2023-12-29

2023年に何が起こったか、2024年に何が起こるか

作家・投資家、ダグ・ケイシー
(2023年12月28日)

インターナショナル・マン 年の瀬も押し迫った今、一歩引いて大局を見つめ、2023年を俯瞰することで、次に何が起こるかをよりよく理解しましょう。
2023年は金融、経済、政治、文化、地政学的に大きな動きがありました。

文化面では、2023年は「社会正義に目覚めた(ウオーク)狂気」に対する風潮が変わり始めた年かもしれません。

米資産運用会社ブラックロックのフィンク最高経営責任者(CEO)はESG(環境・社会・企業統治)という言葉を使うのをやめました。「目覚めた」映画は映画館で大爆死を続けています。ビール「バドライト」、ディスカウントストア大手のターゲットディズニーは、わざと顧客層を遠ざけることの痛みを感じ続けています。

2023年の文化の動きについてどうお考えですか。

ダグ・ケイシー 大きな風潮に対する反動はつねにある。それは注目に値するものの、「覚醒運動」の悪質さを考えると、反動は微々たるものだ。現状維持のために戦う後衛はつねに存在する。それはすばらしいことだ。というのも、目覚めた連中は、文化全体をひっくり返そうとしているからだ。革命期のフランスでジャコバン派(恐怖政治を繰り広げた党派)が文化を覆したように、ロシアでボリシェビキ(ロシア共産党の前身)が文化を覆したように、中国で紅衛兵(文化大革命時に毛沢東の指導で作られた青少年組織)が文化を覆したように、カンボジアでポル・ポト(社会主義独裁者)が文化を覆したように。

目覚めた連中は危険をはらむ。というのも、連中の考え方は西洋のどこにでもあるからだ。

言論の自由、思想の自由、自由市場、伝統、小さな政府に激しく反対しているという点では、今述べた(ジャコバン派らの)運動と似ている。しかし連中はジェンダーと人種をも武器にしている。凶暴で、ユーモアがなく、清教徒的だ。自分たちを未来の波だと考えているが、マルクス、レーニン、スターリン、ヒトラーの概念を再包装しただけだ。

私の考えでは、目覚めた連中は人間性を憎み、自分自身を憎んでいる。彼らは不誠実で、傲慢で、特権階級だ。多様性重視で雇われたハーバード大学、ペンシルベニア大学、マサチューセッツ工科大学の学長たちのスキャンダルを見てほしい。連中はまったく恥さらしだ。理事会がこのような愚か者を任命したという事実が、腐敗の深さを物語っている。

目覚めた連中には心理的・精神的な異常が根付いている。

連中が支配しているのは、学界、金融、エンターテインメント、メディアだけではない。国家機構をも支配している。つまり、法律をほぼ味方につけているのだ。

おそらくESGは、新手の吸血イカであるブラックロックによって重視されなくなってきているのだろうが、それは連中が信念を重んじるよりも、お金を失うことを恐れているからに他ならない。より悪質なDEI(多様性、公平性、包括性)は、依然として文化の大きなトレンドだ。

それはどこで終わるのだろうか。

覚醒主義は一過性の流行ではない。文化的に保守的な考えを持つ人々と、西洋文明を破壊し、我々が知っている社会のあり方をひっくり返そうとする人々との間の暴力的な対立で終わる可能性が高い。

インターナショナル・マン 2023年は地政学的に大きな動きがあった年でした。

ウクライナでの戦争が北大西洋条約機構(NATO)にとってうまくいっていないことは、主要メディアでさえ明らかになりました。

イスラム組織ハマスの攻撃とイスラエルのパレスチナ自治区ガザ侵攻もありました。

アゼルバイジャンはアルメニアを破り、長年の係争地域を取り戻しました。

サウジアラビアはシリアをアラブ連盟に復帰させ、イエメン戦争を終結させ、イランとの国交を回復させ、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国に加盟し、中国との経済関係を拡大しました。

