2023-12-24

イスラエル・パレスチナ和平の枠組み

コロンビア大学教授、ジェフリー・サックス
(2023年11月30日)

今急務なのは、パレスチナ自治区ガザの人質を解放し、イスラエルとパレスチナの流血を止め、イスラエルとパレスチナの人々のために永続的な安全保障を確立し、パレスチナの人々が望む主権国家を実現し、東地中海・中東(EMME)地域に真の持続可能な発展の流れを確立することだ。これはパレスチナを国連加盟国として即座に迎え入れることで、動き出すことができる。
パレスチナはすでに主権国家として広く認められており、米国や欧州連合(EU)の大半は承認していない(スウェーデンは2014年に承認し、スペインは最近承認の可能性を示唆した)ものの、国連加盟193カ国のうち139カ国が承認している(2023年6月現在)。しかし、パレスチナの外交や運命を左右する国際問題への参加にとって極めて重要なのは、まだ国連に加盟していないことである。2011年9月23日、パレスチナ自治政府は、1967年以前の国境線に基づく二国家解決を求める数十年にわたる国連安全保障理事会決議に基づき、国連加盟を申請した。この書簡は、安保理の新加盟国承認委員会に正式に送られた。

パレスチナのアッバス大統領は、申請書の中で次のように述べている。

「パレスチナ人民の自決権と独立、そしてイスラエルとパレスチナの紛争に対する二国家による解決というビジョンは、国連総会で決議された数多くの決議で確固たるものとなっている。特に、総会決議181(II)(1947年)、同3236(XXIX)(1974年)、同2649(XXV)(1970年)、同2672(XXV)(1970年)、同65/16(2010年)、同65/202(2010年)、国連安全保理決議242(1967年)、同338(1973年)、同1397(2002年)、2004年7月9日の国際司法裁判所勧告的意見(被占領パレスチナ地域における壁建設の法的帰結に関する)である。さらに、国際社会の大多数は、1967年6月4日の国境線に基づき、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家を二国間承認することにより、国家への帰属を含む、民族としての不可侵の権利を支持しており、そのような承認の数は日を追うごとに増え続けている」

国連安全保理に提出された後、米国は加盟国委員会の舞台裏で、委員会、安保理自体、国連総会全体において圧倒的な支持があったにもかかわらず、この申請を阻止するために動いた。安保理は米国の反対によりパレスチナの加盟申請について採決すら行わず、パレスチナは当時、オブザーバー(投票権を持たない)の地位で決着した。安保理は十数年後の今、パレスチナの申請を承認すべきだが、今回は、米国が表向きにはずっと主張してきたが、実際には支持しなかったこと、つまりパレスチナの完全な国家資格と国連加盟を公的に認めるべきだ。

ネタニヤフ・イスラエル首相の戦争は、明らかに公正な平和の追求ではない。同首相とその内閣は、二国家解決策を明確に否定し、ガザとヨルダン川西岸地区のパレスチナ人を制圧することを目的とし、占領下のパレスチナにおけるイスラエル入植地の拡大と、東エルサレムに対するイスラエルの恒久的な主権を提案している。その政策は、アパルトヘイト(人種隔離)と民族浄化に等しい。まさにこうした不公正のために、正当な政治解決策が確立されない限り、戦争は(親イラン民兵組織)ヒズボラやイランなども巻き込んだ地域戦争へと激化する可能性が高い。

(イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まった)10月7日以前、ネタニヤフ首相はパレスチナ国家の必要性にも言及することなく、アラブ諸国との関係を「正常化」しようとしたが、このひねくれたやり方は失敗する運命にあった。真の永続的な和平は、パレスチナの人々の政治的権利とともにしか達成できない。

エジプトの偉大な指導者サダト大統領やイスラエルの勇敢なラビン首相(ともに暗殺)など、平和のための真の指導者たちは繰り返し殉教してきた。また、イスラエル人とパレスチナ人の和平を求めて、名も知れない無数のパレスチナ人とイスラエル人が、しばしば自分たちの集団内の過激派によるテロの犠牲となり、命を落としている。

