2022-10-28

音楽の豊かさ

経済学者、ゲイル・プーリー
(2022年9月9日) 

1877年、トーマス・エジソンが蓄音機レコードの原型を開発した。最初の再生可能なレコードは、2枚の錫箔の間に紙を挟んでプレスしたものだった。

1949年3月15日、RCAビクターが45回転のレコードを初めて発売した。このレコードは、人気の78回転レコードより小さく、曲数も少なく、色も違っていた。ローリング・ストーン誌によると、「50年代のティーンエイジャーは、持ち運びができ、値段も安いこのレコードを好んだ。当時のある広告によると、レコードの値段は1枚65セントだった。ロックの初期大ヒット曲のひとつ、ビル・ヘイリーとコメッツの『ロック・アラウンド・ザ・クロック』は、1955年に300万枚のシングルを売り上げた」。

1955年の未熟練労働者の時給は97セント程度だった。時間でみた1曲の値段は40分の労働にあたる。

アップルは2003年4月28日、iTunes Storeを立ち上げ、曲を99セントで販売した。このとき、未熟練労働者の賃金は時給9.25ドルにまで上昇していた。1曲の時間価格は84%下がり、6.42分の労働時間となった。2003年のリスナーは、1955年の1曲の値段で6曲を手に入れた。

アップルミュージックは2015年6月30日に発売された。現在、学生は月額5.99ドルで9000万曲を聴くことができる。未熟練労働者の時給は14.53ドル程度なので、時間価格は25分程度の労働時間である。ユーザーはストリーミングだけでなく、アルバムや楽曲をデバイスにダウンロードしてオフラインで再生することもできる。一般的な楽曲が3〜4分だとすると、1カ月で1万2342曲再生することができる。1曲あたりの時間価格は、約8分の1秒の作業時間だ。

1955年に私たちの祖父母が1曲買うお金を稼ぐのに要した時間に対して、現在の私たちは1万9750曲を手に入れることができる。1955年以来、個人の音楽の豊かさは年率約15.9%で、4.5年ごとに2倍に増えている。

私たちが今日享受しているあらゆる製品は、人間が発見し、自由な市場で他の人々と共有する、何十億、何百億もの小さな知識の集大成だ。歌を作り、それを世界と共有する。私たちは自分自身を高め、互いの人生をより良いものにすることができる。

私たちはまだ問題を抱えているだろうか。もちろんだ。つねに課題に直面することだろう。しかし、私たちがこの二百年間に成し遂げたことを見てほしい。これは人々が自由に互いの問題を解決し合うとき、何が起こるかを示している。

(次を全訳)
Musical Abundance - HumanProgress [LINK]

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