2023-12-23

ガザにおける死と破壊

シカゴ大学教授、ジョン・ミアシャイマー
(2023年12月13日)

パレスチナ自治区ガザで起きていることについて私が何を言っても、イスラエルや米国の紛争政策に影響を与えるとは思わない。しかし、歴史家がこの道徳的災難を振り返ったときに、一部の米国人が歴史の正しい側にいたことがわかるよう、記録しておきたい。
イスラエルがガザでパレスチナ市民に行なっていることは、バイデン政権の支持のもとで行なわれているが、人道に対する犯罪であり、軍事的な目的には何の意味もない。イスラエル・ロビーの重要な組織であるJストリートが言うように、「展開する人道災害と民間人の死傷者の範囲は、ほとんど計り知れない」。

詳しく説明しよう。

第1に、イスラエルは意図的に膨大な数の民間人を虐殺し、そのおよそ70%は子供と女性である。イスラエルが民間人の犠牲を最小限に抑えるために多大な努力を払っているという主張は、イスラエル高官の発言によって否定されている。たとえば、イスラエル国防軍の報道官は2023年10月10日、「正確さではなく被害を重視している」と述べた。同日、ガラント国防相はこう発表した。「私はすべての歯止めを外した。我々は戦う相手全員を殺す。あらゆる手段を用いる」

さらに、イスラエルが民間人を無差別に殺害していることは、空爆作戦の結果から明らかだ。イスラエル国内の出版社に掲載された、イスラエル国防軍の空爆作戦に関する2つの詳細な研究は、イスラエルがいかに大量の民間人を殺害しているかを詳細に説明している。この2つの論文のタイトルは引用する価値がある。

「『大量暗殺工場』――イスラエルの計算されたガザ爆撃の内幕」

「イスラエル軍はガザで自制心を捨て、データは前例のない殺戮を示す」

同様に、ニューヨーク・タイムズ紙は2023年11月下旬、「ガザ市民、イスラエルの弾幕の下、歴史的なペースで殺される」と題する記事を掲載した。したがって、グテレス国連事務総長が、2017年1月の就任以来、「いかなる紛争においても類を見ない、前例のない民間人の殺害を目の当たりにしている」と述べたことは、驚くにはあたらない。

第2に、イスラエルは、ガザに持ち込める食料、燃料、調理用ガス、医薬品、水の量を大幅に制限することで、絶望的な状況にあるパレスチナ住民を意図的に飢えさせている。さらに、現在約5万人の負傷した市民を含む住民にとって、医療を受けることは極めて困難である。イスラエルは、病院が機能するために必要なガザへの燃料供給を大幅に制限しているだけでなく、病院、救急車、救護所を標的にしている。

10月9日のガラント国防相のコメントは、イスラエルの政策をよく表している。「私はガザ地区の完全包囲を命じた。電気も食料も燃料もなく、すべてが閉鎖される。我々は人間動物と戦っているのだ」。イスラエルは、ガザへの最小限の物資の供給を許可せざるをえないが、その量はあまりにも少なく、国連高官の報告によれば、「ガザの人口の半分が飢えている」という。さらにこの高官は「ある地域では10世帯のうち9世帯が、一昼夜まったく食べ物なしで過ごしている」と報告している。

第3に、イスラエルの指導者たちは、パレスチナ人について、またガザで何をしたいのかについて、驚くべき言葉で語っている。特に、これらの指導者の何人かが、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の恐怖についても絶え間なく語っていることを考えれば、なおさらである。実際、イスラエル出身の著名なホロコースト研究者であるオマール・バートフ氏は、指導者らの表現によって、イスラエルには「大量殺戮の意図」があると結論付けている。ホロコーストやジェノサイド(民族大量虐殺)研究の他の学者たちも同様の警告を発している。

より具体的に言えば、イスラエルの指導者たちがパレスチナ人を「人間動物」「人間の獣」「恐ろしい非人間的な動物」と呼ぶのは日常茶飯事である。そして、イスラエルのヘルツォグ大統領が明言しているように、これら指導者が指しているのはイスラム組織ハマスだけでなく、すべてのパレスチナ人だ。同大統領の言葉を借りれば、「責任があるのは国全体である」ということだ。驚くことではないが、ニューヨーク・タイムズ紙が報じているように、ガザを「平らにする」「消し去る」「破壊する」よう求めるのは、通常のイスラエル人の言説の一部なのだ。ある国防軍退役将兵は、「ガザは人間が存在できない場所になる」と宣言し、「ガザ地区の南部で深刻な伝染病が発生すれば、勝利が近づく」とも主張している。さらに進んで、イスラエル政府のある大臣は、ガザに核兵器を投下することを示唆した。これらの発言は、孤立した過激派によるものではなく、イスラエル政府の幹部によるものだ。

