2021-05-05

進歩の英雄たち③リチャード・コブデン


自由貿易論者で反戦活動家でもあったリチャード・コブデンは1804年、英サセックスで貧しい農家の息子として生まれた。極貧の中で育ち、正式な教育はほとんど受けなかった。

1828年、コブデンは他の二人の若者と一緒にロンドンでキャラコ染の販売会社を始めた。事業はすぐに成功し、数年のうちにコブデンはマンチェスターで豊かな生活を送るようになる。

1833年、金持ちになったコブデンは世界旅行を始め、欧州の多くの国や米国、中東を訪ねる。1835年、旅上で執筆した「イングランド、アイルランド、アメリカ」という小冊子は反響を呼んだ。コブデンはこの小冊子で、自由貿易、平和、非介入主義に基づく新たな外交政策の考えを支持した。

コブデンは1839年、英国に戻り、食料と穀物に対する関税の撤廃を支持する。関税によって食料・穀物の値段は人為的につり上げられ、国内の農産物生産者を潤していた。コブデンは、これらの「穀物法」は英国民の食料価格を押し上げ、農業以外の産業の妨げになっていると主張した。

1841年、コブデンは庶民院(下院)の国会議員に当選する。コブデンと彼が率いる反穀物法同盟に対する国民の支持は広がり、1846年、ついに穀物法は廃止される。

1859年、コブデンはフランスの皇帝ナポレオン三世に謁見し、自由貿易の利益を論じた。一年後、同皇帝を説き伏せ、世界初の自由貿易協定である英仏通商条約の締結に成功する。この条約で両国の航海と通商の自由を定め、それまで高関税だった商品の関税をお互いに引き下げた。

英仏通商条約と穀物法廃止によって、大英帝国は自由貿易に舵を切る。それによって飢餓を和らげ、多数の人々の暮らしを楽にした。コブデンの功績である。

コブデンは自由貿易が世界平和をつくるという信念をこう語っている。「夢かもしれませんが、遠い未来、自由貿易の力は世界を変え、政府の仕組みは今とまったく違うものになっているかもしれません。強大な帝国も大規模な軍隊もいらなくなるでしょう」(この項つづく)

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