2024-10-31

ミレイ大統領、9カ月の採点表

経済学者、アントニー・ミュラー
(2024年10月29日)

1970年代に欧米が停滞に陥った際、物価インフレがある程度収束し、経済成長が再び上向くまでには10年近くかかった。アルゼンチンのミレイ大統領は、すでに多くのことを達成したとはいえ、それほど時間はない。2023年12月10日の就任以来、以下のようなプラスとマイナスがある。
〈プラス面〉
・財政黒字(2024年1月以降)
・中央銀行による通貨創造の制限(2024年4月以降)
・インフレ率の低下(同)
・各種価格規制の撤廃(住宅市場など)
・各種物価補助金の削減
・8つの省庁の廃止、一部の完全閉鎖と約3万人の公務員の解雇

〈マイナス面〉
・高い物価上昇率(年237%)
・失業率の上昇(7.6%)
・低い労働力率(労働力人口の割合、48%)
・鉱工業生産の減少(年率-5.4%)
・対外債務は約2900億ドルに増加
・外貨準備高が不足(現在217億ドル)
・就任時の1ドル=322ペソから975ペソへの切り下げ

ミレイ政権は9月の予算発表で、 2025年の見通しを次のように発表した。

・国内総生産(GDP)を5%増加させる
・物価上昇率を年率18%に抑える(2025年末までに)
・通貨を1ドル1207ペソまで切り下げる(同)
・基礎的財政収支の黒字化(GDPの1.3%)

来年の目標が達成できるかどうかは疑問が膨らむ。物価上昇率は高止まりしており、再び上昇した際には金利を引き上げざるをえなくなるだろう。その結果、鉱工業生産の回復がさらに遅れることになる。来年1月には対外債務の利払いも控えている。

2025年は10月に中間選挙があるため、ミレイ大統領にとって重要な年となる。その時までに、大統領は選挙協力にはっぱをかけ、政策の次の段階に必要な票を議会で獲得しなければならない。

ミレイ政権を誕生させたのは、何よりもインフレに終止符を打つという公約だった。今、ミレイ氏に課せられているのは、不況を深刻化させることなく、その公約を守れるかどうかである。それは規制緩和と民営化を通じて、民間部門の強化にどの程度成功するかにかかっている。

(次より抜粋)
Nine Months of Javier Milei as President of Argentina: A Critical Assessment | Mises Institute [LINK]

2024-10-30

トランプ氏の功罪

トランプ氏は慎重な外交政策を望むと錯覚されている。しかし大統領在任中、同氏の外交政策は前任者たちとほとんど変わらなかった。むしろイランと中国に対する行動はさらに強硬だった。トランプ氏は、イランのソレイマニ将軍の暗殺を自らの政権の誇るべき成果とみなしている。
Trump, Harris, and the 'Lesser of Two Evils' - Antiwar.com [LINK]
トランプ大統領はDPRK(北朝鮮)との交渉の必要性を認識し、新たな接近を試みた。その点では称賛すべきである。現在、交渉はこれまで以上に急務となっている。首脳会談を時折行なうことは、朝鮮半島の緊張を和らげるために払うべき小さな代償である。バイデン政権は落第点だ。
It Is Time to Talk to North Korea - The American Conservative [LINK]

防衛戦争を戦う国と、植民地拡大などによる軍事的優位を求めて戦う国には違いがある。イスラエルのように後者の道を選んだ国は、自衛戦争だと主張はできない。国際法における自衛の定義は、軍事占領者となり、敵対行為を盛んに行い、暴力を不法に用いる国には適用されない。
Israel’s Biblical Wars of 'Self Defense': The Myth of the 'Seven War Fronts' - Antiwar.com [LINK]

ガザ地区に駐留する99人の米医療従事者が、子供たちに対するイスラエルの爆撃の停止を求める公開書簡をホワイトハウスに送った。イスラエルは病院が武装勢力ハマスのために使われると主張しているが、書簡によれば、ガザの病院でハマスの活動を目撃したことは一度もない。
American Healthcare Workers Plead for End to Gaza Bombing - Antiwar.com [LINK]

イスラエルが標的にしているのは武装勢力ハマスで、パレスチナの民間人が死ぬのはハマスが人間の盾として利用しているからだと主張する人々は、今でもそれを信じているのだろうか。ジェノサイドは1年以上も続き、イスラエル軍自身、それを喜々としてしてSNSでライブ配信している。
Israeli War Crimes Documented by the Israeli Defense Forces [LINK]

2024-10-29

平和は文明の条件

財産権、分業、自発的交換は文明の基礎である。経済学者ミーゼスは、これらの教義が文明にとって不可欠である理由を説明し、平和が分業と協力の前提条件であることを強調している。戦争の脅威が常に社会を覆うとき、人々はもはや最も生産的な技術や能力に特化することはない。
Peace as a Prerequisite for Civilization | Mises Institute [LINK]
自由には、聞きたくないことを言う人々の権利も含まれる。自由社会における政府は、「ヘイト」とみなすものに基づいて個人の自由を圧殺する権力を持つべきではない。多くの人々がそうした自由への侵害を容認していることは、もはや私たちが自由な国家に住んでいない証である。
“Hate Symbols” and the Meaning of Liberty | Mises Institute [LINK]

危害を防止するためにのみ自由が制約されるのであれば、単に他人に不快感を与えるだけでは、自由を制限する正当な理由にはなりえない。しかし近年、危害の概念は認識できないほど拡大している。今や精神的な害も含まれ、人種差別を想起させるような事柄も含まれる。
The Presumption of Liberty | Mises Institute [LINK]

奴隷として生きるのでなければ、人間関係は常に自発的であるべきだ。正しい倫理原則によれば、誰も自分の意思に反して他人と付き合ったり、付き合わなかったりすることを強制されるべきではない。人種、性別、宗教などに関する反差別原則は、結社の自由とは相容れない。
Freedom of Association and Cancel Culture | Mises Institute [LINK]

国家権力の絶え間ない拡大は、有権者の夢を実現するうえで必要な手段として正当化される。権力を執拗に追い求める国家には、有権者の心に深く響く可能性の高い問題に焦点を当てる強い動機があり、有権者が自分の生活の支配権を国家に委ねるよう説得する可能性が高い。
The State’s War Against Hate | Mises Institute [LINK]

2024-10-28

ガザのジェノサイド

国際法はアパルトヘイト(人種隔離)に反対しているが、イスラエルはパレスチナ人を支配するために行ってきた。民族浄化に反対しているが、イスラエルはパレスチナの人々に行なってきた。ジェノサイド(大量虐殺)に反対しているが、イスラエルは今まさにガザで行っている。
The West's Support for Israel's Genocide Is Destroying the World as We Know It - Antiwar.com [LINK]
イスラエル空軍の米国製F16戦闘機が誰を爆撃しようが、何千ものレバノン人家族(その多くは子供や女性)が死傷しようが、バイデン米大統領は無条件で兵器の提供を続けている。人権を侵害しない、米国の人道支援を妨害しない、などの条件を求める6つの米国法に違反している。
Opinion | Biden Stands Aside as Netanyahu Incinerates Gaza, Now Lebanon | Common Dreams [LINK]

地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD) とともに、運用する100人の米兵がイスラエルに到着した。米軍がイスラエルでイランのミサイルを撃ち落とす可能性がある。それは米国がイランから交戦国とみなされ、そのミサイルによって殺される可能性があることを意味する。
Is a THAAD for Israel Worth a War With Iran? - Antiwar.com [LINK]

イスラエルは1982年にもレバノンに侵攻したことがある。当時レーガン政権下の米国は多国籍軍の一部として海兵隊を派遣した。兵舎に爆発物を積んだトラックが突っ込み、海兵隊員220人と米軍関係者21人が死亡した。米軍にとってベトナムのテト攻勢初日以来の死者数となった。
41yrs ago: 220 Marines involved in Israel's war on Lebanon killed | Responsible Statecraft [LINK]

過去5人の民主党大統領候補のうち3人(ケリー、クリントン、バイデン)はイラクに対する軍事行動を支持した。オバマが2008年に勝利したのは、イラク戦争に反対したためでもあるが、彼はイランやキューバとの外交を進める一方で、リビア、シリア、イエメンへの介入を開始した。
Harris embrace of Cheney goes back to World War I | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-27

俳句(2024年9月)

<a href="https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E8%8C%B6%E8%89%B2%E3%81%AE%E6%9C%A8%E8%A3%BD%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%AB%E9%BB%92%E3%81%A8%E9%8A%80%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA-yE5_bQNQgfU?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash">Unsplash</a>の<a href="https://unsplash.com/ja/@carreteromolero?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash">Nacho Carretero Molero</a>が撮影した写真


秋寒し帰らざる日の流行歌

小雨降る山路の果ての野菊かな

山寺の裏に回れば野菊かな

馬追の声も消えたり母の家

馬追や静かに眠る吾子ふたり

2024-10-26

選挙の幻想

政治行動は防衛手段として機能し、政府の侵犯を遅らせ阻止することで自由を守るのに役立つ。一方、市場に基づく取り組みは、資金と時間を活用することで、攻撃手段を提供し、並列システムやネットワークの発展を促し、政府が管理するサービスを無意味なものにしていく。
How to Vote for Liberty | Mises Institute [LINK]
小学校では、大統領が私たちの総意を代弁し、国内外で直面する問題に対処するために行動すると教わる。そのような単純な話は、政府がすることは何でも皆の願いの具現化であり、反対するのは皆の希望に逆らう利己的な立場であるかのように、都合よく仕立て上げる幻想である。
It’s Good to be Skeptical of Elections | Mises Institute [LINK]