これらは2023年の地政学的な出来事のほんの一部です。

地政学的状況と今後の方向性についてどう思われますか。

ダグ・ケイシー あらゆる分野において、世界に対する米国の覇権主義の終焉は明白になりつつある。世界は米政府にいじめられ、支配されていることに腹を立てている。

世界は、米政府が破産し、印刷されたお金だけで生活していることに気づいている。軍備は肥大化し、米国が負担できる以上の費用がかかっている。

肥大化する一方で解体されつつあり、新しい兵士や水兵を採用することもできない。その理由は簡単だ。人々は至るところで無意味な戦争があおられるのを目の当たりにしている。伝統的に軍に入隊するタイプの人々は、軍にはびこる目覚めたミーム(流行)に嫌悪感を抱いている。つねに軍隊を支えてきた白人男性は、盛んに差別されることに愕然としている。

米国の覇権は、財政的にも経済的にも軍事的にも終わりつつある。

バイデン(大統領)とハリス(副大統領)というまったく無能で無力な愚か者が政府の名目上のトップであることを見れば、それは明らかだ。言うまでもなく、閣僚は劣化し、心を病んだ者ばかりだ。もちろん、もう誰も米国を尊敬していない。

過去100年にわたる米国の覇権は消えつつある。古い秩序が変わるにつれ、動揺が生じるだろう。米国は、他の勢力によって埋められる空白を残すだろう。

実際、米政府は今日の世界にとって最大の脅威だ。秩序を提供していない。どこでも他人の仕事に首を突っ込むことで、混乱を助長している。世界中にある800以上の基地は挑発行為だ。徘徊している空母群は、今日の技術では格好のカモだ。米国は世界のリスクの主な源であり、安全の源ではない。

米国の軍事費は、実際には5大「防衛」企業への助成にすぎず、これら企業は前の戦争か、その前の戦争を戦うのにしか適さない兵器を製造している。例えば、空母を守るミサイル・フリゲート艦や駆逐艦は、1発200万ドルの垂直発射対空ミサイルを100発搭載しているかもしれない。各ミサイルは1万ドルのドローンの撃墜に成功するかもしれない。しかし、敵が一度に200機のドローンを発射したらどうなるだろうか。空母はともかく、20億ドルの駆逐艦を失う可能性がある。

米政府は、世界中の国や人々から嫌われているだけでなく、軽んじられていることに気づいている。米政府はますます、張り子の虎とみなされている。つまり、(童話に登場する見かけ倒しの)オズの魔法使いだ。怖がられなくなれば、ゲームオーバーだ。

インターナショナル・マン 2023年、米国は政治的な二極化の傾向をさらに強めました。

米国の政治面で最も重要な出来事は何でしたか。そして次に何が起こると思いますか。

ダグ・ケイシー 米政府を支配しているジャコバン派は、私が言及した過去の革命家と同じ心理構造を持っていることを再度強調しておこう。

この人々は考えを変えたり、改革したりすることができない。権力を維持するためなら、どんなことでもするだろう。

一方、赤の州(共和党が優勢な州)に住む伝統的な米国人たちは、トランプ氏の大統領選を頓挫させようと同氏が法廷闘争に追い込まれるのを見ている。この人たちはこれまで以上に怒っている。今時点で、赤い人々(共和党支持者)と青い人々(民主党支持者)は本当に憎み合っており、互いに話し合うことができない。

伝統的な価値観が洗い流され、国は完全に士気を失っている。今、この国は非常に不安定だ。

来るべき選挙は、政治の争いにとどまらず、文化の争いになるだろう。文化戦争は、金融崩壊と経済崩壊の真っ只中にあっては特に危険なものだ。

インターナショナル・マン 2023年、米連邦債務の年間利払い見通しが初めて1兆ドルに達しました。

米国人はコロナヒステリーでドルの価値が下落したツケをまだ払い続けており、食料品、保険、家賃、その他ほとんどのものの値段が2023年も上昇し続けました。

2023年の経済情勢についてどうお考えですか。また、今後数カ月の見通しについてお聞かせください。

ダグ・ケイシー 歴史の素人ながら、米国は100年以上にわたって、自らをユニークな国にしてきた建国の理念から遠ざかっているように思う。今77歳だが、その間ずっと、この状況を目の当たりにしてきた。

