2023-06-14

帝国主義リバタリアンという矛盾

ランドルフ・ボーン研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年5月31日)

「リバタリアン(自由主義者)の原則や立場に賛成だ。外交政策を除いては」と言われて困ったことが何度もある。その態度はたいてい、冷戦時代やソ連崩壊後の世界情勢に対する米政府の軍国主義的な取り組みを、忠実に支持することを意味する。外交政策を例外とするリバタリアンは、冷戦時代の北大西洋条約機構(NATO)を支持するだけでなく、1990年代後半からの東欧へのNATO拡大を擁護するのが普通である。
タカ派リバタリアンはまた、「テロとの戦い」を声高に支持したが、それはサダム・フセイン打倒のためにイラクへの軍事行動を求めたブッシュ政権の宣伝キャンペーンを含む。当時ケイトー研究所の副所長であり、現在は名ばかりのリバタリアン系シンクタンクであるニスカネン・センターで同様の役職にあるブリンク・リンゼー氏は、タカ派が採用した論理を典型的に示している。リンゼー氏の警告によれば、「全体主義的なイスラム主義の野蛮人こそ、明確な現在の危険である。彼らとの戦いを遂行するには、多くの戦線で前進しなければならない。まず最も明白なのは、テロ組織そのものを追及することだ。大量破壊兵器をテロリストの手に渡さないよう、あらゆる努力を払わなければならない。今、イラク、イラン、北朝鮮のようなならず者国家との対決に注目が集まるのは当然だ。そのような国家は武装解除されなければならない。つべこべ言わずにだ」。米主導のイラク侵攻の3カ月以上前に書いた文章で、リンゼー氏はこう断言した。「アフガニスタンやイラクのように、紛争が避けられない場合、その政策は米国の武力に頼ることになる」

別の記事でリンゼー氏はさらに率直に、イラクに対する武力聖戦を望んでいる。「9・11テロが起こらず、アルカイダという存在がなかったとしても、イラクに対する軍事行動を支持するだろう。結局、1991年の湾岸戦争を支持したのは、サダム・フセイン政権が核の野望を果たす前に打倒するためだった」

さらに最近では、自称リバタリアンの何人かが、ロシアと対立するウクライナを熱心に支持している。〔国際学生団体〕スチューデンツ・フォー・リバティの〔ウェブサイト「自由を学ぶ」で、米リバタリアン党古典的自由派会長の〕ジョナサン・ケーシー氏は、ロシアの行動は全くいわれのないものだというバイデン政権の立場に共鳴した。ケーシー氏が率直に述べるには、「侵略がNATOによって引き起こされたという考えは完全に否定されなければならない」し、それどころか「NATOはロシアにとって想像上の脅威でしかなかった。NATOへの非難は、ロシアの侵略を弁解する都合の良い方法にすぎない」。

ケーシー氏は少なくとも、ウクライナへの米国の軍事介入をストレートに主張することからは距離を置いた。しかし他の「リバタリアン」はもっとずけずけと、ロシアとウクライナの戦争に関し積極策を望んでいる。ケイトー研究所のカルチュラル・スタディーズ研究員であるキャシー・ヤング氏はこの選択肢を熱心に支持し、ロシアを米国にとって危険で手強い敵として悪者扱いするキャンペーンを展開している。ダーラム米特別検察官の待望の報告書で完全に否定された「ロシアゲート」陰謀説を擁護し、ウクライナをロシアに対する将棋の駒として利用する米・NATOの代理戦争を支持することにもためらいはない。軍事援助に関しても、米国は「ウクライナの勝利のために、十分な量を、迅速に提供する必要がある」と主張する。驚くことに同氏は、何千もの核兵器を持ち、ウクライナを重要な安全保障上の関心事と考える国〔=ロシア〕に対し代理戦争を仕掛けることによって米国が被る、様々な危険に気づいていないようだ。

「外交政策を除けば」と但し書きをする自称リバタリアンには、戸惑いと落胆を感じる。それは「ステーキやハンバーガーを食べる以外はベジタリアン」と言うのと同じだ。米国が世界中で秘密任務や明白な軍事介入を果てしなく行い、それでも自由な国に向かって前進できると考えるのは、良くいっておめでたい。世界中で介入を繰り広げる外交政策は、他のすべての意義ある政治的、経済的、社会的価値を台無しにする。

そのような外交政策には、巨大な軍隊と巨額の税金が必要だ。米国は世界帝国を安上がりに運営することはできないからだ。1945年以降、米国がグローバル安全保障の「義務」を担って以来、連邦政府の規模と費用が爆発的に増大したのは偶然ではない。今日、米国の軍事費は2位以下の10カ国を合わせたよりも多い。

介入主義外交政策の弊害は経済面にとどまらない。同盟国や傀儡国のために世界各地で迅速に介入するには、意思決定の一元化が必要である。その結果、危険なほど強大な権力を握る帝国大統領が誕生し、憲法に定める権力分立を崩壊させてしまった。特に議会の戦争権限と、議会が大統領の軍事的冒険主義に対して行使しうる抑制力が衰えた。また中央情報局(CIA)を筆頭に恐るべき監視機構が拡大し、主流の外交政策に異議を唱えるような米国人をスパイし、嫌がらせをするのも、その現れである。

タカ派リバタリアンは目を覚まさなければならない。自由主義を推進しながら、その目的を根本から損ないかねない国際問題への取り組みを支持することはできない。ウクライナに関する政策は、米政府を縮小し、規制を緩和するという目標にどれだけ真摯に取り組んでいるかを示す最新の試金石である。今回もまた、あまりにも多くのリバタリアンが、そのテストにみごとに落第している。

No, It Is Not Possible to be an Imperial Libertarian – The Future of Freedom Foundation [LINK]

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