古典的な無政府主義の立場は、誰も投票すべきではないというものだ。もし本当に全国的な運動が起これば、この戦術が悪いとは思わない。一方、投票が本当の問題だとは思わない。反投票派の人たちとは対照的に、投票することが不道徳だとは思わない。
Rothbard on Voting | Mises Institute [LINK]

政府が与える選択肢は限定されているから、自分の自由や財産に違いが生じると思えば、利用しない理由はない。残念ながら大統領職を廃止する投票をすることはできないが、2人の候補者に少しでも違いがあるのなら、投票を利用すればいい。2人の人間は少なくとも微妙に異なる。
Rothbard on Voting | Mises Institute [LINK]

投票するかしないかはどうでもいい。重要なのは、誰を支持するかということだ。投票に行かないのは構わないが、選挙の夜、投票に行く残りの有権者というカモたちが誰に当選してほしいと願うのか。これは重要なことだ。残念ながら大統領は4年間、我々の生活を大きく左右する。
Rothbard on Voting | Mises Institute [LINK]

選挙で投票する人数は少ないほどよい。投票数が少ないほど反政治感情が高まり、政治に対する暗黙の否定が高まる。政治家が「誰にでもいい、頼むから投票してくれ!」と懇願するのはそのためだ。得票数が少ないほど、勝者に対する「民意」の主張がばかばかしくなる。
Voting and Politics | Mises Institute [LINK]

2024-10-25

アインシュタインの誤謬

物理学者アインシュタインは、労働者の給与が、生産する商品の本当の価値によって決まっていないと批判する。しかし、価値は労働から生産物へと何らかの形で移転するものではない。まったく逆である。労働の経済的価値は、労働が生み出す最終製品の価値によって決まるのだ。
Albert Einstein and the Folly of Marxist Sympathies | Mises Institute [LINK]
物理学者アインシュタインは、オーストリア学派経済学について知識がなく、経済学における自分の間違いに気づくことがなかった。例えば、失業問題を解決するために労働時間を短縮する法制を求め、大衆の購買力が商品の供給量に見合うように最低賃金を確保するよう求めた。
Einstein Was the Greatest Physicist but Was Economically Illiterate | Mises Institute [LINK]

マルクスの考えでは、プロレタリアート(賃金労働者階級)が限界に達した後、社会主義が資本主義に取って代わる。しかしマルクスは、社会主義がどのように機能するかについてはほとんど言及していない。実際、ミーゼスが示したように、市場価格がなければ、経済は混沌に陥る。
New "Engels" on Marx | Mises Institute [LINK]

マルクス主義は歴史を社会主義への予測可能な進行とみなした。仏思想家ソレルはこの決定論的な見方を否定し、労働者は行動を起こすよりも必然を待つように促されると主張した。ソレルはベルクソンの哲学に目を向け、行動、創造、予測不可能性を強調する革命戦略を明確にした。
Henri Bergson: The Philosopher of Life and Creative Evolution | Mises Institute [LINK]

マルクスによれば、労働者はつねに自分の労働という商品を価値よりも安く売り、資本家のために剰余価値を生み出す。しかし、なぜ労働だけが一貫して原価割れで売られているのか。他の市場であれば、商品をその価値より安く売るのは持続不可能な商行為で、倒産に至るだろう。
Why Marx Was Wrong about Workers and Wages | Mises Institute [LINK]

ハイエクは『隷従への道』で、政府が一定のルールに従う限り、福祉国家政策の一部は法の支配と両立しうると考えた。ミーゼスはこれに同意せず、「福祉国家は市場経済を社会主義へと一歩一歩変えていく手法にすぎない」「共産主義と福祉国家の違いは方法にすぎない」と述べた。
Hayek on the Welfare State | Mises Institute [LINK]

2024-10-24

内政不干渉を守れ

ウクライナのゼレンスキー大統領はその「勝利計画」で、NATOへの即時加盟か、ウクライナが核武装を追求するかのどちらかを認めよと求めた。だが米国はすでに即時加盟を拒否している。ということは、計画の背後に隠された最も危険な脅威は、核の脅威かもしれない。
The Nukes or NATO: The Hidden Threat Behind Zelensky's Victory Plan - Antiwar.com [LINK]
イスラエルはイランとの戦争に米国を引きずり込もうとしている。これに対する対応は、ウクライナに対するのと同じだ。「もう武器はない。もう金はない。自分のことは自分でやれ。和解しろ」。これが親米的な外交政策だ。米建国の父たちが唱えた、内政不干渉の原則という。
Why Should We Fight Wars for Ukraine and Israel? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官はイスラエル国防相への書簡で、食糧などのガザへの運搬禁止を緩和するよう求めた。これは政治的な芝居でしかない。民主党に投票しないかもしれない有権者に対し、何かしていると伝えるためのものだ。実際には何もしていない。
No, the U.S. is not ‘putting pressure’ on Israel to end its war – Mondoweiss [LINK]

RTX社(旧レイセオン)の違法行為は、防衛産業の緩い基準からみても異常なものだ。同社は10億ドル近い罰金の支払いに合意したが、兵器産業の汚職としては過去最高額の一つだ。米国防総省との契約での価格つり上げ、カタール当局への賄賂、中国との機密情報の共有に加担した。
RTX (ex-Raytheon) busted for ‘extraordinary’ corruption | Responsible Statecraft [LINK]

英警察はテロを助長した疑いで、記者エイサ・ウィンスタンリー氏の自宅を家宅捜索し、電子機器を押収した。同氏は英体制派とイスラエルの結びつきを暴露してきた。労働党は与党となった今、自党(あるいはイスラエル)の政敵とみなす人々に対して国家機構を利用できる。
Police Escalate the British State's War on Independent Journalism - Antiwar.com [LINK]

2024-10-23

不換紙幣はインフレを招く

お金を増やしても、実際に手に入る財やサービスが増えるわけではなく、払える金額が増えるだけだ。物価が上がると、お金は購買力を失い、個人は現金保有を減らし、購買行動を加速させる。その結果、無価値になるお金と何かを交換したいとは誰も思わなくなり、物々交換に戻る。
Answering the Confused Critics of Austrian Economics | Mises Institute [LINK]
経済学者ミーゼスは、不換紙幣はインフレを生じさせるリスクがあると説いた。実際、中央銀行と量的緩和によって世界的な債務危機が発生し、ほとんどの国民の購買力が広範囲にわたって破壊され、金融システムの安定性が損なわれている。信用拡大と金融政策が景気の波を生む。
Mises’s Framework Still Sets the Standard | Mises Institute [LINK]

現代の経済学者の大半は、自らを経済の科学的管理者だと考えている。そのため政府のあらゆる介入を承認し、擁護することにキャリアを費やしてきた。どんな一流の経済学雑誌を見ても、政府関係者がさまざまな方法で市場を再構築すべきだと主張する論文が次から次へと出てくる。
Economically-Illiterate Policy Proposals Are Popular, And Economists Are to Blame | Mises Institute [LINK]

それぞれの人が、それぞれの願望と状況によって、さまざまな選択をする。教師や医師、エンジニアや芸術家など、社会におけるさまざまな役割や専門性を生み出す。行動の多様性は、人々が共通の目標を達成するために努力を調整しなければならない、複雑な社会の発展につながる。
Understanding the Action Axiom: How It Shapes the Structure of Society | Mises Institute [LINK]

経済の理解は常識では不十分なこともある。自由市場が自分の利益に反すると偏見を持ってしまいがちだ。理論的なバックボーンがいる。自由な市場対政府の支配、財産権対政府の介入、健全な貨幣対官僚的な紙幣、平和対戦争や帝国という点で、オーストリア学派が力を発揮する。
What is Old School Economics? | Mises Institute [LINK]

2024-10-22

帝国のプロパガンダ

米ランド研究所がロシアにいる北朝鮮兵士をテーマにした米国の情報作戦を提案した直後、CIA訓練生のブダノフ総局長率いるウクライナ軍情報部は、北朝鮮兵士がロシア側で戦うという噂を流し始めた。韓国の諜報機関もCIAと関係があり、米メディアもこの作戦に加わっている。
Ukraine - Threat Of North Korean Soldiers Is Based on US Info Campaign - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
トランプ氏が勝てば閣僚になるといわれるオブライエン氏の外交専門誌への寄稿は、新しい言葉で飾り立てられてはいるが、おおむね旧態依然とした既成の介入主義だ。同氏の考えでは、イラン、中国、ロシアは3大敵であり、米国の攻撃的な姿勢によってのみ対処できるという。
Beware of War Hawks in 'America First' Clothing - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ネタニヤフ政権は、大イスラエル構想を支持するという明らかな矛盾にもかかわらず、ハマスとの戦争が終結すれば、イスラエルはガザ地区に入植地を建設するつもりはないという。だがイスラエル国内では、パレスチナへの違法な入植地の拡大を擁護する主張が常態化している。
Netanyahu's Likud Organizes Event Promoting Israel's Post-War Resettlement Of Gaza - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

