2022-05-25

ウクライナ戦争を終わらせる方法

ソ連崩壊後、欧州安全保障協力機構(OSCE)はウクライナのロシア系住民の多さが問題になることを知っていた

国際法学者、ジョン・キグリー
(2022年5月9日)

ロシアが、ウクライナ東部ドンバス地方(ルガンスク州とドネツク州)に住むロシア系住民の地位向上に成功したといえる方法を見つけられれば、ウクライナからの撤退は早まる可能性がある。ウクライナ東部のロシア系住民が初めて国際的に注目されたのは、1994年、ドンバスではなく、黒海のクリミア半島でだった。

クリミアはウクライナの統治下にありながら、住民の大多数がロシア人で、ウクライナの一部である理由が見当たらなかった。19世紀以降、クリミアはロシア領だったが、1954年、ソ連共産党のフルシチョフ第一書記が、歴史学者も首をかしげる理由で、ソ連邦ロシアからソ連邦ウクライナに変更したのだ。

ドンバス地方のロシア系住民は、ウクライナからの分離よりも自治を求めた。2014年、独仏米の仲介により、ロシアとウクライナの間で、ウクライナがドンバスの自治を正式に認める合意(ミンスク合意)が成立した。ウクライナのゼレンスキー大統領は、この合意を実行すると言って就任した。

今、ウクライナがミンスク合意の実行に近いことをすれば、ロシアは、侵攻の目的は達成されたと言うことができる。ウクライナがクリミアの地位について柔軟に構えれば、ロシアはどんな取引も飲みやすくなるだろう。西側諸国がクリミアの返還を求める圧力をやめれば、ロシアは安堵することだろう。

ウクライナにとっては、政治的な現実が見えてくる。ロシアとの戦争がどう転んでも、ウクライナはクリミアを取り戻せそうにない。ウクライナ人には、ロシア人のようなクリミアに対する愛着はない。長期の安定を考えると、クリミアはロシアの統治下にあるほうがいいかもしれない。

ウクライナがドンバスの自治を拡大するのは難しくないだろう。ロシア軍の攻撃は、ドンバスのロシア系住民にウクライナを受け入れるよう促したようだ。彼らは以前より自治を強く要求しないかもしれない。ウクライナがドンバスの自治について新たな誓約を行えば、ロシア政府は勝利と見なす可能性がある。

ウクライナでの戦争を終わらせる交渉を再開する機は熟したようだ。毎日ウクライナにもたらされている惨状を見れば、その動機があることは明らかだ。ロシアでは政府上層部がプーチン大統領に対し、この戦争は割に合わないと言っているかもしれない。

(次より抄訳)
I led talks on Donbas and Crimea in the 90s. Here's how the war should end. - Responsible Statecraft [LINK]

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