2022-05-29

グレート・リセットの裏側、あるいは古典的自由主義の破壊の仕方

元ニューヨーク大学教授、マイケル・レクテンワルド
(2022年5月28日)

フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』(1992年)で述べた「歴史の終わり」とは、古典的自由主義や自由放任経済が共産主義やファシズムに勝利したとか、社会主義が終わりを告げたとかいう意味ではない。フクヤマにとって歴史の終着点とは、つねに民主社会主義、あるいは社会民主主義だった。

「歴史の終わり」はヘーゲル的な装いを凝らしてはいても、社会主義・共産主義の敗北を意味するのではなく、むしろ古典的自由主義の敗北を意味する。大きな政府と大資本が最後に必ず行き着く、デタント(協調路線)に到達したのだ。グレート・リセットとは、この政府と資本の協調路線の完成形である。

エリートによる市場経済と共和制民主主義の破壊は、『歴史の終わり』の数十年前から進行していた。スクーセン『世界の歴史をカネで動かす男たち』によれば、大銀行、大企業、メディア、教育機関、米政府内のエリートは、少なくとも1930年代初めから、米国を集団主義のイメージで作り変えようとした。

社会主義の推進という目標が際立ったのは、少なくとも1930年代初めから、高等教育機関でマルクス主義、 新マルクス主義、ポストマルクス主義の集団主義思想がすばやく浸透・流通したことだ。これはボトムアップの草の根プロジェクトではなく、権力と権威を持つエリートたちによる内部犯行だった。

グレート・リセットを理解するためには、この企てが、古典的自由主義(自由市場、言論の自由、自由民主主義)、米国の立憲主義、国家主権を破壊しようとする、数世紀にわたり続いてきた試みの完成を意味することを認識しなければならない。

グレート・リセットは、自由な市場経済(世界経済フォーラムの創設者クラウス・シュワブらは「新自由主義」と同一視する)の弱点に対する解毒剤として売り込まれているにもかかわらず、すでに蔓延する経済介入を強化するものにすぎない。

グレート・リセットは、経済介入がうまくいかない場合、米主導の軍事力を使用する。このことは、西側諸国がウクライナをロシアの攻撃から守るために武装し、資金を供給していることを一部説明できる。

グレート・リセットのグローバルなネオ・マルクス主義経済学や、国際的な経済ファシズムが新しくないと言いたいのではない。それは新しいし、それを実現するための手段も新しい。しかし、グレート・リセットは虚無から生まれたのではない。それは何十年にもわたるエリートの思考と行動の集大成なのだ。

(次より抄訳)
The Backstory of the Great Reset, or How to Destroy Classical Liberalism | Mises Wire [LINK]

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