このような深刻な障害があるにもかかわらず、国連を通じた和平には明確な道筋がある。というのも、アラブ・イスラム諸国は以前から、パレスチナ自治政府の求める二国家解決策に基づくイスラエルとの和平を求めてきたからだ。11月11日にリヤドで開催された臨時アラブ・イスラム合同首脳会議において、アラブ・イスラム諸国の指導者たちは、二国家解決を支持する次のような宣言を行った。

「できるだけ早く、国際法、正当な国際決議、平和のための土地の原則に基づいて、信頼できる和平プロセスを開始すべきである。これは特定の時間枠内で、国際的な保証を伴う二国家解決策の実施に基づくべきであり、東エルサレム、占領下のシリア領ゴラン、シェバア農場、カフルヒルズ、ショバ、レバノンの町アル・マリ近郊を含むパレスチナ領土のイスラエルによる占領の終結につながる」(アラビア語原文の英訳)

重要なのは、アラブとイスラムの指導者たちが、すでに21年前に確認した2002年のアラブ和平イニシアチブに特別な注意を喚起したことである。

「中東における公正かつ包括的な和平は、アラブ諸国の戦略的選択肢であり、国際的な合法性に従って達成されるべきであり、イスラエル政府側にも同等の決意が必要である。…(そして)さらにイスラエルに対し、(特に)1967年6月4日以来ヨルダン川西岸とガザ地区で占領されているパレスチナ領土に、東エルサレムを首都とし、主権を有する独立したパレスチナ国家を樹立することを受け入れることを確認するよう求める」

アラブ諸国はすでに2002年に、このような結果がアラブ諸国とイスラエルの和平につながると明言している。具体的には、アラブ諸国は「アラブ・イスラエル紛争が終結したとみなし、イスラエルと和平協定を結び、この地域のすべての国家に安全保障を提供する」と述べている。残念なことに、ネタニヤフ首相は2009年以降のほとんどの期間、政権を握っており、できる限りのことをしてアラブ和平構想を無視し、イスラエル国民の目に触れないようにしてきた。

すべての常任理事国(P5)を含む国連安保理は、パレスチナをただちに国連に加盟させ、パレスチナが歓迎する平和維持要員を含め、二国家解決策の実施に向けた運営・財政支援を提供するよう約束すべきである。特に安保理決議は、国連と近隣諸国がイスラエルと国連の新加盟国パレスチナの双方を支援し、相互の安全保障を確立すること、そして民兵部隊の非武装化を約束すべきである。

安保理決議には、以下の点を盛り込むことが有益であろう。

  • パレスチナを194番目の国連加盟国としてただちに樹立。国境は1967年6月4日時点とし、首都を東エルサレムに置き、イスラム聖地を管理
  • すべての人質の即時解放、すべての当事者による恒久的な停戦、国連の監視下で人道援助を運搬
  • パレスチナに平和維持軍を派遣。大部分はアラブ諸国が占め、安保理の委任を受けて活動
  • 和平の一環として、平和維持軍によるハマスとその他の民兵の即時武装解除と動員解除
  • パレスチナ国家の国連加盟に伴い、イスラエルとすべてのアラブ連盟諸国との間に外交関係を樹立
  • 国連平和開発基金の新設。私が最近安保理で提唱したように、その目的はパレスチナ、イスラエル、シリア、レバノン、ヨルダン、エジプト、その他近隣諸国を含む東地中海地域における長期的で持続可能な開発計画の資金調達などの支援である

もちろん、相互に合意した国境線の調整など、交渉すべきことは多く残るだろうが、こうした交渉は平和のうちに、主権を有する2つの国連加盟国の間で、安保理、国連総会、そしてきわめて重要なこととして、国連憲章と世界人権宣言の支持のもとに行われることになる。

A Framework for Peace in Israel and Palestine - Antiwar.com [LINK]

【訳者コメント】サックス教授はリバタリアン(自由放任主義者)ではなく、リベラル(左派)の経済学者だ。その思想の一端は、記事終盤の提言の一つとして、国連平和開発基金の新設、つまり税金による経済支援を挙げたことに現れている。しかし、そんなささいなことを理由に同教授にケチをつけようとは思わない。戦争は個人の身体・財産に対する最大の脅威であり、その戦争を止める方策を、米政府や主力メディアに抗して訴えるサックス教授の勇気ある姿勢は、生半可なリバタリアンよりもはるかに立派である。

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