2022-06-01

国家宗教と化し、破綻しかける英国営医療

国民医療制度(NHS)は、官僚主義的で非効率な国家独占となった

英コンテンツクリエーター、ジェス・ギル
(2022年5月30日)

国民医療制度(NHS)は、英国で身近な国家宗教として知られる。英国の医療制度は「我々の」NHSであり、英国の美点の一つと言われる。しかし実際には、国営化された医療が推し進める集団主義は、個人の自律性を否定し、医療を官僚的で非効率な国家独占の手に委ねることになる。

英国民はNHSをほとんど神様のように崇めるため、批判は嫌われ、NHSの失敗はだいたい大目に見てもらえる。よくある言いわけは、資金不足だ。NHSの支出は特に新型コロナの流行中、増加し続けたので、これは真実ではない。

個人は、政府が決めた金額をいくらだろうと支払わなければならない。経済の停滞で日々の食事に苦労する健康な家庭が、国民保健をほとんど使っていないにもかかわらず、その費用を払わなければならない。家計の中で何を優先させるかは、個人が管理できるはずだ。

他のサービスの方が必要なのに、使わないサービスに高額な費用を払って加入する意味はない。自由な市場経済の下では、個人の家計が厳しい場合、より安い医療保険を選択できるだろう。国営医療では、患者は与えられたものを受け取るだけで、選択の余地はあまりない。

英国ではコロナ流行の際、2万5000人の患者が検査や隔離の手配をされないまま病院からケアハウスに移された。これは2020年3月から6月にかけ、ケアホームで2万人の人々が陽性と判定され死亡することにつながった。NHSのコロナ対応で、ケアホームの患者は明らかに後回しにされていた。

より質の高い医療を受けたい人は、民間でない限り、選択肢がない。高齢者がより良い医療を望んでも、国が決めたものを受ける以外には選べない。自由な市場経済なら、高齢者は自分の医療についてより多くの選択肢を持てるだろう。

個人が民間医療を受けたい場合、国民保険料を上乗せして支払わなければならない。つまり、労働者階級にとって民間医療は現実に利用しやすいものではなく、英国の多くの人々は非効率で居心地の悪い公的医療に依存することになる。英国の労働者階級にとって、NHSは安全網ではなく、抜け出せない罠だ。

緊急病院(A&E)でもかかりつけ医(GP)の予約でも待ち時間が増える中、「無料」の医療制度があっても、それを必要とする人が延々と待ち続けて利用できないのでは意味がない。国営医療は、「無料」医療のために選択肢を犠牲にしている。

英国は自由な市場経済を通じた手頃な価格の医療に焦点を当てるべきである。そうすれば、患者に真の選択肢を提供し、医療制度をより快適で利用しやすく、効率的なものにできるはずだ。

(次より抄訳)
The UK’s Single-Payer Healthcare System Has Become a State Religion—and It’s Failing - Foundation for Economic Education [LINK]

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