2023-04-29

露、核実験を準備との米主張を一蹴

プーチン大統領は以前、核兵器を使用するのは他国が先に使用した場合だけだと述べている

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月28日)

クレムリン(露大統領府)報道官は、ロシアが核実験の準備を進めているという米国の外交官による主張を非難した。ロシアは、他の締約国が核実験禁止条約を遵守する限り、自国も遵守すると主張している。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は28日、核兵器実験の可能性についての質問に答え、「現時点では、誰もがモラトリアム(核実験停止)を遵守している。これ以上言うことはない」と述べた。

ペスコフ氏は、米国のリン・トレーシー駐露大使が行った主張に対し、この発言を行った。同大使は、実験禁止条約の破棄を検討しているのはロシアだけだと主張した。

ペスコフ氏の発言は、プーチン露大統領が今年初めに述べた、米国が核兵器を爆発させた場合にのみ、ロシアは戦略的実験を行うという発言と一致している。同大統領は2月、「米国が実験を行うのであれば、我々も行う。世界の戦略的均衡を崩せるという危険な幻想を抱いてはならない」と述べた。

米露両国は、相手が核兵器実験を準備しているという非難を、証拠を示すことなく繰り返してきた。米当局は1年以上前から、北朝鮮が7回目の核実験を行うという主張を繰り返してもいる。

破滅的な核戦争の危険性が過去最大に高まっていると米科学誌「原子力科学者会報(BAS)」が警告する中で、このような責任のなすりつけ合いが起きている。冷戦終結後、米国はロシアとの間で、中距離核戦力(INF)条約、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約、領空開放(オープンスカイ)条約など、いくつかの軍備管理協定を破棄してきた。

ロシアは今年初め、核兵器を制限する米露の最後の二国間協定である新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止した。ロシアは、この協定が中断された理由の一つは、米国がウクライナを支援してロシアの戦略的軍事施設を攻撃したためだと表明した。

ロシアは新STARTの履行を公式に停止したものの、協定で定められた制限のほとんどを遵守し続けている。同国のセルゲイ・リャプコフ外務次官は3月、「ロシアは自発的に、条約で定められた戦略核兵器の中心的な数量制限を遵守し、ミサイル発射の相互通知に関する1988年の合意も引き続き遵守していく」と述べた。

露外務省のエルマコフ不拡散・軍備管理局長は今週初め、核軍備管理に関する米露の協議は、すぐに期待すべきではないと声を上げた。同局長は25日、「このような状況では、米国や西側諸国と大きな交渉を行うことはできない」と述べた。

エルマコフ氏は、ロシアが現在懸念しているのは、米国がアジア太平洋地域で戦略資産を構築していることだと説明した。米国がこの地域での軍事的拡大を北朝鮮や中国への対抗策と考える一方で、ロシアの領土もこの地域に広がっている。

米当局は26日、核兵器を搭載した米潜水艦が朝鮮半島に寄港すると発表した。さらにエルマコフ氏は、米国のミサイルが日本に配備される可能性について懸念を表明した。

Kremlin Dismisses Claims Russia Is Preparing a Nuclear Weapons Test - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-28

露、戦争解決に向けたあらゆる手段を歓迎

中国は和平交渉へウクライナ特使任命

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月27日)

クレムリン(露大統領府)は27日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と中国の習近平国家主席との電話会談を受け、ウクライナでの戦争の解決に向けたあらゆる措置を歓迎すると発表した。
露タス通信によると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は「ウクライナの紛争に終止符を打つのに役立ち、実際ロシアのすべての目標の達成にも役立つものであれば、何でも歓迎する用意がある」と述べた。

「会談の事実については、二国間の対話に関わるそれぞれの国の主権的な問題である」とペスコフ氏は付け加えた。

習氏は電話協議でゼレンスキー氏に対し、ロシアとウクライナの和平交渉を推進するために中国が努力することを強調した。中国は、ウクライナにベテランの外交官を派遣し、危機解決のために地域の「すべての当事者」と話をすると発表した。

中国が派遣する特使は、2009〜2019年に駐ロシア中国大使を務めたユーラシア問題特別代表の李輝氏だ。中国外務省の毛寧報道官は27日、「中国が任命する特使は、和平交渉の進展に最も対応できる候補者となる」と述べた。

また同日、中国の秦剛外相は、中国は中央アジア諸国と協力し、ロシアとウクライナを交渉の場に着かせたいと述べた。秦外相はカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの各外相との会談後、「中国と中央アジア諸国は、ウクライナの危機について同様の見解と姿勢を共有している」と述べた。

ロシアとウクライナは中国の努力に前向きな姿勢を示しているが、双方の要求は依然として大きくかけ離れている。ゼレンスキー大統領とその側近は、ロシアがクリミア半島を含む支配地域から追放されない限り、和平交渉は成立しないと主張。一方ロシアは、昨年秋に併合した領土をロシア領と認めることが和解の条件だと述べている。

Kremlin Says It Welcomes Any Steps to Resolve War After Xi-Zelensky Call - News From Antiwar.com [LINK]

「一党独裁国家」になる米国

タッカー・カールソン氏、二大政党とメディアを批判

RT
(2023年4月27日)

米報道局FOXニュースの元司会者タッカー・カールソン氏は動画を公開し、降板後初めて公に登場した。動画で同氏は米報道機関を非難し、米国のメディアでは主要な問題について真の議論が「許されない」と述べた。
カールソン氏は27日朝(現地時間)にツイッターで公開した映像で、長年出演していた番組「タッカー・カールソン・トゥナイト」でおなじみの独白を行なった。動画の投稿も以前の番組の時間帯に合わせた。

カールソン氏は今週初めに報じられたFOXニュースからの解雇については直接触れなかったものの、主流メディアに対し痛烈な批判を展開。テレビのニュース番組での議論のほとんどは「見当違い」で「信じられないほど愚か」であり、重要な話題は触れられないままだと述べた。

「紛れもなく大きなテーマ、我々の未来を決定づけるようなテーマが、事実上まったく議論されていない。戦争、市民の自由、先端科学、人口動態の変化、企業権力、天然資源などだ。これらの問題について最後にまともな議論を聞いたのはいつだろう。米国のメディアでは、そのような議論は許されない」

さらにカールソン氏は、米国の二大政党が「自分たちの利益になることで同意し」、今では「盛んに結託」して有意義な議論を封殺していると主張。米国の支配層は「説得をあきらめ」、今では「力に頼り」、検閲を強めていると述べた。

カールソン氏はこう続けた。「突然、米国は一党独裁国家そっくりになった。これが憂鬱な実感だ。しかし永久に続くわけではない。今の体制は長続きしない……。この時代はそもそもあまりにも馬鹿げているから、続かない」

カールソン氏が24日にFOXを去ったことは、同局を大きく揺るがせた。同氏のゴールデンタイムの番組は、ケーブルニュースで最も視聴率の高い番組の一つだったからだ。カールソン氏が解雇されたとの報道にもかかわらず、FOXは「別れることに合意した」と発表し、それ以上の説明を行わなかった。今回の決定により、FOXの視聴率と市場価値はすでに低下している。

カールソン氏はFOX在職中、左派やリベラル派の評論家から「ヘイト」や「偽情報」を流布しているといつものように非難され、保守派の視聴者からは大きなファン層を獲得していた。同氏の番組は時折、米政府関係者の怒りを買い、国防総省のジョン・カービー前国防総省報道官は2021年の記者会見でカールソン氏に向け、軍は「トークショーの司会者から……アドバイスを受ける」ことはないと強調したこともある。

US becoming ‘one-party state’ – Tucker Carlson — RT World News [LINK]

2023-04-27

ゼレンスキー大統領、習主席と「有意義な」電話会談

中国はウクライナなどに代表を派遣し、戦争の「政治的解決」を協議へ

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月26日)

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は26日、中国の習近平国家主席と電話で話し、ロシアが昨年侵攻を開始して以来、初めて両首脳が会話を交わしたことを明らかにした。ゼレンスキー氏はツイッターで、会話は「有意義なものだった」と述べた。
「習近平国家主席と長く、有意義な電話をした。この電話会談と、ウクライナの駐中国大使の任命は、両国関係の発展に強力な推進力を与えると信じている」とゼレンスキー氏は書いた。

中国側の公式声明によると、習氏はゼレンスキー氏に戦争に対する中国の立場を表明し、外交を呼びかけたという。「習主席は、ウクライナ危機は国際情勢に大きな影響を及ぼす複雑な形で進展していると指摘した。ウクライナ危機について、中国は常に平和の側に立っている。その態度の中核は、平和のための協議を促進することである」と中国外務省は声明で述べている。

習氏がゼレンスキー氏とロシアのプーチン大統領との仲介役となる可能性が浮上したのは、2月に中国が紛争に関する12項目の平和計画を発表した後だ。習氏はゼレンスキー氏に対し、中国は「平和のための協議を促進し続け、早期停戦と平和の回復のために努力する」と述べた。

中国外務省によると、中国はウクライナや地域の他の国に代表を派遣し、「ウクライナ危機の政治的解決について、すべての当事者と綿密な意思疎通を図る」予定だ。同省は、中国はウクライナに人道的支援を提供しており、今後も継続する予定だと付け加えた。

バイデン米政権はウクライナ戦争の間中、和平交渉を牽制し、中国が和平案を発表した際も同国を仲介役とする考えを否定している。先月、習氏がモスクワでプーチン氏と会談するのに先立って、ホワイトハウスはウクライナでの停戦に反対を表明した。

こうした米国の立場にもかかわらず、ホワイトハウスは26日、習氏とゼレンスキー氏が話したのは「良いこと」だと述べた。国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は「有意義な和平活動や計画、提案につながるかどうかは、今のところわからない」と述べた。

ロシア外務省は同日、中国の取り組みが和平交渉につながるという考えに冷水を浴びせ、ウクライナ政府は「ウクライナ危機の政治的・外交的解決策を見出すことを目的としたすべての合理的な取り組みを拒否している」と述べた。

Zelensky Holds 'Meaningful' Call With China's Xi Jinping - News From Antiwar.com [LINK]

英、ウクライナに劣化ウラン弾を供与 高官が明言

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月26日)

英国防省のジェームズ・ヒーピー閣外相は、ウクライナが英国製の主力戦車「チャレンジャー2」で使用するために、論争の的になっている劣化ウランを英国から受け取ったと確認した。
ヒーピー氏は、スコットランドのマカスキル議員の質問に答える形で、「我々は劣化ウランの徹甲弾を含む数千発のチャレンジャー2弾薬をウクライナに送っている」と述べた。

マカスキル氏は、ウクライナが使用している劣化ウラン弾の数を英国は把握しているかと質問したが、ヒーピー氏は明言を避けた。「作戦上の安全上の理由から、提供した弾丸のウクライナ側の使用率についてコメントすることはない」と同氏は述べた。

またヒーピー氏は、劣化ウラン弾は現在ウクライナ軍の「管理下にある」とし、英国防省は放射能を持つ劣化ウラン弾がどこで使用されているかを監視していないとも述べた。「国防省はウクライナ軍が劣化ウラン弾を発射する場所を監視していない」という。

劣化ウランは通常、濃縮ウランを製造する際の副産物として作られ、非常に密度が高いため、戦車の装甲を貫くのに有効な金属となる。放射性物質であるため、癌や出生異常の原因とされている。とくにイラクでは、湾岸戦争と2003年の侵攻で、米軍が膨大な数のこの問題ある弾薬を使用した。

ロシアは以前、ウクライナでの劣化ウラン弾の使用を「汚い爆弾」と同じように扱うと警告した。英国はロシアの警告を無視し、3月に初めて弾薬の送付を確認した。これに対しロシアのプーチン大統領は、ベラルーシに戦術核を配備すると発表した。

米国がキエフに供与した歩兵戦闘車「ブラッドレー」には劣化ウラン弾を搭載できるため、米国もウクライナに劣化ウラン弾を送ることができた。しかしホワイトハウスは、ウクライナに到着したブラッドレーに劣化ウラン弾が搭載されているかどうかを明らかにすることを拒否している。

Britain Confirms Depleted Uranium Munitions are Now in Ukraine - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-26

南アフリカ、ICC脱退を表明 プーチン氏への逮捕状受け

ラマポーザ大統領、特定国の「扱いが不公平」

RT
(2023年4月25日)

南アフリカ政府は国際刑事裁判所(ICC)からの脱退を改めて試みることを決定したと、同国のシリル・ラマポーザ大統領が25日表明した。オランダのハーグを拠点とする同裁判所がロシアのプーチン大統領を標的にしたことで、8月に同国ダーバンで予定するBRICS首脳会議(サミット)が、開催上の問題を抱えることになったことを受けてのもの。
ラマポーザ大統領によれば、この決定は週末の会議の後、与党アフリカ民族会議(ANC)によって下されたものだという。

ラマポーザ大統領は、南アフリカの首都プレトリアを外交訪問中のフィンランドのサウリ・ニーニスト大統領との共同記者会見で、「与党は南アフリカがICCを脱退することが賢明だという決定を下した。ICCがこの種の問題に対処する際に見られてきた態度が大きな理由だ」と述べた。

ラマポーザ大統領がここで言及したのは、ICCによる特定の国への「不公平な扱い」と呼ぶものだ。

南アフリカは2016年、初めてICCからの脱退を試みたが、高等裁判所の違憲判決を受け、この動きは撤回された。

この判決は、2015年にアフリカ首脳会議のために同国を訪れたスーダンのバシル大統領(当時)を逮捕しなかったことで、南アフリカがICCに対する義務に違反したと認定された後に下された。バシル氏は、長く続いたダルフール紛争に関連しICCでジェノサイド(集団殺害)罪に問われていた。

今回の脱退表明は、3月にICCがロシアのウラジーミル・プーチン大統領に逮捕状を出したことを受けたもの。ICCは、プーチン氏を「ウクライナの占領地域」から子供たちを「不法に追放」した罪で訴えた。

この容疑は、ロシア語話者の多い(ウクライナ東部)ドンバス地方から民間人を避難させる努力だとロシアが述べていることに関連する。同地方はウクライナ軍によって激しい砲撃を受けていた。

南アフリカは、8月に開くBRICSサミットで、世界最大の新興経済国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の首脳を迎える予定。2002年のローマ規程の署名国として、ICCのプーチン氏逮捕状を執行する義務を負うことになる。

ラマポーザ大統領は25日、南アフリカがプーチン氏を逮捕するかどうか尋ねられ、その問題は「検討中」だと答えた。しかし与党のフィキレ・ムバルラ書記長は、プーチン氏はいつでも歓迎され、ICCは「少数の利益」の役にしか立たないと述べた。

