アメリカでは約4,200万人がフードスタンプを受給し、さらに多くが社会保障・メディケア・メディケイドなどの給付を受けている。重複を除いて計算すると、成人の約1億700万人が何らかの連邦給付を受けており、さらに連邦職員・軍人・郵便局員・連邦補助金関係者・政府契約企業の従業員など約1,000万人超が税金から給与を得ている。合わせて成人の約45%が納税者からの所得移転で生活している計算になる。筆者は、こうした「税金生活者」が投票権を持つことで、財政規律が永遠に失われると主張する。もし給付受給者や政府契約者が投票によって自らの利益を拡大できるなら、それは議員が自社に公金を回すのと同じ利益相反であり、民主主義は機能不全に陥るとされる。ミーゼスの指摘を引用し、政府職員や給付受給者が有権者として多数派になると、政府支出拡大が不可避となり、赤字と債務は制度内部に組み込まれると論じる。結論として、給付受給者や政府依存層が増え続ける限り、アメリカは選挙を通じた財政改革を行うことは不可能であり、破綻か非常手段以外に出口はない、と警告している。
Why Food Stamp Recipients (and Government Contractors) Should not Be Allowed to Vote | Mises Institute [LINK]
連邦政府の部分閉鎖が続けば11月1日からSNAP(フードスタンプ)が停止する恐れがあるが、食品業界と反貧困団体は継続に向けて強力にロビーしている。SNAPは食料に限定した補助であり、受給者は現金と別勘定で使う傾向があるため、食品需要と価格を押し上げ、受給者と生産者・小売に利益を移転し、非受給者と納税者が負担する構図になると実証研究は示す。制度は創設以来、農業価格の下支え=企業補助の性格を帯び、今日も農務省所管で維持されている。近年は清涼飲料などの除外提案に対し、米飲料協会(ABA)や食品小売団体(FMI、NGA)が食品研究行動センター(FRAC)と連携し超党派で反対、対象品目の最大化と事務負担回避を主張する。小規模店はコストを理由に規制に反対するが、SNAP参加は任意である。結果として納税者は補助と値上がりの「二重払い」を強いられる、という批判である。
How Food Industry Lobbyists Keep the Food-Stamp Gravy Train Going | Mises Institute [LINK]
米財務省の最新報告によれば、2025年度のフードスタンプ(SNAP)支出総額は1,060億ドルに達し、前年より60~70億ドル増える見通しである。2008年の520億ドルから実質ベースで倍増しており、受給者1人あたり支給額も30%増の2,393ドルとなった。受給者数は全人口の12%超で、2008年比で47%増。州別ではニューメキシコで5人に1人以上が受給し、ユタは20人に1人未満と格差が大きい。人種・民族別では白人が人口の6割を占める一方、受給者に占める割合は36.5%にとどまり、黒人は人口比の2倍以上を占める。移民世帯では3分の1以上、違法移民世帯では約半数が食料補助を受けている。景気好調とされる時期にも受給率が高止まりする背景には、資格要件の緩和と、金融インフレにより中低所得層の実質生活が停滞している現実がある。
41 Million (One in Eight) US Residents Are on Food Stamps | Mises Institute [LINK]
フードスタンプ(SNAP)は「飢餓対策」を名目とするが、ミーゼスの介入理論が示す通り、国家介入は副作用を生み、さらに新たな介入を招く。補助によって低所得層は本来買わない加工食品や清涼飲料を選択できるようになり、政治家は「健康的食品」に限定しようとする。しかし受給者は自費支出を調整し、規制を形骸化させる。すると政府は購買追跡や食行動管理など、追加介入を正当化する口実を得る。こうして介入は連鎖し、自由市場は社会主義化へと近づく、というのがミーゼスの警告である。
Food Stamps and Mises's Theory of Intervention | Mises Institute [LINK]
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