イスラエルが米国法と国際法に違反している十分な証拠があるにもかかわらず、ブリンケン国務長官はイスラエルがNSM-20 (国家安全保障覚書)に従って行動していると議会に報告した。だが報告書には「民間人の被害を軽減する最善の方法と矛盾する事例で使用された」とあった。
US Threatens Israel With Arms Embargo As Evidence Of War Crimes Becomes Impossible to Deny - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

バイデン大統領とネオコンの支配する外交政策チームは、イスラエルで米軍兵士が殺害されるように仕向け、イスラエルの敵に対する全面戦争への同意を取り付けようとしている。彼らはイスラエルで米兵が殺されるよう望んでいる。その莫大なプロパガンダ効果を知っているからだ。
Do they WANT American Troops to Die? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2024-10-21

中央銀行の害悪

中国はルーズベルトが大恐慌の際に、トランプとバイデンがコロナ危機の際に、大規模な経済対策によって犯した同じ過ちを犯している。今日の政府・中央銀行は、資本主義であれ社会主義であれ、経済を回復させない。介入を続ければ続けるほど、結局は深刻な不況の再調整を招く。
Chinese Authorities to Stop Economic Cleansing | Mises Institute [LINK]
政府は民間部門が求める以上の通貨を発行し、インフレを生み出している。中央銀行がお金を刷るのは、増加する財政赤字を吸収するためだ。インフレは隠れた税金であり、経済の国有化をゆっくりと進め、有権者を怒らせることなく増税し、民間企業を非難する完璧な方法だ。
No Central Bank Wants to Stop Price Inflation | Mises Institute [LINK]

インフレによって人為的に金利を引き下げても、設備投資は増えない。個人の最終目標が基本的な生活の維持である限り、現在の財と将来の財では、現在の財の方が高く評価される。中央銀行の政策立案者がこれを覆そうとすれば、個人の生活水準を損なうことになる。
Does the Central Bank Determine Interest Rates? | Mises Institute [LINK]

中央銀行が公有か私有かは重要か。経験上、答えはノーである。結局のところ、欧州の2つの典型的な民有中央銀行であるイングランド銀行とフランス銀行は、他の中央銀行と同様に、当初から政府という事実上の主人に奉仕することに重点を置いていた。民有といわれる米連邦準備理事会(FRB)も同じだ。
Is the Federal Reserve a Private Bank? It Doesn't Matter. | Mises Institute [LINK]

FRBは何十年もの間、米政府から独立した存在だという考えを育て、広めてきた。しかし実際には、FRBはその金融政策を財務省や政府の政策と「調整」し、政府が中央銀行から望むものを正確に得られるようにしてきたことが、歴史的な経験からたびたび明らかになっている。
The Federal Reserve and the Regime Are One and the Same | Mises Institute [LINK]

2024-10-20

ミレイ氏は英雄ではない

ハビエル・ミレイ(アルゼンチン大統領)に関するハンス・ヘルマン・ホッペ(オーストリア学派経済学者)の「財産自由協会」第18回年次総会におけるコメントを、オスカー・グラウ(ホッペ公式サイトのスペイン語版編集者)がスペイン語に翻訳した。(以下は英語への自動翻訳から抜粋)
ミレイ政権下のアルゼンチンでは労働法が自由化され、いくつかの補助金が廃止されたが、すべてが廃止されたわけではない。いくつかの規制緩和が承認され、民営化も行われたが、それほど多くはなかった。一部の「政治的に正しい」省庁は閉鎖されたが、職員の多くは他の部署に移っただけだった。たしかに、公務員を解雇された者は一定数いたが、全員が解雇されたわけではなく、多くは単にある機関から別の機関へ異動させられただけだった。減らされた税金もあったが、燃料税や輸入税など増税された税金もあった。そして忘れてはならないのは、税金はミレイから見れば強盗だということだ。

アルゼンチンは財政黒字になったが、減税につながったわけではない。黒字は政府の手に残り、政府はそれを使い続ける。地方分権もなかった。財政黒字は支出削減だけでなく、増税によっても達成された。ミレイ大統領の内政には賛成だが、革命的な改革ではなく、レーガンやサッチャーのものに近い。


ミレイ大統領は中央銀行を廃止すると約束したが、アルゼンチンの中央銀行はまだ存在している。インフレ率は下がったが、年率にするとまだ250%という巨大なインフレだ。インフレを抑えるのはそれほど難しいことではない。中央銀行を閉鎖し、紙幣を増刷しなければいいだけだ。

(ミレイ大統領が影響を受けたというリバタリアン思想家)マレー・ロスバードやリバタリアンにとって、戦争と平和こそが最大の問題である。リバタリアンの伝統的な立場はこの点でも、たとえば(元米下院議員)ロン・ポールに代表される。リバタリアンは中立国の立場をとる。他国の問題に干渉しない。

支配者は間違った歴史を語るが、ミレイ大統領はそのことを知らない。ロスバードのことを頻繁に口にはしても、ミレイが真剣に勉強したかどうかは疑わしい。だからこそエリートたちは、ミレイを脅威とは考えていないのだ。外交政策では主流派に従うだけの良い子だからだ。

ミレイが愛するのは米国民ではなく、米政府である。最も帝国主義的で、好戦的で、行く先々で問題を引き起こし、何十万人もの人々を殺す政府だ。各国で殺害した人数を数えれば、間違いなく一番である。ミレイはなぜわざわざ米政府につくのか。中立を保てばいいだけのことだ。

ウクライナやイスラエルに送られる武器はどこから来るか。米国からだ。ミレイはウクライナのゼレンスキー大統領を崇拝している。しかしゼレンスキーは犯罪者の道化であり、無意味な戦争のためにウクライナの住民を犠牲にしている。

イスラエルのネタニヤフ首相がガザ地区を空爆し、何万人もの(パレスチナの)人々を殺害しているのに、なぜミレイはネタニヤフと踊るのか。現在最も犯罪的な人物はネタニヤフ氏なのに、そのネタニヤフ氏と街頭で踊っているのだ。(実際にミレイ氏が一緒に踊ったのはネタニヤフ首相ではなく、他のユダヤ人シオニスト)
ミレイ大統領は陸軍の軍人の給与を引き上げ、将来は陸軍も内政上の義務を負うべきだと述べた。テロや麻薬密売などと戦うために軍を使うべきだというのだ。つまり、アルゼンチンを攻撃する外国の侵略者に対してではなく、自国民に対して軍隊を使いたいのだ。

多くの人がミレイを普通の政治家たちと比べて、それより優れていると言う。私(ホッペ)もミレイの方がいいと思う。どちらも犯罪者だとは思うが、カマラ(・ハリス)よりトランプの方が好きだ。そしてもちろん、他の多くの政治家よりもミレイの方が好きだ。

しかし無政府資本主義(ミレイは自分の哲学的信念だと言っているが)の観点からは、ミレイはもちろん大失敗(ひどいもの)だ。そして、リバタリアン界隈で彼を一種の英雄に仕立て上げることには賛成できない。彼は英雄ではない。

Javier Milei es un desastre | Javier Milei is a disaster [LINK]

2024-10-19

台湾支援の代償

キッシンジャーら米安全保障体制のメンバーは、対中関係を正常化する取引の一環として、蒋介石と台湾を切り捨てる必要があると考えた。それを阻んだのはバリー・ゴールドウォーター、ヘンリー・ルースら議会やマスコミの視野の狭い冷戦戦士と、チャイナロビーの代弁者たちだった。
Case Study, Taiwan: A Nation is the Story We Tell Ourselves | The Libertarian Institute [LINK]
台湾の支配という利害は、米国よりも中国にとって重要である。中国政府の検閲や統制に批判的な専門家でさえ、台湾は中国の一部だと主張している。米国(キューバ危機を思い出そう)を含め、どの国も強大な敵対国が数マイル沖合に軍事基地を保有することを容認しないだろう。
What Price Are Americans Prepared to Pay for Defending Taiwan?  - The American Conservative [LINK]

台湾は軍事産業やシンクタンクの複合体によって支援され、米議会で強力なロビー活動を続けている。台湾の運命は、米国民の幸福や米国一般とは何の関係もない。関係があるのは米国の権力である。台湾は米政府による中国封じ込めの企てを推進するチャンスでしかない。
How Taiwan Became an Issue | The Libertarian Institute [LINK]

米国の政治家やメディアは、民主主義と自由を守れと繰り返す。もちろん米国の外交政策は常に地政学上の目的に根ざし、決して人道的なものではない。中国の超大国としての台頭を抑えたいという願望もさることながら、米国は世界経済で台湾が果たす役割にも突き動かされている。
What Lai Ching-te’s Victory Could Mean for Taiwan’s Future [LINK]

イスラエルでの兵器備蓄の欠点は、台湾で同様の兵器備蓄を行うことに対する警告となる。監視、透明性、説明責任の欠如に加え、人権侵害や地域の不安定化の恐れもあり、非常に危険で、潜在的に悲惨な提案である。米国は安定を損なわない武器移転政策を制定しなければならない。
The perils of a US arms stockpile in Taiwan | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-18

