2022-12-09

アフガン戦争を忘れるな

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年12月8日)

米国防総省が北大西洋条約機構(NATO)を使ってロシアを刺激し、ウクライナに侵攻させた際、そのような侵攻がもたらす大きな利益の一つは、米国の兵器メーカーを豊かにすることだとわかっていたはずだ。兵器メーカーはもちろん、米国の安全保障国家という政府構造の重要かつ不可欠で、忠実な部分である。

そして案の定、その兵器メーカーは今、感謝されることがたくさんある。ウォールストリート・ジャーナル紙の記事によれば、こうである。

世界最大の兵器メーカーは、ロケットランチャー、戦車、弾薬の生産を拡大している。ウクライナ戦争に端を発した持続的な需要に対応するため、業界がシフトしているからだ。

国防総省はウクライナに170億ドル以上の武器とサービスを提供することを約束しており、そのほとんどは既存の在庫から引き出されたものである。また、国内および同盟国の在庫を補充するために、約34億ドルの新規契約を結んでいる。

ペンタゴン(国防総省)はアフガニスタンから撤退せざるを得なくなった際、その貧しい第三世界の国に死と破壊をもたらすために約20年間大量の兵器を使用してきた、忠実な兵器メーカーの軍隊が苦しみ始めるかもしれないことを理解していた。国防総省がウクライナで引き起こした危機は、明らかにその苦しみを和らげるのに役立っている。

しかしロシアのウクライナ侵攻には、もう一つの受益者、すなわち国防総省自身がいた。というのも、米国人が国防総省の20年にわたるアフガンでの壊滅的な大失敗に注目する前に、誰もがロシアのウクライナ侵攻にのみ注目し始めたからだ。ウクライナの危機のおかげで、アフガンの大失敗は記憶の彼方に追いやられてしまった。

私たちはアフガンの失敗を真剣に考え、検証し、分析する必要がある。国防総省がウクライナで引き起こした危機を、アフガンで起こった出来事から目をそらすために利用することは許されない。アフガンからただ「前進」し、国防総省が邪悪なロシアとそのウクライナ侵略にのみ私たちの注意を向けるのを許すのは、重大な誤りだろう。

バイデン大統領と民主党、そして一部の共和党員が突然発見し、崇め始めた合衆国憲法に注目することが重要だ。憲法は大統領が合法的に戦争を行う前に、議会による宣戦布告を要求している。アフガンに対して議会が宣戦布告をしたことは一度もない。そのため、国防総省のアフガンに対する戦争は、米国の立憲政府の形態の下では違法なものとなってしまった。

同様に重要なことは、もしジョージ・W・ブッシュ大統領が議会に対して宣戦布告を求めたとしても、それを取り付けることができなかったことは事実上確実である。なぜなら、ブッシュは9・11テロに〔アフガンのイスラム主義組織〕タリバンが加担したという証拠を何ら示すことができなかったからだ。そのような共犯関係の証拠がなければ、議会がアフガンに対して宣戦布告を行うとは考えにくい。特に、そのような戦争は、貧しい第三世界の国に大量の死と破壊をもたらすことが避けられないとわかっているからだ。

ブッシュはアフガン侵攻を「自衛」の原則のもとに道徳的に正当化すると主張した。だがそのためには、タリバン政権が9・11テロに関与していることを示す必要がある。しかしそのような証拠は存在せず、ブッシュもそれを知っていた。したがって、もしブッシュが議会で「自衛」に基づく宣戦布告を求めたとしても、証拠に関する限り、手ぶらで行ったことになる。

実際、もしブッシュが本当に、タリバン政権が米国を攻撃したと信じていたのなら、アフガン侵攻による自衛のために国連に承認を求めに行くことはなかっただろう。そんなことをする大統領はいない。

では、「犯人蔵匿」罪はどうだろうか。ブッシュは、アフガンがオサマ・ビンラディンを「かくまっている」ので、アフガン侵攻は道徳的に正当化されると主張した。ブッシュの主張には妥当性がない。「かくまう」ことを正当化するには、ブッシュは、タリバン政権が9・11テロを予知しており、故意にビンラディンと共謀してテロ計画のための基地を提供したという証拠を提出しなければならない。ブッシュは、そのような告発を支持する証拠がないことを知っていた。

ブッシュが実際に「かくまう」と言ったのは、タリバンがブッシュのビンラディン無条件引き渡し要求に応じないということである。しかし国際法の下では、タリバン政権にはブッシュの引き渡し要求を拒否する権利がある。それはアフガンと米国の間に引き渡し条約がなかったからだ。二国間に引き渡し条約がない場合、どちらも他方からの引き渡し要求に応じる必要はない。

9・11テロは「戦争行為」であり、したがって米国はアフガンに住んでいたビンラディンを殺害または捕獲するためにアフガンに侵攻する正当な権限があったという主張についてはどうだろうか。

これはアフガン侵攻正当化のためのインチキだった。米国の法律では、テロは犯罪行為であり、戦争行為ではない。そのため、テロリズムの訴追は米国の地方裁判所で行われる。いかなる国も、他国を侵略して、その国に居住している犯罪容疑者を殺害または捕らえる正当な権限を持っていないのである。

最も悪名高いテロリストの一人に、ポサダ・カリレスという米中央情報局(CIA)の人間がいる。ベネズエラの上空でキューバの航空会社を爆弾で墜落させた人物の1人と広く考えられている。ポサダはその後、無事に米国に身を寄せている。

ベネズエラがポサダの引き渡しを要求した際、米当局は、ベネズエラと米国の間に引き渡し条約があるにもかかわらず、これに応じないことでポサダを保護した。

ビンラディンを殺すか捕らえるかするために、壊滅的なアフガン侵攻を支持した介入主義者は、ポサダを殺すか捕らえるかするために同じく壊滅的なベネズエラの米国侵攻を支持しただろうか。そうは思えない。

ウクライナの危機を煽るためにNATOを利用するのは、十分に悪いことだ。米国の武器製造会社は明らかにこの危機から利益を得ているが、国防総省も同様だ。国防総省がアフガンの人々にしたことを忘れさせ、ロシアのウクライナ侵攻にただ「移行」させてしまったからだ。とりわけペンタゴンが貧しい第三世界の国に対する非道徳的で違法な戦争で大量の死と破壊を引き起こしたことを考えると、そのようなことをさせてはならない。

(次を全訳)
We Must Not Forget the U.S. War on Afghanistan – The Future of Freedom Foundation [LINK]

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