2024-01-03

被災者支援は市場の力で

元日の夕方、石川県の能登地方でマグニチュード7・6、最大震度7の強い地震が起きた。輪島市で約200棟が燃える大規模火災が発生したほか、各地で建物の倒壊が相次いだ。命を落とした人以外に、倒壊や火災で家を失った被災者が多く、避難生活の長期化も懸念される。
3日付の社説で産経新聞は「被災者を支えるために国民一人一人が「できることをやる」という意識を共有することが大事だ」と述べた。同じく朝日新聞は「国や自治体が果たすべき「公助」が追いつかない時が増えている。こういう時こそ、地域のつながりによる「共助」の力も十分に発揮したい」と訴えた。

これらの主張は大切なことを見落としている。被災者支援に最も力を発揮するのは、「公助」でもなければ、「共助」でもない。自由な市場経済の力だ。そして市場経済が存分にその力を発揮するうえで、国民一人一人の「できることをやる」という道徳意識などは必要ない。平時と変わらず利益を追求する企業家精神があればいい。

朝日は「温かい食べ物は供給できているか。ベッドや布団、暖房器具などは十分か。物資の供給には全力を尽くしたい」と力を込める。ここに列挙された、温かい食べ物、ベッド、布団、暖房器具のうち、国や自治体の「公助」や、地域のつながりによる「共助」によって生産できるものは一つもない。いずれもそれぞれ専門の民間企業によって作られ、販売される。列挙された以外の多数の製品・サービスについても同様だ。

民間企業の活動を導くのは、つねに利益だ。企業のオーナーが被災地に多額の寄付をすることもあるが、それは個人としての行動であり、企業はあくまでも利益の獲得を目的とした製品・サービスの供給を通じて社会に貢献する。それは平時においても、自然災害のような有事においても変わらない。

むしろ有事こそ、民間企業の迅速な対応力が明らかになる。地震のあった石川、新潟、富山などでセブン―イレブンやファミリーマートなどコンビニエンスストアは一時休業したものの、安全確認と清掃が終わり次第、順次営業を再開している。総合スーパーなどを展開するイオンは、一部専門店で営業を見合わせているが、食品・日用品を中心に全店で営業している。

政府は岸田文雄首相を本部長とする非常災害対策本部で、コンビニやスーパーなどの民間事業者と協力することを決めたという。しかしはっきり言って、余計なお世話だ。民間企業は政府から言われるまでもなく、営利活動を通じてすでに被災地を支えている。政府がやるべきは、市場経済が今以上に力を発揮できるよう、各種の減税や規制撤廃をただちに実行することだ。

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