2018-10-14

株高とマネー膨張

株式相場の上昇に弾みがついています。13日、日経平均株価は終値でおよそ21年ぶりに2万1000円台に乗せました。一般に株価の上昇は経済の良い状態を示すといわれます。私自身、現役記者時代はそう考えて記事を書いていました。けれども今思うと、その考えは必ずしも正しくなかったようです。

米経済教育団体、ミーゼス研究所の記事を参考に説明しましょう。

かりに株式市場にA社、B社という2つの企業しか上場していないとしましょう。投資家がA社よりもB社のほうが有望と考え、A社の株を売ってB社の株を買えば、A社の株価は下落し、B社の株価は下落します。

このとき、株式相場全体は上昇も下落もせず、横ばいのままなはずです。これでは、相場は長期間上昇を続けることはできません。

株式相場全体が上昇を続けるためには、何が必要でしょうか。資金の流入です。

オーストリア出身で米国で活躍した経済学者、フリッツ・マハループはこう述べます。「銀行の融資が柔軟に増えなければ、株価の高騰(boom)は長続きしない。融資が膨張しなければ、株式を買う人々に貸す資金はすぐ底を尽きてしまうだろう」

中央銀行が金融政策を緩和し、民間銀行が多くの資金を投資家に供給できなければ、相場全体が長期間上昇することはできません。

逆にいえば、資金さえ増えれば、投資家に買う意思がある限り、株式相場は上昇します。極端な話、経済の状態が良かろうと悪かろうと、中央銀行が金融を緩め、株式を買う資金が増えさえすれば、相場は高くなるということです。

こう言うと、「株式相場が経済の状態と無関係なはずはない。その証拠におおむね国内総生産(GDP)の伸びと連動している」と思うかもしれません。表面はそう見えます。けれども株式相場と同じく、GDPもお金の量に左右されます。株式相場とGDPが連動するのでなく、どちらもお金の量に連動しているにすぎません。

日銀が同日発表した9月のマネーストック(通貨供給量)速報によると、「M3(現金、銀行などの預金)」の残高は1305兆9000億円となり、2カ月ぶりに過去最高を更新しました。22日投開票の衆院選で与党優勢との情勢調査が相次ぎ、アベノミクスによる金融緩和が続く可能性が高まったことも、株高の材料として指摘されています。

しかしマネーの膨張は永遠には続きません。いつかは出口に向かいます。株高はもろいものだと用心しておいたほうがよいでしょう。(2017/10/14

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