2021-08-13

完全競争モデルの非現実


新古典派経済学の競争理論は一定の条件を前提とする。すべての市場参加者があらかじめ正しい情報を知っているという条件だ。この条件下で起こる経済活動はまったく型通りである。すなわち利潤の最大化であり、発見、過失、学習の余地はない。(経済学者、ドミニク・アーメンターノ)

完全競争モデルが適切であるのは、あらゆる妥当な情報が与えられ、かつその情報が決して変わらないときだけである。つまり、データと人々の好みが変化しない、止まった世界の中でだけである。(同)

現実の市場環境では時が経つにつれ、知識と人の好みは変わり、その結果、新古典派モデルの適切さははなはだしく弱まる。完全競争による均衡は、変化する世界では効率的ではありえない。新しい製品、新しい工夫、消費者の好みや価格に関する新しい洞察が日々生まれるからだ。(同)

変化する世界ではライバル関係、誤りとその修正、絶え間ない起業家活動が絶えず生じる。しかしそのような永遠の不均衡過程は、完全競争モデルの想定やその静的な世界観とは相容れない。(同)

企業の競争は、一定の静的な状態ではなく、つねに動的な過程だ。そこでは生産者が絶えずせめぎ合い、製品を改善して市場参加者に提供しようとする。完全競争の世界とは違い、競争の過程で利潤のチャンスを発見し、それを利用することで市場の状況を修正していく。(同)

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