ネオコンという戦争屋

米国民は何十年も莫大な資金の支払いを強いられてきた。共産主義が機能せず自滅したソ連にわざわざ対抗したり、アフガンにトップダウンで国を建設したり、イラク政府を転覆したり、それによる不安定化の影響を軽減しようと他のいくつかの政府を転覆したりするためにである。
Beware of War Hawks in “America First” Clothing | Mises Institute [LINK]
世界中で悪者を懲らしめることを使命とするネオコンは、高潔な相手と同盟を結ぶという点ではお粗末そのものだった。レーガン政権はイラン・イラク戦争で独裁者フセインを支援し、イラクが化学兵器を手に入れるのを手助けした。結局ブッシュ父は対イラク戦争に米国を巻き込む。
It’s Always Been Hamiltonian Statecraft | Mises Institute [LINK]

米政府はロシア、中国、イラン、北朝鮮が、自分が反対するあらゆる事態の背後にいると考えているようだ。この不合理な論理の果てに、米国はこれら枢軸国の「悪意ある影響力」に対抗しなければならない場所のリストに、事実上世界のすべての地域を追加することになる。
We Lose, They Lose: A Reagan-Trump Fusion | Mises Institute [LINK]

米国がウクライナ戦争を代理戦争とみなすのは間違いだ。ウクライナという代理人はロシアの代理人と戦っているのではなく、ロシア自身と戦っている。戦闘がロシア国内ではなく、隣国のウクライナで行われているだけだ。米国の資金、武器、情報がロシアとの戦争に使われている。
Enough Already: Stop Provoking Russia | Mises Institute [LINK]

ロシア西部クルスク州へのウクライナの侵攻は、強さではなく絶望の結果だ。ウクライナには時間がなく、状況に大きな変化がない限り、勝利はおぼつかない。クルスク攻撃は揺さぶりの試みだったが、失敗に終わった。残された切り札は、米国を積極的に戦争に参加させることだ。
No, Russia is Not Losing the War in Ukraine: A Reply to Paul Schwennesen | Mises Institute [LINK]

2024-10-17

アパルトヘイトは反資本主義

アパルトヘイト(人種隔離政策)は資本主義に反する。自由な市場取引を認めるのではなく、人種に基づいて資源を配分しようとするからである。南アフリカでアパルトヘイトは結局撤廃されることなく、黒人経済力強化政策として知られる合法的な人種差別の新たな形態へと変貌を遂げたにすぎない。
Legal discrimination in apartheid and equity | Mises Institute [LINK]
奴隷制は当初から、政府によって支えられなければならなかった。奴隷を保有しない者は、奴隷制に補助金を出すことを余儀なくされた。これがなければ、奴隷制は著しく弱体化していただろう。具体的には奴隷監視、逃亡奴隷法、奴隷解放の制限、奴隷貿易の下支えなどであった。
Governments Had a Major Role in Sustaining Slavery | Mises Institute [LINK]

新古典派経済学の主流派は、市場の非効率を政府に「是正」させようとする。彼らは市民社会の存在を考慮せず、個人と政府の間に中間的なものは存在しないと誤って想定している。英国のコモンローは、血の抗争は集団の存続に不都合なものとみなし、代わりに罰金制度を導入した。
A Major Contribution to Libertarian Social Thinking | Mises Institute [LINK]

私たちはあらゆる社会問題を解決するために新しい法律が必要だと思い込み、法律に期待しすぎている。米国でも他国でも、法に対する願望の水準が高すぎる。より多くの問題を法的ルールによって解決しようとし、自発的な和解によって解決しようとすることは少なくなっている。
The Perils of Lawfare | Mises Institute [LINK]

もし人類が文明の共通利益を促進し、追求しないのであれば、唯一の選択肢は、異なる集団の中で隊列を組み、他の集団と戦うことになる。政治的な議論の焦点は、いかにして平和を達成するかではなく、さまざまな集団をどのように定義し、どの集団が特別な保護に値するかになる。
Group interests and the 'good of the whole' | Mises Institute [LINK]

2024-10-16

国家の廃止

国家権力に有意義に対抗するには、国家が簡単に介入できない組織を奨励し、成長させ、維持することが必要だ。人々が地元の教会を支援し、家族を養い、事業を興し、互助組織を作り、地元市民の自立を育むとき、国家権力と闘うために絶対欠かせない仕事をしているのである。
Why it's Not Enough to Hate the State | Mises Institute [LINK]
もし「国家」があらゆる種類の政府を指すのであれば、国家は人類と同じくらい古いものであり、国家なしに人間の集団が存在したことはないことになる。しかし国家(主権国家あるいは近代国家)は特殊なタイプの政府であり、その廃止は決してユートピア的なものではない。
We’re in the Middle of a Long War with the State | Mises Institute [LINK]

国家は価値を生むサービスを提供できず、価値を破壊する。最善の場合でも、課税と支出に資源を使わなければならないので、同じ財やサービスをより高い価格でしか提供できない。それ以外の場合、消費者が欲している他の財やサービスを犠牲にして、欲していないものを提供する。
Can the State be Justified? | Mises Institute [LINK]

アナーキーは、トップダウンの指示主義以外を理解できない人々にとっては、「無秩序」を意味するにすぎないが、それは創発的な秩序である。人間の行為の産物であって、人間の設計によるものではない。アナーキーは災害や破壊や戦争ではなく、支配者のいない統治なのだ。
Anarchy in the UK | Mises Institute [LINK]

昔の米国西部では、人々は民間の機関で財産や生活を守った。機関は暴力がコストのかかる紛争解決方法だと理解しており、仲裁や裁判など低コストの方法を採用した。人々はどのようなルールにお金を払うのか、異なる考えを持っていた。各機関間の競争は、選択肢を提供した。
Can We Secure Property Rights without the State? | Mises Institute [LINK]

2024-10-15

経済の法則は普遍

需要と供給の力学、私有財産の役割、商品交換の仕組みといった経済の法則は普遍的なものであり、あらゆる時代や社会で機能している。歴史を通じて、経済法則は進化の力として働き、人間社会を徐々に形成してきた。時代とともに顕在化し、資本主義の下で最高潮を迎えている。
The Manifestation of Economic Laws Across Societies and Epochs | Mises Institute [LINK]
仏エコノミスト、バスティアは自然法を信じた。すべての個人は神から権利と能力を授かっており、誰もそれを奪うことはできない。「自然は、いや神は、我々一人ひとりに、自分の身体、自由、財産を守る権利を授けている」。これは深いキリスト教信仰に啓発された哲学的思想だ。
The Christian Faith in the Thought and Life of Frédéric Bastiat | Mises Institute [LINK]

資本主義という言葉を非難するのではなく、これまで以上に積極的に使うべきだ。資本家と資本は成長と進歩の原動力である。マルクスが嘲笑の印として与えたこの言葉は、実際には、市場経済の利点を表す完璧な表現であり、自由市場を擁護する人々が誇りとすべき言葉なのである。
Yes, We Should Defend the Term "Capitalism" | Mises Institute [LINK]

フェアトレード賛成派は、市場経済は公平な結果をもたらさないので現代社会にはふさわしくないという。実際には、自分たちが望むような結果を導かないというにすぎない。強制でない市場経済は、生産者と消費者がともに自分たちの利益になる取引を求める最良の機会を提供する。
The Myth of Fair Trade | Mises Institute [LINK]

お金としての金と金本位制を憎み、さげすむことは、現代国家の教義であり柱となっている。対照的に、金本位制の名残りが失われてから半世紀以上たった今でも、一般の人々は本能的に金を優れたものの象徴とみなしている。金メダルは最高の業績を表し、銀メダルはその次を表す。
Warren Buffett, Dave Ramsey, and John Maynard Keynes are Wrong! | Mises Institute [LINK]

2024-10-14

イスラエルの経済破綻

このまま放っておけば、イスラエルは経済破綻に直面する。投資は減少し、経済は縮小し、経済の未来への信頼は消えた。イスラエルはもはや、人々が引退し、家族を養い、働き、住むのに理想的な場所ではないのだ。 聖書にいう「乳と蜜の流れる土地」は、今や存在しないのだ。
The Fall of Israel - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃は、中東騒乱の出発点とみなされているが、実際ははるかに遡る可能性がある。ハマスの攻撃による死者1200人は恐ろしいことだが、イスラエルがそれまでの8年間に、占領下の西岸とガザ地区で殺害したパレスチナ人の数よりも少ない。
Biden is letting Israel trap the US into war with Iran | Responsible Statecraft [LINK]

イスラエルはイランとの全面戦争というリスクを冒そうとしている。戦争が中東での全面戦争や原油価格の急騰、米大統領選に臨む民主党に打撃を与える以外、何かを達成できる可能性はない。米メディアはバイデン政権がイスラエルを抑え込もうとしているという神話を広めている。
Biden Is Pushing Israel Towards Larger War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

米共和党の上院議員は、「ハマスのテロリスト」が昨年10月7日の攻撃で「約1200人」を殺害し、ハマスが「戦争の武器としてレイプ」を使ったという嘘を繰り返す決議案を提出した。レイプ疑惑はでっち上げで、死者数のかなりの部分はイスラエル自身の工作員の故意の殺害による。
Old Lies Behind Israel’s War Live On in Senate Resolution - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ロッキード・マーチンは世界最大の兵器メーカーであり、イスラエルがガザ空爆に使用するF35戦闘機の製造元でもある。同社の株価は10月4日の取引終了時点で、昨年10月7日の攻撃から1年間のトータルリターンが54.86%となり、S&P500種株価指数を約18%上回っている。
Israel's wars mean 'massive' returns for US arms company investors | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-13

