ友人もあったものだ。

(次より抄訳)
Biden is sending Ukraine billions of dollars of weaponry it can't use properly — RT Russia & Former Soviet Union [LINK]

2022-05-06

欧米が戦うのは偽情報か、それとも反対意見か?

欧米でポピュリズムが高まるとともに、政府見解から外れた物語に対する弾圧が始まる

コラムニスト、レイチェル・マースデン
(2022年5月5日)

バイデン米大統領が4月27日に発表した、国土安全保障省での偽情報統制委員会の新設は、自由に対する新たな追い打ちだった。今回は、多様な情報を得る市民の権利への冒涜だ。

ウクライナ外務省の元広報顧問、ヤンコビッチ氏が率いる同委員会の初任務は「ロシアからの偽情報と、米・メキシコ国境に関する誤解を招く情報」への対処だという。移民と外交というこの二つの問題が現在、米政府の重大な失敗とみなされているのは興味深い。最終的に統制の標的になるのは反対意見だ。

ヤンコビッチ氏が2020年に出した本『情報戦争の敗れ方〜ロシア、偽ニュース、紛争の未来』の題名は、米欧のシナリオは真実でロシアのシナリオは「偽ニュース」だと描く。米欧主流メディアが、偽ニュースや戦争プロパガンダとみなされかねない政府製の物語の宣伝と無縁ではなかった事実が見えなくなる。

操作した情報だけを、政府やその補助を受けた少数メディアを通じて国民に与えようとする米欧諸国の欲望は、より貪欲になっている。おそらく政府の目的が専制的になるほど、ポピュリスト的な感情が高まり、英国のEU離脱やトランプの大統領選出、米国が支援する紛争への反対などが起こるからだろう。

国内安全保障と偽情報統制の融合が明らかになったのは2016年、欧州議会がイスラム系テロリストのプロパガンダとロシアのメディアを同一視し、ロシアのメディアを貶めるプロパガンダ工作とみられる行為を行なったときだ。その後、欧米政府は次々と言論の自由を国家安全保障の管理下に置くようになった。

たとえばフランスでは、ネット上の情報のやり取りの責任を国内情報機関(DGSI)に委ね、この取り組みに防衛予算の提供を受けた新興企業を巻き込むことを検討していると報じられている。

カナダの電子スパイ機関である通信安全保障機構は、ウクライナ紛争について真偽の定まらない出来事に関する自分の解釈を事実としてツイートし、一方でロシアの解釈は無効だと日常的に非難してきた。

それ以前にもカナダ軍はトルドー首相の下、数カ月に及ぶ軍事級のプロパガンダ作戦を展開した。アフガニスタン戦争で磨かれた戦術を用い、同首相の描いた新型コロナウイルスの物語を、無防備なカナダ国民に信じ込ませようとしたのだ。

英国はコロナやロシアに関する「偽情報」に対抗するため、軍の心理戦の専門家をNATOに派遣した。「市民が自らを守るための正しい情報を持ち、悪意のある偽情報作戦から民主主義が守られるように、助言し支援する」とウォレス国防相は昨年述べている。

テロ、健康、そして今では偽情報はすべて、私たちの自由を急速に侵食するための口実として役立っている。しかし、私たちは本当に安全なのだろうか。それとも、ますます自由が失われていくだけなのだろうか。

(次より抄訳)
Is the West at war with disinformation or dissent? — RT World News [LINK]

ウクライナ問題でマスコミがまたもや失態

ウクライナ危機の報道は、過去の戦争と同様、偏向している

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2022年5月2日)

ウクライナ戦争前の数カ月、米国の報道はペルシャ湾戦争、バルカン戦争、イラク戦争、リビアやシリアへの介入などにおける過ちをほぼすべて再現した。NATOの東方拡大など米国の行動を批判した一部の意見も、「民主的」なウクライナとの連帯を維持し、ロシアに妥協するなという津波に押し流された。

戦争が始まると、報道はさらに偏向した。米国は、ロシアの侵略に抵抗する「ウクライナとともに」立たなければならないというのが、メディアの重要なメッセージとなった。かつて一般に見られた、米国の利益はしばしば外国の利益とは異なるし、当然そうあるべきだという感覚が、著しく失われている。

米初代大統領ジョージ・ワシントンは退任挨拶で、「友好国に同情すれば、現実に共通の利益が存在しない場合に、架空の共通利益という幻想を助長し……十分な動機もなく、紛争や戦争に参加することになる」と述べた。メディアの報道にはこのような冷静さ、現実主義、慎重な態度が欠けている。

米国の報道からは、NATOの拡大、ウクライナをめぐる欧米とロシアの長年の動き、ウクライナ東部の分離独立戦争の意義など、紛争に至った様々な要因や事象がほとんど伝わってこない。その代わり、プーチンは悪人で、残忍な侵略者である。そうでないと示唆する者はロシアのプロパガンダの道具だという。