今月初め、ラマポーザ大統領はプーチン氏とウクライナ情勢に対する「非同盟」の姿勢を明らかにするため、米ワシントンに代表団を派遣すると発表している。

South Africa vows to quit ICC following Putin warrant — RT Africa [LINK]

追記>(4/27)
RTの報道によると、南アフリカ大統領府は4月25日、同国が国際刑事裁判所(ICC)から離脱するというラマポーザ大統領の発言は誤りだったと発表した。ウェブサイトに掲載された声明によれば、「今回の(大統領の)説明は、政権与党であるアフリカ民族会議(ANC)が開いた記者説明会で、ICCに関する南アフリカの地位について述べた誤ったコメントを受けたものである。遺憾ながら、大統領は本日の記者会見で同様の立場を誤って肯定してしまった」という。大統領府は、南アフリカがICCの重要文書であるローマ規程の締約国であり続け、「国際法の平等で一貫した適用を求める運動を続けていく」と断言した。

露、国連安保理の拡大促す

ラブロフ外相、西側諸国は「過剰な代表」

RT
(2023年4月25日)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、国連安全保障理事会におけるアジア、アフリカ、ラテンアメリカの代表を拡大し、この重要な国際紛争解決機関が現代の地政学的ニーズに対応できるようにすべきだと指摘した。
「真の多国間主義に必要なのは、国際関係における多極化構造の客観的傾向に国連を適応させることだ」と同外相は米ニューヨークの国連本部で月曜日(4月24日)に行った演説で述べた。

これは国連安保理の改革を「アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の代表権の拡大を通じて加速させる」必要があることを意味すると同外相は説明した。

「この重要な国連機関において現在、西側諸国が大幅に過剰な代表を占めていることは、多極化の原則を損なっている」とラブロフ氏は指摘した。これは現在安保理の輪番議長国であるロシアが主催した「有効な多国間主義」に関する議論の中で明らかにされた。

ラブロフ氏は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの特定の国を安保理の常任理事国にするよう求めているのか、これらの地域の非常任代表の枠を拡大するよう求めているのかについては、明言を避けた。

国連安保理は現在、5つの常任理事国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)と、2年ごとに国連総会で選出される10カ国の非常任理事国から構成されている。

現在のルールでは、アフリカ・アジア5カ国、東欧1カ国、中南米2カ国、西欧など2カ国が非常任理事国を構成している。

スイスとマルタが非常任理事国であるため、西側諸国は現在、他のどの地域よりも多い5議席を占めている。米国の同盟国である日本も、現在の非常任理事国10カ国の中に入っている。

同じ議論の中で、米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使も安保理の改革を促し、「今日の世界の現実をよりよく反映するため」に「この組織は21世紀に合わせて進化しなければならない」と述べた。

同大使はどのような改革が必要かは明言しなかったが、「ロシアの(国連憲章の)明白な違反に対する我々の対応は、この機関の設立原則を放棄することではありえない」とコメントした。

ラブロフ外相は演説で、ロシアのウクライナでの軍事作戦が「違法」であるという西側の主張をあらためて非難し、国連憲章が尊重を求めているのは、すべての国民を代表する政府を持つ国家の主権と領土の一体性だと述べた。

2014年の「血なまぐさい」クーデターの結果、政権を獲得し、ロシア語を話す住民を虐待したウクライナ当局がこの基準を満たさないことは、公平に観察すれば明らかだと同外相は述べている。

Russia urges expansion of UN Security Council — RT World News [LINK]

2023-04-25

日欧、米の対露全面禁輸案を拒否 英紙報道

リバタリアン研究所
(2023年4月24日)

すべての輸出を禁止することでロシアに対する経済戦争を強化する米国の計画は、その同盟国からあまり受け入れられていない。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、欧州連合(EU)と日本はロシアとの貿易を終わらせることに反発している。
米ブルームバーグ・ニュースは先週、米国が主要7カ国(G7)のメンバーに対し、ロシアへの輸出を終了させるよう求めると報じた。ロシアがウクライナに侵攻した後、米国はロシアを孤立させ、その経済を麻痺させようとした。しかしロシアは欧米の制裁を乗り越えてきた。加えて、G7諸国はロシアと貿易を続けてきた。トレード・データ・モニターによると、G7諸国(米、英、カナダ、仏、独、伊、日、EU)は過去14カ月間でロシアに660億ドルを輸出している。

米国の新たな提案は、ロシアに対する制裁の実施方法を変更するものだ。米国とその同盟国は現在、特定の露製品、企業、個人をブラックリストに載せ、米国人は対象となる企業との取引を禁じられている。全面禁輸が採用されれば、明確な除外規定がない限り、ロシアとのすべての貿易が禁止されることになる。

FTは月曜日(4月24日)、日本とEUがこの計画への署名を拒否していると報じた。米国は5月19日から広島で開催されるG7首脳会議(サミット)で全面禁輸を実施することを望んでいた。ある匿名の関係者はFTに対し「我々の観点では、それは明らかに実行不可能である」と語った。

G7メンバーは、対露制裁の回避を取り締まるよう求める声明への署名には前向きだ。今月初め、米財務省高官2人が欧州を訪れ、対露経済戦争を完全に履行していない国に対して罰則を科すと脅した。

クレムリン(露政府)は、穀物輸出合意を破棄することで禁輸に対抗するとしている。2022年7月に国連とトルコが仲介したこの合意により、2300万トンの食料品が、多数の地雷が埋め込まれたウクライナの黒海の港から出ることができた。

EU, Japan Reject Washington's Proposal to Ban Exports to Russia | The Libertarian Institute [LINK]

ウクライナ、2月に露「大規模攻撃」計画 米圧力で延期

流出機密文書で明らかに 米紙報道

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月24日)

米紙ワシントン・ポストは月曜日(4月24日)、ウクライナの軍事情報機関(通称HUR)が2月にロシア国内への大規模な攻撃を計画していたが、米国の圧力により延期されたと報じた。
記事は(米東部マサチューセッツ州の)空軍州兵ジャック・テシェイラ容疑者がリークしたとされる文書を引用した。米国家安全保障局(NSA)の報告書によると、HURを率いるキリロ・ブダノフ少将は、ある将校に「2月24日の大規模攻撃の準備をするように……HURが持つすべてのもので」と指示したという。この日はロシアが侵攻を開始してから1年目だった。

米国はウクライナ政府関係者をスパイしていたため、ブダノフ氏の計画に気づいた。2月22日付の米中央情報局(CIA)の報告書によると、HURは「ワシントンの要請で、攻撃を延期することに合意した」という。ポスト紙は、米国がウクライナに圧力をかけて作戦を延期させた経緯は文書からは明らかでないとした。

戦争中、ウクライナはロシア国内で小型ドローン(無人機)による攻撃やその他の破壊工作を行ってきた。ブダノフ氏の言う「大規模攻撃」が何を意味するのかは明らかではない。ポスト紙が言及した計画の一つは、TNT火薬を使って黒海の港湾都市ノボロシースクを攻撃するものだ。

ポスト紙の報道によると、米国はロシアの攻撃激化を懸念し、ブダノフ氏が計画を実行することを望まなかったようだが、米国がロシア国内の他の攻撃でウクライナを支援したとの指摘もあるようだ。昨年12月にウクライナのドローンがロシアの深部にある飛行場を攻撃した際、NATO軍関係者はアジア・タイムズに対し、米国は攻撃を「奨励も肯定もしていない」というバイデン米政権の主張にもかかわらず、ドローンは米国の衛星全地球測位システム(GPS)データを使って標的を攻撃したと述べた。

今月初めに初めて報道された別の流出文書では、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、そうしないと確約しているにもかかわらず、ロシア国内の標的を攻撃するために米国の長距離兵器を使用することを示唆していた。その文書によると、ゼレンスキー氏はウクライナ軍のバレリー・ザルジニー司令官と別の匿名の高官との会話の中で、ウクライナが(露南西部)ロストフの標的を攻撃する長距離兵器を所有していないことに「懸念を表明」したという。

Report: Ukraine Postponed Attacks Inside Russia Due to US Pressure - News From Antiwar.com [LINK]

米、ウクライナの反攻失敗を覚悟 ポリティコ報道

バイデン政権、ウクライナが重要な領土を回復するとは考えず

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月24日)

バイデン米政権はウクライナの待望の反攻が失敗する可能性に備えていると、(米政治専門サイト)ポリティコが月曜日(4月24日)に報じた。
(米東部マサチューセッツ州の)空軍州兵ジャック・テシェイラ容疑者がリークしたとされる国防総省の文書から、米国は春に開始される予定の反攻でウクライナが重要な領土を奪還できるとは考えていないことが明らかになった。リークされた情報は、2月に行われた評価に基づいている。

ポリティコによると、より最新の評価でも、ウクライナの成功はあまり期待できないとしている。バイデン政権の2人の高官は、ウクライナがクリミア半島へのロシアの陸橋であるヘルソン、ザポロジエ両州を切断する能力があるとは思えないと述べた。

記事によると、米情報機関は「ウクライナには明らかに、ロシア軍を深く根を張った場所から押し出す能力がない」とみている。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3月、自軍が反攻を開始する前に、より多くの西側兵器が必要だと述べた。

米政権は、バイデンがウクライナに十分な武器を与えていないと考えるタカ派や、米国に外交を推し進めるよう求めている人たちからの批判に直面しそうだ。米国はまた、ウクライナの攻撃が失敗した場合、欧州の同盟国の多くが戦争当事者間の交渉に賛成することを懸念している。

2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、米政権は和平交渉を抑え込み、最近ではウクライナでの停戦という考えに反対を表明している。米政権は和平交渉をいつ進めるかをゼレンスキー氏に任せており、同氏は今でも、ロシアがクリミアを含む支配地域すべてから追い出されるまでは和平交渉は実現しないと主張している。

しかしポリティコによれば、現在、政権関係者の間では、ウクライナにもっと控えめな目標を受け入れさせ、将来さらなる戦闘をもたらす恐れのある停戦に同意させることについて議論されているという。ウクライナに対する誘因として考えられるのは、同国に北大西洋条約機構(NATO)のような安全保障を与え、さらに軍事援助を行うことである。

米国のこの計画の問題点は、ロシアが紛争の凍結には応じず、軍事的手段によってのみ戦争目標を達成できると表明していることだ。クレムリン(露大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は最近、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長がウクライナの「ふさわしい場所」は同盟にあると述べた際、ロシアの主要な優先事項の一つはウクライナをNATOから排除することだと繰り返した。

ロシア侵攻の初期には、ロシアとウクライナの当局者が和平交渉を行っており、ロシアの主な要求はウクライナの中立だった。しかし現在、ロシアはドンバス地方とヘルソン、ザポロジエ両州の併合地域をロシア領として認めることを和解案に含めるべきだと主張しており、ウクライナはより多くのものを失うことになる。

POLITICO: Biden Preparing for Failed Ukrainian Counteroffensive - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-24

米、国連取材の露記者にビザ拒否 露外相明かす

ラブロフ氏、対応を示唆
アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月23日)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は日曜日(4月23日)、米国がロシア人記者へのビザを拒否したと述べた。記者らは国連安全保障理事会のためにニューヨークを訪問する同外相を取材する予定だった。
「最も強く、賢く、自由で公正な国を自任する国が、おじけづき、愚かなことをした。言論の自由と情報の入手を保護するという誓いは、本当はこの程度の価値しかない」。AP通信によると、ラブロフ氏はニューヨークへ出発する前にモスクワでこう語った。

ラブロフ氏は、ロシアが何らかの形で報復することを示唆し、「我々は決して忘れないし、許さない」と述べた。

米国務省はラブロフ氏の批判に直接反応しなかったが、米国は「国連本部協定に基づく国連のホスト国としての義務を、ビザ発給も含めて真剣に受け止めている」と述べた。

国連ロシア代表部も声明を出し、米国が記者のビザを拒否したことを非難した。「我々はこの措置を、米国が国際法を軽視していることの別の現れと考える。ロシア人記者の国連行事への参加を拒否したことは、言論の自由と情報の入手に対する米当局の実際の態度を改めて示している」と声明は述べている。

ラブロフ氏は24~25日に開く国連安保理会合に出席する予定。この会合は、ロシアが米紙ウォールストリート・ジャーナルの米国人記者エバン・ゲルシコビッチ氏を拘束してから数週間後に開かれる。ラブロフ氏とアントニー・ブリンケン米国務長官は今月初め、ゲルシコビッチ氏について電話で話したが、露政府によると、両外交官は今回の安保理会合の傍ら、ニューヨークで話す予定はない。

Russia's Lavrov Says US Denied Visas for Russian Journalists for UN Trip - News From Antiwar.com [LINK]

EU外相「台湾海峡へ艦船派遣を」 欧州各国に要請

台湾メディアによると、仏軍艦が台湾海峡を今月航行
アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月23日)

欧州連合(EU)の外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は欧州諸国に対し、台湾海峡に軍艦を派遣し、中国が挑発行為とみなしかねない巡視を行うよう呼びかけた。
ボレル氏はフランスの新聞ジュルナル・デュ・ディマンシュに寄稿した論文で、「欧州は経済的、商業的、技術的に懸念されるこの問題(台湾)に関して、実際に非常な存在感を示す必要がある」と述べている。

「だからこそ私は欧州の海軍に台湾海峡の巡視を要請し、この絶対重要な地域における航行の自由に対する欧州のコミットメントを表明する。同時に、挑発行為や過剰反応に対して警戒する必要がある」とも付け加えた。

ボレル氏のコメントは、フランスのマクロン大統領が、台湾をめぐる中国との対立で欧州は米国に追随すべきではないと警告したことに対する反発であるようだ。

「欧州が答えるべき質問は……台湾での(危機を)加速させることが我々の利益になるのかということだ。ならない。最悪なのは、欧州がこの問題で米国のペースや中国の過剰反応に追随しなければならないと考えることだ」と、マクロン氏は今月初めに述べている。

マクロン氏の発言にもかかわらず、台湾のメディアは、フランスの軍艦が4月9日から10日にかけて台湾海峡を航行したと報じた。米国は頻繁に台湾海峡に軍艦を派遣しているが、欧州の通過はまれだ。最後に知られているフランスの海峡通過は、2021年10月だった。

フランスは近年、台湾海峡を通過する軍艦を派遣した唯一のEU諸国である。2021年、ドイツは約20年ぶりにアジア太平洋に海軍艦艇を配備し、南シナ海を通過したが台湾海峡は避けた。

EU's Borrell Tells European Governments to Send Ships to Taiwan Strait - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-23

