2018-10-13

現金主義は悪くない

世界でキャッシュレスの流れが強まるなか、日本の「現金主義」は時代遅れだとよく批判されます。けれども、そう簡単に決めつけてよいものでしょうか。

現金のメリットを再確認させる出来事が最近ありました。米自治領プエルトリコを襲った巨大ハリケーンの被害です。全土が停電し、クレジットカードが使えなくなりました。

ブルームバーグの報道によれば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアは店頭に「現金払いのみ」と表示を掲げました。

銀行の店頭には現金を求める人々で長蛇の列ができました。64歳の音楽教師の男性はこう話します。「食料やガスを買うお金がいるのです。いつもはカードで払うのですが」

ブルームバーグの別の記事によれば、現地の銀行家の求めに応じ、ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアム・ダドリー総裁がジェット機に現金を積み、運ばせたそうです。

クレジットカードや仮想通貨などキャッシュレス決済の弱みは、電力を確保できなかったり、スマートフォンなど電子機器がなかったりすると使えないことです。現金はその点、安心です。

一方で、現金はかさばり、盗難の恐れがあるといった弱点もあります。メリットとデメリットを勘案し、現金とキャッシュレスのどちらをどれだけ選ぶかは、個人の判断に任せればよいことです。政府が一方的に押し付けるべきではありません。

日本人の現金主義は世界の主要国でも突出しているそうです。しかしそれが人々の自由な選択の結果であれば、時代遅れだとか不合理だとかと決めつけず、それなりの合理的な理由があると考えるべきです。

現金は取引の匿名性が確保され、マイナス金利政策によって銀行から利息を取られる恐れもありません。現在の日本の経済・政治情勢から考えて、これらのメリットは決して小さくないはずです。(2017/10/13

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