その傾向は加速している。

哲学的な足場を失ったことで、この国は大規模な危機に向かっている。その結果、本当に深刻な恐慌が起こるだろう。私はこれを「大々恐慌」と呼んでいる。

数百万ドルの家に住む持てる者と、テントで暮らす持たざる者の間の格差は、今に始まったことではない。結局のところ、イエスは「貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいる」と言われたのだ。新しいのは、中産階級が貧困化していることであり、中産階級に残っているのは、深い負債を抱えた人々だ。学生ローン、クレジットカード、自動車ローン、住宅ローン。住宅ローンを抱えて家を持つほど幸運でない場合は、賃貸住宅に住んでいる。家賃は急速に上昇しており、普通の人々は500ドルの不測の出費があっても、それを支払うことができない。

これは消費に悪影響だ。米経済は消費で成り立っているといわれるが、それは愚かな主張だ。米経済は生産で成り立っているというべきだからだ。しかし米国はもはや大して生産しているとは思えない。

「働く」人々のほとんどは、ほぼデスクに座って書類をシャッフルしている。本当の富を活発に生み出している人はほとんどいない。

そのうえ、この国は金融化が進みすぎている。

債券市場はすでに大きく崩壊しているが、金利が1980年代初頭以降の水準に戻れば、さらに悪化する可能性がある。

高金利のせいで、また人々が企業の生産物を大量に消費しなくなるせいで、株価は大幅に下がるだろう。

不動産市場は負債の上に成り立っている。金利が上昇すれば、簡単に破綻する。すでに全米のオフィスビルがそうなっている。そしてもちろん、これらのオフィスビルは銀行から融資されている。銀行は融資したローンの債務不履行が相次ぐだろう。

一方、ゼロ近くから5%、6%に上昇した金利に比例して債券価格は下落するため、債券に投資した銀行の資本は目減りしている。もし銀行が融資や資本投資を時価評価しなければならないとしたら、ほとんどの銀行はすでに倒産しているだろう。

政府はさらに紙幣を刷って、これらすべてを帳消しにできるのだろうか。できるかもしれない。

しかし、やがてドルは急速に価値を失い、熱いジャガイモのように扱われるだろう。政府は窮地に立たされているのだ。

インターナショナル・マン 今年は金価格が史上最高値を更新し、ウランは1ポンド81.25ドルに達し、暗号資産(仮想通貨)のビットコインは新たな強気相場に入って2倍以上になりました。一方、S&P500種株価指数はこの記事を書いている現在、年初来で約21%上昇しています。

2023年に金融市場で起こったこと、そして次に起こりうることについてどうお考えですか。

ダグ・ケイシー 残念ながら、米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は市場に巨大な影響力がある。

FRBはお金を刷る「量的緩和」も、お金を減らして人為的に金利を上げる「量的引き締め」もできる。

博士号を持つ経済学者が何百人も在籍しているが、全員が世界の仕組みに関するインチキ・ケインズ理論に基づいて動いている。紙幣と巨額の負債を土台に経済体系を構築した結果は、破滅的なものになる恐れがある。

現時点では、経済はカミソリの刃の上にある。印刷ボタンを押し、それを長く押し続ければ、インフレが暴走するかもしれない。あるいは、インフレを抑えるために金利を引き上げ、マネーサプライ(通貨供給量)を縮小させ、1929年のような信用崩壊を引き起こすかもしれない。

私たちは今、スキュラとカリュブディス(ギリシャ神話に登場する2匹の怪物)の狭間にいる。ソフトランディング(軟着陸)かハードランディング(硬着陸)かという問題ではない。不時着がどれほど壊滅的なものになるかが問題なのだ。

このような状況からもう一度、好景気が生まれればと願っている。個人的には、たとえ人為的なものであっても、悪い時より良い時のほうが好きだからだ。悪い時代は現実になりそうだしね。

Doug Casey On What Really Happened In 2023 And What Comes Next | ZeroHedge [LINK]

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