孔子の自由主義思想

中国では、黄河文明が紀元前4000〜前3000年ごろから起こり、その後、殷王朝が前1600年ごろ成立。前1100年ごろには殷に代わって周王朝が成立した。その周も前8世紀ごろから国力が衰え、有力な諸侯が王を名乗って覇を争う乱世となった。これは秦が中国を統一する前3世紀後半まで続く。春秋・戦国時代という。

論語 (岩波文庫)

この実力本位の乱世にあって為政者たちは、いかにして国力を強化し、社会を豊かにするかに策を講じた。ここに自由な思想活動が活発となり、数多くの思想や政策を説く人々が現れた。総称して諸子百家という。そのうち孔子を祖とする儒家は、老子や荘子の道家と並んで、後に中国思想の二大潮流となった。

自由主義的な道家に対し、儒家は保守的なイメージが強い。しかし意外にも、少なくとも初期の儒家の著作からは、豊かな自由主義の思想を読み取ることができる。

孔子の名は丘、字は仲尼といい、紀元前6世紀後半、魯で生まれた。父母とは幼い時死別し、貧困の中で育つ。魯に仕え大司寇(大臣)となったが権力者と衝突し、56歳から十余年間魯を去って諸国を歴遊した。諸侯に道徳的政治の実行を説いたが用いられず、晩年は魯で弟子の教育と著述に専念した。孔子とその弟子たちの言行録である『論語』(引用は原則、金谷治訳。表記を一部変更。カッコ内は篇名)から、自由主義を示すおもな記述をたどってみよう。

宇宙は誰からも指示を受けていないのに、秩序を保っている。現代の経済学者ハイエクのいう「自生的秩序」である。孔子は、政治支配のあり方も同様であるべきだとして、「政治をするのに道徳によっていけば、ちょうど北極星が自分の場所にいて、多くの星がその方に向かってあいさつしているようになる(人心がすっかり為政者に帰服する)ものだ」(為政)と述べた。

同様の発言はまだある。「わが身が正しければ、命令しなくても行われるが、わが身が正しくなければ、命令したところで従われない」(子路)。「何もしないでいてうまく治められた人はまあ舜だろうね。一体、何をされたろうか。おん身をつつしまれて真南に向いておられただけだ」(衛霊公)。舜は伝説上の君主。中国で君主は南に面して臣下に対面した。

孔子はこのように、政治において道徳に基づく自生的秩序を重んじる一方で、刑罰によって人為的な秩序をもたらそうとすることに批判的だった。「(法制禁令などの小手先の)政治で導き、刑罰で統制していくなら、人民は法網をすりぬけて恥ずかしいとも思わないが、道徳で導き、礼で統制していくなら、道徳的な羞恥心を持ってそのうえに正しくなる」(為政)と述べている。礼とは、法律に対して、それほど厳しくはない慣習法的な社会規範を指す。

魯の家老から「もし道にはずれた者を殺して道を守る者をつくり上げるようにしたら、どうでしょうか」と問われ、孔子はこう答える。「あなた、政治をなさるのに、どうして殺す必要があるのです。あなたが善くなろうとされるなら、人民も善くなります。君子の徳は風ですし、小人の徳は草です。草は風にあたれば必ずなびきます」(顔淵)。また、「(聖人ではなく)善人でも、百年も国を治めていれば、あばれ者をおさえて死刑もなくすことができる」(子路)とも述べる。

孔子は重すぎる課税にも反対だったようだ。門人の有若は、魯の王から「近年、飢饉で税金が足りないが、どうしたものか」と尋ねられ、「どうして税を軽くして1割になさらないのですか」と答えた。孔子の理想とする周の税は1割だったが、魯の税は当時2割になっていた。王が「2割でも足りないのに、どうして1割にできよう」と不満を述べたのに対し、有若は答えていった。「民が十分足りていれば、君主が足りないということはありますまい。もし民が貧しければ、君主が富むということはありえません」(顔淵)。2割の税であっても孔子一門の目には高すぎた。社会保険料を含め5割近い日本の現状を見たら、言葉を失うに違いない。

道徳に基づき、重すぎる税や厳しすぎる罰を避け、暮らしや経済活動に介入しない政治を行えば、その国の人々は喜んでとどまるし、他国の人々も集まってくるだろう。孔子はある国の長官から政治のやり方を問われ、「近くの人々は喜び、遠くの人々は(それを聞いて慕って)やってくるように」(子路)と答えた。現代でも、自由で豊かな国には、国境を越えてでも多くの人が集まってくる。

理想の政治が個人の選択を尊重し、それに介入しないのは、単に経済を活発にし、人々を呼び寄せるためだけではない。それが倫理にかなうからでもある。

弟子の子貢が「一言だけで一生行っていけるということがありましょうか」と尋ねたところ、孔子は「まあ恕(思いやり)だね」と答え、その意味をこう付け加えた。「己の欲せざる所、人に施すことなかれ(自分の望まないことは人にしむけないことだ)」(衛霊公)

儒教のこの教えは、「人からしてほしいと望むことは、人にもそのとおりにせよ」というキリスト教の黄金律に対し、「白銀律」と呼ばれる。「自由主義の観点からは、何らかの行動を求める黄金律よりも、求めない白銀律のほうが優れている」という意見を耳にするが、それは正しくない。黄金律は白銀律と同じく、従うかどうかはあくまでも個人の自発的な判断に任されているからだ。また、何かをしないことは同時に、何かをすることでもある。たとえば、「約束を守らない」ことは「約束を破る」ことでもあるように。だから黄金律と白銀律を区別する意味はない。

個人の選択の尊重と裏表の関係にあるのは、選択は個人の責任だという厳しい考えだ。孔子はこう語っている。「人が成長する道筋は、山を作るようなものだ。あともう一かごの土を運べば完成しそうなのにやめてしまうとすれば、それは自分がやめたのだ。それはまた土地をならすようなものだ。一かごの土を地にまいてならしたとすれば、たった一かごといえど、それは自分が一歩進んだということだ」(子罕、齋藤孝訳)

また、弟子の冉求が「先生の道を(学ぶことを)うれしく思わないわけではありませんが、力が足りないのです」といったのに対し、孔子はこうたしなめた。「力の足りないものは(進めるだけは進んで)中途でやめることになるが、今お前は自分から見切りをつけている」(雍也)

自由主義は西洋特有の価値観であり、アジアの文化にはそぐわないなどと考える人が少なくない。これに対し哲学研究者のロデリック・ロング氏は初期儒教について調べたうえで、「この伝統のいくつかの側面を指摘することで、それ(自由主義)が単に西洋のものではないと示すことができる」と語っている。

<参考文献>
  • 金谷治訳注『論語』岩波文庫
  • 齋藤孝訳『論語』ちくま文庫
  • Long, Roderick T., Rituals of Freedom: Libertarian Themes in Early Confucianism, The Molinari Institute.

2024-10-12

民主主義と自由は違う

大統領が皇帝になれるなら、国民は良い大統領を期待できない。「これだけの権力を誰に託すべきか」と問うのではなく、「どの政治家にどれだけの権力を託すことができるのか」と問うべきだ。問題はどの政党が手綱を握るかではなく、国民が政府に鎖でつながれるかどうかだ。
The Mirage of Honest Government | Mises Institute [LINK]
今日、民主主義を君主制よりも高く評価するのが一般的だが、評価の尺度が自由である場合には疑わしい。経済的・政治的な自由は、選挙権から当然に生じるものではない。自由は私有財産の保護に関わるもので、国家の規模や権力とは反比例の関係にあると考えるべきだ。
Why Democracy Has Such Staying Power | Mises Institute [LINK]

民主主義を支持する人々は、市民は投票権があるから、何らかの形で支配者だと主張する。この論理に従えば、民主主義国では権利侵害は起こらない。市民から財産を盗むことはすべて同意されたものだからだ。市民には国家から独立して存在する権利があるから、これは誤りである。
Democracy Is Not the Same Thing as Freedom | Mises Institute [LINK]

民主主義での権力追求は近視眼的な行動をもたらす。議員は再選の可能性にとらわれ、短期の利益と有権者へのアピールを最大化しようとする。寄生虫のような政治家がケインズ経済学を好むのはそのためだろう。長期の視点と分別ある統治が犠牲になり、近視眼的な意思決定が続く。
Unmasking Democracy: A Moral Virtue or a Flawed Tool? | Mises Institute [LINK]

指導者が国を私的に所有し、その地位に長年とどまる安心感を抱いている場合、富を確実に収奪する供給源となるように、国の富を維持しようとする。民主的政府では、個人は将来の地位について保証がないため、ガチョウが金の卵を産まなくなる前に、できる限り収奪しようとする。
The Right Is Wrong to Pursue Term Limits | Mises Institute [LINK]

