2024-02-14

NATOはいらない

日本経済新聞は2月13日の社説で「トランプ前米大統領のNATO発言を憂う」と題し、北大西洋条約機構(NATO)に関するトランプ前米大統領の発言を批判した。「NATOの信頼性を傷つけ、ロシアを利する言辞だ。決して看過できない」と大変な剣幕だ。しかしトランプ氏の発言は、的外れだとは思えない。
トランプ氏が支持者集会で語ったところによれば、大統領在任中に出席したNATO会合で、ある欧州の首脳から、国防費の負担目標を達成していなくてもその国がロシアから攻撃されたら米国が守るかどうかを問われ、「守らない」と返答したという。

背景にあるのは、NATOの国防費分担問題だ。すべてのNATO加盟国は国内総生産(GDP)の2%を国防費に充てるよう求められているが、日経も触れているとおり、31の加盟国で実現したのは米英など推計11カ国にとどまり、大国であるドイツやフランスは未達だ。

北大西洋条約第5条は、いずれかの加盟国への攻撃にその他の加盟国が集団的自衛権を行使して反撃する集団防衛を定める。「トランプ氏の発言はこれをないがしろにするものだ」と日経は非難する。けれども、いくら条約で決まっていても、義務を果たさない国を守れといわれたら、米国の納税者の多くが納得するまい。大統領返り咲きを狙って選挙運動中のトランプ氏の発言は、納税者のまっとうな不満や疑念を意識したものだろう。

そもそも、日経など大手メディアが決して語らないことだが、NATOという軍事同盟は本当に必要なのか。冷戦時代にソ連に対する防衛を理由に結成されたのだから、本来なら冷戦終結とともに解散するべきだった。しかし米欧の軍産複合体の利権と結びついたNATOはその道を選ばず、人権や対テロ戦争を旗印に掲げ、荒っぽい「世界の警察官」として振る舞い始めた。ユーゴ空爆、アフガン攻撃、リビア空爆などだ。いずれも多数の市民の命を奪い国土を荒廃させたうえ、混乱だけを残す大失敗に終わった。

日経は「ロシアのウクライナ侵攻でNATOの重要性は増した」という。しかしロシアがウクライナに攻め込んだのも、元はといえばNATOがロシアとの約束を無視して東方拡大を進め、ついにウクライナまで加盟させようとしたのが原因だ。

そのNATOが、今度はインド太平洋地域進出を狙っている。過去の「実績」から、ろくなことにならないのは明らかだ。日経は「中国は同盟国を軽んじるトランプ氏の発言を注視しているに違いない」と中国の脅威をあおるが、少なくとも中国はNATOのような害悪を世界に及ぼしたことはない。トランプ氏はNATOそのものを否定まではしていないが、NATOはいらない。

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