2018-11-06

クールジャパンの真の教訓

官民ファンドのクールジャパン(CJ)機構で、損失リスクを抱える事例が相次いでいます。日経電子版の記事によると、発足から丸4年の投資24件中、決定後1年を超す事業の過半が収益などの計画を達成できていないそうです。

誰もがその経営判断の甘さと不効率にあきれることでしょう。けれども、CJ機構や官民ファンドだけが悪いのではありません。政府のかかわる事業すべてに共通する問題であることが、記事を注意深く読めばわかるはずです。

記事では「まず投資ありき」の姿勢がCJ機構の戦略なき膨張を招いていると指摘します。正しい指摘です。けれども、「まず投資ありき」はCJ機構や官民ファンドに限った話ではありません。政府の公共事業はすべて、「まず投資ありき」で決まっています。予算を消化しなければならないからです。

経済学者ケインズを教祖とするマクロ経済学では、公共事業は雇用を生むから正しいと主張します。たしかに公共事業は雇用を生みます。しかしそれをいうなら、CJ機構などの官民ファンドだって、伝統工芸の食器や衣類、食品などを作るため、それなりの雇用を生んでいます。

もし雇用を生むという理由で公共事業を擁護するなら、CJ機構だって擁護しなければならないはずです。そんなことにならないのは、CJ機構の損失リスクが国民に伝わり、納税者のコストが意識されるからです。

一方、一般の公共事業は官民ファンド以上に採算が不透明で、納税者のコストが意識されません。むしろ納税者にコストを意識させないよう、わざと採算をわからなくしているふしがあります。その結果、官民ファンドほど批判されないにすぎません。

記事では、CJ機構の投資先決定に経営陣の不透明な関与があると指摘します。これまた官民ファンドに限った話ではありません。一般の公共事業では、政治家が陰に日に大きく関与しています。

CJ機構は日本の経済政策の例外ではありません。縮図です。世耕弘成経済産業相は「CJ機構の抜本的な見直しを指示した」と5月の国会で答弁しましたが、抜本的見直しが必要なのは、政府が当然のように市場に介入する姿勢そのものです。(2017/11/06

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