2024-11-20

トランプ氏はイランと和平を結べるか?

ロン・ポール(元米下院議員)
2024年11月18日

次期米大統領のトランプ氏が選挙後の勝利宣言演説で述べた、最も勇気づけられる、最も期待できる言葉のひとつは、「私は戦争を始めるつもりはない。戦争を終わらせるつもりだ」というものだった。選挙が終われば、選挙公約の寿命は短いものになることが多いことは誰もが理解しているが、トランプ陣営が繰り返し戦争よりも平和を訴えてきたことは、少なくとも、それが米有権者に対する勝利のポイントだとトランプ氏が考えていることを示している。
トランプ氏の次期政権で、特に外交政策の要職にタカ派を指名していることを踏まえると、この平和への呼びかけは行動に移されることになるのだろうか。それはまだわからないが、先週、イランの国連大使と会談させるためにイーロン・マスク氏を派遣したという報道は、事実であれば良い兆候である。イラン側はこのような会談が行われたことを否定しており、また、トランプ次期大統領とプーチン(ロシア)大統領やその他の世界の指導者との会談の噂が飛び交っているため、単なるメディアの作り話である可能性もある。

しかし、かりにトランプ次期大統領がイラン側との会談にマスク氏を派遣したという事実がなかったとしても、そうすることは良い考えである。なぜマスク氏なのか。マスク氏はトランプ次期政権で正式な役割を担うことは期待されていないため、次期大統領の非公式なアドバイザーや友人として見られる可能性がある。さらに、実業家であるイーロン・マスク氏は、政府の外交官とは異なる言語を話す。

なぜイラン人と会うのか。何を話すというのか。取り上げるべき重要なトピックのひとつは、バイデン政権の米連邦捜査局(FBI)が主張している、当時大統領候補であったトランプ氏を暗殺しようとしたというイランの陰謀だろう。ラリー・ジョンソン元米中央情報局(CIA)分析官を含む多くのコメンテーターが主張しているように、FBIの起訴状に記載されているこの陰謀はありそうもない。ディープステート(闇の政府)のタカ派が、トランプ大統領が就任したあかつきにイランとの国交正常化に走らないよう、この疑わしい陰謀をでっち上げた可能性はあるだろうか。FBIはテロ計画をでっち上げた歴史があるだけに、残念ながら、この可能性を否定することはできない。

イランの否定を信用すべきだという意味だろうか。もちろん、そうではない。しかし、議論する価値はある。

トランプ大統領は2期目には、1期目の「最大限の圧力」政策に戻ると見られている。その判断は誤りである。トランプ氏はホワイトハウスに戻っても同じ世界に身を置くわけではない。ウクライナにおける代理戦争は、外交政策の手段としての制裁や圧力の無益さをこれまで以上に明らかにしている。米国の制裁対象国は、米国抜きで貿易や外交を行う独自の道を歩み始めている。

つまり、米国は制裁を次から次へと課すことで、ロシア、中国、イランを孤立させたわけではない。米国が自らを孤立させたのだ。(有力新興国で構成する)BRICSのような組織の出現を見れば、このことは明らかである。

米国が繁栄するためには、外国貿易の拡大が必要だ。(仏経済学者)フレデリック・バスティアは「商品が国境を越えなければ、兵士が越えることになる」と述べたとされる。近年、その状況をすでに十分見てきた。ある人が最近書いたように、もしニクソン氏(元米大統領)だけが(国交正常化のために)中国に行けたのであれば、おそらくトランプ氏だけがイランに行くことができるだろう。イランと和平を結べば、中東全域とそれ以外にも影響を及ぼす成果となるだろう。イスラエルにとっても、イランとの戦争状態を回避することは有益だ。戦争はすべてを破壊するが、平和は築き上げる。新たな取り組みに期待しよう。

(次を全訳)
If Trump Didn’t Send Musk to Talk with the Iranians…He Should! - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【コメント】タカ派のネオコン色を強めるトランプ次期政権だが、これは明るいニュース。米紙ニューヨーク・タイムズによれば、イランの国連大使との面会はイーロン・マスク氏が要請し、両者は米国とイランの緊張緩和についてニューヨークで協議した。会談は「建設的」だったという。リバタリアンのロン・ポール氏も素直に評価している。過度な楽観は禁物だが、トランプ、マスク両氏というビジネスマンの「新たな取り組み」により、和平という「ディール」がうまく成立するよう願おう。

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