【コラム】お笑いG7

木村 貴

「国際社会」の代表気取り

長野県軽井沢町で3日間にわたり開かれた先進7カ国(G7)外相会合は4月18日、ウクライナに対し「侵略戦争」を行うロシア軍の即時撤退を求めることや、中国の力や威圧による「一方的な現状変更の試み」に強く反対することなどを盛り込んだ共同声明を発表し、閉幕した。林芳正外相は議長として記者会見し、G7が「核兵器のない世界」へのコミットメント(関与)を確認したと表明。5月に広島市で開くG7首脳会議(広島サミット)の議論に反映させる。
1970年代半ばに始まったG7(現在のメンバーはフランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合=EU)といえば、かつては国際社会をリードする先進国の要人が一堂に会し世界の政治経済問題について議論するという、内実はともかく、華やかなイメージがあった。しかし今や、見る影もない。

新興諸国の経済発展で相対的な地位が低下したにもかかわらず、いつまでも「国際社会」の代表気取りで、あれこれ偉そうに説教する。世界のあちこちで内政干渉や経済制裁、軍事介入を続ける。これでは嫌われても仕方がないし、実際嫌われている。しかし当人たちはそれに気づかず、自分の日ごろの行いを棚に上げ、偉そうな説教や要求を性懲りもなく繰り返す。もはや哀れを通り越して滑稽ですらある。

今回日本が議長国となり、信州サーモンのにぎりずしだの高級日本酒「獺祭」だのを(税金で)ふるまいつつ開いた外相会合は、その「お笑いG7」ぶりが、さらに遺憾なく発揮された。道徳的な高みに立って、どうみても筋の通らない主張や要求を恥ずかしげもなく掲げる。軽井沢に詰めかけた国内大手メディアはそれに一言もツッコミを入れず、すばらしいメッセージだとほめそやす。新聞・テレビしか見ない人は無邪気に信じてしまうのかもしれないが、さすがにインターネットを利用する個人の間では、この茶番にあきれる声が目立つ。

共同声明の主な柱に沿って、G7のトンデモぶりをみてみよう。

2023-04-22

ペトロダラーの終わり、アメリカ帝国の終わり

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年4月17日)

2023年の最も重要な出来事は、ドナルド・トランプ氏らの2024年大統領選立候補やウクライナ戦争とは関係なかったと、未来の歴史家は言うかもしれない。むしろ最も長期の意味を持つ出来事は、主要メディアではほとんど注目されていない、サウジアラビアが石油の支払いに米ドル以外の通貨を受け入れるという動きかもしれない。
ニクソン米大統領は、ドルと金の最後の結びつきを断ち切った後、サウジ政府と交渉した。米国は武器を提供するなどして、サウジ政権を支援する。その代わり、サウジは石油取引をすべてドルで行う。サウジはまた、余ったドルで米国債を購入することにも合意した。この「ペトロダラー」が、ドルが世界の基軸通貨としての地位を維持する大きな理由である。

また今年、中国とブラジルは、今後の貿易をドルではなく自国の通貨で行うことで合意した。ブラジルのルラ大統領は、より多くの国々にドル離れを呼びかけている。

このような脱ドル化の動きは、米国の外交政策、とくに米政府による経済制裁の強化に対する憤りから生じている。ドルを世界の準備通貨の地位から引き下ろすことで、各国はこうした制裁を無視しやすくなる。

脱ドル化は、米政府の30兆ドルを超える債務の管理能力に悪影響を及ぼすだろう。一部の例外を除き、支出削減に対する議会での真の支持はまだない。共和党の指導層は、歳出削減と結びつかない限り、債務上限引き上げを支持しないと言うかもしれない。しかしバイデン政権が、共和党は社会保障とメディケア(高齢者向け公的医療保険)の削減を望んでいると非難して以降、マッカーシー下院議長は、連邦赤字の大きな要因である社会保障とメディケアへの支出削減を「テーブルから外した」と宣言した。同様に、共和党の間で外国への介入主義に懐疑的な意見が増えているにもかかわらず、軍産複合体は議会の指導部とホワイトハウスを目に見える形で掌握し続けている。したがって軍事費の削減は期待できない。むしろ国防総省の予算は増加する可能性が高い。

連邦準備理事会(FRB)は、増え続ける連邦債務を貨幣化し、金利(ひいては連邦政府の借入コスト)を低く維持する圧力に直面し続けるだろう。その結果生じるインフレは、ドルの世界の準備通貨としての地位を終わらせることへの支持を高めるだろう。ドルを放棄する国が増えれば、FRBはハイパーインフレを起こさずに連邦政府の負債を貨幣化することができなくなる。その結果、ドル危機が起こり、世界恐慌よりもひどい経済破綻が起こるだろう。

この危機は、福祉・戦争・不換通貨制度の終焉につながるだろう。歴史的にみると、これはさらに権威主義的な政治運動の台頭につながるが、自由主義思想の人気が高まっていることから、この崩壊は自由主義運動のさらなる成長を促すことにもなる。つまりこの危機は、小さな政府の回復と自由の進展につながる可能性がある。この危機がもたらす機会を最大限に生かすには、私たち(自由主義者)の考えを広め続けることが重要だ。幸いなことに、私たちは多数派である必要はない。自由を取り戻すという大義にこだわる、疲れ知らずで怒りに満ちた少数派がいればそれでよいのである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Will the End of the Petrodollar End the US Empire? [LINK]

2023-04-21

ウクライナに「ふさわしい場所」はNATOと事務総長

ストルテンベルグ氏、ロシア侵攻後に初訪問

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月20日)

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は木曜日(20日)、昨年ロシアが侵攻を開始してから初めてウクライナを訪問し、同国に「ふさわしい場所」は西側軍事同盟であるNATOへの加盟だと宣言した。
「ウクライナにふさわしい場所は欧州・大西洋ファミリーにある。ウクライナにふさわしい場所はNATOにある。時とともに、我々の支援はこれを可能にするのに役立つだろう」。ストルテンベルグ氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との共同会見でこう述べた。

ウクライナは2008年に初めてNATO加盟を約束された。当時のウィリアム・バーンズ駐露米国大使(現米中央情報局=CIA=長官)が、ロシアはウクライナのNATO加盟を「あらゆるレッドライン(超えてはならない一線)のうち最も明白なもの」と見ていると警告したにもかかわらずである。

NATOがウクライナへの支援を大幅に強化したのは、米国が支援した2014年のウクライナでのクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領(当時)が追放された後だ。ストルテンベルグ氏は「長年にわたり、NATO同盟国は数万人のウクライナ兵に訓練を提供してきた」と首都キーフ(キエフ)での会見で述べた。

ロシアのウクライナ侵攻以来、ストルテンベルグ氏はウクライナがいずれ加盟すると繰り返し公言してきたが、同国にその時期が示されたことはない。NATO加盟国の中には、今年7月にリトアニアの首都ビリニュスで開くサミット(首脳会議)で、ウクライナの加盟の可能性について明確な声明を出したいと考えているところもあるが、米国はこの計画に反発していると伝えられている。

ゼレンスキー氏はビリニュス・サミットに招待されており、ストルテンベルグ氏は、ウクライナに対するNATOの支援強化について議論するよう期待していると述べた。同氏は「ゼレンスキー大統領が加盟や安全保障の問題を提起することも認識しており、これは会議の重要な議題になるだろう」と述べた。サミットで何が起ころうとも、NATOはウクライナのために長期の計画を立てている。

ストルテンベルグ氏は、ウクライナの軍隊とNATOの相互運用性を高める「複数年支援構想」をゼレンスキー氏と協議したという。「それはウクライナに対するNATOの長期的なコミットメント(関与)の証だ。NATOは今日も明日も、そして必要な限り、あなた方とともに立っている」とストルテンベルグ氏は述べた。

NATO事務総長のウクライナ訪問は、戦争に終わりが見えない中で行われた。米マサチューセッツ州の空軍州兵ジャック・テシェイラ容疑者がリークしたとされる米国防総省の文書では、米国は今年中に和平交渉が実現するとは考えておらず、ウクライナが反攻を計画しても重要な領土を取り戻すことはできないとしている。

ストルテンベルグ氏は、戦争がいつまで続くかわからないと認めた。「この戦争がいつ終わるかはわからない。しかしロシアの侵略は止めなければならない有害な傾向であることはわかっている」と述べた。

ウクライナに対するNATOの支援は、ロシアが侵攻した主な動機の一つであったため、NATOの計画は戦争を長引かせることになる。ウクライナへの攻撃を開始する前に、ロシアは米国に対し、ウクライナがNATOに加盟することはないという保証を求めたが、バイデン政権はこの問題への関与を拒否した。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は木曜日(20日)、ウクライナのNATO加盟を阻止することがロシアの戦争目標の一つであると再確認した。「もちろん、そうでなければ、わが国の安全保障にとって深刻で重大な脅威となるからだ」と述べた。

In Kyiv, NATO Chief Says Ukraine's 'Rightful Place' Is in the Alliance - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-20

露に関する政治的見解を理由に起訴 米国人4人らを米司法省

アフリカ人民社会党のメンバーが「外国の悪意ある影響力工作」に関与と主張

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月19日)

米司法省は、アフリカ人民社会党・ウフル(自由)運動(APSP)のメンバー3人を含む4人の米国人を、ロシアに関する政治的見解を理由に起訴した。これは合衆国憲法修正第1条の権利(言論の自由)に重大な影響を与える措置である。
申し立てによると、米国人4人はロシアの連邦保安庁(FSB)が指示する「外国の悪意ある影響工作」に関与していたという。司法省はまた、昨年起訴したアレクサンドル・イオノフ容疑者を含む、この事件に関連するロシア人3人を起訴した。

イオノフ容疑者はモスクワ在住で、非政府組織(NGO)「ロシアの反グローバリズム運動」(AGMR)を設立した。司法省の申し立てによると、イオノフ容疑者はAGMRを利用してロシアの 「悪意ある影響力工作」を行い、米国人を勧誘して「ロシアのプロパガンダ」を広めた。起訴状によると、APSPが拠点を置くフロリダ州セントピーターズバーグの2019年の地方選挙にロシア人が関与したという。

「ロシアの外国諜報機関は米国人を分断し、米国内の選挙を妨害するために、憲法修正第1条の権利(ロシアが自国民に否定している自由)を武器にしたとされている」とマシュー・オルセン司法次官補は述べた。

APSPの事務所や自宅は、2022年にAGMRとの関連をめぐって米連邦捜査局(FBI)の家宅捜索を受けたことがある。司法省に起訴されたAPSPのオマリ・イェシテラ党首は家宅捜索の後、自身の党が何十年も世界中の組織と連携してきたことを指摘した。

「1981年にカリフォルニア州オークランドで開催された第1回党大会では、世界中の組織や政府から連帯声明を受け取った」と、イェシテラ党首は2023年3月にアンチウォー・ドット・コムが掲載した記事で書いている。

「この事実は、私たちのロシアのNGOとのつながりは『外国勢力』との不正な関係の証拠だという考えが、誤っていることを示すのに役立つ」と同党首は述べた。

イェシテラ党首は、自分の党がロシアのために働いていることを強く否定しており、その政治的信条を理由に標的にされたようだ。APSPはロシアへの支持を表明し、米国のウクライナへの関与を非難しているが、同党は1972年の結成以来、米国の外交政策に反対の声を上げてきた。

イェシテラ党首は記事の中で、起訴されることを予想しており、政府は外国代理人登録法(FARA)を使って自分と党を追及する可能性が高いと述べている。

「これは差別的な起訴だ。アメリカ・イスラエル公共問題委員会をはじめとするイスラエルのロビー団体は、イスラエル政府の代理人として明らかに公的な機能を果たしているにもかかわらず、FARA法の下では訴追を免れているように見える」と同党首は書いている。

司法省のプレスリリースによると、米国人とロシア人の容疑者らは「共謀し、法律で定められた司法長官への事前通知なしに、米国市民を米国内でロシア政府の違法な代理人として活動させた」罪で起訴されている。有罪になった場合、最高5年の禁固刑に処される。

イェシテラ党首と他の2人の米国人は、「そのような事前通知なしに米国内でロシアの代理人として行動した」罪でも起訴されており、最高刑は懲役10年までとなる。

APSPは、弁護士の助言により起訴について声明を出さず、弁護活動のための寄付を募っているとのことである。

Biden's DOJ Indicts Four Americans for Their Political Views on Russia - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-19

米、対中ハイテク投資を制限へ 大統領令を準備中とメディア報道

この命令は米企業に対し、中国の技術への新たな投資を届け出るよう義務付け、一部の取引を禁止する

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月18日)

(米政治専門サイト)ポリティコが火曜日(18日)に報じたところによると、ホワイトハウスは、中国のハイテク分野への米国の投資を制限するために前例のない行動を取る準備をしているようだ。

この措置は、バイデン大統領が署名する大統領令の形で行われ、米企業は中国のハイテク分野への新たな投資について政府への届出を義務付けられることになる。また、中国のマイクロチップ(小型集積回路)部門に関わる取引など、一部の投資を全面的に禁止することになる。

記事によると、この大統領令は、バイデン政権の一部の高官が、米国の新たな対中投資をどの程度厳しく追及するかで対立していたため、何年もかけて作られたものであるという。

バイデン政権関係者は、中国との経済的な断絶を求めているわけではないと主張し、この制限は、中国の軍事利用が可能な技術に対する米国の投資を防止するためのものだと述べている。しかしこの大統領令は、1979年に米中が正式に関係を樹立して以来、発展してきた両国の貿易関係を大幅に縮小させることになる。

昨年、米政府は中国の半導体産業を衰退させる目的で、半導体とチップ製造装置に対する輸出規制を実施した。米国はまた、高度なチップ製造に必要な技術を輸出しているオランダと日本にも、これに従うよう圧力をかけている。

ポリティコの報道によると、この大統領令は4月末に署名される予定だという。政府関係者はすでに業界団体に命令の内容を説明しているが、詳細はまだ変更される可能性がある。

米政府は対中投資の制限のほか、トランプ政権時代の対中関税を引き上げ、中国企業バイトダンス(字節跳動)が所有する動画共有アプリTikTok(ティックトック)の禁止を検討している。上院に提出された、ティックトックを禁止するための法案とされるものは、商務長官にハイテク企業を取り締まる広範囲な権限を与えるものだ。

Report: Biden Preparing Executive Order to Limit US Investments in China - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-18

米訓練兵200人、台湾に駐留中 台湾メディア報道

米国防総省は報道についてコメントを避けたが、台湾への支持を確約した

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月17日)

