2021-01-17

ヴォーン・ウィリアムズ:われらに平和を与えたまえ

「われらに平和を与えたまえ(ドナ・ノビス・パーチェム)」の歌詞には19世紀英国の政治家、ジョン・ブライトの議会演説の一節が使われています。ブライトはリチャード・コブデンとともに「反穀物法同盟」を結成し、自由貿易の拡大に力を注いだことで有名ですが、同時に熱心な反戦活動家でもありました。演説は戦争の惨禍を「死の天使」にたとえ、クリミア戦争への英国の参戦を批判したものです。「死の天使が国中を飛んでいる。その羽ばたきがほとんど聞こえるだろう。古来、死の天使が見逃し、通り過ぎた者は誰もいない」。緊張感あふれる音楽から戦争の恐怖が伝わってきます。ヴォーン・ウィリアムズは、陶工から身を起こした実業家ウェッジウッド、進化論を唱えたダーウィンの子孫であり、その自由主義的な出自から、同じく自由主義者のブライトに注目したのかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