2024-01-11

規制で自滅する日本経済

日本経済新聞は1月8日の社説で「構造的な人手不足に克つ大改革を」と題し、2024年は運輸・建設業などで人手不足が今まで以上に大きな社会課題となるとして、「官民挙げて聖域なき改革に踏み出す」よう求めた。
「官民挙げて」とはメディアでよく目にする景気のいい言葉だが、社会課題を解決するのに必要なのは「民」(民間)の力であって、「官」(政府)は引っ込んでおいてもらいたい。そもそもたいていの社会問題は、政府の規制が原因だからだ。政府がまたぞろしゃしゃり出れば、問題はむしろ悪化する。人手不足も例外ではない。

運輸業界では「2024年問題」が騒がれる。その要因は、今年4月から施行されるトラックドライバーの時間外労働の規制強化だ。時間外労働時間は年間960時間に規制されるほか、国がルールとして定める年間の拘束時間が、3300時間に見直される。これまでは時間外労働に関する規制はなく、年間の拘束時間についても3516時間となっていた。

政府は今回の規制強化をトラックドライバーの労働環境改善につなげるというが、他のあらゆる規制同様、むしろ逆効果だ。時間外労働が減れば当然、収入は減る。すでにドライバーの間で、働く時間が短くなれば、その分給与が減ってしまうので、そちらのほうが困るという声が上がっている。仕事が楽になっても給与が減ってしまっては、本末転倒だ。収入減を補うために無理なアルバイトなどを強いられれば、結局、体は楽にならない。

NHKが取材した埼玉県の運送会社では、長距離輸送の仕事を減らさざるをえないという。規制が強化されると交代のドライバーが同乗する必要があるが、人手不足で新たな雇用は難しい。このため長距離輸送の受注を減らし、代わって短中距離輸送を増やす方針だが、単価の高い長距離輸送を減らせば、売り上げに響きかねない。会社の経営が苦しくなれば、ドライバーの待遇や雇用にも当然響く。

日経は、「長時間働いて稼ぐ」という意識を変えるには、「歩合給から固定給への転換が重要」と説くけれども、固定給は会社にとってはコスト上昇になりやすく、ドライバーのリストラにつながりかねない。

本来なら時間外労働への規制強化そのものを撤回すべきだが、それが無理なら、日経が述べるように、自動運転、ドローンでの配達、ロボットによる積み荷、ライドシェアの解禁など、さまざまな創意工夫を可能にする規制緩和を急ぐべきだ。だが政府の腰は重い。このままでは、日本経済は規制にがんじがらめとなり、自滅するしかない。

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