2023-03-13

戦争と税金で潤う兵器メーカー

クインシー研究所上級顧問、イーライ・クリフトン
(2023年2月24日)

米兵器メーカー、レイセオン社の最高経営責任者(CEO)グレッグ・ヘイズ氏は昨年1月、不安定な世界が同社に収益機会をもたらすと投資家に語った。「国際的な販売チャンスだとみられます」とヘイズ氏は言い、他の世界的事象とともに「東欧の緊張」を挙げた。そして「これらが東欧の国防費に圧力をかけています。ですからその恩恵があると大いに期待しています」と付け加えた。
ロシアの大規模なウクライナ侵攻は、エネルギー価格の高騰、インフレ率の上昇、食料供給網の寸断など、世界中に金融・人道上の圧力をもたらした。

しかしヘイズ氏は正しかった。レイセオンをはじめとする兵器メーカーは、多くの投資家が損失を被るなか、莫大な利益を得ている。

ロシアの侵攻以来、大手兵器メーカー5社の株価は目覚ましい上昇を見せ、主要な株価指数を劇的に上回った。ロッキード・マーチン、レイセオン、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミクスの株価は、昨年2月24日のロシア侵攻の前日から木曜日(2月23日)の金融市場終了までの1年間で平均12.78%上昇した。

この上昇は、主要指数のパフォーマンスと比較するとさらに印象的だ。主要兵器銘柄は平均して、S&P500種株価指数を17.82%、ナスダック総合株価指数を23.88%、ダウ工業株30種平均を12.71%上回った。

3つの指数のうち、S&P500とナスダックの2つは、その1年間で下落を記録した。

別の言い方をすれば、侵攻の前日に上位5社の兵器企業に1万ドルを投資すれば、今日は1万1277ドルの価値がある。S&P500に1万ドル投資した場合、9495ドルの価値しかない。

米兵器産業の収益の多くは、納税者が支払う米政府との契約に由来する。たとえば、世界最大の兵器メーカーであるロッキード・マーチンは、営利目的の上場企業かもしれないが、同社の2021年の年次報告書には「670億ドルの純売上高のうち71%が米政府からのものである」と記されている。

政府から得る兵器産業の収益は、国内の生産施設や雇用に再投資されるだけではない。その多くは株主に還元されている。ロッキード社のCEOであるジェームズ・テイクレット氏は、2022年に自社株買いや配当金支払いによって110億ドルを株主に提供し、「株主にとって大きな価値」を生み出したと自慢している。つまり、一部税金で賄われた株主への配当である。

インデックスファンド(S&P500やダウ平均など株価指数の構成銘柄に連動する投資信託や上場投資信託)への投資を好む人が増えている個人投資家の多くは、ロッキードの自社株買いや、ロシアのウクライナ侵攻から1年間で主要指数をすべて上回った兵器メーカーの株価上昇からすっかり取り残されているだろう。

実際、戦争がどのように終結するのか、ウクライナの勝利はどのようなものなのか、ウクライナの再建はいつ、どのように始められるのか、プーチンの侵攻が北大西洋条約機構(NATO)や欧州安全保障体制に与える長期の影響など、重要な問題が残っている。ウクライナのインフラ再建にかかる費用は、すでに1兆ドル以上と見積もられ、さらに膨らんでいる。

戦争の帰趨は依然不透明だが、一つ確かなことは、欧州で大規模な戦争が勃発すれば、今後数年間、米国と欧州の兵器購入に拍車がかかるということである。

膨れ上がる国防予算と米国の国家債務、エネルギーコストの高騰と世界的な食糧不足は、ほとんどの米国人に悪影響を与えるだろう。しかし兵器株の投資家は、世界経済の混乱のなかで、他の産業ではほとんど達成されていない利益を得ている。

レイセオンのヘイズCEOは、先月の決算説明会で「当社の製品と技術は、ウクライナの人々の自衛に役立っています」と主張した。レイセオンの最高執行責任者(COO)であるクリス・カリオ氏はこの電話会議の後、「周囲の脅威が強まり、複雑さを増すことから、当社の受注残高は今後も増加する見込みです」と述べている。

言い換えれば、世界にとっての人道的、地政学的、経済的な災厄は、少なくとも一つの希望の光、すなわち兵器メーカーの利益をもたらしているのだ。

Ukraine War is great for the portfolio, as defense stocks enjoy a banner year - Responsible Statecraft [LINK]

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