2018-08-23

お金を貯め込むのはけしからん?

稼いだお金を使わないのはけしからん、という主張をよく目にします。稼ぐばかりで使わないとお金が「回らない」とか、稼いだお金は社会に「還元」しなければならない、といった意見です。

しばらく前のニコニコニュースによれば、ツイッターで、同様の考えを持つあるユーザーのこんな意見が反響を呼んだそうです。「お金を使うと対価を貰えたうえで他者に渡り、その他者がお金を使うと対価を、という無限の連鎖こそが経済効果の正体なのだと、いつになったらこの世界の常識が日本に広まり根付くんだろう」

こうした議論でたいてい目の敵にされるのは、お金を「貯め込む」富裕層や大企業です。上記のツイートに対しても「内部留保ばかり貯め込んで社会に還元しない企業がなくらないと無理」という反応がありました。お金を抱え込んで使わないのなら、政府が課税で取り上げ、他の人たちに配ったほうがいいという声さえあります。

そうした考えは昔からありました。一番有名なのは英経済学者ケインズでしょう。ケインズは貯蓄を良くない行いと非難し、低金利で金利生活者を「安楽死」させ、投資は政府がせよと主張しました。

ケインズは今のマクロ経済学の開祖ですから、その主張は上記のツイートの主がいうように、ある意味で「世界の常識」なのは事実です。しかし、それが正しいかどうかは別問題です。

富裕層はお金をすべてタンスにしまうわけではありません。多くの場合、銀行に預けたり株式・社債の購入に回したりします。これらのお金は直接・間接に企業に渡り、企業の投資に使われます。お金を出した富裕層はリスクを負っているのであり、怠惰に過ごしているわけではありません。

今の日本では、企業はお金を投資にあまり使おうとせず、銀行も企業が借りてくれないのでお金を抱えている現実はあります。富裕層のタンス預金も増えています。しかしこれらにも利点はあります。企業や富裕層が物を買わないので物価が上がらず、庶民や貧困層の暮らしを楽にするという効果です。

ケインズの主張に従い、政府が企業や個人が抱えたお金を無理やり取り上げ、公共事業などに使っても、一部の関係業者を一時潤すだけです。

自分のお金は、使おうと使うまいと自由なはずです。金持ちだから、大企業だからというだけでその自由が否定されるのは、おかしなことです。(2017/08/23

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