2015-01-10

マクドナルドと健全な資本主義

ハンバーガーチェーン店、日本マクドナルドの業績が悪化している。中国の食品加工会社の使用期限切れ食材の問題などが響き、客足が遠のいているためだ。今月には商品への異物混入が相次いで発覚し、メディアでは同社の「利益優先主義」「効率至上主義」を非難し、資本主義の欠陥を示すかのように論じる向きもある。しかしその非難は的外れである。

持株会社の日本マクドナルドホールディングスは、12月の既存店売上高が前年同月に比べ21.2%減ったと発表した。ポテトを仕入れている米国の西海岸で起きた港湾の労使交渉の長期化の影響で、「マックフライポテト」のMとLサイズの販売を一時休止したことが重荷となった。仕入れ先だった中国の食肉加工会社が使用期限切れ鶏肉を使っていた問題が昨夏明らかになり、消費者が利用を控える動きも続いているという。さらに商品への異物混入が発覚したうえ、それに関する会社側の説明が後手に回ったとして、批判にさらされている。

一部のメディアでは「利益を追い求めれば、それだけ安全にかけるコストが後回しにされがち」と紋切型の批判をしているが、もちろん間違っている。安全に必要なコストを後回しにし、その結果問題が起こり、商品が売れなくなれば、利益をあげることはできない。実際マクドナルドは売り上げ減少の影響を受け、2014年1〜9月期連結決算は最終損益が75億円の赤字となり、同12月期では上場後初の営業赤字に転落する見通しだ。

企業が本気で利益を追い求めるのなら、必要なコストをきちんとかけるはずだし、事実かけている。もしそうでなければ、いまごろほとんどの外食企業で衛生上の問題が生じているはずだ。マクドナルドは異物混入の原因を不明としているが、かりに同社のミスだとすれば、過ちは利益を追求しすぎたことではなく、利益追求の姿勢が不徹底だったことにある。

マクドナルドの業績不振は、資本主義の欠陥を示すものではない。同社ほどの大企業でも、ひとたび消費者の信頼を失えばたちまち売り上げが落ち込み、赤字に陥ってしまうという事実は、日本において、とくに外食市場において資本主義が健全に機能している証拠といえる。

資本主義がまともに機能していない産業では、様子が違う。消費者は電力会社の独占的なサービスや価格に満足できなくても他の会社から電気を買うことはできないし、銀行は放漫融資で経営危機に瀕しても政府が国民の血税で助けてくれる。

マクドナルドも政治的な恩恵をまったく受けていないわけではないだろう。しかし少なくとも、規制で他社との競争から守ってはもらえないし、赤字になっても税金で助けてはもらえない。消費者を向いた経営をしなければ生き残れない。

ところで、南米ベネズエラのマクドナルドでも港湾ストの影響で米国産ポテトが輸入できなくなり、キャッサバを原料とした揚げ物を提供しているらしい。AP通信の報道によると、店を訪れた女性客の2歳になる女の子は固いキャッサバを食べたがらず、おもちゃ付きセットの「ハッピーミール」がお目あてだという。APの記者はこう書く
マクドナルドは米国資本主義の究極のシンボルかもしれないが、ベネズエラの社会主義政府は、国民がハッピーミールを楽しんでいることをよくわかっているようだ。
反米で知られる社会主義国ベネズエラの政府でさえ、マクドナルドの商品が国民から愛されていることを知っている。そしてマクドナルドの店舗数が米国に次いで世界で2番目に多い日本の人々も、マクドナルドが大好きである。それは同社が聖人君子の集まりだからではない。利益を追求し、健全な資本主義を勝ち抜いてきた企業だからである。

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