米国が200人以上の米軍を台湾に派遣し、台湾における米軍の存在感を大幅に高めていると、台湾英文新聞が月曜日(17日)に報じた。
記事は上報(アップメディア)の取材に応じた情報源を引用し、米インド太平洋軍が200人以上の人員を台湾に配置し、台湾の軍隊を訓練で支援したと伝えた。

また、台湾の通信社である中央通訊社(CNA)は、米軍事顧問が約200人、台湾全土に駐留していると報じた。この配置について確認を求められた米国防総省はコメントを避けたが、台湾への支持を確認した。

「具体的な作戦や関与、訓練についてはコメントしないが、中華人民共和国がもたらす現在の脅威に対して、台湾への支援と台湾との防衛関係が一貫していることを強調したい」と、国防総省の報道官マーティ・マイナーズ中佐は電子メールでアンチウォー・ドット・コムに述べた。

「台湾に対する我々のコミットメント(関与)は揺るぎないものであり、台湾海峡と地域内の平和と安定の維持に寄与している」とマイナーズ氏は付け加えた。

ウォールストリート・ジャーナル紙は2月、米国が台湾に100~200人の部隊を配置する計画だと最初に報じた。米国はこれまで、台湾に約30人の部隊を駐留させていたにすぎない。

1979年に米国が台湾と国交を断絶して以来、米国はなお少数の軍事訓練兵を台湾に配置していた。台湾における米軍の小規模な駐留はつねに公然の秘密だったが、2021年に蔡英文総統が台湾の指導者として初めて、米軍が1979年以来台湾に駐留していることを認めるまで、公式に確認されることはなかった。

北京は米台関係の拡大に強く警告してきたため、在台米軍の増加は中国の反発を招くリスクがある。中国人民解放軍は最近、蔡総統が米カリフォルニア州でケビン・マッカーシー下院議長(共和党、カリフォルニア州)と会談したことを受け、台湾周辺で大規模な実弾演習を実施した。

Report: 200 US Military Trainers are Now in Taiwan - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-17

米精密誘導弾、ウクライナで役に立たず 米国防当局が流出情報を確認

ウクライナ軍が精密誘導弾を正しく装備していないことと、ロシアによるGPS信号の妨害が、米国製の兵器が標的を外す原因となっている

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月16日)

米国防総省の関係者が(米政治専門サイト)ポリティコに語ったところによると、ジャック・テシェイラ容疑者が流出させた文書の情報を裏付けるように、多くの米国製精密誘導爆弾がウクライナで目的を達成できないでいる。

ホワイトハウスは昨年末、JDAM-ER(統合直接攻撃弾の射程延伸装置)をウクライナに送るよう命じた。3月には国防総省がこの兵器の運用開始を確認した。テシェイラ容疑者が流出させた文書は日付がないものの、ウクライナが2月15日と21日にJDAMを発射したことが示されている。

JDAM-ERは無誘導爆弾に取り付ける装置で、武器を射程距離50マイル以上のGPS(全地球測位システム)誘導式の精密爆弾にアップグレードするものだ。

先週、国防総省の極秘文書が明らかにしたところによると、ウクライナの操縦士が発射した9発のJDAMのうち4発が、ロシアのGPS妨害機能により目標を外れたという。同文書によると、M270 (多連装ロケットシステム)やHIMARS (高機動ロケット砲システム)といった他の砲撃システムも、GPS妨害機能を使用するロシア軍によって影響を受けているという。

ロシアの戦術に対して、文書はウクライナ軍が「JDAM-ERの利用前に可能な限り通信妨害装置を破壊または妨害すること」を推奨している。

ウクライナでJDAMの失敗を引き起こす第2の問題は、弾薬の不適切な作動である。ポリティコが匿名の防衛当局者に確認したところによれば、「いくつかのケースで、信管の安全装置が解除されても作動せず、起爆に失敗する原因となった」。同当局者によれば、ウクライナ軍はミスを繰り返さないように安全装置を装着したという。

米国がウクライナに送ったJDAM-ERの数は不明だが、文書には「1000本の兵器用ストラップ」がウクライナに提供され、米国はすぐにもっと送る予定だったと記されている。これは、ホワイトハウスが1000個以上の精密誘導弾の部品をウクライナに送るよう計画していたことを示唆している。

テシェイラ容疑者は先週逮捕され、スパイ防止法で起訴された。21歳の同容疑者は、マサチューセッツ州空軍州兵の一員である。文書を(SNS=交流サイト=の)「ディスコード」に投稿した。

同容疑者が投稿した文書の多くは、ウクライナの軍事能力について厳しい描写をしており、ホワイトハウスが米国民に示した前向きな評価とは矛盾している。投稿した約50の文書は現在公開されているが、ワシントン・ポスト紙はさらに数百の文書を閲覧したと主張している。

Defense Official Confirms Leak: American Smart Bombs Are Failing in Ukraine - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-16

【コラム】停戦呼びかけをあざ笑う人たち

木村 貴

日本の国際政治学者やジャーナリストらが4月5日、東京都内で記者会見し、ロシアによるウクライナ「侵攻」に対して日本が停戦交渉の仲裁国となるよう求める声明を発表した。日本政府に対し、5月に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に際して停戦交渉を呼びかけるよう訴えている。
朝日新聞の報道によると、声明は学者ら約30人が連名で発表。現状では「核兵器使用や原発をめぐる戦闘の恐れ」があると指摘し、「戦争が欧州の外に拡大することは断固防がねばならない」と訴えた。ロシアとウクライナは即時停戦の協議を再開すべきだと訴え、日本政府が中国、インドとともに交渉の仲裁国となるよう求めている。

発起人には、会見に出席した和田春樹氏(東京大学名誉教授)、伊勢崎賢治氏(東京外国語大学名誉教授・元アフガン武装解除日本政府特別代表)、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、羽場久美子氏(青山学院大学名誉教授)らのほか、上野千鶴子氏(東京大学名誉教授)、内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授、武道家)、金平茂紀氏(ジャーナリスト)、姜尚中氏(東京大学名誉教授)らが名を連ねた

この中には私が以前、国内の政治経済にからんで批判した人もいる。世界平和の基礎となるのは自由貿易と市場経済だが、そのことを理解している人ばかりでもないようだ。しかし今、つべこべ言うつもりはない。政府やマスコミによって無責任な主戦論が喧伝されるなか、この停戦交渉の呼びかけは、それだけで大きな価値がある。

ところがネット上でみる限り、この呼びかけに対するメディアや専門家・言論人の反応は総じて冷たい。国内主要マスコミで会見を取り上げたのは、共同通信の配信とみられる地方紙を除けば、朝日と東京新聞しかない。専門家・言論人に至っては、十分な知識もないまま反発したり、口汚い言葉で罵ったりあざ笑ったりと、さんざんだ。目についたものを紹介しよう。出所はとくに断らない限り、ツイッターである。誤字・誤記はそのまま。

まずは国際政治の専門家以外からいこう。経済学者の池田信夫氏は「G7にウクライナ戦争の当事国はないのだが、『停戦しろ』って頭おかしいのかな…と思って賛同者を見たら、やっぱりいおかしい人々だった」と投稿した。「G7にウクライナ戦争の当事国はない」というが、後述する国際政治学者の東野篤子氏も認めるように、G7はウクライナを「支援」しているのだから、立派な当事国だ。経済問題に関する悪口はさえている池田氏も、この悪口は「おかしい」。

経済評論家の上念司氏は「この停戦案はウクライナの負担が重すぎる。どっちに肩入れしてるかバレバレです」と書いた。日々多数の人々が戦火で命を落とすなか、即時停戦しても「負担が重すぎる」とは思えないが、かりに第三者にはそう見えても、実際に判断するのはウクライナの人々自身である。停戦は双方の合意によって成立するのだから、もしウクライナ側が「負担が重すぎる」と感じるのであれば、条件交渉すればいい。それが外交というものだ。上念氏がウクライナをそのテーブルに着かせようとさえしないのは、戦争を終わらせたくない勢力に「肩入れ」しているように見える。
今回の戦争に関する議論の特徴は、もともと反戦平和に熱心だったはずの左派言論人が即時停戦に消極的で、人によっては積極的に反対までしていることだ。ジャーナリストの布施祐仁氏は「私も一刻も早い停戦を望む」としながらも、「そのために必要なのはロシアがウクライナ領土の一方的併合を撤回すること」と述べる。そんなことを待っていたのでは、「一刻も早い」どころか、いつまでたっても停戦などできはしない。その間、人は死ぬ。

大手メディアはことあるごとに、ロシアによる南部クリミア半島や東部ドンバス地方の編入を「一方的併合」と言い立てる。布施氏も同じ考えをしているようだ。しかし周知のように、編入の際にクリミアやドンバスでは住民投票が実施され、圧倒的多数の支持を受けて編入が行われている。「一方的」というのは事実に反する。

2022年9月、ドンバス地方のドネツク人民共和国(ドネツク州)で現地取材したカナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット氏によると、住民は2014年の内戦開始以来、ウクライナ軍の攻撃に疲れて平和を望み、ロシアに入ればそれが実現すると思っている。多くの市民が投票を確実に進めるためにボランティアとして参加した。西側メディアが主張するようにロシアに銃を突きつけられて投票したのではなく、とうとう投票できたと喜んだ。投票所では外国人を含むオブザーバーが投票手続きを監視した

編入後、クリミアやドンバスの復興が進んでいるという情報はあっても、住民がロシアの弾圧に苦しみ、離脱を望んでいるという話は聞かない。それでもロシアによる「一方的併合」だと信じるのなら、なすべきことはその「撤回」ではない。現地の人々の声を聞き、真偽を確かめることだ。防衛問題について鋭い取材をしてきた布施氏の報告をぜひ読んでみたい。

天皇問題について有益なツイートの多い弁護士の堀新氏は、「停戦すれば単にロシアが占領した状態が既成事実化するだけで、第三者の介入や監視の余地はないのでは」と述べる。「ロシアが占領した」地域がクリミアやドンバスを指すのであれば、すでに述べたとおり、ロシアが手放すはずはないし、手放させる正当な理由もない。クリミアやドンバスを「自称」独立国としてウクライナから分離させたのは国際法違反だと欧米は主張するが、欧米自身、旧ユーゴスラビア紛争の際、セルビアの一部であるコソボを分離させ、国連安全保障理事会が認めないままにその独立を認めており、天につばするようなものだ。

いずれにせよ、領土の現状を「既成事実」として認めるかどうかはロシアとウクライナの協議次第だ。国連など「第三者」の関与は、常識的に不可欠だし、無理だとも思えない。昨春合意に一時近づいたイスタンブールでの停戦協議で、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する見返りとして、中国や米国を含む国連安保理常任理事国などによる安全保障の担保を求めた。

政治学者の五野井郁夫氏は、「今回ウクライナに対して事実上『クリミア他の占領地域をロシアに差し出せ』と迫った日本の有識者たちは、なぜ力による現状変更が国際法違反であり、力による変更の容認がロシアを利することとなり、何よりも抗戦の意思を示しているウクライナ市民を愚弄する発言であることに気が付かないのでしょうか?」と憤る。クリミアなどの編入が住民の支持を得ており、「力による現状変更」といえないことはすでに述べた。「抗戦の意思を示しているウクライナ市民」というが、クリミアやドンバスのロシア系住民は五野井氏からみればウクライナ市民のはずで、彼らはロシアに対し「抗戦の意思」など示していない。むしろロシアに編入されて喜んでいる。

2023-04-14

米機密文書流出、21歳の空軍州兵を逮捕

NYタイムズ紙は、FBIの逮捕前に容疑者の名前を挙げた

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月13日)

米連邦捜査局(FBI)は13日、ペンタゴン(国防総省)をはじめとする米政府機関の機密文書をネット上に流出させた犯人として、マサチューセッツ州空軍州兵の21歳の隊員を逮捕した。
ジャック・テシェイラ容疑者の名前は、逮捕前にニューヨーク・タイムズ紙が初めて漏洩犯の可能性があるとして挙げたものだ。同紙は、欧州連合(EU)が資金を提供し、米情報当局がしばしば賞賛するウェブサイト「べリングキャット」と調査を行い、漏洩者を特定した。

タイムズ紙の報道によると、同紙はテシェイラ容疑者について米政府関係者と話し合い、FBIが同容疑者の名前を公表する前にコメントを求めたという。

「本日司法省は、機密扱いの国防情報を移動、保持、送信した疑いの捜査に関連して、ジャック・ダグラス・テシェイラを逮捕した。テシェイラは州空軍州兵の職員である」とメリック・ガーランド司法長官は逮捕後に述べている。

テシェイラ容疑者はマサチューセッツ州空軍の情報部門に所属しているが、この若い航空兵がなぜこれほど多くの最高機密文書にアクセスできたのかは明らかではない。タイムズ紙によると、同容疑者は昨年7月、兵として下から3階級目の一等空兵に昇進した。

テシェイラ容疑者は、ケープコッドの基地にあるマサチューセッツ州空軍の第102情報飛行隊に勤務していた。職種は、通信機器の修理を行うサイバー・トランスポート・システムズ・ジャーニーマンだった。

テシェイラ容疑者は、主にゲーマーが使用するメッセージプラットフォームである「ディスコード」のサーバーに文書を投稿したことで非難されている。彼が文書を送信していたチャットは非公開で、メンバーは約25人、若い男性や10代の少年のグループだった。

ディスコードのメンバーの1人が、3月に他のチャットルームで文書を公開し始めたとされ、最終的に文書はタイムズ紙に発見された。ワシントン・ポスト紙によると、テシェイラ容疑者が投稿したとされる文書の写真は300枚にのぼるという。

ディスコードのメンバーでタイムズ紙の取材に応じた17歳の女性は、文書を流出させたとされる同容疑者について、「反戦派」の「キリスト教徒」で、「何が起こっているのかを友人の何人かに知らせたかった」だけだと説明している。

Twenty-One-Year-Old Air National Guardsman Arrested as Suspected Leaker - News From Antiwar.com [LINK]

<関連コメント>
スノーデン氏アサンジ氏のように、政府による権利侵害を暴く機密文書をリークした人は皆、勲章を与えられるべき英雄だ。(米リバタリアン党)

2023-04-13

ウクライナ政府関係者、米援助を横領か

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月12日)

調査ジャーナリストであるセイモア・ハーシュ氏は水曜日(4月12日)、米中央情報局(CIA)がウクライナの広範な汚職と米国からの援助の横領を認識していたとする記事を(メルマガサービスの)サブスタックで発表した。
記事によると、ウクライナ政府は米国の税金を使ってロシアからディーゼルを購入し、軍に燃料を供給している。ハーシュ氏は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が「自国と米国が戦争状態にあるロシアから燃料を購入し、側近の多くとともに、ディーゼル燃料の支払いに充てられた米ドルから数百万ドルもの金をくすねてきた」と述べた。

