2023-01-24

ウクライナ戦争と国際法の衝突

コラムニスト、テッド・スナイダー
(2023年1月19日)

ウクライナでの戦争は、さまざまな原因が絡み合っている。ニコライ・ペトロ氏が論じたように、それは同時にロシアと米国の紛争であり、ロシアとウクライナの紛争であり、ウクライナ国内の紛争でもある。しかしその核心には、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに門戸を開くべきかどうかをめぐる対立と、ドンバス地方がウクライナの一部か、自治区か、ロシアの一部であるべきかをめぐる対立の二つがある。
そしてこの二つの対立それぞれの核心にあるのが、NATO問題とドンバス問題にかかわる二つの国際法の対立である。いずれの場合も、それぞれの法は正当なものであり、米国は一方を、ロシアはもう一方を信奉している。リチャード・サクワ氏が論じたように、「この二つの論理の間の緊張が、後の紛争の種を含んでいた」のである。

ウクライナのNATO加盟をめぐる対立の核心は、米露が合法だが相容れない国際法に賛同していることである。この議論は、ケント大学のリチャード・サクワ教授(ロシア欧州政治学)が、少なくとも次の二つの場で展開している。一つは論文「愚行の行進の再開——ロシア、ウクライナ、米欧」、もう一つはアンドレイ・クリコヴィッチ氏との共同論文「ウクライナの戦争——規範と存在論の衝突」である。

NATO拡大問題で米国は、国家が自らの安全保障体制を選択する自由で主権的な権利という原則を挙げている。一方、ロシアは、安全保障の不可分性の原則、すなわち、ある国の安全保障を他の国の安全保障の犠牲の上に成り立たせてはならないという原則を挙げている。どちらの原則も国際法および国際協定に明記されている。どちらも正当なものであるが、両者は矛盾している。それゆえ対立するのだ。

米国は、NATOがウクライナに門戸を開いていることを正当化するため、国家が自らの安全保障上の立場を選択する権利を主張している。すべての国家が安全保障体制を選択できるのであれば、ウクライナにもNATO加盟を選択する主権的権利がある。ロシアは、NATOが国境まで拡大し、殺傷兵器をウクライナに送り込むことに反対する正当な理由として、安全保障の不可分性を主張している。どちらの原則も正しい。しかしサクワ氏が指摘するように、「それらは矛盾することがわかり、結局、双方の平和的共存の能力を損なった」。

ロシアは、平和はすべての国の利益が尊重される力の均衡によって達成されると考えている。覇権国家が自国の安全保障を確保するために、他国の安全保障を無視することはありえない。米国は、自らを覇権国とする貿易と民主主義の体系が広がることで、平和を保つ共通の領域ができると考えている。米国の主張は、その広がりが他国にとって脅威となりえないことを暗示している。

西側諸国は、選択の自由と、同盟を選択する権利という概念に非常に精通している。ロシアはさまざまな場面で、その自由を文脈の中に位置づけることを試みてきた。同国のセルゲイ・ラブロフ外相は、2022年1月27日の報道機関へのコメントを含め、関連するすべての国際協定は「不可分の安全保障とそれを必ず守ること」を国家に義務づけていると、たびたび主張している。同外相は、国家が自らの同盟を選択する主権的権利は、「他国の安全を犠牲にして自国の安全を強化しない義務」と釣り合うという法的含意を指摘する。

2021年12月7日のバイデン米大統領との対話で、プーチン露大統領は「すべての国は、自国の安全を確保するために最も受け入れやすい方法を選ぶ権利があるが、これは他の当事者の利益を侵害せず、他の国の安全を損なわないように行われるべきである。……安全保障の確保はグローバルなものであり、誰もが平等にカバーされるものでなければならないと考えている」と述べた。12月30日、プーチン氏は再びバイデン氏と会談し、「不可分な安全保障の原則が厳格に守られない限り、いかなる国の安全も確保することはできない」と強調した。

侵攻前の2月1日、プーチン氏は記者会見で同じ原則を表明し、「この過程のすべての関係者、すなわちウクライナ、他の欧州諸国、ロシアの利益と安全を確保する方法を見つける必要がある」と述べた。

アナトリー・アントノフ駐米ロシア大使は2021年12月30日付の評論でこう書いている。「NATO加盟国によるウクライナの軍事調査は、ロシアにとって存立の危機である。……平等かつ不可分の安全保障の原則を取り戻さなければならない。これは、いかなる国家も他国を犠牲にして自国の安全保障を強化する権利を持たないことを意味する」

サクワ氏が伝えるように、ロシアの指摘によれば、米国がウクライナの同盟選択権を主張することは、「1991年6月6〜7日のコペンハーゲン外相会議で『欧州情勢の変化から一方的な利益を得ない』『他国の正当な利益を脅かしたり孤立させない』『大陸に新しい分断線を引かない』とした」NATO自身の原則と矛盾する。

NATOのウクライナに対する門戸開放をめぐる対立と同様、ドンバス地方の危機に関しても、米露は正当だが相容れない二つの原則を引き合いに出している。

9月27日、ドンバス地方のドネツク、ルハンスク両共和国、ヘルソン、ザポロジエ両州で、ロシアへの加盟を問う住民投票が実施された。米国は国連憲章にある既存国家の領土保全の原則を理由に住民投票を拒否し、ロシアは同じく国連憲章にある民族自決権の原則を理由に住民投票を承認した。

プリンストン大学のリチャード・フォーク名誉教授(国際法)は「このような対立は、国際的に承認された国家の境界線内で権利を侵害された異なる民族の権利を強調し、主権国家の完全性と自己決定権の範囲という一般的な問題を提起している」と述べている。フォーク氏は筆者に対し「国家や国連の活動は矛盾しており、法律や道徳よりも権力や地政学的な優先順位によって動かされている」と述べた。

10月4日、ラブロフ露外相は新領土のロシアへの吸収に関する発言で、自決の原則を持ち出した。東部地域の決定は「住民投票による自由な意思表明に基づく」とし、「これらの共和国と地域の市民は、自己決定権に基づく意識的な選択をした」と主張したのである。

NATOの原則と同様に、領土保全の原則は自決の原則と矛盾せず、バランスがとれている必要があるとラブロフ氏はあらためて主張した。1970年の国連宣言(友好関係原則宣言)では、「人民の平等な権利と自決の原則を遵守し、領土に属する全人民を代表する政府を有すること」を条件に、「国家の領土保全の尊重を国家の義務として定めている」と主張したのである。ラブロフ氏は、領土保全は住民投票で行使された自決を尊重していないと両論を展開した。

米露が互いの立場を理解し、その相違を解決することができないのは、等しく正当でありながら相容れない国際法に固執していることが根底にある。

(次を全訳)
War in Ukraine: When International Laws Collide - Antiwar.com Original [LINK]

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