2022-11-09

ばかげた反露被害妄想

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年11月8日)

中間選挙を控え、米当局の反露パラノイア(偏執的な被害妄想)はピークに達している。連邦政府は、ロシア人が米国の有権者に不適切な影響を及ぼし、国防総省(ペンタゴン)や中央情報局(CIA)の極端な反露感情を拒む候補者を支持させていないかどうかを見極めるために、インターネットを調べ上げている。米国の有権者は、そのほとんどが公立学校の卒業生であることから、親共産主義者や親ロシアのカモにされやすい、きわめて軟弱な精神を持っているというのだ。

たとえば昨年7月、司法省はアレクサンドル・ヴィクトロヴィッチ・イオノフ氏というロシア人を起訴した。イオノフ氏はモスクワを拠点に「ロシアの反グローバリズム運動」という組織を率いており、ロシア政府から資金援助を受けているとされる。

容疑は何か。マシュー・オルセン司法次官補は 「イオノフ氏は大規模な宣伝活動を指揮し、米国の政治団体と米国民をロシア政府の道具にしたとされる」と述べている。

この意味がわかるだろうか。公立学校で教育を受けた米国人の心はとても軟弱でプロパガンダに弱いので、連邦政府のパパによって、米国人を闇の世界に引き込もうとする邪悪なロシア人から守ってもらわなければならないのだ。

司法省刑事局のケネス・ポライト司法次官補は、オルセンが述べたことを補強した。「米国の選挙や政治団体に影響を与えようとする外国政府の秘密工作は、誤った情報を広め、不信感を醸成することで我々の民主主義を脅かす」。フロリダ州中部地区のロジャー・ハンドバーグ連邦検事は、この件に関し次のように述べた。「この犯罪行為を起訴することは、外国政府が米国の政治過程に介入しようとするときに、米国民を守るために不可欠である」

本来は知的であるはずの人たちが、このような意味不明な発言をするのを読むと、二つのことを考えずにはいられなくなる。

第一に、米国の役人が他国の政治過程に大規模に介入することをどうやって正当化するのかということだ。まずはイラン、グアテマラ、チリの民主主義体制を故意に、意図的に破壊したことを忘れてはならない。米国が支援する政権交代を狙った暗殺、クーデター、制裁、禁輸の計画は言うに及ばずである。

第二に、連邦政府を長い間動かしてきた極端な反露感情について議論するとき、ケネディ大統領(JFK)のことを考えずにはいられない。ケネディは、ペンタゴンやCIAとは正反対の方向に米国を動かそうと決意していた。ペンタゴンとCIAが米国民に植え付けた、極端な反ロシア(ソ連)感情に終止符を打とうと決意したのである。

もしケネディがテキサス州ダラスでの暗殺事件で助かり、1964年の再選に立候補していたら、どうなっていたかと考えずにはいられない。ケネディを支持し、共和党の対立候補バリー・ゴールドウォーター(国防総省やCIAと同じような考え方の持ち主)に反対するロシア市民を、国防総省とCIAは標的にしていただろうか。

そうしていたことは間違いないだろう。ケネディがソ連の手先となり、米国を破滅に導いているとも非難しただろう。実際、拙著『悪との遭遇——ザプルーダー物語』で詳述したように、それこそ暗殺前に国防総省とCIAがケネディについて語っていたことなのである。自由の未来財団(FFF)が刊行した、『JFKと国家安全保障体制の戦い——なぜケネディは暗殺されたのか』も参照されたい。暗殺記録審査委員会の委員を務めたダグラス・ホーン氏の著書だ。

何十年にもわたって米国を支配してきた国防総省とCIAの極端な反露感情は、米国民の自由と幸福に対する重大な脅威である。その理由の一つは、反露感情が(1962年のキューバ危機に続いて)再び、命を奪う核戦争の淵に私たちを追いやっていることだ。この馬鹿げた妄想を早く終わらせれば、米国民はもっと幸福になれるだろう。

(次を全訳)
The Anti-Russia Paranoia – The Future of Freedom Foundation [LINK]

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