2023-02-09

「ロシアのプロパガンダ」を騒ぐ本当の狙い

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年2月5日)

米国の外交政策を批判しただけで毎日毎日、ロシアの宣伝屋のレッテルを貼られるのは実に不愉快だが、そのおかげで、これまで人々が「ロシアのプロパガンダ」の危険を警告してきた本当の意図について、有益な視点を得られるという利点もある。
私はロシアの宣伝屋ではない。ロシアからお金をもらっていないし、ロシアとのつながりもないし、2016年にこの政治評論の仕事を始めるまで、ロシアについてほとんど考えていなかった。私の記事を使いたい人には使わせているので、西側帝国に関する私の意見がロシアのメディアに載ることもあるが、私が提供することはないし、いかなる支払いも勧誘もなく、ロシアのメディアが勝手にやったことだ。私は文字どおり、インターネット上で政治的な意見を共有する、ただの西洋人だ。その意見はたまたま、アメリカ帝国自身やその行動に関する物語に同意しないだけだ。

しかし私は何年もの間、人々が私を「ロシアのプロパガンダ」の一例として指さすのを見てきた。このことは、この6年間に流れた「ロシアの影響」に関するすべてのパニックを理解するのに役立ち、それがどれほど深刻に受け止められるべきかということについて、私にいくつかの洞察を与えてくれた。

これが、「ハミルトン68」に関するツイッター文書の暴露を伝えるマット・タイビーの記事に驚かなかった理由の一つだ。ハミルトン68は、ワシントンの沼地の怪物が運営し、帝国主義シンクタンクが支援する情報操作で、長年にわたってロシアのオンライン上の影響に関する完全に偽の主流報道を、何千とはいわないまでも何百も作り出していた。

ハミルトン68は、ソーシャルメディア上で西側の思想に影響を与えようとするロシアの試みを追跡すると称していたが、ツイッターは結局、この作戦が追跡してきた「ロシア人」は実際にはほとんどが本物で、たまたま当局の見解と完全に一致しないことを言っただけの、大半が米国のアカウントであることを突き止めた。これらのアカウントは右寄りであることが多いが、コンソーシアム・ニュースの編集者ジョー・ローリア氏のような、右派からはほど遠い人物も含まれていた。

ハミルトン68はロシアのオンライン上の影響力について大衆のヒステリーを煽るのに大きな役割を果たしたが、ロシアの影響力工作の行動を追跡しているように見せかけて、実際には反対意見を追跡していたのである。

今日世界で起こっている最もおかしなことの一つは、西洋のプロパガンダによって西洋人が洗脳され、西洋では意味のないロシアのプロパガンダにパニックになることである。英国で〔ロシア国営放送局〕RTが閉鎖される前は、英国の全テレビ視聴者のなんと0.04%しか引きつけていなかった。フェイスブックで盛んに行われたロシアの選挙干渉活動は、ほとんどが選挙とは無関係で、フェイスブックによれば「2万3000のコンテンツのうちおよそ1つ」が影響を受けたとされる。2016年の選挙に向けたツイッターでのロシアの迷惑行為に関するニューヨーク大学の研究では、「ロシアの対外影響作戦に接したことと、態度、偏向、投票行動の変化との間に意味のある関係を示す証拠はない」という結果が出ている。アデレード大学の研究によると、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアのボットや迷惑行為についてあらゆる警告がなされたにもかかわらず、その間にツイッター上で行われた真偽不明の行動の圧倒的多数は、反ロシア的なものであったことが判明した。

ロシアは西洋人の思考にほとんど影響を与えないが、我々は「ロシアのプロパガンダ」に関して騒ぐことになる。一方、西洋の寡頭政治家や政府機関は、自分たちの利益になる現状への同意を捏造するために作られたプロパガンダで、私たちの心を揺さぶり続けている。

これだけでなく、〔ネオコンの評論家〕ビル・クリストル氏らが推奨した最近のアメリカン・パーパスの記事「イデオロギーの長い戦争」が示すように、西側帝国からさらなる物語管理を求める声が依然として上がり、冷戦時代に使われたような米中央情報局(CIA)の文化戦争戦術を復活させるよう呼びかけている。毎日、新しいリベラル派の政治家が、ロシアの影響と戦い、米国の心を「偽情報」から守るためにもっと努力する必要があると説教しているが、その本当の狙いは反対派の声を封じることだと、何度も見せつけられた。

まだある。ネット検閲を強化しようとする努力の継続。インチキな新しい「ファクトチェック」産業、ラジオ・フリー・ヨーロッパ、ラジオ・リバティ、ラジオ・フリー・アジアのような米政府の公式宣伝活動の出力を上げようとする呼びかけ。近年、西側メディアからロシアに関するすべての異論が強制排除されていること。帝国が拡大した迷惑行為作戦がオンラインで米国の外交政策に対する批判者を罵倒し、かき消すこと。アルゴリズムによる検閲が反対派の言論を制限する主要な方法の一つとして浮上していること。これらがその例である。

「ロシアの影響力」と戦うために、プロパガンダ、検閲、オンライン心理作戦を大幅に強化する必要があるといわれているが、私たちが意味ある形で受けている唯一の影響力の行使は、これまでのところ西側諸国によるものだけである。連中はそれをもっとやりたいだけなのだ。

支配者たちは「ロシアの影響」を心配しているのではなく、反対意見を心配しているのだ。私たちの心に大きな影響力を行使しない限り、自分たちが計画している「大国間競争」に、国民が同意しないことを心配しているのだ。そうしなければ、ロシアを支配し、中国の台頭を阻止する作戦に必ず伴う経済戦争、軍事費の急増、核瀬戸際政策によって私たちの利益が直接損なわれると知っているからだ。

支配者たちは外国のプロパガンダの脅威について私たちに宣伝しているが、それは私たちに対しもっとプロパガンダを行うことを正当化するためだ。私たちは、健康な人なら大量の操作なしに決して同意しないような計画に同意するように、操作されているのだ。

(次を全訳)
They're Not Worried About "Russian Influence", They're Worried About Dissent [LINK]

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