2024-10-11

岐路に立つウクライナ

西側諸国はウクライナが戦争に勝つことはないという冷厳な現実に直面している。ゼレンスキー大統領は戦前の国境までの領土奪還だけでなく、ドンバスとクリミアを含む2014年の国境までの全領土の奪還を勝利の境い目としている。西側にそのような幻想を抱く者はほとんどいない。
Ukraine at the Crossroads | The Libertarian Institute [LINK]
ウクライナは西側からの支援があっても、ロシアを破り、失地を武力で回復する見通しは立っていない。ウクライナ軍は崩壊する恐れがあり、そうなれば西側諸国から直接介入を求める圧力がかかるだろう。ロシア政府が核政策の変更を示唆しているのは、これを抑止するためである。
When will the war in Ukraine end? | Responsible Statecraft [LINK]

ウクライナに今必要なのは、戦争から脱し、可能な限り最善の未来を実現する交渉に移行するための、米国の支援である。「ウクライナが交渉のテーブルで有利になるように、戦場でウクライナを有利な立場にする」と米国が語っている時間はもうない。その時期は過ぎたのだ。
It's Time To Really Help Ukraine - Antiwar.com [LINK]

米国はウクライナとイスラエルに利害を持っているが、その利害はそれぞれの国の利害と同じではない。それにもかかわらず、バイデン政権は、米国の利害が相手国の利害と異なる場合、それをはっきり主張することができないようだ。両紛争の激化を受け身で見ているようだ。
Biden Is Sleepwalking Toward War in Ukraine and Middle East | Cato at Liberty Blog [LINK]

トランプ氏はもちろんハリス氏でさえ、ウクライナ戦争を激化させる気はないかもしれない。米国がわずかでも身を引けば、EUの介入を必要とする。とくにハンガリー、スロバキア、多少はイタリア、台頭してきた仏独の政治勢力など、一部の国は戦争への熱意が薄れる兆しがある。
Europe at odds with public on escalating war in Ukraine | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-10

危うい対イラン政策

イランは米国を攻撃したり、米国人を脅したりしたのか。していない。紛争激化の連鎖を引き起こしたのは、イスラエルによるイランへのミサイル攻撃だった。イスラエルとイランの戦争は米国とは何の関係もないばかりか、米国の関与拡大は、中東における国益を損ねている。
American Neocons Get Their Iran War as Congress Sleeps - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
イランはペゼシュキアン大統領の当選によって改革派が復活した。ところが米国はこのチャンスにイランとの交渉に応じて関係を改善するのではなく、核合意交渉の申し出を拒否し、敵対関係を続ける無益な政策に固執しているようだ。平和を遠ざけ、自国の利益を損なっている。
The U.S. Continues to Undermine Its Own Interests in Iran | The Libertarian Institute [LINK]

イランの核施設に対する攻撃は、大戦争と同国の核兵器開発の引き金になりかねない。米国はイスラエルの行動激化を支持せず、牽制すべきだ。イラン政府は核交渉の再開に関心があり、核問題を平和に解決するチャンスだ。核開発計画に対する軍事行動は逆効果であり、必要ない。
A Terrible Iran Question and Two Terrible Answers [LINK]

もしバイデン政権がイスラエルによる紛争激化を許せば、米イランの直接の軍事衝突につながる可能性は極めて高く、中東は大きく不安定化するだろう。米国の安全保障に及ぼす影響は計り知れない。ブッシュ政権が中東で追求した悲惨な軍事的冒険に匹敵する結果は想像に難くない。
Iran bombs Israel, but buck stops with Biden | Responsible Statecraft [LINK]

イスラエルのネタニヤフ首相は、イランが直接参戦してくるよう期待して、戦争をレバノンまで拡大するだろう。ヒズボラもイランも現段階ではイスラエルとの戦争を望んでいないが、イスラエルがレバノンやヒズボラと本格的な戦争を始めれば、イランは黙っていまい。
Assassination of Hamas leader in Iran puts new president in a trap | Responsible Statecraft [LINK]

2024-10-09

ケインズ主義のおとぎ話

ケインズの思想は中央銀行や政府機関の弁明書であり脚本である。金融業界や経済学者の思考にも浸透している。その核心は、経済を動かしているのは財と消費に対する需要であり、必要であれば「刺激」することができるというものだ。景気後退は消費と需要の不足の結果だという。
The Keynesian Multiplier Fairy Tale | Mises Institute [LINK]
ケインズ主義的な景気刺激策によって、政府が拡大した。景気悪化を財政赤字の拡大によって支えたことで、景気循環の変動性が高まった。量的緩和とゼロ金利によって人為的に支援されたゾンビ企業が生まれた。その結果、中長期では経済に大きな非効率が生じることになった。
Massive State Economic Intervention Has Led to This Point | Mises Institute [LINK]

経済は消費によって繁栄への道を切り開くことができると教える経済学者たちがいる。しかし、ケインズの奇跡は実現しない。石はパンにはならない。だがどんな議論も経験も、政府支出や信用拡大による救済を信じる人々のほとんど宗教的な熱狂を揺るがすことはできないだろう。
Stones into Bread: The Keynesian Miracle | Mises Institute [LINK]

ケインズ主義政策によって、政府は累進課税で直接収奪し、新たなマネーを生み出し、支出し、投資を指示し、消費に影響を及ぼす。政府は全権を掌握し、個人はなすすべもなく、くびきの下敷きにされる。これは完全に誤った理論を実行に移すために、支払うよう求められる代償だ。
Spotlight on Keynesian Economics | Mises Institute [LINK]

通貨供給量を拡大する経済的理由はない。お金は他の商品と同じく需要と供給のルールに従うが、ある重要な点で異なる。使ってもなくならないという点だ。リンゴを使う(消費する)となくなるが、お金を使っても使い尽くされることはない。使う前も後も、ドルはまったく同じだ。
Do We Need 3% Inflation? Economic Growth and Deflation | Mises Institute [LINK]

2024-10-08

米政府はイスラエルの弁護士

米国はイスラエルに武器を与え、地域の安定にどんな影響をもたらそうとも、その過程で国際法や国内法にどのような違反があろうとも、イスラエルは好きな場所で好きな者を好きなだけ殺す。そして米国は、優秀な弁護士よろしく、攻撃を正当化するかのようにその背景を説明する。
Why do Biden and Blinken act like Israel's lawyers? | Responsible Statecraft [LINK]
ガザ地区で働く米医療従事者のグループは、バイデン政権に対し、イスラエルの軍事作戦と市民への包囲が壊滅的な影響を及ぼしているとして、イスラエルへの武器供与を停止するよう求めた。民間人の虐殺と飢餓の共犯者として行動することをやめるよう、米政府に警鐘を鳴らした。
American doctors who worked in Gaza: No more bombs to Israel | Responsible Statecraft [LINK]

人々は「テロリズム」を「嫌いな暴力」という意味で使っている。しかし、加害者のことが好きであろうと、標的にされた人々のことが嫌いであろうと、イスラエルの味方たちがどんなに賞賛しようとも、これ(ポケットベルの一斉爆発)が明白なテロ攻撃であることは否定できない。
Israel’s Pager Terrorism | The Libertarian Institute [LINK]

バイデン政権は、ポケベル攻撃について何も知らなかったし、関与もしていないと主張している。それは事実かもしれないが、ネタニヤフ首相の無謀さを牽制することを拒否しているのだから、やはり責任がある。イスラエル政府が何をやっても、米政権は無条件で支援してきた。
Israel Terrorizes Lebanon - by Daniel Larison - Eunomia [LINK]
 
 昨年10月7日の出来事は、その日亡くなった人々にとっても、人質やその家族にとっても悲劇的なものだった。彼らは犠牲者だ。しかし、ガザ地区をはじめとするパレスチナ人も同様である。だがイスラエルのメディアでは、ガザ住民の苦しみについては報道されない。
The Longest Day – Israel's Victim Mindset - Antiwar.com [LINK]

2024-10-07

素朴な政府信仰

オーストリア学派経済学は自由な市場に対する素朴な信頼だと非難される。しかし素朴なのは、利己的な官僚集団が最善の方法を知っていると信じることのほうだ。インフレ政策が不動産バブルを膨張させて起こった2008年の金融機関など、過去の大失敗はすべて政府の介入の結果だ。
Simple Counters to Simplistic Critiques of Austrian Economics | Mises Institute [LINK]
オーストリア学派のメンガーは、経済学は人間の選択の性格から論理的に導かれる科学だと主張した。一方、シュモラーらドイツ歴史学派は経済学に理論は存在しないと主張。経済学の要諦は、政府が労働者福祉を促進する方法を、今でいう統計学を駆使して決定することだと考えた。
Economically-Illiterate Policy Proposals Are Popular, And Economists Are to Blame | Mises Institute [LINK]

顧客がいなければ、商品を生産する必要もなく、社会で何が必要で何が必要でないかを決める必要もない。もし経済の世界から顧客を消し去ったら何が起こるだろうか。市場経済から管理経済へと移行する。管理経済では消費者と消費は存在するが、自発的な顧客としては扱われない。
The Customers and Their Enemies | Mises Institute [LINK]

米国の政治家は民主党も共和党も、以前の政策によって起こされた問題を「修正」しようとする政策を提案する。その政策がさらなる損害を引き起こし、「修正」政策が無限に繰り返される。その結果、混沌とした非効率的な混乱が生じ、繁栄する自由市場の可能性は埋もれてしまう。
Kamala's Housing Plan Will Make Housing Even More Expensive | Mises Institute [LINK]

