2023-03-17

代理戦争の過酷なコスト

ジャーナリスト、スティーブン・キンザー
(2023年3月9日)

戦争をするのは危険だから、誰かが代わりにやってくれると助かる。それが代理戦争である。敵同士が直接戦うのを嫌がる場合、代理人、つまり自分たちの関心に応え、敵を弱体化させる現地の勢力を利用する。安上がりの戦争なのだ。
代理戦争は大昔から行われてきた。今日もいくつかの戦争が繰り広げられている。最も激しいのはウクライナでの戦いである。欧米の指導者たちがウクライナに兵器を投入しているのは、ウクライナが地政学上の仇敵であるロシアを傷つけていることが主な理由だ。共通の敵に直面した私たちは、過酷な取引を行う。米欧は資金と武器を提供し、ウクライナは戦い、死ぬ兵士を提供する。この取引はあらゆる代理戦争の一部である。

マーク・ワーナー上院議員は最近、「ロシア軍はウクライナ軍に食い荒らされている」と指摘した。「我々は今まさに、ウクライナにそれをやらせている。--ある意味、我々のために」

もう一つの代理戦争はイエメンを荒廃させている。サウジアラビアは7年間、米国から提供された武器でイエメンを空爆している。しかしどちらの国もイエメンのことはあまり気にしていない。イランが支援する一派と戦争しているのだ。米国とサウジは、イランとの全面的な衝突を避け、代わりにイランの同盟国を空爆している。

世界で最も複雑な代理戦争がシリアで繰り広げられている。シリア政府はイランやロシアと同盟を結んでいる。そのため米国の代理戦争の標的として、格好の存在となっている。シリアを攻撃し、弱体化させることで、米国の主要な敵対国2カ国に対して間接的に打撃を与えることができる。米国がクルド人民兵を含む代理勢力を使ってシリアの3分の1を占領しているのはそのためだ。さらに問題を複雑にしているのは、隣国のトルコもシリアの一部を占領し、地元の代理人を通じて支配していることだ。シリア人が苦しみ、死んでいく一方で、よそ者は自分たちの土地で優位に立とうと競い合っている。

冷戦時代は代理戦争の黄金時代だった。米国とソ連の両超大国は、直接対決すれば核兵器による大虐殺につながることを認識していた。その代わりに、世界各地で戦争に参加させ、そこに住む人々に銃を送って戦わせ、死なせた。

最も激しかったのは、アンゴラでの出来事だ。ソ連とキューバが一方を支援し、米国と南アフリカが他方を支援した。戦闘が始まったのは1975年。四半世紀後に終結したときには、50万人以上のアンゴラ人が死んでいた。

1980年代には、ニカラグアの代理戦争も取材した。米国の冷戦時代の宿敵であるキューバとソ連が、サンディニスタ政権を武装させたのである。この侵略を容認できない米国は、反政府勢力「コントラ」を武装させた。内戦は6年間続き、数万人の命を奪った。終結後、驚くべきことに、両者は和解した。コントラの最大指導者であるアドルフォ・カレロは、かつて没収された家に戻り、議員になった。

ニカラグアの戦争は外部の権力者によって煽られたものであり、その権力者が和平を結ぶと、それを中止させたのだと、私が現地に赴いたときにカレロは言った。

「サンディニスタは時代の旗印を掲げた。それがマルクス主義だった」とカレロは言った。

「西側と同盟を組んだ。彼らはソ連から、我々は米国から資金と銃を手に入れた。しかし今、我々を分断していたものは消滅してしまった。……何が起こったかのか。冷戦が終わったのだ」

ウクライナは、代理戦争の魅力、そして恐ろしさのすべてを体現している。

ロシアと戦いたい国は、自国の兵士を送ることなく戦うことができるので、世間からの反発も少ない。ウクライナ人の死への意欲には拍手を送るが、それを共有したいとは思わない。代理戦争のもう一つの大きな危険は、それを終わらせるのが難しいということだ。代理戦争は「凍りついた紛争」、あるいはさらに悪いことに「永遠の戦争」になりかねない。

アフガニスタンは何十年もの間、そのような代理戦争の場であった。米国もソ連も、この国にはさほど関心を持っていなかった。しかし地政学上有利になるように、アフガンを荒廃させた。よそ者がようやく去ったとき、廃墟となった国と何百万人もの苦しむ戦争犠牲者が残された。ニカラグアやアンゴラでも同じようなことが起こった。今日のシリアやイエメンでの戦争は終わりがなく、一日一日、国を破壊しているように見える。ウクライナの運命もまた、そうかもしれない。

ウクライナの泥沼の戦いを表現するために、すでに「肉挽き機」という言葉を使う人もいる。ひどい言葉だが、まさにそのとおりである。第一次世界大戦のように数カ月間、陣地に潜り込んだまま、数百ヤードも進まず戻らず、戦線はゆっくりしか変化しない。どちらの側にも決定的な打開策があるとは誰も思っていない。

バイデン米大統領は就任早々、アフガンから米軍を撤退させ、長い代理戦争に終止符を打った。現在シリア、イエメン、ウクライナを襲っている代理戦争は多くの点で異なるが、アフガン戦争と同様に、大国が疲弊するまで続くだろう。その間、これらの国々の土壌は血に染まり、息子や娘たちが死に続けるだろう。

The incalculable moral cost of proxy wars - The Boston Globe [LINK]

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