とりわけ浅薄なのはテレビ報道だ。米国の視聴者は、ロシア軍の砲弾が炸裂する映像、涙を流し必死で逃げる難民(ほとんどが女性と子供)、自国を守るために武装するウクライナ市民の決意などに目を奪われる。トラウマを抱えた難民の映像を大量に提供しても、紛争を理解することにはほとんどならない。

放映した資料の一部が捏造であったことは、マスコミの信用を失墜させた。ミス・ウクライナの女性が手にした武器は、エアソフトガンだった。ロシア軍艦に吹き飛ばされたというスネーク島の殉教者たちは、生きていた。ウクライナのパイロットとロシアの侵略者との空中戦の映像は、ビデオゲームだった。

報道で煽られた十字軍的な心理は、理性的な反対意見を委縮させた。批判者を「プーチン擁護派」「プーチン支持派」と断じる記事は、どこにでも見られるようになった。米国民の間に反露ヒステリーを煽ることで広がった不寛容な雰囲気は、第一次世界大戦中の米国の反ドイツ感情に似ている。

反対意見を封じ込め、民族的な憎悪の触媒となり、危険な軍事的十字軍を支援することは、米国民が責任ある報道機関に求めるものではない。残念なことに、手にしたものはまたしてもそれだ。

(次より抄訳)
The Press Fumbles Again on Ukraine - The American Conservative [LINK]

2022-05-05

いや、「フェイクニュース」じゃない。ナチスのプロパガンダだ。

ニューヨーク大学教授(メディア研究)、マーク・クリスピン・ミラー
(2022年5月3日)

経済的・政治的な動機による嘘の報道は、今日では科学と芸術の域に昇華され、人類の未来に対する最大の脅威の一つになっている。それは地球規模での集団洗脳であり、人間の意識に対する戦争であり、人々の現実を見る能力、嘘から事実を見わける能力に対する攻撃であり、真実に対する戦争である。

4月8日、トーチカU弾道ミサイル(3週間前にドネツクの大学通りの攻撃で使われたものと同じタイプ)が、4000人の地元市民が避難を待っていたクラマトルスク鉄道駅に向けて発射された。57人の市民が死亡し、109人が負傷した。ウクライナの偽旗テロ攻撃と密接に結びついていた。

ミサイルがトーチカUであり、ウクライナ領内から飛来したことは疑いようがない。ウクライナはドンバス戦争でトーチカUミサイルを使い続けているが、ドンバス共和国にはない。ロシアは2019年を最後に使用をやめ、より効果的で正確なイスカンダルに切り替えている。

ミサイルの側面には、ロシア語で「子供たちのために」と書かれていた。ロシア人が親ロシア派のウクライナ市民に対して戦争犯罪を犯しただけでなく、露骨に侮辱を加え、世界が見ている前で、ロシア語でこれほど卑劣なことを書き、文字どおり自分たちを巻き込むとは、いったい誰が信じるだろうか。

砲弾でできた穴の形状や弾頭に対する尾部の着弾位置など、ミサイルが飛んできた方向を特定する科学的な方法もある。方法は標準的でシンプルであり、世界中の軍隊で使用されている。物理学の法則のように、いついかなる状況でも等しく適用される。推定される発射地はすべてウクライナ軍の支配下である。

ミサイル(シリアル番号 Ш91579)が、クラマトルスクから45キロ離れたドブロポリア近郊にある第19ウクライナ・ミサイル旅団から発射されたことを証明する証拠の一覧は、スコット・リッター氏の記事を参照されたい。他の多くの記事も、自国民に対する偽旗攻撃である証拠や傍証を列挙している。

欧米の親ナチ宣伝家にとって、これは厄介だ。すべての証拠がナチの仕業だと証明している。では彼らはどうするか。もちろんいつものようにでっち上げるだけだが、ちょっとひねりを加えている。今回は、自分たちに関する偽ニュースをでっち上げ、ロシアが作った「偽情報」だと言い逃れようとしている。

彼らの手口はこうだ。駅攻撃の本当の映像を編集し、偽のBBCのイントロとロゴを加え、「見て!」とキャプションをつけて拡散する。その後、偽の「BBC」の映像を、本当の事実とともに、「論破」するというわけだ。

現代の欧米メディアは、ゲッベルス(ナチスドイツの宣伝相)とバーネイズ(プロパガンダの先駆者)の産物であり子孫である。金で雇われた病的な嘘つきが一度でも真実を語ることを期待してはならない。彼らは真実と道徳の敵、人類の敵である。真実を尊重することは、すべての道徳の基礎である。

(次より抄訳)
No, it's NOT "fake news." It's Nazi propaganda. [LINK]

「あなたは何もわかっていないと思う」〜ポール米上院議員、米政府を偽情報の最大の発信者と非難

スプートニク
(2022年5月5日)

