2018-10-19

輸出奨励の勘違い

政治家は盛んに輸出を奨励します。まるで輸出は良いことで、輸入は悪いことだと言わんばかりです。一般の人にも政治家に影響されて「輸出は善、輸入は悪」と漠然と信じている人が少なくありません。

けれども、以前(6月30日付投稿「輸入を許したら『負け』なのか」)も書いたように、その考えは正しくありません。

米経済学者でジョージ・メイソン大学教授のドナルド・ブードロー氏がウォールストリート・ジャーナル紙に投書し、輸出を奨励するトランプ大統領の貿易政策を次のように批判しています。

トランプ大統領によれば、米国民が貿易から多くの利益を得るには、輸出を増やし、輸入を減らせばいいという。しかし、それは誤りである。

輸出とは、製品やサービスを輸入する代償である。トランプ大統領が得意の交渉術で米国の輸出を増やし、輸入を減らせば、それはわざわざ米国民の支払いを増やし、受け取るものを減らすことを意味する。

嘘だと思う人は、家財道具をすべて海外に売り払い、受け取った外貨をマットレスに詰め込んで一切使わないでみてほしい。それで貧しくなるのが嫌なら、トランプ大統領の貿易政策はおかしいということだ——。

わかりやすい解説です。政府が輸出をやたらに奨励し、輸入を制限するのは、貿易の目的を見失った勘違いなのです。ブードロー氏のこの解説から、たとえば輸出を増やすために自国通貨を安くする政策がおかしいこともわかるでしょう。

経済の正しい知識を身につけるコツが一つあるとしたら、それは経済に関する政治家の言葉を真に受けないことかもしれません。(2017/10/19

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