カマラ・ハリスは共産主義者ではない。介入主義者だ。だから危険なのだ。介入主義は少数の政治階級が市場経済への介入政策を利用し、富を自分たちの懐に移す。共産主義は介入主義よりも悪質だが、大統領府に共産主義者がいても、米国を共産主義国にすることはできないだろう。
Kamala Harris Is Not a Radical Communist, but That Makes Her Even More Dangerous | Mises Institute [LINK]

2024-10-06

アジア太平洋戦争、日本の敗因

緒戦の勝利と危機の予兆


1941(昭和16)年12月8日、日本軍はハワイの真珠湾などを奇襲攻撃し、マレー半島にも上陸して、米国・英国に宣戦布告して太平洋戦争が始まった。

その際、日本の軍部の謀略によって、日本から駐米日本大使館への電報が遅らされ、そのため日本大使館からの日米交渉打ち切りの通告が遅れた。米政府は日本のだまし討ちと国民に宣伝し、元来戦争に乗り気でない米国民を、日本やドイツ、イタリアとの戦争に熱狂的に駆り立てることになった。

太平洋戦争の歴史 (講談社学術文庫 1669)

太平洋戦争は、当時の米国での呼称(the Pacific War)であり、日本は大東亜新秩序を建設する立場から、この戦争を大東亜戦争と呼んだ。この戦争のアジアへの広がりを示すため、近年、アジア太平洋戦争(あるいはアジア・太平洋戦争)という呼称も使われている。

独伊も三国同盟にもとづき米国に宣戦し、戦争は世界的規模に拡大した。

開戦後の半年間は、日本軍が米英の植民地防衛軍の劣勢に乗じて、中部太平洋から東南アジアに及ぶ広大な地域を占領した。緒戦は日本軍の圧勝に終わったとはいえ、危機の予兆はすでに現れ始めていた。欧州情勢の変化である。

日本政府のシナリオでは、南方作戦によって戦略的自給圏を確保して不敗の体制を確立するとともに、中国・蒋介石政権への圧力を強化する、他方で、独伊と軍事的に連携しながら、まず英国を屈服させ、それによって米国民の戦意を喪失させて講和に持ち込む、という目論見だった。

当時、英国の強固な抵抗にあったドイツは英本土上陸作戦を断念し、矛先を東に転じて41年6月には独ソ戦を開始していた。日本のシナリオの前提は、独ソ戦は短期間のうちにドイツの勝利に終わり、ソ連は崩壊する、独ソ戦の勝利によって戦略態勢を強化したドイツは、続いて英国を屈服させる、というものだった。

たしかに、スターリン体制下での大量粛清の結果、ソ連軍が弱体化していたこともあって、ドイツ軍の進撃は急であり、11月末には、首都モスクワまで33キロの地点に到達していた。しかし、死にものぐるいの反撃によってドイツ軍の総攻撃を挫折させたソ連軍は、12月上旬には反撃に転じ、ドイツ軍を押し返し始めた。アジア太平洋戦争が始まったのは、まさにその時だった。「日本の軍事戦略の前提そのものが、静かに崩れ始めていたのである」(吉田裕『アジア・太平洋戦争』)

連合国軍の反攻


日本は緒戦の予想以上の大戦果を実力の差によるものと過信し、安易な情勢判断と作戦計画に走った。陸海軍間には統一した戦略が欠如していた。

陸軍は、石油などの戦略的資源の開発と日本本土への輸送に力を注ぎながら、南方戦線では持久戦の態勢へ移行することを重視した。北方で対ソ戦を開始することを計画していたからである。一方、米国との国力の大きな格差から長期戦に自信の持てない海軍は、積極的な攻勢作戦の連続によって米国に短期決戦を強要し、米国民の戦意を喪失させることを基本戦略としていた。

その結果、1942年3月に決定された「今後採るべき戦争指導の大綱」は、戦略的重点のあいまいな折衷案となった。また同月決定された「世界情勢判断」では、米国など連合国軍の本格的な反攻作戦が開始される時期を、「概ね昭和18(1943)年以降なるべし」と予想した。だが実際には、米軍の反攻作戦は42年夏に始まった。

日本軍の緒戦の勝利を一気に覆したのは、42年6月のミッドウェー海戦の惨敗だった。ミッドウェー攻略作戦は連合艦隊司令部が海軍軍令部の反対を押し切って計画したものである。敗北の背景には、機動部隊の疲労と連勝による驕慢とがあった。

日本海軍は、ミッドウェー攻略作戦に虎の子の正規空母4隻を投入したが、日本軍の暗号を解読することによって攻撃を事前に知っていた米海軍は、3隻の正規空母を配備して日本軍を待ち受けていた。6月5日、日本軍のミッドウェー島に対する空襲で始まった戦闘は、当初、日本軍優位のうちに推移していたが、米海軍の急降下爆撃隊にすきをつかれ、たちまち「赤城」「加賀」「蒼龍」の3空母を失った。残る「飛龍」も米軍機の攻撃で沈没し、結局、このミッドウェー海戦は日本海軍の大敗に終わった。

大本営発表を受けた新聞記事では「肉を斬らせて骨を斬る必殺の海軍魂」のあらわれだとしたが、現実には、「骨」を斬られたのは日本海軍だった。この真実を国民に隠すため、厳しい秘密主義がとられた。生存者にはかたく口止めがされ、通信は絵ハガキだけが許されて、封書はいっさい禁止された。

戦死者の遺族に対しても、ことの真相は隠され続けた。たとえば、空母「加賀」乗組の戦死者の遺族には、1カ月以上たってから、「名誉の戦死」の公報が送付され、①「生前ノ配属艦船部隊名等」の守秘義務②父母妻子(やむをえない場合は兄弟)以外には戦死の事実を漏らさないこと③僧侶の読経など外部へ漏れる行事の禁止——といった注意事項が指示されていた(黒羽清隆『太平洋戦争の歴史』)。

沖縄戦の悲劇


日本の敗色が濃厚となった1944年、日本軍は沖縄諸島の防衛を強化しようと、16歳から48歳までの男性を防衛隊などの名で動員し、陣地の構築や飛行場の設営作業を行わせた。

1945年4月1日、米軍は沖縄本島に上陸した。6月に守備軍が全滅するまで、戦闘は沖縄全土を巻き込み、約3カ月続いた。この間、日本軍は働ける男性のほとんどを、武器を持たない兵員である義勇軍として徴兵した。中等学校生は、男子が鉄血勤皇隊として戦い、女子が看護要員として働き、悲惨な最後を遂げた。

沖縄戦の特徴の一つは、日本軍守備隊の戦死者数とほぼ同じ数の一般住民(いずれも約9万4000人)が戦闘に巻き込まれて死亡していることである。沖縄の防衛にあたる第32軍と大本営は、沖縄戦を、本土決戦準備のための時間を稼ぐ捨て石作戦として位置づけていた。県民の避難計画や安全確保対策は後回しとなり、県民から大きな犠牲者を出す結果となった。

沖縄戦のもう一つの特徴は、日本軍によって、多数の沖縄県民が殺害されたことだ。日本軍は、米軍のスパイとみなした一般住民をただちに処刑しただけでなく、日本軍将兵用の壕を確保するため、住民を壕から追い立てた。これによって、多くの住民が激しい銃放火にさらされ、生命を奪われた。

さらに深刻なのは、「集団自決」である。米軍に圧倒され、戦局の行く末に絶望して自暴自棄になった日本軍将兵は、手榴弾を配るなどして、住民に「皇国臣民」として「自決」することを強要した。沖縄の地方有力者が協力している場合もあるが、日本軍が関与・主導しなければ、この「集団自決」は起こりえなかっただろう(前掲『アジア・太平洋戦争』)。

作家の司馬遼太郎氏は沖縄戦について考察し、「軍隊というものは本来、つまり本質としても機能としても、自国の住民を守るものではない」「軍隊は軍隊そのものを守る」と喝破する。さらに、「もし米軍が沖縄に来ず、関東地方にきても、同様か、人口が稠密なだけにそれ以上の凄惨な事態がおこったにちがいない」と述べる(『街道をゆく6 沖縄・先島への道』)。

アジア太平洋戦争の戦死者の大部分は、沖縄戦を含む、マリアナ諸島陥落後の絶望的抗戦期に発生している。岩手県の事例によれば、44年1月以降の戦死者は、全体の実に87.6%に達している。歴史学者の吉田裕氏は、「戦争終結の決断が遅れたことで、どれだけ多くの生命が失われたかを、この数字は示している」と指摘する。

2024-10-05

ネオコンとしてのミレイ氏

アルゼンチンのミレイ大統領は、外交政策においてリバタリアンではない。米国の帝国主義路線(親NATO、親ウクライナ、親イスラエル)を激しく支持し、不介入主義者ではない。就任後に発表され、実行されているその外交政策の特徴は、リバタリアンというよりネオコンである。
Una disección hoppeana de Javier Milei - Instituto Rothbard [LINK]
アルゼンチンのミレイ大統領は就任初日から、自ら進んで米NATO枢軸の一員となろうと望んでいることが明らかになった。イスラエルに対する様々な提案や、ウクライナの独裁者ゼレンスキーとの度重なる会談で、これを実証してきた。米政府の頼れる嘆願者であり、友人である。
Milei quiere más gasto; para las fuerzas armadas, por supuesto - Instituto Rothbard [LINK]