ランド・ポール米上院議員(共和党、ケンタッキー州)は議会の公聴会で、バイデン政権が新たに設立した偽情報統制委員会はまったく信用できない、なぜなら米連邦政府こそ偽情報の世界史上最大の発信者だからだ、と語った。

ポール議員は水曜日(5月4日)の公聴会で、国土安全保障省のマヨルカス長官に、「あなたは偽情報が何であるかわかっていないと思うし、政府にそれができるとは思わない」と言った。「偽情報の世界史上最大の発信者が誰か知っているか。米国政府だ」

ポール議員が自分の主張を立証するために取り上げたのは、ペンタゴン文書、マクナマラ元国防長官が米国をベトナム戦争に巻き込んだこと、レーガン元大統領がイラン・コントラ事件でついた嘘、ブッシュ(子)元大統領がイラク侵略を正当化するために大量破壊兵器の存在についてついた嘘である。

ポールはまた、トランプ陣営とロシア政府の共謀疑惑を捏造するために使われた「スティール文書」を持ち出した。ロシアはトランプ陣営との関係を繰り返し否定し、ロバート・モラー特別検察官の調査でも結局、共謀はなかったとされた。

「米国民は愚かだから、何が真実か教えてもらわなければならないとでも思っているのか。あなたはスティール文書の真実を認めることさえできない」とポール氏は公聴会で述べた。「政府が真実を解明できると信用することはできない。政府はほとんど偽情報を流している」

「もしあなたが情報と偽情報の判定役だと言って回るなら、何もわかっていないと思う。......歴史的な視点がないから、偽情報の最大の創始者がおそらく米国政府だとわからないのだ」とポール議員は続けた。

公聴会の映像では、ポール議員が発言をやめると同時に、マヨルカス長官が、国土安全保障省は「真理警察」として行動するつもりはないと反論しているのが確認できる。

水曜日の公聴会は、国土安全保障省が最近、誤った情報に挑戦・反論する方法を調整するために、特にロシアと非正規移民に焦点を当てた偽情報統制委員会を新たに設立したことを受けたもの。反対派はこの新しい組織を、ジョージ・オーウェルの(小説『1984年』に登場する)「真理省」に例えている。

(次より抄訳)
'I Think You Have No Clue': Rand Paul Blasts US Government as Biggest Propagator of Disinformation - 05.05.2022, Sputnik International [LINK]

2022-05-04

これらの国々は、ロシア・ウクライナをめぐる米国の怒りは覚悟の上

「グローバル・サウス」諸国はおびえることなく、制裁や非難について西側につくことをますます拒んでいる
ジャーナリスト、スティーブン・キンザー
(2022年5月2日)


中南米の二大国、メキシコとブラジルはロシアへの制裁や貿易縮小を拒否している。アフリカの経済大国である南アフリカも同様だ。しかし、親ウクライナ陣営への参加に対する抵抗が最も堅固かつ広範なのはアジアである。

世界の人口の3分の1以上が住む中国とインドは、最も強力な反対派だ。両国とも国連でロシア非難決議を棄権し、米国が支援する制裁を拒否している。国連での投票の直後、ブリンケン米国務長官は、米国が「人権侵害の増加など、最近のインドにおけるいくつかの懸念すべき動向を監視し始めた」と発表した。

人口2億人の核保有国であるパキスタンは、国連で投票を単に棄権しただけではない。米国から反露連合への参加を要請された際、同首相は「我々はあなた方の奴隷か」とあざ笑った。4月9日に解任されたカーン氏は政権復帰を目指すと宣言し、「傲慢で脅迫的な」米国に対抗するキャンペーンを展開している。

ソロモン諸島が中国と締結した新たな安全保障条約についても、米政府はほとんどパニックに陥っている。ソガバレ首相は、米国がソロモン諸島に「主権問題を管理する資格がない」と決めつけるのは「非常に侮辱的」だと答えた。報道ではクーデターやオーストラリアからの侵攻が取り沙汰されている。

他のアジア諸国も米国の勢力圏から離れる方向に動く。ベトナムは国連でのロシア非難決議を棄権した後、ロシア軍との共同作戦を次々と発表している。今年のG20サミットを主催する人口第4位の国インドネシアは、プーチンを孤立させようとする米欧の努力にもかかわらず、彼の招待を主張している。

サウジアラビアのムハンマド王子は、バイデン大統領と石油増産に関する協議を拒む一方で、プーチン大統領とは長電話をし、中国の習近平主席には近々リヤドを訪問するよう招待したと報じられている。アラブ首長国連邦は「どちらかの味方をすれば、さらなる暴力につながる」としてロシア非難を拒否した。

ロシアの侵略を支持する世界の指導者はほとんどいない。しかしセルビアを爆撃し、イラクに侵攻し、アフガニスタンを占領し、リビアを攻撃した米国が、どうして侵略反対を主張できるのか。CIAによる拉致や秘密監獄での拷問に慣れ親しんだ米国が、「ルールに基づく秩序」を支持すると言っても虚しい。

