2020-12-28

グリーン戦略と灰色の未来


政府が2050年の温暖化ガス排出ゼロに向けた実行計画「グリーン成長戦略」をまとめた。菅義偉首相は記者会見で「成長の制約ではない。経済と環境の好循環を生み出す」と語ったという。もしその「好循環」とやらが実現するのなら、慶賀の至りだ。

けれども、とてもそうは思えない。

そもそも前提となる「温暖化二酸化炭素(CO2)犯人説」が正しいかどうかの検証が必要だが、今それをやる余裕はないので、かりに正しいとしよう。それでも、政府の計画には問題がある。

今回の計画の目玉の一つは、洋上風力発電だ。報道によると、今はほぼ手つかずだが、2040年までに一気に3000万~4500万キロワットを目指すという。漁業者や住民らとの調整も必要だが、最大の課題はコストだ。

政府の計画では、2030~35年に1キロワット時あたり8~9円と国際平均並みを目指す。海外では風力発電のコストは下がり続けているという話を聞く。ところが実態は違うらしい。キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹によると、欧州では実際には風力発電のコストは上昇しているという。

とくに洋上風力は陸上風力に比べて故障しやすく、信頼性が著しく低い。最近になるほど海岸から遠く、深い立地場所を余儀なくされ、コストが上昇している。2030年までに大量の洋上風力を新規に建設すれば、建設ラッシュで事業費用も急騰するだろうと杉山氏は記事で述べる。

今回の戦略で「キーテクノロジー」と位置づける水素も、コスト引き下げが課題だ。2050年には化石燃料に対して十分な競争力を持つ水準にするという。政府(経済産業省)の発表資料を見ると、水素産業の工程表に「導入支援」の文字がいくつも躍る。「支援」とは税金を投じるという意味だ。コスト引き下げのために一体いくらコストをかけるつもりだろう。

政府はコロナと戦うためと言って国民に自粛を迫り、失業や収入減を招いている。温暖化との戦いも国民にコストを強いることで、灰色の未来をもたらしかねない。

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