2022-10-19

経済を破壊し、ノーベル賞をもらう

元米連邦下院議員、ロン・ポール
(2022年10月17日)

バーナンキ元米連邦準備理事会(FRB)議長は、銀行の破綻に政府がどう対応すべきかについての著作で、2022年ノーベル経済学賞を受賞した。銀行が破綻した際の政府の対応策に関する助言でバーナンキ氏を称えるのは、放火犯に火災安全賞を与えるようなものだ。

バーナンキ氏が議長になったのは、前任のアラン・グリーンスパン氏がハイテクバブル崩壊と9・11テロをきっかけに作り上げた、住宅バブルが破裂したときだった。住宅市場が崩壊すると、バーナンキ氏は議会やブッシュ政権と協力し、大手銀行やウォール街の企業を救済した。

メルトダウン(バブル崩壊)後の数年間、バーナンキ氏率いるFRBは、経済を「刺激」しようとした。大規模な資金創出、ゼロに近い金利、国債など金融資産の購入で市場に流動性を注入する「量的緩和」によってである。

メルトダウン後のFRBの政策は、せいぜい低調な成長をもたらしただけで、次の不況への土台を築くことになった。次の暴落が間近に迫っていることを示す兆候は2019年9月に現れた。FRBは銀行同士がオーバーナイト(翌日物)融資を行う際に利用するレポ市場に一日数十億ドルを投入し始め、その市場の金利がFRBの目標金利を上回らないようにしたのである。その結果、FRBは金利をゼロにし、量的緩和を大幅に拡大させる口実を得た。

FRBの行動は、米経済を苦しめる物価上昇の主犯格である。FRBは金利を上げることで物価上昇に対応しているが、金利は自由市場の場合よりもはるかに低いままである。この比較的小さな利上げでさえ、脆弱な経済を不況に追い込むのに役立ったという事実は、負債に基づく経済体系の不安定さを示している。

バーナンキ氏と議会はメルトダウンへの対応として、メルトダウンに続く不況を進行させるべきだった。FRB が通貨供給量を増やし、金利を引き下げたときに生じる市場の歪みに経済が適応するには、この方法しかない。

この「何もせず、ただ立っている」というやり方が米国民に長期の経済的苦痛を与えるのではないかと心配する人は、1920年の経済恐慌を考えてみるとよいだろう。この恐慌では、FRBは経済を「刺激」しようとすることを控え、議会は実際に支出を削減した。その結果、不況はすぐに収束した。悲しいかな、1920年の教訓は、主流の経済史家にはほとんど無視されている。

金融サービス委員会の公聴会で私の質問に対し、当時のバーナンキFRB議長は、金(きん)を貨幣とは考えていないと認めた。もちろん、金や貴金属が貨幣であるのは、個人が通貨を選択する自由があったときに、それを選択してきたからである。その理由の一つは、貴金属が安定した計算単位に適しているからだ。これに対し、政府の支配者たちは不換紙幣を好んできた。中央銀行によってその価値がつねに操作されるため、誠実な計算単位として機能することは決してないからだ。これは、権力欲の強い政治家の意向で行われることが多い。

不換紙幣制度の下では、物やサービスの真の価値を知ることができない。だから繁栄をもたらす健全な経済をつくるには、FRBを監査し、廃止しなければならない。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Destroy the Economy, Win a Nobel Prize [LINK]

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