ハーシュ氏の記事で、CIAのアナリストによるある推定によれば、少なくとも4億ドルの資金が昨年横領された。情報筋はハーシュ氏に、ウクライナ政府関係者は「競い合って」、世界中の民間武器商人と輸出契約を結ぶためのフロント企業を設立しているとも述べた。

汚職の問題は、1月に行われたウィリアム・バーンズCIA長官とゼレンスキー大統領との会談の際に提起された。この会談を直接知る情報機関関係者はハーシュ氏に、バーンズ氏がゼレンスキー氏に驚くべきメッセージを伝えたと語った。

ハーシュ氏はこう書いている。「ウクライナの上級将官や政府高官はゼレンスキー氏の強欲ぶりに怒りを覚えていると、バーンズ氏はゼレンスキー大統領に告げた。 というのも『ゼレンスキー氏は将軍たちに行くよりも不正受給の分け前を多く取っていた』からである」

会談の中でバーンズ氏は、CIAに汚職が知られている35人の将軍と政府高官のリストをゼレンスキー氏に提示した。これに対してゼレンスキー氏は、明らかな汚職に手を染めていた10人の官僚を解任した。「ゼレンスキー氏が解任した10人は、新車のメルセデスでキエフを走り回り、持っている金を堂々と自慢していた」と諜報部員は語った。

ハーシュ氏によれば、ゼレンスキー氏の「中途半端な対応」とホワイトハウスの「関心のなさ」が米情報当局者を怒らせた。ハーシュ氏に語った情報当局者は、バイデン大統領の二大外交政策顧問であるアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)を批判した。

「彼らは経験も判断力も道徳的誠実さもない。ただ嘘をつき、話をでっち上げるだけだ。外交的否認とは別のものだ」とこの当局者は語り、「ホワイトハウスの指導部と情報機関の間に完全な断絶があった」と述べた。

記事によると、この亀裂は秋にノルドストリーム天然ガスパイプラインが爆破されたときに始まったという。ハーシュ氏の以前の報道によると、パイプラインを破壊する作戦を命じたのはバイデン大統領だった。「ノルドストリームのパイプラインを破壊することは、(情報活動)コミュニティーで議論されたこともなければ、事前に知らされたこともない」と当局者は述べた。

この当局者は、バイデン政権内には「戦争を終わらせるための戦略がない」と述べ、ブリンケン氏とサリバン氏に対してさらに痛烈な批判を展開した。

「バーンズ氏は大した問題ではない」と当局者は言った。「問題はバイデン氏とその主な副官であるブリンケン氏とサリバン氏、そしてその崇拝者たちの集まりで、ゼレンスキー氏を批判する人たちを親プーチン(露大統領)とみなしている。『私たちは悪に対抗している。ウクライナは最後の砲弾がなくなるまで戦うだろう』。そしてバイデン氏といえば、米国民に対し、必要な限り戦うつもりだと言っているのだ」

ハーシュ氏の記事は、ペンタゴン(米国防総省)やその他の政府機関から流出した一連の極秘文書がネット上で表面化した後に発表された。文書の中には、米国によるウクライナの戦争計画を示し、反攻を成功させるウクライナの能力を疑っていることを明らかにしたものもあり、ウクライナの能力についてバイデン政権当局者が公言してきたものとは、まったく異なる見解が示されている。

Seymour Hersh: the CIA Knows Ukrainian Officials Are Skimming US Aid - News From Antiwar.com [LINK]

豪議員、アサンジ氏の引き渡し断念求める

英ガーディアン紙
(2023年4 月11日)

48人の下院議員と上院議員が公開書簡で、(内部告発サイト)ウィキリークス創設者の追及は「危険な前例となる」と「最も親密な戦略的同盟国」に警告している。

オーストラリアの政治家たちは政治的党派を超えて、メリック・ガーランド米司法長官に対し、英国からジュリアン・アサンジ氏を引き渡させようとする試みを断念するよう要請した。
政権与党である労働党の13人を含む48人の下院議員および上院議員は、ウィキリークスの創設者を追及することは、報道の自由にとって「危険な前例となり」、米国の評判を傷つけることになると警告した。

豪国籍のアサンジ氏は、ロンドンのベルマーシュ刑務所に留置されている。アフガニスタン戦争とイラク戦争に関する数十万件の文書や外交公電の公開に関連し、米国が同氏の身柄を引き渡させ、罪に問おうとする動きに抵抗している。

労働党、保守連合、緑の党、無所属の政治家たちは、火曜日(4月11日)に発表した公開書簡の中で、ガーランド長官に対し「引き渡し手続きを取り下げ、アサンジ氏の帰国を許可する」よう求めた。

「もし引き渡し要求が承認されれば、豪国民は(米英豪の安全保障の取り組み)「AUKUS(オーカス)」の同盟国から別の同盟国(最も親密な戦略的同盟国)への国民の一人の強制送還を目撃することになり、アサンジ氏は残りの人生を刑務所で過ごすことになる」と手紙は述べている。

「これはすべての世界市民、ジャーナリスト、出版者、報道機関、報道の自由にとって危険な前例となるだろう。また、表現の自由と法の支配に関する世界の指導者である米国にとっても、無用なダメージを与えることになる」と述べている。

書簡によると、スパイ活動法に基づく17件とコンピューター不正使用法に基づく1件を含む罪状は、「戦争犯罪、汚職、人権侵害の証拠となる」情報を公表したアサンジ氏の「ジャーナリストおよび出版者としての」行為に関わるものである。

上下両院の議員は、アサンジ氏を現在も追っていることと、元米軍情報分析官チェルシー・マニング氏の場合を対比している。マニング氏はバラク・オバマ元米大統領が情報漏洩の罪による35年の軍事刑務所の刑を減刑し、2017年に釈放された。

書簡は、アサンジ氏(当初はロンドンのエクアドル大使館に避難していた)が「何らかの形で10年以上にわたって事実上投獄されているが、機密情報を漏らした人物は減刑され、2017年に米社会に参加できるようになった」と述べる。

この書簡を発案したのは、「ジュリアン・アサンジの議会友人グループ」の共同議長を務める無所属議員のアンドリュー・ウィルキー氏である。アサンジ氏がベルマーシュ刑務所に収容されてから4周年にあたる。

ウィルキー氏によると、豪州の48人の連邦議会議員は「世界中の議会議員からの同様の書簡と協調して」行動しており、合わせて数百万人の有権者を代表している。

ウィルキー氏は述べる。「これは小さな問題ではなく、却下されてはならない。政治的関心の高まりが党派を超え、多様な理由に基づいていることも無視してはならない」

アサンジ氏の父親であるジョン・シプトン氏は、息子は「恥辱と不名誉のどん底」の中で生きてきたと語った。

シプトン氏は、新任の豪駐英高等弁務官であるスティーブン・スミス氏が先週ベルマーシュ刑務所を訪問したことは、「真実へのこの殺伐とした厳しい冷淡さと、ジュリアン・アサンジの破滅の終わりの始まり」だと述べた。

アサンジ解放運動の法律顧問であるグレッグ・バーンズ事務局長は、米国がアサンジ氏を起訴しようとすることは「危険」であり、「世界中のどこのジャーナリストや出版社も、米政府が知られたくない資料を暴露したことで米国への送還に直面しうる」ことを意味すると語った。

ペニー・ウォン豪外相は先月末、外交で達成できることには限界があると警告した。

しかし同外相は、豪州は米英両政府に対し、アサンジ氏に対する訴訟は「十分に長引いたので、終結させるべきだ」という見解を表明し続けるだろうと述べた。

火曜日の書簡に署名した労働党議員は、ミシェル・アナンダ・ラジャ、マイク・フリーランダー、ジュリアン・ヒル、ピーター・カリル、タニア・ローレンス、ザネタ・マスカレンハス、ブライアン・ミッチェル、アリシア・ペイン、グラハム・ペレット、スーザン・テンプルマン、マリア・バンバキヌ、ジョシュ・ウィルソン、トニー・ザピア各氏の計13名である。

保守連合の署名者の中で最も注目されたのは、バーナビー・ジョイス元副首相とブリジット・アーチャー下院議員(バス選出)である。

緑の党の指導者であるアダム・バント下院議員は、多くの党員とともに署名し、無所属の下院議員や上院議員も多く署名している。

豪首都キャンベラの米国大使館にコメントを求めたが、ホワイトハウスは以前、アサンジ氏の訴訟について聞かれた際、ジョー・バイデン大統領は「司法省の独立を守る」と述べている。

Dozens of Australian politicians urge US to abandon Julian Assange extradition | Julian Assange | The Guardian [LINK]

中東の平和、米国の苛立ち

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年4月10日)

現在進行中のロシアとウクライナの戦争と、この戦争への米国の関与増大に気を取られているうちに、中東で大きな進展があり、米国がこの地域に介入してきた数十年の歴史に終止符が打たれた。中東に平和が訪れようとしているが、米政府はこれをまったく喜ばない。
たとえば、サウジアラビアと、かつて敵対していたイランやシリアとの関係が最近修復されつつある。中国が仲介したサウジとイランの取引により、両国の外相が先週北京で会談し、完全な国交を再開した。両国の外相会談は、この7年間で最高レベルのものである。

さらに、サウジはシリアをアラブ連盟に復帰させる見込みで、シリアのアサド大統領が次のアラブ連盟首脳会議に出席する可能性もある。シリアがアラブ連盟から外されたのは12年前、当時の米国の中東における同盟国が、地域全体に大混乱をもたらした米国の「アサドは去れ」政策に署名したときだった。

また、10年近く続いたイエメンでの戦争は、その住民に壊滅的な打撃を与えたが、やっと終わりそうだ。サウジが米国に支援されたその戦争の終結を発表する見込みである。アラブ首長国連邦(UAE)の軍隊がイエメンを離れ、サウジの代表団が和平交渉のために到着している。

普通の人々にとって、中東に平和が訪れるということはすばらしいことだ。しかし米政府は普通ではない。バイデン大統領は先週、中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官をサウジに派遣し、突然の訪問を行わせた。報道によると、バーンズ氏は和平交渉が成立したことに対する米国の驚きと苛立ちを表明するために派遣されたという。バイデン氏の外交政策チームは、サウジが近隣諸国と仲良くしようと突然動き出したことに「不意打ちを食らった感じ」だという。

サウジがシリアやイランと取引を始めることに米国が怒っているのは、この両国がまだ米国による「重大な障害を与える」制裁下にあるからだ。米国が要求した制裁を無視する国が次々と現れ、米国の外交政策全体が、威勢と脅しだけの張り子の虎であることが露呈しつつある。

中東情勢は、米国の外交政策に関する汚い秘密を明らかにした。米政府は長い間、「分割統治」戦略を用いて、中東やその他の国々を互いにいがみ合わせてきた。制裁、秘密工作、カラー革命はすべて、これらの国々が互いにうまくいかないように、そして誰が主導権を握っているかを確認するために使われてきた。

ありえないことだと思う人もいるかもしれないが、中国がこの地域に進出し、異なる政策をとっている。中国はビジネスパートナーを求めているのであって、中東の内政を操作するつもりはない。中国は中国なりに非情かもしれないが、この地域の国々が米国の干渉に疲れ、新たなパートナーを探していることは、突然明らかになった。

私たち非介入主義者はしばしば、「孤立主義者」として攻撃されるが、私がいつも言っているように、米国を世界から孤立させているのは、政府のネオコン(新保守主義者)と介入主義者である。それが最近中東で顕著に表れている。このような事態になる必要はなかったのだが、もしこれで米国が中東問題に干渉することがなくなるのであれば、結局は米国民にとって、そして平和にとって、良いことである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Peace is Breaking Out in the Middle East…and Washington is Not Happy! [LINK]

2023-04-12

ひそかに増大する米傭兵

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年3月31日)

海外のいわゆる紛争地帯に配置された米軍兵士に関する公式データが、実際の数を過小評価している可能性があることが次第に明らかになってきた。同様に、現役軍人の死傷者は、過去20年間の米国のさまざまな海外聖戦で被った米国人の死者のほんの一部にすぎない。
統計的なごまかしの主な原因は、先週シリア東部の連合軍基地で米軍を標的にしたドローン攻撃で死亡した1人のように、ペンタゴン(米国防総省)が「民間請負業者」の利用を増やしていることだ。1月の議会調査局(CRS)によると、2022年末時点で、中央軍の責任範囲全体で国防総省のために働く請負業者社員は約2万2000人で、イラクとシリアにいる社員は7908人だと報告されている。

この言葉が使われるのを聞くと、ほとんどの人は、関係者が軍に食料、輸送、その他のサービスを提供する支援要員であると考える。そのとおりである。しかし多くの場合、請負業者は武装した警備の代わりをしており、言ってみれば傭兵であり、米軍の正式な一員である部隊と同様の割合で犠牲者を出すことがある。

2017年、北大西洋条約機構(NATO)の「確固たる支援任務(RSM)」およびアフガニスタン米軍司令官(当時)のジョン・ニコルソン陸軍大将は、上院軍事委員会で、国防総省はアフガンで「兵力配置レベルを満たすために、契約者を兵士に代える」必要があると述べた。2018年10月現在、アフガンには2万5000人以上の請負業者がいた。そのうち、アフガンでの民間警備請負業者は4172人で、2397人が武装民間警備請負業者に分類される。

請負業者利用のピークはもちろんグローバルな対テロ戦争時で、イラクとアフガンの戦時契約に関する委員会は2011年の最終報告書で、国防総省、国務省、国際開発庁(USAID)による軍事請負業者への「不健康な過剰依存」があったと述べている。

近年の武装請負業者の正確な数を特定するのは難しい。公式には少ないようだ。2021年2月の報告では、2020年末にアフガンにいた2万7338人の請負業者のうち、武装した(非武装でない)警備請負業者は1413人、イラクとシリアの間の(非武装の)民間警備業者は96人と報告されている。

しかし2023年のCRSによれば、「イラクとシリアで国防総省のために働く警備請負人の数は、さまざまな要因によって、時間の経過とともに大きく変動している。2022年度第4四半期の時点で、国防総省はイラクとシリアで941人の警備請負業者を報告しているが、その中に武装警備請負業者と特定された者はいなかった」という。