バイデン大統領がプーチンに戦争犯罪の裁判を受けるよう要求したことは、報道された残虐行為によって正当化されるかもしれないが、偽善とみなされる恐れがある。米国はハーグの国際刑事裁判所への加盟を拒んでおり、もし同裁判所が米国の戦争犯罪を調査したらオランダに侵攻するとまで脅した。

次の世紀を形づくるのは欧州ではなく、アジアの力である。多くのアジア諸国は、自国の利益が大陸の巨人であるロシアや中国の利益と一致すると考えている。これらの国々はかつてのように簡単に脅すことはできない。米国の威嚇と警告は、アジア諸国をさらに遠ざけかねない。

(次より抄訳)
These countries are willing to risk US ire over Russia-Ukraine - Responsible Statecraft [LINK]

西洋文明は米国が情報戦争に勝つために組織されている

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年5月2日)

アメリカ帝国のプロパガンダと検閲、シリコンバレーのアルゴリズム操作は、最も急を要する問題である。他のすべての問題に注意を向けられなくするからだ。そしてあらゆる兆候が示すように、事態はさらに悪くなろうとしている。

ウクライナに関する検閲は、これまでとはまったく違う種類のものだと改めて強調する必要がある。今回は人命救助や民主主義を守るといった建前すらなく、「この戦争について人々が考えることをコントロールする必要がある」というだけのことだ。

「デマ」や「誤報」が何かをまず判断しなければ規制できないし、その区別をする権限を誰かに与えなければ判断できない。しかし現実を客観的に裁定してくれる、慈悲深く公平無私で全知全能の存在などない。いるのは自己の利益のために行動する、欠陥のある人間だけだ。

新型コロナに関する真偽を決める権限を得た次の瞬間、同じ政府、メディア、ハイテク企業が、戦争に関するプロパガンダと検閲を始めた。ウクライナに関する情報封鎖は問題ないというコンセンサスは、ロシアが侵攻した日にすでに形成され、準備されていた。その権限を持つのは当たり前だと思われていた。

この2年間、政府とつながった独占企業がコロナ対策に関する言論を制限すべきではないと言おうものなら、「反ワクチン」やそれ以上の罵声を浴びた。しかし、これら警告を発した人々は100%正しかったことがわかった。

強力な機関に真偽を区別する権限を与えたら、ウイルスに関する誤報よりもはるかに危険であることは、現状を見れば明らかだ。帝国が「偽情報」管理委員会を設置する一方で、ロシアへの攻撃を日増しに激化させ、遠くない将来に中国にも同様の攻撃をしようと準備している。私たちの文明全体は、米国がプロパガンダ戦争に勝つために組織化されている。

言論の自由によって、社会は真実に向かい、道を踏み外せば軌道修正し、権力は責任を負わされる。だから検閲は悪いことなのだ。これは検閲を行うのが政府であろうと、ハイテク業界の新興財閥であろうと同じである。

もし現状維持の権力を支持する人々が有力な言論手段をすべて利用できるのに、権力を批判する人々ができないとしたら、言論の自由を守るという目的が失われる。言論の自由の保護は、縛られない言論で権力に歯止めをかけるために設けられたのだ。

人々はまだ新興SNSのGabやTRUTH Socialで既成のウクライナ物語を批判できるから大丈夫だと言うのは、人々はまだ地面に穴を開けて政府批判を話せるから大丈夫だと言うのと同じだ。言論の自由は実現されていない。

何が「誤報」かを決める権限を権力に許したとき、私たちは今の言論状況に対する同意を与えてしまったのだ。しかし、同意を取り消すのに遅すぎるということはない。私たちの声を支配者の手から引き離す戦いは、厳しいものになりそうだけれども。

(次より抄訳)
Western Civilization Is Being Organized Around Winning US Infowars – Caitlin Johnstone [LINK]

2022-05-03

戦争プロパガンダが始まるまでは、誰もが反戦派だ

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年4月27日)

戦争プロパガンダが始まるまでは、誰もが反戦派だ。誰も自分のことを戦争屋だとは思わないが、プロパガンダの機構が動き出すといつの間にか、プログラムされたスローガンを口にし、プログラムされた旗を振り、帝国の戦争マシンが望むものすべてに同意するようになる。

真の反戦派であることはたやすくない。操作・混乱を図る情報の洪水に悪戦苦闘していると、洗脳された人々から罵声を浴びる。かわいくもない。楽しくもない。心地よい愛と平和のひとときでもない。やらない理由を乗り越え、これまで存在した中で最も洗練されたプロパガンダマシンに立ち向かうことだ。

