2018-08-30

不思議の国の通貨

個人が自らの仮想通貨を発行できる「VALU」で人気ユーチューバ-、ヒカルさんの仮想通貨の価値が高騰後に暴落する騒動が起きました。この騒動、仮想通貨と本物のお金の違いについていろいろと考えさせられます。

まず、当たり前のことかもしれませんが、仮想通貨の世界では、通貨の価値が下がると、それを持っている人は損をしたことに怒ります。ヒカルさんらが高騰した自身のVALUを一気に売り出し急落したことで、利用者から「不当」と批判が殺到しました。

次に、仮想通貨の世界では、発行者は通貨の価値を高めようと努力します。通貨の価値が下がったときは、利用者から見放されないよう、最善の努力をします。ヒカルさんは自分のVALUを買い戻し、謝罪コメントもツイートしました。

北欧のエストニアは国家レベルで初めて、独自の仮想通貨「エストコイン」を発行し資金調達する新規仮想通貨公開(ICO)の検討に入ったそうです。発行後は民間の仮想通貨のように、価値が下がらないよう努力することでしょう。

さて一方、本物のお金の世界です。通貨の価値が下がっても、それを持っている人は怒らないどころか、損をしたことにすらほとんど気づきません。物価が上がることは通貨の価値が下がることを意味しますが、むしろ良いことのように信じられています。

発行者である中央銀行も、通貨の価値を高めようとするのでなく、逆に引き下げようとします。日銀は年2%の物価上昇目標を掲げていますが、これは円の価値を毎年2%ずつ引き下げるのと同じです。もちろん実現しても日銀総裁が謝罪したりしないでしょう。

仮想通貨は何か得体の知れないもののように思われていますが、以上の比較からは、本物のお金よりよほどまともに思えてきます。本物と信じられているお金のほうこそ、じつは不思議の国の奇妙な通貨なのかもしれません。(2017/08/30

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