2014-12-28

日本経済のエンドゲーム

衆院総選挙での自民党の勝利は、安倍政権の経済政策(アベノミクス)への国民の支持と期待によるものとみられているようである。しかし最近発表された二つの経済統計は日本経済の深刻な実情を示していると、海外の識者は指摘する。

統計の一つは、家計貯蓄率。所得のうちどれだけ貯金に回したかを示すもので、内閣府によると、2013年度はマイナス1.3%。比較できる統計がある1955年度以降で初めてマイナスとなった。増税前の駆け込み消費の影響もあるが、構造的には社会の高齢化が進み、貯蓄の取り崩しが増えたことが大きい。

もう一つは、実質賃金。現金給与総額に物価変動の影響を加味したもので、厚生労働省によると、2014年11月は前年同月比4.3%減と、17カ月連続の減少。下げ幅は前月(3.0%)から拡大し、2009年12月(4.3%)以来の大幅な落ち込みとなった。

評論家デヴィッド・ストックマン(David Stockman)は、貯蓄率マイナスのニュースについて、日本は一世代前まで貯蓄率の高い国だったのに、過去三十年近いケインズ政策の末、巨額の政府債務が積み上がり、抜け出しがたい人口的・財政的わなにはまったと指摘する。そして次のように続ける。

労働人口の減少が加速する前に日本に必要なのは、貯蓄を増やし、そこそこの利息がつくよう金利を引き上げること、円相場を高くして海外資本を引き寄せ、国内で消化しきれなくなった政府債務を引き受けてもらうこと、財政赤字を埋める増税を負担できるよう、実質所得を増やすことである。ところがアベノミクスによってケインズ政策が強化され、事態は正反対に向かっている。

円相場の下落は、エネルギーのすべてと原材料の大半を輸入している日本にとって、生活コストの上昇を意味する。それを如実に示すのが、もう一つのニュースである実質賃金の大幅な減少である。

これでは政府債務を削減するための増税はむずかしい。円安のせいで海外の投資家も日本国債には寄りつかない。結局、財政赤字を埋めるには日銀がフル回転で紙幣を刷り続けるしかない。

この政策が財政的な自殺を意味することは明らかだ、とストックマンは述べ、こう結ぶ。「しかしほんとうに恐ろしいのは、日本の政策モデルが世界中の政府・中央銀行から公認され、さまざまな形で採用されていることである」

金融緩和と財政支出を柱とするケインズ政策を信奉し、アベノミクスを擁護する経済学者や評論家は、これは経済政策のグローバルスタンダードであり、どの国でもやっていることだと強調する。しかし「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉もあるように、どの国でもやっているからといって、それが正しい政策だとは限らない。

ストックマンは、日本の金融政策によってケインズ政策の終局(エンドゲーム)が明らかになったという。誤った政策から早く方向転換しないと、日本経済そのものが終局を迎えかねない。

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