人々が自分を「反戦」と考えるとき、たいていはイラク戦争に反対するとか、ヒトラーのような理論上の大統領が、人殺しが好きだから戦争を始めるといったことを想像しているのだろう。反戦が実際にどのようなものかという現実を思い描いていない。

国民に戦争を売り込むことは、あらゆる戦争戦略に組み込まれている。戦争はつねに魅力的に見えるように設計されている。残虐なプロパガンダが行われないことはない。軍事介入を特別で必要なものとして売り込む理由は必ずある。現代の戦争はそうやってパッケージ化され、表現されているのだから。

自称左翼や反帝国主義者が、米国の最新の戦争計画をいつも応援するのは、このためだ。彼らは理論的には戦争というものにイデオロギー的に反対しているが、実際に現れる戦争の姿はいつも、彼らの描いていたものとは違うのである。

主流メディアがプロパガンダについて発する警告は、ロシアのプロパガンダが、欧米人の消費するプロパガンダ全体の100%近くを占める印象を与える。実際にはわずか1%にすぎない。プロパンダのほとんどすべてが、欧米の情報源から発信されている。

プロパガンダは、社会で最も見落とされ、過小評価されている側面だ。大衆の考え方、行動、投票に、いかなる公式の制度よりもはるかに大きな影響力を持つ。しかしほとんど議論されず、学校でも教えられず、政治思想でも触れることがない。

ロシアのプロパガンダに体制側が気をもむのは、彼ら自身がメディアを使って大衆の考え方や行動、投票方法を操作できると白状するに近い。自分たちがやっていることを認めていないだけなのだ。

すべての嘘をすぐに見破れるだけの知識と経験があると思い込んではいけない。相手は強力なプロパガンダマシンであり、人は幼い頃からその影響に浸かってきた。意識の高い人でさえ、主流の世界観に洗脳され、世界について得る情報のほとんどはプロパガンダの仮想現実から育ち、枝分かれしたものなのだ。

本当に真理に基づいた世界観を形成するためには、物事を明確に見る努力が必要だ。そうしない限り、真の反戦は不可能である。自分が理解していないものに反対しても、うまくいかない。帝国の戦争マシンと戦うためには、帝国のプロパガンダマシンと戦わなければならない。

(次より抄訳)
Everyone’s Anti-War Until The War Propaganda Starts – Caitlin Johnstone [LINK]

ウクライナはツイッターでは勝っているが、現実の世界ではドンバスの戦いに負けている

ウクライナが地上で勝利を収めたという主張は、せいぜいキエフとワシントンの希望的観測にすぎない

元国連兵器査察官、スコット・リッター(2022年5月1日)

ブリンケン米国務長官、オースティン同国防長官、ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、ロシアがウクライナでの戦争で敗北しつつあるという楽観論をともに受け入れている。しかし、このシナリオは単なる希望的観測にすぎない。

ウクライナとその西側支援者(政府とメディア)が整然と繰り広げるプロパガンダ作戦と、戦略目標や目的はもちろん、地上での日々の戦闘の詳細にも深入りしようとしないロシアの広報活動とは対照的だ。その結果、二つの物語が不均衡に対立し、最後は認識が現実に取って代わる情報戦が起こっている。

「キエフの戦い」は、認識と現実の違いを端的に示す例だ。ウクライナの立場は、自軍がキエフへの進入路でロシア軍に完勝し、撤退を余儀なくさせただけでなく、ロシアの「特別軍事作戦」の目標を狂わせたというものだ。この見方は西側の従順なメディアや、政治・軍事指導者によって受け入れられてきた。

だが現実には、ロシアの「フェーズ 1」 作戦はウクライナ軍に致命的ともいえる損害を与え、数万人の兵士を殺傷し、ウクライナの重火器、すなわち大砲、戦車、装甲戦闘車両の大部分を破壊してしまったのである。ウクライナが欧米に戦車、装甲車、大砲の補給を要求したのは、在庫を使い果たしたからだ。

ロシア軍の目的の一つは、燃料・弾薬の貯蔵施設を破壊し、指揮統制を弱めることだった。その結果、ウクライナはキエフを守り抜いたものの、戦闘力全体では大きな犠牲を払った。ロシアは休息や再武装、転戦の時間を得たが、ウクライナ軍はロシアの空爆と精密誘導巡航ミサイルなどによる砲撃にさらされ続けた。

マリウポリの戦いも、認識と現実がぶつかり合った例である。ウクライナからすれば、英雄的な戦闘員集団がここを死守することで、数万のロシア軍を縛り付けている。このまま抵抗を続ければ、5月9日の対独戦勝記念日の前にロシアが勝利を宣言することができなくなり、大きなプロパガンダ効果がある。

しかしロシアはすでにマリウポリでの勝利を宣言している。アゾフスタル製鉄所の地下シェルターに数千人の防衛隊が残っていることは認めるが、軍事的に何の意味もないという。プーチン大統領は、ロシア軍を犠牲にしてウクライナ軍を地下から追い出すのではなく、施設を封鎖し、待ち受けるよう指示した。

