2023-05-10

NATO、次の標的は中国

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年5月8日)

冷戦後の北大西洋条約機構(NATO)の歴史は、「売り時」を過ぎた組織の歴史である。ワルシャワ条約終了後、使命を渇望したNATOは1990年代後半、クリントン米政権下で「人権」の軍事化の後ろ盾となることを決定した。
NATOの40年の歴史を正当化するために使われた「世界共産主義の脅威」はなくなり、NATOは自らを武装した大西洋主義のスーパーヒーロー集団として再構築することになった。米国のネオコン(新保守主義者)が定義する「不正義」があれば、NATOは銃と爆弾を持って準備万端となった。

米国の軍産複合体にとって、これほどうれしいことはない。連中が惜しみなく資金を提供するシンクタンクも、資金パイプラインを維持するための確実な勝者についにたどり着いたのである。それは安全保障のためではなく、常にカネのためだった。

人権のスーパーヒーローとしてのNATOの試運転は、1999年のユーゴスラビアだった。NATOと、ワシントンや 欧州の多くの首都にいるネオコンの黒幕以外のすべての人にとって、これは恐ろしい、不当な大惨事だった。NATOを脅かすことのない国を78日間にわたって空爆した結果、何百人もの市民が死亡し、インフラは破壊され、ウランチップ入り弾薬の遺産が今後何世代にもわたって景観を汚染することになった。

先週、伝説のテニスプレーヤー、ノバク・ジョコビッチ氏が、NATOの爆弾が落ちてきて破壊された祖父の家から夜中に逃げ出したときの気持ちを語っていた。なんという恐怖だろう。

それからNATOはリビアのカダフィ政権の転覆を支援した。リビアを爆撃し、国民を殺し、政府を転覆させれば、リビアの人権問題はすべて解決するというネオコンの嘘を、企業マスコミは鵜呑みにした。予想どおり、NATOの爆撃はリビアの問題を解決せず、すべてを悪化させた。混乱、内戦、テロ、奴隷市場、深刻な貧困……。ヒラリー・クリントン氏(元国務長官)、バラク・オバマ氏(元大統領)やネオコンが最近リビアについて語りたがらないのも不思議ではない。

ここでは紹介しきれないほどの失敗の連続の後、米国が支配するNATOは2014年、全力を傾けてロシアそのものを「政権交代」の対象とすると決定した。最初のステップは民主的に選ばれたウクライナ政府の転覆であり、ビクトリア・ヌーランド氏(国務次官補、当時)とその他ネオコンがこれを担当した。次に、ロシアと戦うことを意図して、ウクライナのクーデター政権にNATOが8年間にわたり大規模な軍事支援を行った。最後に2022年、NATO軍が国境を取り囲むのを防ぐために欧州安全保障協定について交渉したいというロシアの要請を拒否した。

主流メディアや米政府のプロパガンダにもかかわらず、NATOはウクライナでリビアとほぼ同程度の成功しか収めていない。数千億ドルが流出し、セイモア・ハーシュ氏らジャーナリストによって大規模な汚職が報じられている。

今回の唯一の違いは、NATOの標的であるロシアが核兵器を持ち、この代理戦争を自国の存在にかかわるものとして捉えていることだ。

そのため今度は、失敗の遺産にもかかわらず、NATOは中国と戦争を始めることにした。おそらくウクライナでの惨事から注意をそらすためだろう。先週、NATOは日本に初のアジア事務所を開設すると発表した。次は台湾のNATO加盟だろうか。台湾はNATOの新たな「ウクライナ」となるのだろうか。NATOの戦争への飽くなき欲望をかき立てるという名目で、自らを中国の犠牲にすることを望んでいるのだろうか。

2024年に米国が、NATOの死を招く世界ツアーに、終止符を打つ大統領を選ぶよう願うばかりである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : NATO ‘s Great New Idea: ‘Let’s Start A War With China!’ [LINK]

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