2024-11-15

トランプ大統領の2期目、何を意味するか

ダグ・ケーシー(作家・投資家)
2024年11月14日

ドナルド・トランプ氏の(米大統領としての)今後4年間については、前回の任期より優れた判断力を示すよう期待したい。当時はおべっか使いやディープステート一派、政治的ペテン師に取り囲まれていた。しかし今回は楽観的だ。例えば、マイク・ポンペオ氏(元国務長官)、ニッキー・ヘイリー氏(元国連大使)という恐ろしい人物を起用しないと発表した。
さらに、ロバート・ケネディ・ジュニア氏を食品医薬品局(FDA)を監督する地位(厚生長官)に就けると発表した。また、イーロン・マスク氏に連邦支出を2兆ドル削減するよう命じた。さらに、ロン・ポール氏を金融政策に意見を述べる立場に就けることも検討しているようだ。そして、ジョエル・サラティン氏(農家・作家)を農務省の役職に就けるようオファーしたようだ。

トランプ氏は哲学的な中核を持たず、行き当たりばったりで、知識も乏しく、前回は人々に対する判断力がひどく欠けていたが、今回は実際に物事を実現する人々を選ぶという点では、はるかに良い仕事をしていると思う。

トランプ氏は常に「低金利派」であり、「負債王」であると自称してきた。1期目の大統領在任中に大盤振る舞いをして、巨額の赤字を積み上げた。その額はブッシュ(子)、オバマ両大統領よりも相対的にも絶対的にも大きかった。過去4年間のバイデン氏の実績よりもさらに大きなものだ。トランプ氏は経済について真の理解がないので、経済を「支援」するために紙幣の印刷を推奨するだろうと予想している。彼に選択肢があるわけではない。紙幣の印刷を続けなければ、債務バブルは崩壊してしまうのだ。

明るい面に戻ると、トランプ氏は経済の大幅な規制緩和を望んでいる。これは非常に大きなプラスだ。また、減税を望んでいる。すばらしいことだ。しかし悪いニュースは、政府支出を削減しなければ減税などありえないということを理解していないことだ。特に今は、政府支出の3分の1が米連邦準備理事会(FRB)への債券売却によって賄われており、これは事実上の紙幣印刷に他ならない。この傾向はさらに強まるだろう。小売物価は確実に上昇するだろう。しかしすでに高値圏にある株式市場は、資金が流入することでさらに上昇するかもしれない。

イーロン・マスク氏が年間2兆ドルの予算削減を望んでいるのはすばらしいことだ。財政赤字額とほぼ同額だ。 しかし実現の可能性はゼロに近いだろう。社会保障、メディケイド(低所得者向け公的医療制度)、メディケア(高齢者向け公的医療制度)、国債利払い、軍事予算などは神聖不可侵であり、予算の90%以上を占めている。

マイナス面としては、トランプ氏はイスラエルへの揺るぎない支持を表明している。イランとの熱い戦争において米国がイスラエルの代理人となる可能性があり、そうなれば最悪だ。イスラエルは米国の51番目の州ではない。トランプ氏は戦争を回避したいと考えているが、中東版「仁義なき戦い」のような核の泥沼に米国を巻き込む可能性もある。

再び明るい面を挙げるとすれば、トランプ氏はウクライナ戦争を終わらせることができると主張している。ゼレンスキー(ウクライナ大統領)、プーチン(ロシア大統領)両氏と個人的に良好な関係にあると考えているからだ。プーチン氏のことを何と言おうと、ゼレンスキー氏はさらに危険であり、無意味な国境紛争を長引かせるために数十億ドルを米国から略奪した責任がある。唯一の勝者は、ウクライナの官僚と、同様に腐敗した軍事「防衛」企業だ。

トランプ氏が「タフ」なイメージを前面に出したいがために、ロシアを絶望的な状況に追い込もうとしないことを願おう。米国ではプロパガンダに煽られたヒステリー状態が生まれている。米国人はロシアが悪であり、末期の腐敗政権であるゼレンスキー政権は善であると信じている。第1次世界大戦の時と同様に、米国の介入は恐らく破滅的な結果をもたらすだろう。

(次を抄訳)
Trump’s Second Term: What It Means for America and Investors - LewRockwell [LINK]

【コメント】思慮深いリバタリアンはトランプ氏の勝利を歓迎しながらも、手放しでは喜ばず、マイナス面も冷静に分析する。ケーシー氏もその1人。「政府支出を削減しなければ減税などありえない」との指摘に加え、外交面でイスラエル支持が米国を「核の泥沼」に巻き込みかねないとの警告も重要だ。

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