製鉄所にウクライナ人がいることは、同国のプロパガンダ的な勝利を意味する。しかし現実にはマリウポリはロシアに陥落した。おそらく数千人の民間人を伴ったウクライナの防衛隊が食糧の減少で衰弱する間、市民は町の再建に着手している。ロシアの陸橋は無傷で、ドンバスへの攻勢は滞りなく進んでいる。

ドンバスとウクライナ東部をめぐる戦いは、ほとんど終わったも同然だ。これが厳しい現実であり、ゼレンスキー大統領や彼の米国のパートナーがいくら希望的観測や認識操作をしたところで、それを変えることはできない。

(次より抄訳)
Ukraine is winning the battle on Twitter, but in the real world Kiev is losing the fight for the Donbass — RT Russia & Former Soviet Union [LINK]

2022-05-02

ウクライナに新たな転機。プーチンの戦争はバイデンの戦争になる

カウンターパンチ、リチャード・ルーベンスタイン(2022年4月29日)

2月24日のロシアによるウクライナ侵攻は、「プーチンの戦争」と呼ばれても仕方がないものだった。2014年に親露政権が倒されて以来、米国の武器がウクライナに流入し、同国はドンバスの親露派を殺害するためにそれを使っていた。しかし組織的な暴力へと一線を越えたのはやはりプーチンの責任だ。

それでも、そこで議論が終わるわけではない。それどころではない。 当初はプーチンの戦争と呼ぶのが正しかったが、今やバイデン(米大統領)の戦争にもなっている。

米国の高官はウクライナへの重火器のさらなる大量輸送を約束し、ウクライナの「勝利」を口にするようになった。 ブリンケン国務長官とオースティン国防長官はウクライナに赴き、ゼレンスキー政権がロシアを「敗北」させ、「弱体化」させるために必要なあらゆる軍事・経済支援を提供すると約束して帰ってきた。

このようなハイリスクなチキンゲームを正当化する理由は何だろうか。プーチンが不当に戦争を始めたので、ウクライナと支援国は侵略者を罰するために戦争を激化・長期化させる権利があるらしい。防衛側は侵略者と交渉する義務はないということだ。たとえ交渉拒否が核戦争開始のリスクを伴うとしても。

この論理は、誰が戦争を始めたかということだけで戦争を正当化したり、不当化したりすることの誤りを示している。 戦争は、間違って始めた場合だけでなく、間違って激化させ、長引かせた場合にも不当である。 紛争の起源だけで、その倫理的・非倫理的な内容が決まるわけではない。 

もし今、プーチンがドンバス共和国の地位に関する交渉などロシア側の利益のために停戦を申し出たとしたら、米国とウクライナはプーチンを罰したり「弱体化」させたりするために対話を拒否することが正当化されるだろうか。 もちろん、そんなことはない。

米国がロシアの核の「脅し」に対抗し、兵器の威力を示せば、欧州における米国の覇権を確保し、アメリカ帝国がまだ健在だと示せるし、中国との対決に向けた地ならしにもなる。 米欧陣営で最も幸せなのは、軍国主義者、軍産企業、そして新たな冷戦、あるいは熱い戦争を切望する政治家たちである。

ロシアの指導者は不当に戦争を始め、米国の指導者は不当に戦争を長引かせた。この戦争の現在の犠牲者はウクライナ人とロシア人であり、このまま激化すれば、欧州と世界の人々が犠牲者となる恐れがある。今こそすべての関係者が、国連のグテレス事務総長とともに分別ある話し合いを行うべきだ。

(次より抄訳)
The New Turn in Ukraine: Putin’s War Becomes Biden’s War - CounterPunch.org [LINK]

米国のウクライナへの武器供給は1月に準備されていた

米上院議員は、ロシアがウクライナに軍隊を派遣する数週間前に、同国への武器供与計画を立案していた。
RT(2022年4月29日)

米議会で4月28日、第二次世界大戦中に中立法規を逃れるために考案された「レンドリース」方式を使い、米国の武器をウクライナに送る計画が公式に承認された。しかしこの計画は、ロシアがドンバス共和国の独立を承認し、ウクライナに軍隊を派遣する一カ月以上前の1月にまとめられたものである。

共和党のコーニン上院議員は1月19日、「ウクライナ民主主義防衛レンドリース法案」を提出した。同日、カーディン、シャヒーン、ウィッカー各議員が共同提案した。翌1月20日にはブルメンタール、グラハム両議員が支持を表明。2月9日までに合計14人の上院議員が賛同した。

ロシアがドネツクとルガンスクの独立を承認したのは2月21日である。ウクライナを非武装化するための「特別軍事作戦」は2月24日に始まった。

奇妙にも上院外交委員会がコーニン議員の提案を取り上げたのは4月6日のことだった。同委員会で全会一致で承認された後、民主党が支配する下院が休暇中の数週間、宙に浮いたままだった。4月28日、下院は417対10の賛成多数で承認した。民主党は全員が賛成し、反対した10人はすべて共和党員だった。