しかし2022年4月、国防総省は、イラクとシリアにいる当時の軍事請負業者6670人のうち、596人が訓練と警備に指定されているという数字を発表した。

ペンタゴンの請負業者の多くは、直接戦闘を行わないことになっているが、現代のヘッセン兵(18世紀に欧州主要国が雇っていたドイツの傭兵)にすぎない。英国は、アメリカ植民地の独立を阻止するために、これらの傭兵を利用した。実際、ジョージ・ワシントン軍は、1776年のクリスマスの奇襲攻撃でトレントンとプリンストンを占領した際に、900人以上のヘッセン兵を捕獲している。

現代では、アフガンとイラクの戦争でブラックウォーター社が重要な請負業者として登場し、ペンタゴンの戦略における新たな重要な要素を浮き彫りにした。ブラックウォーターは、1996年12月下旬に元海軍特殊部隊のエリック・プリンス氏によって設立され、その後、何度か社名を変更し、最近ではコンステリスとなった。しかし基本的なビジネスモデルはそのままであり、そのモデルは模倣者を引きつけている。2020年に発表された同社関係者の証言は、同社関係者が米軍にのみ支援サービスを提供しているという幻想を打ち砕くものである。

戦闘状態にある請負業者には、そのような役割のリスクが高まっている。ブラウン大学ワトソン研究所の計算では、2021年9月1日現在、イラクで死亡した米兵は4898人である。請負業者の死者数は3650人とわずかな差だ。アフガンでは、2021年8月に米軍が撤退した時点で、米国の「民間」請負業者による死亡の怪しさがより鮮明になっていた。米政府は、20年にわたる介入期間中に、3846人の請負業者に対し、2448人の米軍兵士が死亡したことを認めた。ワトソン研究所の分析では、請負業者の死亡者数は3917人とされている。

2021年末、戦略国際問題研究所(CSIS)のアナリストは、9・11テロ以降のさまざまな紛争で、米軍兵士よりも多くの請負業者(約8000人)が死亡していると指摘した。請負業者が戦闘行為に何らかのレベルで深く関与していなければ、このような結果はありえない。

ペンタゴンのシリアでの戦略も、請負業者を可能な限り活用することに基づいているようだ。米国がシリアに派遣している部隊は、公式には約500人だが、最近の報道では900人以上とされている。しかし知る人ぞ知る、2017年のジェームズ・ジャラード元帥の不用意なコメントでは、シリアにいる米軍兵士の実際の数はつねに4000人に近いと示唆されている。ジャラード氏は、そのような告白が当時の国防総省の公式見解と矛盾していたにもかかわらず、ワシントンの請負業者の幹部もその合計に含めていたようだ。

国防総省に対し、現在シリアにいる武装した、あるいはそうでない軍事請負業者の数を確認するコメントを求めたが、回答はなかった。

3月23日のシリア東部の米軍標的への無人機攻撃は、米軍契約者1人を殺害し、もう1人(および5人の軍属)を負傷させたが、シリアにおける米国の招かれざる存在の実際の範囲(および危険性)を改めて垣間見ることができただろう。国防総省の請負業者の利用は、米国が不必要で血なまぐさい、道徳的に疑わしい武力紛争に巻き込まれる範囲を隠す便利な煙幕になっている。

私たちは今、ウクライナの対ロシア戦争に対する米国の支援に関して、その状況が現れているのを目の当たりにしているのかもしれない。元国家安全保障会議スタッフのアレクサンダー・ビンドマン氏は、ドナルド・トランプ前大統領に対する最初の弾劾手続きを担当したことで有名だが、破損した兵器システムを修理するウクライナの努力を支援するために軍事請負業者を派遣するよう、米政府を公然と後押ししている。CSISはすでに2022年5月に、米国の「戦場請負業者」を派遣する同様の動きを提案している。このような支援から、いわゆる請負業者による直接戦闘の役割に移行するのに、劇的な発展は必要ないだろう。

米国の指導者は、アフガン、イラク、シリアの問題に干渉したときよりもさらに危険なリスクをちらつかせている。ウクライナに米国の傭兵が存在すれば、ロシアと直接衝突することになりかねないからである。議会も米国民も、すべての戦闘地域における米政府のヘッセン兵の役割について、もっと透明性を高めるよう要求しなければならない。

Syria episode shows how contractors still used to fight America's wars - Responsible Statecraft [LINK]

2023-04-11

中国と戦争するのはやめよう

作家、シェルドン・リッチマン
(2023年4月7日)

パワーエリートを恐怖に陥れる言葉は、中国である。それは存亡の危機に対する恐怖ではなく、むしろ米国が世界政治において二の次になりつつあることへの恐怖である。その結果、中国との戦争は避けられないと信じている、あるいは信じていると言う人もいる。彼らにとって、それは好都合なことなのだ。
ここで提案したい。中国と戦争するのはやめよう。中国は米国ほどではないが、核爆弾を持っている。中国の人々にとっても、米国の人々にとっても、ほとんどすべての人にとっても、戦争は良い結果をもたらさないだろう。例外は中央集権的で権威主義的な権力を擁護する人々や軍産複合体であり、彼らは山賊や殺人者のように儲けるだろう。

中国を敵(または敵対者)とみなすか、競争相手とみなすかという狭い選択は、インチキである。どちらでもないのだ。中国はたくさんの人がいる国だ。たしかに、悪い中央集権政府があり、ある意味、国民に何をすべきか指示している。しかし「我々の」敵でも、「我々の」競争相手でもない。米国人が中国で組み立てられた商品(部品は他の多くの場所で作られるが)を買うとき、少なくとも間接的には、企業としてともに行動する中国人個人と協力している。米国の消費者は、中国の製造業者と競争することはない。米国の会社が作る製品を中国の会社も作って輸出するのであれば競争だが、それは中国の会社との競争であって、中国という国との競争ではない。

世界経済を国家間の競争と考えるのはやめなければならない。そのような態度が、関税や割当など、自由を制限することにつながっている。米政府を含む多くの政府の干渉にもかかわらず、私たちには世界市場があり、それは世界的な分業、つまり協力関係を意味する。

個人の自由を重んじる人は、中国政府の下で暮らしたいとは思わないだろう。政治的自由は存在せず、経済の自由化も制限されている。さらに、中国政府は一つまたは複数の集団を奴隷化していると報じられている。それが事実かどうか、私にはわからない。しかし戦争の理由にはならない。それが核兵器による戦争であれ、通常兵器による戦争であれ。

中国政府はもちろん、米政府と同じように近隣の安全保障に気を配っている。ただし、米政府は全世界を近隣とみなしている。米政府が台湾と戦争演習を行うことは、決して良いことではない。中国が標的なのだ。中国は米国をスパイしているのだろうが、最近の暴露からわかるように、米政府はすべての人をスパイしている。それが大国(と小国)のすることなのだ。秘密はうまく隠そう。

台湾をめぐる紛争の是非はともかく、米政府には関係ないことだ。米国の安全保障のために行動しているという政府の主張は、連邦準備理事会(FRB)が米国の銀行システムの健全性を宣言するのと同じくらいしか信じられない。台湾、香港、南シナ海の小さな島々は、私たちの関心事ではない。自分の自由と繁栄に関心があるならそうだし、世界の他の地域の自由と繁栄にも関心があるなら、なおさらだ。言うまでもなく、まともな人々は、地域のすべての人々の生命、自由、幸福を追求する自由を願うだろうが、戦争がそれらをもたらすことはない。

中国への懸念は、当然ながら他の問題にも影響を及ぼす。最新のものは、1億5000万人の米国人が利用するTikTok(ティックトック)というソーシャルネットワーキングである。ジョー・バイデン米大統領や議会の共和・民主両党(ランド・ポール上院議員のような立派な例外を除く)は、ティックトックが中国企業によって所有されており、中国政府が米国人の情報を収集するために使用している、あるいは使用する可能性があると主張し、禁止しようとしている。ティックトックの最高経営責任者(CEO)は中国人ではなく(周受資CEOはシンガポール人)、米国人パートナーもいるため、これを否定している。

皮肉なことに中国政府は、共産党が自国民に学ばせたくないことを学ばせないために、ソーシャルネットワークを禁止・制限していることで悪名高い。つまり米政府にティックトックを禁止・妨害させようとする人たちは、米政府が中国共産党のような存在になることを望んでいるのだ。意味がわからない。

周知のように米政府は、米国民に知られたくない情報や意見を禁止・制限するよう、米ソーシャルネットワークに日々圧力をかけている。この政府にさらに大きな力を与えようというのだろうか。米議員ならやりかねない。保留中の法案(RESTRICT法)は、不吉なほど広範で曖昧に定義された権限を商務長官に与え、あらゆるソーシャルネットワークを妨害し、「外国」の影響から私たちを守るとされる。それが良い考えでないことはおわかりだろう。この点に関する政府のこれまでの記録は、憂慮すべきものだ。政府と関係のある組織や個人はソーシャルネットワーク上での自由な意見交換を妨害し、意見の発信源は外国の敵対勢力だと主張してきたが、実際の発信源は米国人だった。「ハミルトン68」(訳注・ロシアの工作員が暗躍しているという偽情報を流してきたシンクタンク)に関するツイッター文書が明らかにしたとおりだ。

最後に、中国はイランとサウジアラビアの外交関係の再開を促し、皆を驚かせた。これはいくつかの理由から好ましい。 まず、米国が世界の守護神を自任する役割が弱まることを示唆する。イエメンの人々に対するサウジアラビアの残虐な戦争が正式に終結することも期待したい。また、米・イスラエル政府によるイランとの戦争やイランの屈服という野望を阻止し、米国の武器商人であるドナルド・トランプの下で始まったアブラハム合意(イランに対する統一戦線とパレスチナのさらなる疎外を目的とする協定)の追求を弱体化させるはずだ。イスラエルと米政府は、サウジがこのような協定に署名することを望んできた(バイデン米大統領はなぜ、昔の上司であるオバマ元大統領が署名したイランとの核合意を復活させ、イラン国民に対する残酷な制裁を終わらせないのだろうか)。

中国がサウジやイランの石油を買い、両国との商業関係を途切れさせないよう望んでいるため、中国の中東外交を露骨な利己心とみなす論客がいると聞いたことがある。しかし、もし中国の利己心が戦争の代わりに外交を行うことにあるのなら、何が悪いのだろうか。合理的な利己心は欠陥ではなく、利点である。中国がウクライナとロシアに対して同じようなこと(和平調停)をするかもしれない兆候はある(バイデン氏でなく、ゼレンスキー・ウクライナ大統領は興味があると言っている)。停戦はもっと早く準備されていたはずだ。

米国という国家は長い間、世界の混乱、悲惨、戦争を引き起こす力となってきた。経済制裁、体制転換、ひそかなあるいは露骨な戦争など、その度重なるいじめは、「例外的な国家」の支配にうんざりしている世界の多くの人々をますますうんざりさせている。遅かれ早かれ、そうならざるをえなかった。米政府は世界秩序を設計することはできない。帝国を清算して帰国するときが来たのだ。帝国は外国人に害を及ぼすだけでなく、米国人を不自由で貧しくしてしまう。

TGIF: Let's NOT Go to War with China | The Libertarian Institute [LINK]

2023-04-10

【コラム】偽りの聖地

木村 貴

岸田文雄首相は3月21日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を「電撃」訪問しゼレンスキー大統領と会談した。戦闘が続く国・地域を日本の首相が訪問するのは第2次世界大戦後初めてだ。主要7カ国(G7)の議長としてウクライナへの「揺るぎない連帯」を強調し、殺傷能力のない装備品の提供へ3000万ドル(40億円程度)の拠出を表明した
首相は会談に先立ち、「400人超の民間人が殺害されたとされる」(ロイター通信)キエフ近郊のブチャを訪れ献花し、黙祷を捧げた。首相は、1年前にブチャで起きたことに「世界中が驚愕した」とし、犠牲者や負傷者に「日本国民を代表し、心からお悔みを申し上げる」と述べた。

日本経済新聞の3月31日記事(「『許せない』 岸田首相はブチャでそう呟いた 検証・ウクライナ訪問」)によると、首相がウクライナ到着後、真っ先にブチャに向かった背景には、罪のない多くの命がロシアによって奪われたこの地には「被爆地・広島と共通するものがある」という首相の持論があったという。ブチャでは教会を訪れ、家族を失った人の話を聞いたり、教会内に並べられた凄惨な写真を見たりした後、「来て良かった」「こんなひどいことは許してはいけない」と語った。

岸田首相が本当に、ブチャで400人超の命を奪ったとされるロシアに対し「こんなひどいことは許してはいけない」と憤るのなら当然、広島への原爆投下で約14万人の命を奪った米国に対しては、それ以上に怒り、非難するはずだが、これまで首相の口からそのような言葉は聞いたことがない。奥ゆかしいかぎりだ。

「虐殺の町」ブチャには、岸田首相以前にも米欧諸国から要人が度々訪れ、ある種の「聖地」となっている。ウクライナ最高議会のアレクサンドル・ドゥビンスキー議員が明かすところによると、ウクライナはブチャという「悲しみの絵」を残し、西側諸国に援助を求めやすくするため、あえて修復していないという。

ロシア軍からの解放宣言(といっても後述のように、ロシア軍の自主撤退だが)から1年となった3月31日には、ゼレンスキー大統領自らブチャを訪れ、「我々は決して許さない。全ての犯罪者に罰を与える」と演説し、ロシアの戦争犯罪を追及する姿勢を改めて示した

しかし、一つだけ問題がある。米国が広島(と長崎)に原爆を落とし多数の市民の命を奪ったのは、米国自身も認めるまぎれもない事実だが、ロシアがブチャで多くの民間人を虐殺したというウクライナの主張には、ロシアが事実無根だと反論し、その他の論者からも疑問が呈されている。

まず昨年3月、ロシア軍がブチャの町にいたとき、住民は自由に動き回り、携帯電話を使うことができた。モバイル通信が自由に利用でき、その利用が妨げられなかったので、人々はメッセージを送ったり、親戚や友人、メディアに電話をかけたり、写真や動画を共有したりすることができた。町で何か悲惨なことが起こっていれば、その状況を伝えることもできたはずだ。「しかし、そのようなことは何も起きていなかったので、何も報告されなかった」と在英ロシア大使館は指摘する

3月30日、ロシア軍はブチャから撤退した。これは前日の29日、トルコのイスタンブールで開いた停戦協議の際、ロシアがウクライナと和平合意に達する用意があることを示す善意の印として、自発的に撤退させたものだ。停戦協議では、ロシアが分離独立したドンバス地方とクリミア半島を除くすべてのウクライナから撤退する代わりに、ウクライナは将来の北大西洋条約機構(NATO)加盟を見送り、ロシアとNATOの間の中立を誓うなど、具体的な条件を出して歩み寄り、和平実現に近づいていた。

