2021-03-30

MMTの矛盾②購買力低下のコスト


自国通貨建ての国債は、なぜデフォルトしないのだろうか。中野剛志氏によれば、「自国通貨を発行して返済にあてればいい」からだ。これは正しい。

日本であれば、日本国債は円建てだから、政府(日本銀行)が円を発行し、そのお金を国債の返済にあてればいい。

そうだとすれば、日本国民はまるで打ち出の小槌を手に入れたように、気兼ねなく政府にどんどん国債を発行させ、調達した資金で、公共事業でも社会福祉でも給付金でも使い放題になる。実際、MMTの信奉者はそれを求めている。

しかし、ここで「フリーランチはない」という経済の鉄則を思い出そう。この鉄則の意味は、何事にもコストが伴うということだ。

政府の通貨発行によって、国民にはどのようなコストが発生するだろうか。それは通貨の購買力低下だ。

あなたが一万円持っているとしよう。このお金でスニーカーを二足買えるとすると、一万円の購買力はスニーカー二足分になる。

ここで政府が新たに円を発行し、一万円給付してくれた。手持ちは計二万円になった。しかし他の人たちも同じように手持ちが二倍になったので、払えるお金が増え、スニーカーが二倍に値上がりした。その結果、一万円の購買力は半分のスニーカー一足分になってしまった。

この単純な例では、通貨の購買力低下のデメリットを実感できないかもしれない。購買力が半分になっても、手持ちのお金が二倍になり、購買力の目減りを埋めてくれるからだ。けれども、現実の世界ではそうはいかない。(この項つづく)

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