ルーズベルト大統領は米国が第二次大戦に参戦する数カ月前の1941年3月、武器を英国、のちにソ連などに送るためにレンドリースを考案した。今回の法案は、米政府がウクライナにあらゆる種類の武器を送りやすくする。五年の期間制限を撤廃しており、米国は紛争が長く続くことを望んでいるようだ。

コーニン議員は今のところ、ロシアの軍事作戦が始まる前に「ウクライナの市民を軍事侵攻から守る」制度を導入した動機らしいことを明かしていない。共同提案者カーディン議員はもっと明白だ。2017年のCAATSA法など一連の反ロシア法を制定し、トランプ政権の対ロシア外交を縛った人物である。

カーディン議員は「ロシアゲート」騒ぎまっただなかの2018年1月、報告書を発表し、ロシアが「情報操作、サイバー攻撃、軍事侵攻、政治暗殺容疑、エネルギー安全保障への脅威、選挙干渉、その他の破壊的戦術」を用いて、「民主主義および大西洋地域の組織と同盟」に対して「攻撃」したと非難した。

(次より抄訳)
US weapons supply to Ukraine prepped in January — RT World News [LINK]

2022-05-01

ウクライナによるドネツク市場への攻撃はテロ行為

ドネツクのにぎやかな公共空間が砲撃されたとき、ガザやシリアの攻撃がフラッシュバックした

ジャーナリスト、エバ・バートレット(2022年4月30日)

4月28日にロケット砲の直撃を受けたドネツクの市場がウクライナ政府の支配する都市だったら、5人の死亡はすべての主要ニュースサイトに載っただろう。しかしドネツク人民共和国の市民へのウクライナ軍の攻撃だから、報じられまい。政府のドンバス攻撃を西側メディアが8年間無視してきたように。

地元の安全委員会職員によると、午前11時40分、グラッドミサイルが近くの二つの市場を直撃した。この時間帯の市場は人であふれており、ウクライナ側は何が標的かよくわかっていたはずだという。ここは完全に民間地域で、軍事施設はない。

一日のうちで最も忙しい時間帯に、混雑した市場や通りを攻撃することは、西側メディアが沈黙するなか、シリアのテロリストが何年も前から行ってきたことである。イスラエルも長い間、地球上で最も人口密度の高い場所の一つであるガザの住宅地や公共の場を攻撃してきたのだ。

シリアやパレスチナなどでのテロ行為を挙げればきりがないが、ウクライナが人混みの市場を爆撃するのは意図的なテロ行為である。過去8年間、ドンバス共和国の家々を執拗に爆撃してきたのと同じだ。欧米メディアはこれを報道せず、欧米の政治家はこれを非難せず、セレブたちはこれについて語らない。

ウクライナは、しばしば西側から手に入れた武器を使って、ドンバス共和国の混み合った民間人地区を爆撃し続け、さらに多くの民間人を殺している。

西側の偽善者たちはロシアの戦争犯罪(彼らは決して証明できず、しばしば矛盾しているが)を熱心に非難する。そのうえメディアと偽情報拡散者は国民の心理を操り、ウクライナの戦争犯罪をごまかそうと結託しているのである。

(次より抄訳)
Ukrainian strike on Donetsk market was a terrorist act — RT Russia & Former Soviet Union [LINK]

マリウポリ近郊「集団墓地」で見つけたもの

ウクライナ政府が「数千の遺体を収容する穴」という場所を実際に見てみる

ジャーナリスト、エバ・バートレット(2022年4月28日)

西側メディアによると、ロシア軍はウクライナ・マリウポリの市民最大9000人を「集団墓地」に埋めたという。証拠に衛星画像を使い、「死体は何層にも埋められている可能性がある」「ロシア軍は4月中、毎日穴を掘り、死体で埋めた」と公式見解を繰り返す。現場に行ってみたが、集団墓地はなかった。

4月23日、RTのジャーナリストとともに、マングシュという町にあるその場所を訪れた。そこで見たのは、新しい、整然とした墓の区画で、まだ空の墓もあった。墓穴はない。墓の多くには死者の名前と生年月日を記した立札があり、他の区画には埋葬順の番号が振られていた。

現場を歩いていると、埋葬を受け持つ男性二人がやってきて、ここが集団墓地だというボイチェンコ前市長(今は市を遠く離れたとみられる)の主張を強く否定した。「ここは集団墓地ではないし、遺体を穴に投げ入れたりしていない」と一人は言った。