もちろん、ガザ(とヨルダン川西岸)を民族浄化し、事実上、(イスラエル建国で多数のパレスチナ人が難民になった)「ナクバ(大惨事)」を再びもたらすという話も多い。イスラエルの農相の言葉を借りれば、「我々は今、ガザのナクバを起こそうとしている」のだ。おそらくイスラエル社会が沈んだ深淵を示す最も衝撃的な証拠は、イスラエルのガザ破壊を祝う血も凍るような歌を歌う幼い子どもたちのビデオだろう。「1年以内に我々は皆を全滅させ、そして畑を耕すために戻ってくる」

第4に、イスラエルは膨大な数のパレスチナ人を殺傷し、飢えさせるだけでなく、モスク、学校、遺跡、図書館、主要な政府機関、病院などの重要なインフラだけでなく、彼らの家も組織的に破壊している。2023年12月1日現在、イスラエル国防軍は、瓦礫と化した地区全体を含め、ほぼ10万棟の建物を損壊または破壊している。その結果、ガザに住む230万人のパレスチナ人のうち、実に90%が家を追われた。さらにイスラエルは、ガザの文化遺産を破壊するための努力を惜しまない。NPRの報道によれば、「100以上のガザの文化遺産が、イスラエルの攻撃によって損傷または破壊されている」。

第5に、イスラエルはパレスチナ人を恐怖に陥れ、殺害しているだけでなく、日常的な捜索でイスラエル国防軍に検挙された多くのパレスチナ人を公然と辱める。イスラエル兵は彼らを下着まで剥ぎ取り、目隠しをさせ、近隣の公共の場で見世物にする(道の真ん中に大勢で座らせたり、通りをパレードさせたりする)。その後、トラックで収容所に連行される。ほとんどの場合、拘束された者はハマスの戦闘員ではないため釈放される。

第6に、イスラエルは虐殺を行っているが、バイデン米政権の支援なしにはできなかった。米国は、ガザでの即時停戦を要求する最近の国連安保理決議に反対票を投じた唯一の国であるだけでなく、この大虐殺に必要な武器をイスラエルに提供してきた。イスラエルのある将軍(イツハク・ブリック氏)が最近明らかにしたようにだ。「ミサイルも、弾薬も、精密誘導爆弾も、飛行機も爆弾も、すべて米国からのものだ。米国なしでは戦えないことは誰もが理解している。それだけだ」。驚くべきことに、バイデン政権は、武器輸出管理法の通常の手続きをすっ飛ばして、イスラエルに追加の弾薬を急いで送ろうとしている。

第7に、現在はガザに焦点が当てられているが、ヨルダン川西岸で同時に起こっていることを見逃してはならない。イスラエル人入植者たちは、イスラエル国防軍と密接に協力しながら、罪のないパレスチナ人を殺し、その土地を盗み続けている。ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス誌に掲載された、こうした恐怖を描写した優れた記事の中で、デビッド・シュルマン氏はある入植者と交わした会話について述べている。「私たちがこの人たちにしていることは、実は非人間的なことなのです」とその入植者は率直にそう言った。「しかし、よく考えてみれば、神がこの土地をユダヤ人にだけ約束したのだから、必然的にそうなるのだ」。ガザへの攻撃とともに、イスラエル政府はヨルダン川西岸での恣意的な逮捕の数を著しく増やしている。アムネスティ・インターナショナルによれば、これらの囚人たちが拷問を受け、劣悪な扱いを受けている証拠がかなりあるという。

パレスチナ人にとってのこの大惨事が繰り広げられるのを見ながら、私はイスラエルの指導者たち、彼らを擁護する米国人たち、そしてバイデン政権にひとつの単純な質問を投げかけたい。あなたたちには良識がないのか。

Death and Destruction in Gaza - Antiwar.com [LINK]

【訳者コメント】国際関係論で現実主義(リアリズム)を代表する論者の一人であるミアシャイマー教授は、ウクライナ戦争について西側による北大西洋条約機構(NATO)拡大の責任を早くから指摘し、「ウクライナは善、ロシアは悪」の単純な図式を批判してきたことで知られる。この記事でもガザ紛争について、大手メディアでは及び腰でしか語られないイスラエルと米国側の非道と責任を的確に指弾している。

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