2018-11-07

規制は弱者を助けない

政府の規制は弱者を守るためにあると信じられています。けれども実際には、政治力のある企業や団体の既得権を守るために導入される規制もあります。弱者を守るために導入された規制であっても、結果的に弱者を苦しめる場合が少なくありません。

日経電子版の大幅刷新を機に連載が始まった産業内幕ルポによると、フリマアプリ大手、メルカリが年内に計画していた東京証券取引所への上場の延期が濃厚になりました。金融庁や警察庁が難色を示しているといいます。

記事には、規制について興味深い指摘があります。資金決済法が定める資金移動業者に登録すると、ユーザーが口座を開設するときに免許証のコピーなど身分証明書を郵送して本人確認をしなければなりません。

なんとも時代遅れで面倒な手続きですが、記事によれば、法制化の過程で銀行からの圧力があり、無意味な規制がかけられたそうです。政治を動かせる強者の既得権を守るための規制です。

実際、2012年に日本でスマホ決済サービスを始めたペイパルが4年後に撤退したのは、資金移動業者に登録した結果、本人確認の手続きが煩雑でユーザーが集まらなかったのが一因といいます。

メルカリはペイパルの二の舞にならないよう、資金移動業者の登録を避けようとしています。しかし物品を販売して得た売上金を預けておくことができるメルカルのしくみは、資金移動業者にあたるとの指摘があるそうです。

記事では触れていませんが、メルカリのこのしくみは、生活保護受給者の助けになっているともいわれます。売上金を出金しなければ、銀行口座を定期的にチェックするといわれる役所に収入を知られず、生活保護を打ち切られる恐れがないからです。

ルール違反かもしれません。けれども、生活費の不足を補うためやむをえずという場合も少なくないでしょう。

メルカリでは以前、額面以上の現金が出品され、問題とされました。借金に苦しむ人がクレジットカードで現金を購入し、急ぎの返済に充てているといわれました。今は禁止されています。

企業がさまざまに工夫するサービスは、法的には微妙な逃げ道を含め、弱者を助けます。何か弊害があっても市場の自律的なルールで解決できる場合が大半です。政府の画一的な規制はむしろ弱者を苦しめかねません。(2017/11/07

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