3月31日、ブチャのフェドルク市長は、市内で自ら撮影した動画を公開した。動画の市長は明るい声で語り、ロシア軍の撤退を喜んだが、処刑された地元民が路上に横たわっているという発言はなかった。市長が撮影した道路にも遺体はなかった。当時SNS(交流サイト)に動画を投稿したのはブチャ市長1人だけではなかった。ブチャの市議会議員の1人も動画を投稿していた。そしてやはり、その動画にも遺体は映っていない。

ブチャはそれほど大きな町ではない。市長がブチャの町を視察した際、後日世界のマスコミがトップニュースとして報じた多数の遺体のうち1体も目にしなかったという事態は「想像不可能」だとロシアの通信社スプートニクは疑問を呈する
ロシア軍撤退後、ウクライナはブチャに特殊部隊を投入。その目的はブチャからの「親ロシア派対敵協力者」の「一掃」と発表され、ウクライナのマスコミ自らこの発表を広めた。特殊部隊は、極端な民族主義で悪名高いアゾフ連隊の戦闘員を伴っていた。上官の通称「ボツマン」氏が投稿した動画によると、戦闘員はこんな会話をする。「青い腕章をしてない奴らがいるんだが、撃っていいか」「いいともさ」 

青い腕章はウクライナ軍との協力関係を示す。一方、白い腕章は自らロシア軍に降伏したことを示す。アナリストのゴードン・ハーン氏は2022年5月10日、自身のウェブサイトで公開した分析で、「動画に映された遺体が白い腕章を付けている事実は、これによって説明できる」と指摘する。さらに「写真で見るよりも多くの死体が白い腕章を付けている可能性がある」とし、「ウクライナ軍や武装勢力は、白い腕章を付けた市民をロシア側の協力者とみなして捕らえ、殺害した可能性がある」と述べる。もし事実なら、それこそ戦争犯罪である。

そしてロシア軍撤退から4日間が経過した4月3日、ウクライナ当局は外国人記者を呼び集め、ブチャ、同じくキエフ近郊のイルピンなどで民間人410人の遺体が見つかったと発表した。現地入りしたメディアが、路上に多くの遺体が横たわる写真や映像を伝えたのは周知のとおりだ。白い腕章を付けた遺体のほか、両手を後ろで縛られた遺体や多数の銃弾を受けた遺体もあった。「空白の4日間」に何が行われたか、全容は明らかになっていない。

2023-04-09

アサンジ氏、史上最高のジャーナリスト

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年4月5日)


面白いことに、イスラエルのエフード・バラク元首相がイスラエルの核兵器保有を認めるツイートを削除したのと同時に、ワシントン・ポスト紙が報じたところによると、米国の同盟国は「(爆破されたロシアのパイプライン)ノルドストリームについて話すな」という方針をとっており、その理由は「答えが見つかるから」だという。誰もが知っているが、公に認めることを許されていない公然の秘密がたくさんある。


世界で最も有名なジャーナリストが国境なき記者団との面会を拒否されたのは、収容されている英国の刑務所が「相手がジャーナリストだという情報を受け取った」ためだ。しかし耳にするのは、ロシアや中国がいかにジャーナリストを虐待しているかという話ばかりである。ジュリアン・アサンジ氏は世界で最も偉大で有名なジャーナリストであり、優れたジャーナリズムを行ったという罪だけで刑務所にいる。でももちろん、ジャーナリストを投獄した、はるか遠くの「権威主義国家」に対して拳を振るうことに時間を費やそうではないか。

アサンジ氏は世界で最も偉大な現役ジャーナリストであるだけでなく、これまで生きてきた中で最も偉大なジャーナリストである。これに対してもっともな反論はできないだろう。まじめな話、もっと優れたジャーナリストを挙げてみてほしい。無理だろう。アサンジ氏は、デジタル時代の情報源保護に革命を起こすことでジャーナリズムのキャリアをスタートさせ、その後、今世紀最大の記事をいくつか発表してきた。生死にかかわらず、彼に匹敵する人物はいない。

そして今、同氏が最高警備の刑務所にいるのは、世界中の誰よりも最高のジャーナリズムを行うことに長けていたからにほかならない。それが私たちの住む文明の姿だ。ジャーナリズムを行うという理由で、史上最高のジャーナリストを投獄するような文明だ。


私は決して納得しない。国民がつねに二つの等しい対立する政治派閥に分裂するのは有機的な現象であり、それはつねに何も成し遂げられない行き詰まりに陥り、その行き詰まりはつねに金持ちや権力者に有利だということには。


中国共産党は、中国のソーシャルメディア微博(ウェイボ)で習近平国家主席を「侮辱」した女性を逮捕した。女性は習氏を「くず」と呼んだとして裁判を受けなければならず、有罪になれば多額の罰金を科されることになる。

冗談だ。中国、習近平、微博ではなく、フランス、マクロン(仏大統領)、フェイスブックである。
(筆者自身のツイート)


中国について騒ぐことに時間を費やす人々は、私がネット上で接する中で最も愚かな集団である。必ずしも最も悪意があるわけでも、最も攻撃的なわけでもないが、間違いなく最も愚かだ。この人々は、中国に批判的であれば、どんなに馬鹿げたことでも、誰の言葉でも信じる。

文字どおり誰からでも中国について否定的な主張を目にしたとたん、批判能力はすべて消え去り、泡を吹くような愚か者の集団と化してしまう。(保守派の心理学者)ジョーダン・ピーターソン氏が緊縛SMの「乳搾り」動画を共有したのは、中国政府による虐待を記録しているという偽情報があったためである。

このような動きは、何世代にもわたって、中国人は私たちとはまったく違う文化を持つ、神秘的で不可解な民族だと描かれてきたことに端を発しているようだ。欧米人が中国政府に意味不明な動機や思惑を抱くのは、それだけが理由だと思う。

ある民族を、希望と夢を抱き、家族を愛し、自分と同じように生きていこうとする普通の人間だと思わなくなると、その動機や目標について何でも真実だと信じることができるようになる。もしあなたが、中国人は多かれ少なかれ自分と同じような動機をもつ人間だと信じているならば、その動機や行動に関するデタラメな主張は、普通の人間の視点からは意味をなさないから、すぐに気づくことができるはずだ。その視点がなければ、あなたは道を踏み外すことになる。

先日ネット上で議論していた人が、中国人を蟻の巣に例えて「昆虫のようだ」と何気なく言っていた。このように国民全体を非人間的な存在にしてしまうと、批判的な思考能力がすべて昏睡状態に陥ってしまう。精神が麻痺してしまう。

反中ヒステリーの人々が、私がネット上でやりとりする中で最も愚かな集団であるもう一つの理由は、いつも次のような馬鹿げたデタラメを聞かされているからだ。

中国は米国人を殺す準備をしており、我々は自衛の準備をしなければならない。国防総省は中国に対抗する準備をゆっくりと進めている。
(保守政治行動会議=CPAC=理事、ゴードン・チャン氏)

反中ヒステリーの人々はつねに、ゴードン・チャン氏のような帝国の宣伝マンによって、このような脳内毒を頭蓋骨に流し込まれている。

「中国は米国人を殺す準備をしており、我々は自衛の準備をしなければならない」。それって中国が、あからさまな軍事包囲網と、米国による中国・台湾間の紛争への介入の可能性から自衛する準備をしていることか。米国にとって地球の反対側の紛争のことか。あなた、ゴードン・チャン氏が戦わないような紛争のことか。

馬鹿野郎が。


欧米のメディア関係者は、プロパガンダ担当者が正当な標的であるという考えを広めたいのかどうか、よく考えるべきだ。
(筆者自身のツイート)


2016年の米大統領選は、すべてを変えた。トランプ氏自身が事態を大きく変えたからではなく(変えなかった)、西側メディアがその時点で、米政府がロシアとの情報戦に勝つのを助けることが自分たちの厳粛な義務であるという合意を形成したからである。

ロシアのハッカーが出所とされた(ただし、今日に至るまで証明されていない)2016年のウィキリークスの発表をメディアが報道するのは間違っているという合意がすぐに形成された。この決定により、主流メディアにおける真のジャーナリズムの最後の光は消し去られた。すべての主流派ジャーナリストが、権力者に関する真の事実を報道するのではなく、政府やお気に入りの政党の情報利益を促進することが自分たちの仕事だと認めた時点で、それは終わったのだ。真実に基づく社会の最後の光明が消え去ったのである。

ロシアがウクライナに侵攻して以来、私たちはこの状況を目の当たりにしてきた。「ジャーナリスト」たちは、検証されていない政府の主張を無批判に報道し、ウクライナの死者数のような重要な問題を無視し、情報戦で嘘を流すためにジャーナリストを使っているという米政府の告白さえ受け入れているのである。

その逆もありえた。メディアはウィキリークス文書で暴露された腐敗をとらえて、米政府の不正を調査するために奮起することができたはずだ。しかしそれは米政府の不正を隠し、許し、助長するために使われたのである。

Assange Is The Greatest Journalist Of All Time: Notes From The Edge Of The Narrative Matrix – Caitlin Johnstone [LINK]

2023-04-08

戦争犯罪の責任を免れる人々

ケイトー研究所主任研究員、ダグ・バンドウ
(2023年4月5日)

国際刑事裁判所(ICC)はロシアのプーチン大統領を戦争犯罪で起訴し、逮捕状を発行した。ジョー・バイデン米大統領は、プーチン大統領が「明らかに戦争犯罪を犯した」と述べ、この行動を支持した。米国務省は、ロシアの軍隊が行った残虐行為について露当局者に責任を取らせるよう求めた。アントニー・ブリンケン国務長官はこう述べた。「法廷の当事者で義務を負う者は、その義務を果たすべきだ」
ただ一つ問題がある。バイデンはさらに、「問題は(ICCを)米国も国際的に承認していないことだ」と認めた。実際、米国はロシアの戦場での行動に関する調査を妨げている。ニューヨーク・タイムズ紙はこう報じた。「国防総省は、米情報機関がウクライナでのロシアの残虐行為について集めた証拠をハーグの国際刑事裁判所と共有しないよう、バイデン政権を妨げている」

なぜそんなことをするのだろうか。「米国の軍事指導者は、裁判所が米国人を起訴する道を開くのに役立つかもしれない先例を作ることを恐れて、裁判所のロシア人調査を助けることに反対している」とタイムズは説明している。

しかしICCに対するトランプ政権の反応に比べれば穏やかなものだ。共和党の大統領候補と目されるマイク・ポンペオ国務長官(当時)が率いる前政権は、「米国人の調査」を敢行したとして、ICCの検事2人とその家族に対して制裁を課した。米政府は検事らを中国、イラン、ロシアの人権侵害者と同様に扱った。

米欧の戦争犯罪がない不自然さ


国務省は最近、米国を除外して人権裁判を支援するという不可能なことを企てるため、同盟国が支援する「国際化された国内裁判所」を設立し、ロシア人を裁くことを提案した。都合の良いことに、そのような裁判所は米国人の恥ずべき調査を行うことはない。国務省のベス・バン・シャーク特使(国際刑事司法担当)によれば、「ウクライナで行われている国際犯罪に対する包括的な説明責任を果たすために、ウクライナや世界中の平和を愛する国々と協力し、このような法廷を立ち上げ、職員・財源を確保することを約束する」。しかし他のどこでも、米国とその同盟国に責任を負わせないよう保護している。

実際、バン・シャーク氏は、米国人を標的にすることに使われる可能性のある前例を作ることを政府が恐れたと認めた。

バイデン政権が米国の潜在的な責任を心配するのは、十分な理由がある。米軍は世界中で活動し、他国を爆撃・侵略・占領しているが、その説明責任はほとんどない。米国の乱暴な軍事力の使用は、イラクとイエメンで最も顕著に、何十万人もの不必要な民間人の死という結果をもたらしている。これらの戦争はどちらも正当化できない。前者は都合の良い嘘に基づき、後者は独裁者の気まぐれに由来している。

経済制裁もまた、人を殺してきた。現在経済制裁は、ひどく困窮するシリア国民をさらに貧しくするために使われている。30年前、マデリン・オルブライト国連大使は、経済制裁によって子供たちが大量に死亡するという懸念を、「その対価に見合うだけの価値があると考えています」という冷ややかな言葉で打ち消した。

米国の戦争にしばしば加担する欧州は、ロシアの侵略を裁くという米国の提案に従うだろうが、自らは同様の国際監視を受けることを拒むだろう。しかし南半球はそうもいかないかもしれない。アフリカ諸国の政府は、ICCのような国際法廷がアフリカ以外の場所で起きた犯罪を扱うことはほとんどないと以前から指摘してきた。さらに米国とその同盟国による利己的な戦争と尊大な道徳的態度の長い歴史の結果、発展途上国は欧米の対露作戦への参加を望んでいない。

ルールはルールであれ


バイデン政権は、ロシアが同じことをすれば、米国の高官に裁判の責任を負わせるよう申し出るべきだ。米国の指導者も審査の対象としよう。世界の道徳的なリーダーシップを敬虔に主張する人たちに特別待遇はないはずだ。

米軍関係者が不当に訴追されるのではないかという懸念を払拭するため、この手続きは、軍や政治の上級意思決定者にのみ適用できるものとする。ウラジーミル・プーチンとジョージ・W・ブッシュ(元米大統領)は、ウクライナとイラクへのそれぞれの侵攻について法廷で裁かれることになろう。バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、そしてそう、ジョー・バイデン(各米大統領)は、イエメンを荒廃させたサウジアラビアへの援助について裁かれよう。イラン、シリア、ベネズエラ、その他の国々を荒廃させ、窮乏と飢餓を政治的な道具として使用したことについて、議会の指導者に世界と向き合わせよう。

もし西側諸国が、ロシアに押しつけようとするのと同じ基準で生きようとしないなら、他者を裁く道徳的権威はあるだろうか。これはロシアの犯罪責任を軽視するものではない。ロシアの高官は、戦争犯罪の責任を問われるべきだ。しかし他の国の指導者も、適切な場合は、ウクライナであろうと米国であろうと、同じように扱うべきである。グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)が認識しているように、西側諸国は日常的に殺人や騒乱を起こし、その後、人道的な災害を残したまま何ごともなかったかのように行動している。これらの政府はしかるべく裁かれなければならない。

よく言われる「ルールに基づく秩序」においていつも変わらないのは、それを作った人々がつねにその要件から自分自身を免除していることである。この振る舞いは、米国が提案したロシアの特別法廷でも続いている。米国が世界の道徳の守護者を装うのであれば、その真の意味を受け入れるべきである。

Try George W. Bush and Vladimir Putin for War Crimes - 19FortyFive [LINK]

