2023-02-24

キューバとベトナム、何が違うのか?

自由の未来財団(FFF)代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2023年2月17日)

メキシコのロペスオブラドール大統領は、キューバのディアスカネル大統領のメキシコ来訪中、米政府に圧力をかけ60年に及ぶキューバに対する経済封鎖を解除させる、国際的取り組みを主導する意思を表明した。ロペスオブラドール氏は「アメリカ大陸のすべての国々が力を合わせる親善の印として、米政府はキューバ国民に対する不当かつ非人道的な封鎖をできるだけ早く解除すべきだと考え、謹んで表明する」と述べた。
ロペスオブラドール氏は良い点を指摘している。なぜ米政府は、キューバの人々に対して不当かつ非人道的な経済封鎖を行い、経済戦争を続けるのか。

いや、米当局者がディアスカネル氏らキューバの共産主義者を受け入れなければならないと言っているのではない。私が言いたいのは、米政府には、キューバ国民に対する経済戦争を正当化する道徳的・法的根拠がないということだ。

結局のところ、重要なことを忘れてはならない。キューバ国民もキューバ政府も、米国を攻撃したり侵略したりしたことはないのだ。一度もない。実際、米国とキューバの長い不毛な関係では、つねに米国が侵略者だった。

キューバ人亡命者を使ってキューバを侵略したのは米中央情報局(CIA)である。キューバの指導者フィデル・カストロを何度も殺害しようとしたのもCIAである。キューバ危機の前も後も、ケネディ大統領に圧力をかけ続け、米軍の総力を挙げてキューバに侵攻させたのは国防総省だった。キューバでの政権交代を実現するために、キューバ国民を死と経済的窮乏の対象としてきたのは米政府である。

なぜか。なぜペンタゴン(国防総省)とCIAにとって、キューバの人々に対して経済戦争を仕掛け続けることがそれほど重要なのだろうか。

結局のところ、冷戦時代に米政府がキューバ禁輸を正当化するために用いた反共主義が理由ではありえない。なぜ、そう言えるのか。それでは、米政府がベトナムをどう扱っているかを見てみよう。ベトナムはキューバ同様、長い間共産主義政権によって運営されてきた。

米国務省のウェブサイトにある、「米越関係」と題するこの文章について考えてほしい。

米越関係は、ますます協力的で包括的なものとなり、政治、経済、安全保障、そして人と人とのつながりにまたがる繁栄するパートナーシップへと発展してきた。米国は、国際安全保障に貢献し、互恵的な貿易関係を結び、人権と法の支配を尊重し、気候やエネルギー関連の課題に直面して回復力のある、強く、繁栄し、独立したベトナムを支持する……。米国とベトナムの人と人とのつながりも盛んになった。何万人ものベトナム人が米国に留学し、米経済に10億ドル近く貢献している......。ベトナムの自立を目指し、米国はさらなる成長と貿易競争力の強化、パンデミック対策、再生可能エネルギーの推進、戦争の遺産問題への取り組み、ベトナムの森林と生物多様性の保護に努めている。2001年の米越二国間貿易協定の発効以来、二国間の貿易と米国の対ベトナム投資は飛躍的に伸びている。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のウェブサイトが次のように指摘している。

米国とベトナムのパートナーシップの現在の深さと広さは、決して予見されたものではなかった。両国の数十年にわたる努力と忍耐の結果である……。1995年の国交正常化以来、ベトナムは米国の投資家にとって最も関心の高い国のひとつに挙げられている。米国のベトナムへの海外直接投資は、2011年の10億ドル未満から2019年には26億ドルを超えるまでに成長した。

重要なことを忘れてはならない。キューバの共産政権とは異なり、ベトナムの共産政権は5万8000人以上の米軍兵士を殺害したのだ。 

したがって論理的な疑問が生じる。なぜ米国人はキューバの人々と普通の関係を結べないのか。なぜ米政府は、ベトナム共産政権と友好関係を築いているにもかかわらず、キューバ人に対して残忍な経済戦争を続けなければならないのか。

私見では、ペンタゴンとCIAが、キューバ赤軍に敗北し屈辱を受けたという事実を克服できないからだ。しかしキューバとベトナムには大きな違いがある。ペンタゴンとCIAは、キューバで政権交代を実現することにつねに固執していた。ベトナムで共産主義支配下での国の統一を防ごうとしていた。ベトナムで敗北した後、米政府はベトナムの共産主義支配による統一を覆せないとわかっていた。キューバでは、政権交代という目標達成への望みを捨てていない。

キューバ革命が始まった当初から、ペンタゴンとCIAはキューバの政権交代を実現することに執念を燃やしていた。例えば、共産主義者が権力から追放したキューバの独裁者バティスタや、ペンタゴンとCIAがチリで権力の確立を手助けした残忍な軍人暴君ピノチェト元大統領のようにである。

ペンタゴンとCIAは、その全能の力をもってしても、キューバにおける政権交代の目標を達成できなかった。第三世界のキューバ共産主義政権は米政府を一歩一歩くじき、その過程でペンタゴンとCIAの両者を深く辱め、屈服させた。

さらに何十年もの間、国防総省とCIAはあきらめて、フィデル・カストロが死ぬのを待ち、キューバ国民が蜂起して別の親米独裁者を据える日が来ることを期待した。しかしそれは実現せず、国防総省やCIAの内部では、恥ずかしさと屈辱感が深まるばかりだった。フィデルとラウルのカストロ兄弟の後を継いでキューバ大統領となったディアスカネルは、自らも共産主義者を自認している。

国防総省とCIAが決して認識できない、あるいは認識しようとしないのは、キューバ国民が一番望んでいないのは、米政府による支配を再び受けることだということだ。社会主義の下で生きることの恐ろしさにかかわらず、社会主義と米国の支配のどちらかを選べと言われれば、ほとんどのキューバ人はいつでも社会主義を選ぶだろう。経済的自由と社会主義のどちらかを選ぶとしたら、ほとんどのキューバ人は経済的自由を選ぶだろう。ただし、米政府が彼らの生活に介入しない限りはである。

ペンタゴンとCIAがキューバを支配することへの執念を捨てきれないでいることは、痛いほど明らかである。この道徳的、経済的な茶番に対する最終的な答えは、米国人にある。結局のところ、ペンタゴンとCIAによる経済的禁輸は、米国に対する攻撃でもあり、とくに経済的自由、旅行の自由、貿易の自由、結社の自由という、基本的で自然な、神から与えられた権利に対する攻撃なのである。

米国に必要なのは、米国人の良心の復活と自由への渇望である。その日が来れば、ロペスオブラドール大統領が正しく表現しているように、キューバの人々に対する(そして米国の人々に対する)「不当かつ非人道的な」経済封鎖は終焉を迎えるだろう。

Cuba and Vietnam: What’s the Difference? – The Future of Freedom Foundation [LINK]

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