集団墓地は前からウクライナでその存在が指摘されている。2014年以降、少なくとも300カ所で見つかったとされる。2014年か15年に、アゾフやアイダールの戦闘員がドネツク地方から退却した際、集団墓地が発見された。ある女性は後ろ手に縛られ、妊娠後期で、頭に穴が開いていた。処刑されたのだ。

このマングシュの集団墓地の話も、欧米の企業メディアの捏造である。これまでもイラク兵によって床に投げ出される保育器の赤ん坊や、イラクの大量破壊兵器に関する嘘を押し付けたり、起こってもいないシリア・ドゥーマでの化学兵器攻撃を報じたりと、デマの数々を挙げるときりがない。

4月21〜22日にマリウポリを訪ねた際、たしかに破壊はあった。ネオナチとウクライナ正規軍が住宅の上階を占拠して軍事拠点とし、そこで応戦したためだ。けれども街で人々を見かけたし、再建のため清掃作業が始まるのも見た。

シリアに関する欧米メディアの報道(現地にいた経験では、そのほとんどが不正直だ)について述べたことを繰り返そう。こうしたデマや戦争プロパガンダを推進する人々は、自分たちの手を血で汚している。無数の嘘をついてきた常習犯たちが新たな主張を大合唱したら、決して頭から信じないことだ。

(次より抄訳)
Here’s what I found at the reported ‘mass grave’ near Mariupol — RT Russia & Former Soviet Union [LINK]

イラクの石油はイラク再建を賄えなかった。ロシアのヨットも米国の対露戦争には足りないだろう。

ロン・ポール平和繁栄研究所上級研究員、アダム・ディック(2022年4月30日)

2003年3月、米軍のイラク侵攻直前、当時のウォルフォウィッツ国防副長官は下院議員らに対し、侵攻で打撃を受けるイラクの再建に米国が費用を負担することはないと述べた。イラクは石油収入によって自国の再建費用を賄うことができると断言したのである。

現実は大きく違う結果となった。2018年にある記者が書いたように、「15年後、イラクは米国主導の侵略、内戦、国の大部分の占拠の後、まだ完全に再建できておらず、再建自体のかなりの部分を資金調達できていない」という。

2003年当時、ウォルフォウィッツが米政府に負担をかけずにイラクを復興させるという見通しを示したとき、好奇心旺盛で十分な知識を持った人々は、疑う理由がたくさんあったはずである。しかし議員を含む多くの人々が求めたのは現実に基づく予測ではなく、イラク戦争を売り込むための話題だった。

それから19年後の今、同じような論法が現れた。これまで米国の対露戦争は、ウクライナ政府への援助と制裁が主である。陸海空でロシア軍と戦っているわけではないが、これは戦争なのだ。実際、クレイン大統領首席補佐官はツイッターでそれを肯定し、「ヨットを押収して戦争資金を調達する」と宣言した。

クレイン首席補佐官がツイッターに投稿したのは、バイデン政権が、ロシア人の財産がどこにあろうと没収し売却することを拡大・円滑化する法案を提案した同じ日だった。政府による財産没収はすでに憲法違反だが、バイデン政権はその強化を提案したのだ。

ロシア人の財産をカネに変えたところで、米国の対露制裁による貿易の混乱、品不足と物価高で米国人が新たに負担する費用はおろか、米政府が反露活動に費やすよりはるかに少ない金額しか得られないのはたしかだ。そして戦争が激化すればするほど、米政府と米国人のコストは増大が予想される。

バイデン大統領がウクライナ支援のため追加要求したのは330億ドルだ。これは米国が今年ウクライナに費やした何百億ドルに上乗せされる。さらにその何年も前から、米国からウクライナに一貫してお金が流れていた。それには2014年に同国の選挙で選ばれた政府を転覆させるための資金も含まれる。

米財務省は「10億ドル以上の価値のある船舶や航空機を制裁・封鎖し、米国の銀行口座にあるロシアのエリートたちの資産を何億ドルも凍結した」という。 すでに経費超過だ。赤字財政は米政府のお家芸だ。戦争でもそれは変わらない。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Iraqis’ Oil Did Not Pay for Rebuilding Iraq; Russians’ Yachts Will Not Pay for the US War on Russia.  [LINK]

#14 戦争はいかがわしい商売

 
戦争はしばしば美化されます。「民主主義諸国と専制体制との戦い」といった美しい言葉によってです。それまで平和を唱えていた人々までが、その言葉に熱狂します。しかし戦争の現実を知り抜いた米国の将軍は、「戦争はいかがわしい商売だ」と断言しました。なぜなのでしょう。

<参考資料>
  • Smedley Darlington Butler, War Is a Racket: The Antiwar Classic by America's Most Decorated Soldier 
  • Peace Philosophy Centre: 時代を超えた戦争の教訓 今こそ読むべき スメドリー・バトラー将軍『戦争はいかがわしい商売だ』完全日本語訳 Smedley Butler, WAR IS A RACKET: Japanese Translation 
  • The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Ukraine War is a Racket