2023-04-07

テロの「正当な標的」

ジャーナリスト、アレクサンダー・ルービンスタイン
(2023年4月3日)

米政府の後援を受ける(英報道調査機関)ベリングキャットのクリスト・グロゼフ氏は、(ロシア第2の都市)サンクトペテルブルクの公共イベント中にロシアの戦争記者を殺害し多くの人々を負傷させた、テロ攻撃を支持した。グロゼフ氏はまた、ウクライナがロシアの哲学者を暗殺しようとしたのも、哲学者が「宣伝要員」だったからだと擁護している。
2023年4月2日にロシアのサンクトペテルブルクで起きたカフェの爆破事件から数時間後、米政府出資による団体ベリングキャットのクリスト・グロゼフ氏は、戦争記者を殺害し30人を負傷させたテロ攻撃を擁護した。

英スカイニュースとの8分間のインタビューを通じて、ベリングキャットのロシア調査主任クリスト・グロゼフ氏は、サンクトペテルブルクのカフェ「ストリートフードバー・ナンバーワン」での公開イベントでのテロ攻撃を堂々と、事実上支持する発言をした。テロを正当化するために、グロゼフ氏はこのテロを「ハイブリッド戦争」の文脈で行われた正当なウクライナの作戦か、ロシアの偽旗の可能性のいずれかに分類した。

グロゼフ氏は、攻撃の標的であるドンバス地方生まれの戦場記者、ウラドレン・タタルスキー氏を「正当な標的」と位置づけた。なぜならタタルスキー氏はウクライナのクーデター後、政府に対して起こった2014年の同国東部の反乱に武装参加者として従事していたためだとした。また、ベリングキャットのブロガーであるグロゼフ氏は、爆発物が起爆されたカフェは「純粋な民間施設」ではなく、「ロシアのサイバー戦士」の拠点だと主張した。

「彼は正当な標的であり、将校であり、プロパガンダを行う人物でもあった」とグロゼフ氏は自信満々、スカイニュースに語っている。

司会者から、なぜウクライナは「ロシア第2の都市のカフェではなく」、軍事拠点に作戦を限定しないのかと尋ねられたグロゼフ氏は、こう反論した。「しかし、これはこれまで見てきた戦争とは似ても似つかない。熱戦(実際に撃ち合う戦争)に加え、ハイブリッドな戦争なのだ」

おそらく自身が軍事ブロガーであるこのベリングキャットの記者は、カフェの爆破を正当化するために、こう主張した。カフェは「ロシアのサイバー攻撃者、サイバー戦士がウクライナのインフラを実際に狙う、ある種の集合場所として定期的に使われていた。……だからこれが純粋な民間用地かどうか、議論すべきだろう」

グロゼフ氏のコメントは、(ジャーナリスト)マイケル・ワイス氏のような新保守主義(ネオコン)活動家や、NAFO(北大西洋同志機構)として知られる親ウクライナの嫌がらせ軍団のコメントと同じものだった。

このカフェのインターネット上での存在感は、グーグルのレビューが2073件、(旅行サイト)トリップアドバイザーのレビューが161件と、異なることを物語っている。おそらくロシアのサイバー戦士たちは、オンラインでレストランを評価するよりも、もっと重要なことに時間を使っているのだろう。スカイニュースは、ブロガーのタタルスキー氏が攻撃時に「一般の人々」と会っていたと報じている。

グロゼフ氏はさらに、ウクライナ保安局(SBU)がロシアの民族主義哲学者アレクサンドル・ドゥーギン氏を暗殺しようとしたが、代わりに娘のダリヤ・ドゥーギナ氏を殺害してしまったことを正当化した。娘であるダリヤ氏を「同じようにプロパガンダを行うが、父親ほど影響力はなく、同じく正当な標的だ」と評した。

サンクトペテルブルクのテロがロシア人によって行われた可能性について尋ねられたグロゼフ氏は、ロシアに自国のテロがないことを嘆き、スカイニュースにこうコメントした。「ロシア国内に危険を冒す活発なレジスタンスが存在することを望むと同時に、我々が見たその話の多くは、実際には、地元のレジスタンスとして示されたウクライナの活動だと思う」

ウラドレン・タタルスキー氏とアレクサンドル・ドゥーギン氏は「プロパガンダ活動家」として機能しているため、テロの正当な標的であるというグロゼフ氏の主張は、もしその論理が自分たちに適用されれば、大勢の欧米メディアの論客を政治的暴力にさらすだけでなく、ベリングキャットにおけるグロゼフ氏の雇用主を特別に危険にさらすことになるだろう。実際、グロゼフ氏が働いているのは、全米民主主義基金(NED)として知られる米中央情報局(CIA)の手先から資金提供を受け、「ロシア政府の影響力を弱める」ことを目的とした英外務省の秘密活動に参加するメディアなのだから。

“Legitimate target” — Bellingcat defends terror attack at St. Petersburg cafe - The Grayzone [LINK]

2023-04-06

TikTok規制の真の狙い

元米会員議員、ロン・ポール
(2023年4月3日)

米連邦警察国家の拡大を支持する人々は、国民を脅して自由を放棄させるための新たな敵役を発見した。TikTok(ティックトック)だ。利用者が動画をアップロードできるソーシャルメディアプラットフォームで、数千万人の米国人が利用しており、世界で最も人気のあるウェブサイトの一つである。
ティックトックの人気と、中国・北京に本社を置く企業、字節跳動(バイトダンス)に所有されていることから、このサイトが中国政府によって管理されているという主張が広まっている。こうして、中国政府はティックトックを使って米国人のデータを収集しているという主張が生まれた。

上院情報委員会のマーク・ワーナー委員長は先月、「情報通信技術にリスクをもたらす安全保障上の脅威の出現を制限する法律(RESTRICT〈制限〉法)」案を提出した。この法案は、ソーシャルメディアを利用して米国のスパイを行う外国政府から米国の人々を守る方法として売り出されている。

RESTRICT法案では、ティックトックやバイトダンスについては一切触れていない。中国政府は他の五つの政府とともに「外国の敵対者」として指定され、法案の中で一度だけ言及されている。この法案では、商務長官が「過度の、あるいは受け入れがたいリスクをもたらす」と判断した、「あらゆる人による、あるいはあらゆる財産に関する対象取引から生じるリスクを特定・抑止・阻止・禁止・調査・軽減」する権限を、多くの分野で与えている。その中には、「民主的な過程や制度を弱体化させたり、米国の国家安全保障を害する外国の敵対者の戦略目標に有利に政策や規制の決定を誘導するように設計された、外国の敵対者による強制的または犯罪的行為」が含まれている。つまり米国は、あるウェブサイトが実際には米国を弱体化させるようなことはしていないものの、そうなる危険性を許容できないほどもたらすという商務長官の判断に基づいて、米国のソーシャルメディア企業を閉鎖することができるわけだ。

ティックトック論争は、ツイッター社の従業員と政府機関の間の通信を公開した不穏なツイッター文書から注目を奪っている。この通信は、記事の制限や利用者の排除に関して、政府が大手ハイテク企業の決定にどれだけ「影響」を与えたかを示している。RESTRICT法案が法律となったあかつきには、ソーシャルメディア上の特定の記事や個人を規制する米政府の今後の取り組みに協力することを拒否するサイトは、「外国の敵対者の戦略目標」を推進するために働いていると非難されてしまうかもしれない。

このことを疑う人は、米国の外交政策に疑問を持つ人がロシアの工作員として中傷される事実について考えるべきだ。RESTRICT法の犠牲者になりうるのは、Rumble(ランブル)のようなサイトである。ランブルは、ユーチューブに代わる、検閲のないサイトだ。その言論の自由に対する取り組みは非常に強く、ロシア・トゥデイ(RT)などロシア系ニュースソースをフランスのソーシャルメディアで禁止する同国の新たな法律に従う代わりに、フランスでのサイトへのアクセスをブロックすることを選択した。

愛国者法と同様に、RESTRICT法は人々の恐怖心を利用して沈黙させ、議会が人々の自由をさらに奪うものだ。この法案は合衆国憲法修正第1条の露骨な違反である。同条はアメリカ建国の父たちが、政治的言論に従事し、政治的情報や意見を他者と共有する権利を保護することを意図した。ティックトックやその他の場所で政治家階級に挑戦するアイデアを議論・共有する権利を、議会が侵害するのを阻止しなければならない。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The RESTRICT Act Restricts More Than TikTok [LINK]

2023-04-05

体制転換をあおる人々

ジャーナリスト、ダニエル・ラリソン
(2023年3月31日)

米政府におけるイラン政策の議論は、アイデアの貧困に苦しんでいる。過去20年間、強制と脅しに基づく政策が失敗の跡を残しているにもかかわらず、イランの核開発をめぐる議論は、たいてい裏目に出た制裁と、戦争と体制転換の無謀な提案という組み合わせに帰着する。
新アメリカ安全保障センター(CNAS)の新たな報告書は、まさにその最新の例である。この報告書は、シンクタンクが実施した演習の結果を説明し、米国が軍事行動の脅威を拡大し、イランの政治・軍事指導部や核施設を標的とすることを推奨することで結ばれている。核不拡散のためにも、米国の利益のためにも、新たな体制転換を図ることほど悪いことはないだろう。

イラク侵攻がいかに悲惨な政策であるかを示してから20年、政府の誰もがいまだに戦争や体制転換という選択肢を持ち出しているのは信じられないことだが、イラク戦争の罪から本当に学ぶことはなかった。政府がイラク戦争から学んでいない主な理由の一つは、イラク戦争の立案者や支持者に説明責任がなかったことであり、米国内の議論では、いまだに攻撃的で軍事的な政策を支持する傾向がある。政府の多くの人々は、体制転換のための戦争を否定する代わりに、他国に対して同じ致命的な欠陥のある政策を用いることに何の問題も感じていない。

CNASの報告書が、米国に対し、武力行使をちらつかせ、イラン軍が譲歩しなければ体制転換のために武力行使するよう求めていることに疑問の余地はない。報告書の著者は「これ以上進めると、イランの政権を標的にした軍事行動を起こす危険があることを強調すべきだ」と明言している。ある箇所で報告書は、「米国の指導者は、イランの政治的・軍事的指導者に、核開発を放棄しない場合には政権から排除されることになるという決意を示す非公開メッセージを送ることを検討すべきだ」と勧告している。

著者によれば、米国は体制転換の脅しと、すでに実証済みのイラン軍指導者の暗殺能力を活用して、「イランの指導者たちに、イランの核開発計画は自分たちの生存を保証する保険ではなく、自分たちの首を絞める石臼であると確信させる」ことができるそうだ。

これらの提言は、まったく練られていないように見える。イランの指導者に核抑止力の必要性を確信させるのに、イランを転覆させるというあからさまな脅しほど有効なものはないだろう。報告書が認めるように、イラン指導部の最大の関心事が自己保存であれば、指導部の生存を脅かすことは意味をなさない。そのような自己保存の欲求から、イラン指導部は核兵器国への敷居を越えることで、これまで以上のリスクを取ることを決断するかもしれない。

いつものことだが、核問題に対する軍事的な「解決策」はほぼ確実に、その提唱者が望まない結果をもたらす。

また、イラン政府がこれまで、他の強制的な手段や脅しにどのように対応してきたかにも注目する必要がある。米国が核合意を破棄し、「最大限の圧力」による制裁措置を開始する前、イランは核合意を完全に遵守しており、米国が辞めた後も丸一年間は遵守していた。その後、持続的な経済戦争とイスラエルによる暗殺・破壊工作攻撃に対応して、イラン政府は核開発計画を大幅に拡大した。経済的圧力やイラン施設への物理的攻撃は、イランをそれに対して過激にさせることにしか成功していない。なぜイランの指導層に対する直接的な脅しが、異なる結果をもたらすのだろうか。

イランの指導者には、米国が自分たちに従った後に、一転して攻撃してこない保証はない。攻撃の脅威の下で譲歩を要求することは、侮辱と受け取られることになる。「核開発計画」の放棄が何を意味するのかにもよるが、この要求自体があまりに広範囲に及ぶため、イラン政府にとっては話にならないのだろう。イラン政府は核開発に多くの時間、労力、威信を費やしてきたのだから、それを完全に放棄することはできない。弱小国を攻撃で脅すことは卑劣な行為であり、また通常、服従するよりもむしろ怒りの抵抗を呼び起こすものである。
 
報告書は最後の最後で、イランに対する軍事行動には「イランの軍事的反応と戦争を激化させるリスクがある」と認めているが、それさえも危険性を最小限に抑えている。既存の指導者を権力から排除するという明確な目的のために軍事行動を起こすことは、すでに戦争であることは明らかである。イラン軍とその代理人が反撃することは確実である。これは核問題を満足に解決できないだけでなく、米国とより広い地域を、私たちが作り出した新たな、まったく不必要な大火に陥れることになる。

CNASの報告書は国際法について何も述べていないが、イラン領土への軍事攻撃は、それが核施設であれ、より広範な標的であれ、犯罪的侵略にほかならないことを強調する必要がある。米国にはイランに対して武力を行使する法的権利はなく、もし政府がこの報告書の提言通りに行動すれば、国連憲章に明白に違反することになる。

憲章の第2条4項には、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と書かれている。憲章に違反するのは武力の行使だけでなく、武力行使の威嚇も同様である。イランに核開発の一部または全部を放棄させるために武力を行使することは、ならず者国家による違法行為である。

イランでの戦争や体制転換の話がさらに厄介なのは、それが米国や他の国家の安全保障にまったく必要ないということだ。イランは核兵器開発計画を持っておらず、米政府によれば、過去20年間は持っていない。イランの核開発がJCPOA(包括的共同作業計画=核合意)の厳しい制限の下にあればなお良いが、そうでなくてもイランは核拡散防止条約(NPT)のメンバーである。

イランは現在、核兵器の製造を目指してはいない。米国とイスラエルの無謀で挑発的な行動が、イラン政府に武器化を追求するさらなる誘因を与えたにもかかわらず、イランはまだその一線を越えていない。過去20年の経験から判断すると、イラン政府は他に選択肢がない限り、その一線を越えようとはしないようである。もし米国が体制転換で直接脅し始めたら、イランの指導者はそれが自分たちに残された唯一の選択肢だと判断するかもしれない。

体制転換は道徳的にも戦略的にも破綻した考えであり、それがあたかも重大な政策オプションであるかのように政界で流布されていることは、米国にとって不名誉なことである。米国の人々が健全で平和な外交政策を望むのであれば、まず行わなければならないことの一つは、体制転換を政策論からきっぱりと追放することである。

Centrist DC think tank: US should threaten war, regime change in Iran - Responsible Statecraft [LINK]