リバタリアンは戦争に対し和平と交渉を支持すべきだ。だがアルゼンチンのミレイ大統領は「イスラエルの自衛権」を擁護し、イスラエルは「いかなる過剰行為も行っていない」と述べた。西側の立場を強調し、テロリストから自分たちを守るために「あらゆる資源」を使うと述べた。
Javier Milei contra la causa antiguerra - Instituto Rothbard [LINK]

アルゼンチンのミレイ大統領は、ネタニヤフ首相率いる大量虐殺国家イスラエルに支援と忠誠を提供してきた。ネタニヤフは「両国とも自由市場を守る」と述べた。ミレイはそうでも、イスラエルでは西岸とガザのパレスチナ人に自由な土地取引や自由貿易が事実上認められていない。
Buchanan y Milei: un análisis rothbardiano - Instituto Rothbard [LINK]

アルゼンチンのミレイ大統領は、トランプ氏が社会主義と闘ったと称える。だがトランプはコロナ対応で社会を麻痺させ、米国を社会主義的な福祉政策からほとんど解放せず、内部告発者のアサンジやスノーデンを許さず、CDC、FDA、NSAなど札付きの政府機関には手をつけなかった。
Una disección rothbardiana de Javier Milei - Instituto Rothbard [LINK]

2024-10-04

米イスラエルの特別な関係

中東における米国の外交政策は何十年もの間、機能不全に陥っており、イスラエルとの不均衡な関係は、欠陥のある地域戦略の中核をなしている。米国は海外で過度に拡張し、国内で深刻な政治・経済問題に直面している今、イスラエルに追随して奈落の底に深く落ちようとしている。
It’s Time to Rethink the U.S.-Israel 'Special Relationship' - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
イスラエルのオルメルト元首相によれば、国際舞台におけるイスラエルの政治的安定は長年にわたり、米国の絶対的な支援にかかってきた。イスラエル空軍は戦闘機、輸送機、給油機、ヘリコプターなど、すべて米国に依存している。供給源として、他に信頼できるところはない。
Former Israeli PM Admits Israel's War Crimes Can't Happen Without US Support - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプは、自分がいかに米国を第一に考えているかを語るのが好きだ。トランプの伴走者バンスは、他の優先事項があることを明らかにした。副大統領討論会の最初の質問に答えて、自分の忠誠はまずイスラエルにあると主張した。それどころか米国は二番手ですらないと示唆した。
J.D. Vance, Israel Firster - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ポリティコによれば、バイデン米政権が公にはレバノンでの停戦を求めているにもかかわらず、米政府当局者は内々にイスラエル当局者に対し、攻撃を激化させる計画に同意している。9月23日以来、レバノンではイスラエル軍によって民間人を含む1000人以上が虐殺されている。
The US Privately Encouraged Israel To Escalate in Lebanon - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

米上院議員8人は3月、バイデン大統領に書簡を送り、1961年対外援助法第6201条に基づきイスラエル政府への攻撃用軍事援助を打ち切るよう求めた。イスラエル政府が米国の人道支援の輸送や配達を禁止・制限しているからだ。それでも米国の活発なイスラエル軍事援助は続いている。
Violating the Law to Provide War Aid to Israel - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2024-10-03

中国経済の試練

習近平政権の下で中国の成長率は以前の半分にまで落ち込んでいる。これは毛沢東を崇拝する習近平がビジネスを取り締まったからだ。一方で習氏は政府に有利な産業、とりわけグリーンエネルギーと住宅に何兆ドルも注ぎ込んだ。これらは現在、過剰設備と需要不足で崩壊している。
China on the Edge of Recession | Mises Institute [LINK]
経済の逆風にもかかわらず、中国共産党はその掌握力を強め続けている。 第14次五カ年計画では「データに基づく国家統治能力の活用」を目指している。中国は改革を進めているが、その大部分は依然として社会主義であり、繁栄を犠牲にしてでも国家統制を強化する方向にある。
The Chinese Economy: Market Socialism with Chinese Characteristics | Mises Institute [LINK]

日本や欧州は高齢化を迎えたとき、すでに豊かな先進国だった。技術を活用し、少ない労働者で高い生活水準を維持していた。中国は発展途上で、1人当たりGDPは伊日の約3分の1、米国の6分の1にも満たない。労働集約的な製造業に依存し、経済減速に伴いその雇用さえ減少している。
China’s Inefficient and Unsustainable Central Planning | Mises Institute [LINK]

中国が世界を征服するというのが、この10年間のストーリーだった。実際には、習近平の統治は中国経済にとって最悪であり、自由市場の奇跡は、資本を国営産業へ流すための規制に取って代わられた。コロナ対策の都市封鎖は途方もなく破壊的で、コロナ後の景気回復は頓挫した。
China Enters the Doom Loop | Mises Institute [LINK]

中国では不動産セクターが巨大だ。その直接・間接の比重はGDPの25%で、日本やスペインの不動産バブルの2倍以上だ。中国政府は過剰な債務を減らすため規制を導入しているが、GDPの増加と雇用創出の恩恵を受けているため、企業債務モデルに関して自己満足的な立場を崩さない。
Evergrande Isn't China's "Lehman Moment." It Could Be Worse Than That. | Mises Institute [LINK]

2024-10-02

不換紙幣は吸血鬼

不換紙幣による被害は未知のものであり、吸血鬼のように闇に紛れて忍び寄ってくる。被害者は無力で無自覚であることが多く、労働の成果は事実上吸い取られていく。不換紙幣の製造を許された人々が、独占された貨幣を使わざるをえない人々を犠牲にして生きることを可能にする。
The Vampire Fiat Money System: How It Works and What It Means for Your Wealth | Mises Institute [LINK]
ギリシア神話の英雄アキレスがかかとに弱点を持っていたように、不換紙幣にも弱点がある。需要の縮小だ。国債や銀行預金への投資を減らす一方で、株式、貴金属、土地、不動産など有形資産への投資を奨励する。不換紙幣を解体する行動をとらない政府や政治家への支援をやめる。
The Achilles Heel of the Fiat Money System | Mises Institute [LINK]

個人は金を宝飾品や産業用途に使用する。 この意味で金は富の一部だ。もし何かの理由で金の生産が増え、その傾向が持続するなら、金の交換価値は他の財に対して持続的に下落するだろう。しかし金の供給量の増加は、「無から生み出す」貨幣の増加のような弊害をもたらさない。
Why There's So Much Confusion over What "Inflation" Means | Mises Institute [LINK]

20世紀に不換紙幣が普及する以前は、消費のために借金をすることに文化的な抵抗があった。今は物価上昇で貯蓄の価値が下がるため、家を買うために10年間お金を貯めることはもはや意味がない。借金してすぐ家を買い、安くなったお金でローンを返済する方がずっと好都合なのだ。
The Cultural Consequences of the Federal Reserve | Mises Institute [LINK]

不換紙幣と特権的銀行は経済をゆがめる。銀行は通貨発行益を得ることができるため、個人の貯蓄など他の資金調達源に勝つ。工場式に生産性を高めやすい穀物、豚肉、鶏肉に融資が集中し、牛肉に向かわなくなったため、豚肉などの供給は牛肉より相対的に増加し、価格は下落した。
How Fiat Money Made Beef More Expensive | Mises Institute [LINK]

2024-10-01

民主主義より自由を

政治体制が「民主的」かどうかにかかわらず、社会の政治的緊張を緩和し、安定をもたらすには、政府権力の制限が必要だ。自由な市場と個人の権利の強化によって、意思決定を分権化し、政府の役割を縮小しよう。必要なのは「より多くの民主主義」ではなく「より多くの自由」だ。
Smashing the Western Illusion of Democracy | Mises Institute [LINK]
民主主義は個人が投票を通じて未来を選択する機会を与えるとされる。しかし一票の個人の力は微々たるものだ。知識を持って投票するメリットは、多数の有権者によって薄められてしまう。ほとんどの人が感情や本能に基づいて投票し、表面的な美辞麗句に左右されることが多い。
Unmasking Democracy: A Moral Virtue or a Flawed Tool? | Mises Institute [LINK]

バイデン米大統領はSNSの投稿だけで大統領選から離脱し、ハリス副大統領を大統領選に推薦した。予備選の過程を完全に消し去った。民主主義の党だという民主党は、選出過程から一般有権者を完全に切り捨て、候補者は少数のエリート党内関係者によって選ばれることになった。
The party of "democracy" will now choose your candidate for you | Mises Institute [LINK]

民主主義を口にする割には、ホワイトハウスは実際には、目に見えない、選挙で選ばれたわけでもない、エリートだけに責任を負う人々によって運営されている。これをディープステートと呼ぶ者もいる。米国はテクノクラシー(専門家支配)であり、民主制でも共和制でもない。
Unelected technocrats are now the nation's chief executives | Mises Institute [LINK]

テクノクラート(技術者)は、ビジネスを運営するのに適した特定の知識を持っているかもしれないが、政府の仕事では常に「不適切な」人物となる。そうした専門家を活かす唯一の方法は、市場で他の人と競争し、利用可能な資源を利用し、要求する人にサービスを提供することだ。
The technocratic fallacy: we just need "the right people" in government | Mises Institute [LINK]